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【総合職】調査統計局 Y.K. さん

経済分析を通じて描く金融政策の海図

Y.K. さん

総合職
調査統計局 経済調査課
景気動向グループ
企画役補佐

経済・物価・金融情勢の判断と予測

近代の金融政策では、足もとの経済・物価・金融情勢に関する判断を起点に、それらの先行きについてのベースラインおよびリスク・シナリオを共有しながら政策決定を行うというフォワード・ルッキングな政策運営が一般的です。現状評価を日本経済の現在地、先行き予測を今後の景気の足取りと捉えると、これらの情報は日本銀行にとって金融政策運営のための「海図」といえるでしょう。

私が所属する景気動向グループは、経済・物価についての現状評価と中期的な見通しの作成を担っており、日々の経済指標を用いた分析を通じて、できるだけ正確な「海図」を報告しています。日本銀行における経済分析作業は多岐にわたりますが、その一例として私の業務内容を通じて、情勢判断と先行き予測の一端をご紹介したいと思います。

的確かつ迅速な現状評価:
8時50分スタートの1日

景気動向グループでの私の業務の1つが、毎月公表される鉱工業生産に関する分析および現状評価です。

多くの統計は朝の8時台に公表されます。統計が公表され次第、数字を確認し、夕方に調査統計局内で行われる指標説明会に向けた分析作業に移っていきます。一般職のリサーチ・アシスタントと協力しながら公表された大量のデータをできるだけ細かいレベルまで解析していきます。この過程で、生産全体の動きが何によって説明できるのか、予想との乖離は何によるものか、特異な動きはないか、といった点を徹底的にチェックしていきます。

こうして洗い出した個々の動きを、わが国の産業連関(自動車の生産が増えればその部品に用いる鉄鋼や化学製品の生産も増えるといった投入・産出関係)をベースに、同時期に公表される輸出入や消費、労働時間などの統計の動きも念頭に置きながら、それらを整合的に説明できるストーリー・現状評価を考えていきます。ここでのポイントは、月々の増減だけを説明するのではなく、経済指標を取り巻く様々な攪乱要因の裏に隠された実勢を炙り出して評価を行うことです。

そして、作成した資料を基に、夕方の指標説明会において局内幹部に報告を行い、月々の動きの解釈や先行きの見通しへのインプリケーションを議論しながら、現状評価を固めていきます。景気動向グループでは、実体経済面ではGDPの構成項目ごと、物価面では消費者物価、企業物価・市況に分けて若手エコノミストが配置され、前述のような日々の経済指標の現状評価を担っています。このため、各分野の担当者に対しては、担当の経済指標について日本で一番詳しいことが求められます。

精緻かつ妥当性の高い経済・物価
見通しの作成:分析漬けの3か月

私のもう1つの仕事は、各分野の担当者の分析・現状評価等を踏まえ、四半期ごとにわが国の中期的な経済・物価見通しを取り纏めることです。

見通し作成に向けて、各担当者は足もとの経済指標の現状評価を踏まえながら、担当している項目の先行き数年間の展開について分析を行います。その際の具体的な分析テーマの設定は各担当者に任されていますが、個々の分析が調和のとれたものとなるよう、テーマの段階から担当者との議論を重ねます。

2〜3か月にわたる分析作業では、組織知として蓄積された膨大な分析ツールを駆使するだけではなく、最新の時系列モデルや大規模なミクロデータを用いた計量分析、理論モデルを用いたシミュレーション、機械学習など、多岐にわたるアプローチが採られます。取り纏めとして、経済理論を含めた知識やこれまでの経済分析の経験を駆使して必要な指導を行ったり、直接分析作業に加わったりしながら分析資料の作成をサポートしていきます。一日の全てが各担当者との議論で終わる日も珍しくありません。

こうして作成された分析資料は、局内幹部に報告され白熱した議論が交わされます。結果の妥当性やインプリケーションについて厳しい指摘が飛び交うこともありますが、若手のうちから自分の考えをしっかりと主張し、先輩エコノミストでもある局内幹部と対等に議論を行う機会が与えられるという点は、非常にエキサイティングであるといえます。

次に、以上の分析・議論を踏まえて固まった、消費や設備投資、輸出といった各コンポーネントの定性的なストーリーを実際の予測値に落とし込んでいきます。しかし、各項目のストーリー全てに整合的で、かつ現実的な数字を作るのは簡単ではありません。日本経済のダイナミクスについて明確なイメージを持ちながら、GDPの3面等価(支出=分配=生産)や貯蓄投資バランスに加え、フィリップス曲線といった経済理論等から多角的に検証しつつ、各担当者との何回にもわたる議論と修正作業を通じて、漸進的に数字を固めていきます。これは「バランス作業」と呼ばれており、毎回相当の時間と労力がかかります。

Connecting the Dots:
中央銀行エコノミストとしての成長

私は大学院でファイナンスを専攻していたため、日本銀行に入行した時点では必ずしもマクロ経済分析に明るくありませんでした。入行後の10年間の多くの期間で経済分析を担当する中で、政策インプリケーションを導く中央銀行エコノミストとして成長していったと思います。

新人で配属された高知支店では、先輩の指導を受けながら産業調査を通じて仮説構築・検証の訓練を重ねたほか、大河ドラマの経済効果試算などを経て経済の投入・産出構造について具体的なイメージを得ました。これらは、前述の現状評価作業の大きな礎となっています。

支店後に配属された金融機構局では、実体経済と金融システムの相互作用を組み込んだストレステストモデルや金融不均衡指標の開発のほか、マクロプルーデンス政策に関するシミュレーションを担当しました。また、調査統計局では、分析の射程を実体経済に拡げ、わが国の輸出入の現状評価や見通し作成に加え、価格粘着性に関する研究も行いました。これらの分析過程では理論・計量手法面で多くインプットが必要でしたが、金融仲介機能および景気循環に関する知識や、分析アプローチの引き出しを増やすことができました。

その後の企画局では、これらの経済分析が金融政策実務の中でいかに活用されているかを知るとともに、自らも金融政策の波及効果やインフレ予想について分析および取り纏めを担当しました。金融政策は実体経済に止まらず金融システムまで幅広く影響するため、分析の過程では、前述の金融機構局や調査統計局での経験やスキルが大きな助けとなり、これまでのキャリアが中央銀行エコノミストとしての成長を促してきたことを実感しました。

経済分析を通じて見える世界と日本経済への貢献

ビッグデータ等の登場、機械学習などの計量手法の開発、経済主体の異質性を考慮した経済理論の発展などを背景に、経済分析を通じて見える世界は急速に拡がっています。また、変わりゆく日本経済の姿を正確に捉え続けることは、適切な金融政策運営ひいては日本経済の発展に貢献するうえで非常に重要です。これからも多くのインプットを続けながら、「見たことない日本経済の姿を明らかにしたい」という想いを形にできるよう、中央銀行エコノミストとして経済分析にあたっていきたいと思います。

Y.K. さんのあゆみ

2009年4月 総務人事局入行
2009年4月 高知支店
2010年9月 金融機構局
2010年9月 預金保険機構出向
2010年9月 金融機構局
2013年6月 調査統計局
2016年6月 企画局
2018年6月 調査統計局

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