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「日銀探訪」第40回:情報サービス局金融広報課長 蔵本雅史

中立・公正な立場で金融広報に取り組む=情サ局金融広報課(1)〔日銀探訪〕 (2016年12月26日掲載)

情報サービス局金融広報課長

世界を揺るがす金融危機・通貨危機や国家の財政問題から、賃金をめぐる労使交渉や日々の消費生活に至るまで、お金に関わるニュースが報道されない日はない。一方で、国民の金融知識は必ずしも十分とは言えず、知識不足からトラブルにつながるケースも多い。中立・公正な立場から国民の「お金に関する知識や判断力」(金融リテラシー)の向上を目指して広報活動に取り組んでいるのが「金融広報中央委員会」だ。同委は官民が協力し合って設立した非営利の組織で、愛称は「知るぽると」。日銀情報サービス局金融広報課が事務局となっている。蔵本雅史課長は「金融について知らなかったために失敗した、だまされたということがなくなるように、金融リテラシーの向上に努めるのがわれわれの役割」と説明。金融の知識を基に自分で判断して行動できる自立的な消費者を増やすには、子供から社会人まで、各世代のニーズに合った実践的な金融広報活動が重要と強調する。蔵本課長のインタビューを3回にわたって配信する。

「当課は35人程度の人員から成り、主に金融広報中央委員会の事務局として、金融教育や金融知識普及の活動を通じ、国民の金融リテラシーの向上を目指す活動を行っている。また、全国の都道府県にある金融広報委員会の一つである東京都金融広報委員会の事務局としても活動している。課は3グループで構成され、地域サポートグループは全国の金融広報委の活動支援と東京都金融広報委事務局の業務を、金融知識普及グループは社会人向けの金融広報活動および総務・庶務的業務を、金融教育グループは学校における金融教育活動支援を、それぞれ担当している。もっとも、これらの業務は相互に関係しているため、お互いに分担・協力し合いながら取り組んでいるのが実情だ」

「金融広報中央委は、政府、日銀、地方公共団体、民間団体などが協力し、中立・公正な立場から金融広報・消費者教育活動を行い、国民経済の健全な発展に資することを目的としている。全国の都道府県に設置された金融広報委と連携し、地域に密着しながら全国規模で活動している。金融広報中央委発足の経緯としては、戦後に全国で展開された救国貯蓄運動がベースとなり、1952年に貯蓄増強中央委員会が設立され、インフレ終息と資本蓄積のための資金吸収を企図した国民運動の全国組織として活動を始めた。その後、同委は時代のニーズに合わせて活動・名称を変更し、88年に貯蓄関連知識の広報に軸足を移した貯蓄広報中央委員会となった。さらに、2001年からは、金融の自由化が進展する中で、広報対象を金融全般に拡大して、現在の金融広報中央委として活動している」

「16年度の同委の基本活動方針は『広めようお金の知恵―生きる力、自立する力を高めるために』とし、その下での取り組みとして『ネットワークを活用した金融広報活動の推進体制の整備』と『波及効果を重視した金融広報活動の推進』の二つの柱を掲げている」 「当課の具体的な業務としては 1)金融教育活動推進のための金融関係団体などとの連携 2)学校における金融教育の支援 3)金融知識普及活動、情報発信 4)調査、情報収集活動 5)東京都金融広報委の事務局としての業務―が挙げられる。現在の金融広報をめぐる環境を考えると、当委として取り組むべき業務は多く、かつ多様であることから、いかに効果的・効率的に活動を展開していくかが重要な課題と考えている」

学校での金融教育を積極的に支援=情サ局金融広報課(2)〔日銀探訪〕 (2016年12月27日掲載)

2008年のリーマン・ショックとその後の金融危機では、金融商品の内容をよく理解しないまま購入したり、市場の急激な動きに対応できなかったりした個人が大きな損害を被ったことなどから、金融教育の重要性に対する認識が世界的に高まった。金融広報中央委員会でも、学校教材の作成・無償配布、教員など指導者層への働き掛けなどといった、これまでも取り組んできた学校での金融教育活動の必要性が一層高まったと認識している。同委の事務局を務める日銀情報サービス局金融広報課の蔵本雅史課長は「かつて教育界にはお金の話を敬遠する雰囲気があったが、最近では金融教育に積極的に取り組む先生方も増えてきた」と指摘。こうした金融に関心を持つ教員をさらに増やしていくため、同委では全国の学校や教育委員会などを訪問して金融教育の重要性を直接説明する、いわば「金融教育のセールス活動」にも力を入れていると話す。

「リーマン・ショック後の金融教育の重要性に対する認識の世界的な高まりを受けて、日本でも、金融庁の研究会のまとめた報告書において、金融経済教育は『金融広報中央委員会のネットワークを活用し推進していく場を設置することが適当』と指摘された。これを受け、13年に金融広報中央委を事務局として、金融庁、文部科学省、消費者庁のほか、全国銀行協会、日本証券業協会、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会などの金融関係団体や有識者から成る『金融経済教育推進会議』が設置された。原則として年2回会合を開き、国民の金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)の向上を図るための基本的な考え方の共有や連携施策の検討・実施、情報交換などを行っている」

「推進会議では、金融教育の普及には業界団体の壁を越えた活動が必要と考え、14年に、まず金融関係団体が金融経済教育活動を行う際に守るべき『中立・公正性の基準』を定めた」

「また同年、国民が最低限習得すべき金融リテラシーを項目別、年齢層別に体系的に示した『金融リテラシー・マップ』を作成・公表した。これらは、関係する団体が金融経済教育活動を実施する際に羅針盤の役割を果たすものだ。このほか、関係諸団体と連携し、大学での正規講座として金融リテラシーの連続講義を提供している。リテラシー・マップに基づいて、15の講義を諸団体で分担して受け持ち、実践重視の授業を行う。それぞれの団体が専門知識を持った講師を派遣するため、大学からは高い評価を得ている。2年前に2大学で開始し、16年度は8大学まで拡大した」

「金融リテラシーの向上には、学校段階で多くの生徒を対象に授業をしてもらうのが最も効果的・効率的だ。そこで、全国の金融広報委員会は教員などの指導者層への働き掛けを積極的に行っている。お金の話には抵抗感を示す先生方もおられるが、子供たちがオンラインゲームで何万円も使うようなケースが増えてきており、先生方の問題意識も着実に高まっている。金融広報中央委が作成した教材は、要望があれば無償で提供している。特に、小学校から高校までの各段階における金融教育の在り方や、学習指導要領を踏まえた指導計画例などを分かりやすく示した『金融教育プログラム』は、金融教育の基本書として全国で活用されている。16年には、次期学習指導要領の改訂の方向性、学識経験者や学校の先生方の意見を踏まえ、プログラムを約7年ぶりに全面改訂し、全国の教育委員会や学校に配布した。それ以外にも、各学校段階に応じた教材を作成・配布しており、金融広報中央委のホームページにも載せている」

「先生方から『実際の授業を見て参考にしたい』との要望も根強いことから、小中高や大学の先生方や教職を目指す大学生・大学院生を対象に、金融教育の重要性や具体的な実践ノウハウを伝える目的で『先生のための金融教育セミナー』を毎年開いている。参加した先生方に金融教育の授業を実際に受けてもらい、そのノウハウを自分の学校に持ち帰って実践してもらうことが狙いだ。この他、全国の幼稚園から高校までを対象として、毎年110校程度に『金融・金銭教育研究校』を委嘱している。研究校に対して、カリキュラム作成、講師派遣、授業で用いる教材・資料などの提供といった支援を行うほか、運営費用の一部補助も行っている」

「ゲームなどを使った学習プログラムの体験を通じて金融に親しんでもらう親子向けイベントも重要な施策だ。今年度からは『金融教育フェスタ』と銘打って、親子向けイベントと先生向けの金融教育セミナーとをセットで行うこととした。11月に広島で開催したが、親子連れで参加された方々だけでなく、セミナーに参加した先生方からも、学校で金融教育を進めるための手掛かりが得られたと好評だった」 「学校では、金融教育は『総合的な学習の時間』や土曜日の授業などで行われることが多い。主権者教育や法教育などライバルが多い中、授業枠を得るには学校関係者や教育委員会などへの不断の働き掛けが欠かせない。文部科学省では、次期学習指導要領の改訂に向けた審議を進めているが、今回、金融広報中央委の事務局員が初めて中央教育審議会のワーキンググループのメンバーとなり、議論に積極的に参加している。われわれの長年の取り組みが評価され、選んでいただいたと受け止めている」

多様化する国民の関心踏まえ情報発信=情サ局金融広報課(3)〔日銀探訪〕(2016年12月28日掲載)

児童・生徒や学生向けの金融教育は学校という場があるが、社会人を中心とする国民向けの金融知識普及活動では、まず人の集め方から考えなければならない。特に金融にあまり関心のない人にも興味を持ってもらうためには、さまざまな工夫が必要となる。日銀情報サービス局金融広報課の蔵本雅史課長は「就職や結婚、子供の誕生、家の購入といったライフイベントには必ずお金が関係してくる。そういったタイミングをとらえて必要な情報を発信していきたい」と戦略を語る。国民の関心が多様化していることもあり、常にアンテナを高くしてどのような情報が求められているかを探っているという。

「金融・経済情勢が目まぐるしく変化し、国民の関心の多様化が一層進む中、従来以上に国民の関心を意識した金融広報活動、情報発信が重要となってきた。金融広報中央委員会は、こうした環境の変化を意識しながらいろいろな施策を実施している。金融にあまり関心がない人にアピールするのは簡単ではないが、子供のうちからの金融教育に加え、就職や結婚、子供の誕生などお金への関心が高まるライフイベントをとらえて情報発信することが効果的と考えている」

「暮らしに役立つ身近な金融経済情報や金融教育関係の知識、イベントなどの情報を幅広く提供するに当たり、金融広報中央委のホームページは効果的なツールだ。2015年度のアクセス件数は1000万件超。他の金融関連団体のコンテンツにも簡単にアクセスできるのが売りだ。14年にはフェイスブックやツイッターに公式アカウントを開設し、新着情報の発信も始めた。現在、17年1月のリニューアルに向けて作業中であり、リニューアル後は利用者が求める情報をより簡単に入手できるように工夫したつもりだ」

「国民の方々に直接情報を伝達できる場である講演会への講師派遣にも力を入れている。全国の金融広報委員会が開催する金融・経済講演会に、弁護士、公認会計士、ファイナンシャルプランナー(FP)、大学教授、ジャーナリスト、作家などの著名人を講師として派遣。講演会は数百人規模で開催されるものもあり、15年度の派遣実績は約80回に上った。また、学校や公民館などで開かれる、より小規模の出前授業や講演会、勉強会などには、金融広報中央委が委嘱した『金融広報アドバイザー』を派遣している。このアドバイザーは、金融の基礎的情報や知識を広めることを目的にボランティアとして活動している方々で、FP、消費生活相談員、元教員、元金融関係者、主婦などさまざまな経歴の方が務めている。現在の委嘱者数は全国で480人程度。15年度は約3800回派遣した」

「大学や公民館などでの出前授業や勉強会で使ってもらうため、各種パンフレットを作成し、無償で配布している。近年は、『金融リテラシー・マップ』を基に各年齢層に応じて内容をアレンジした『知恵シリーズ』を作成している。大学生向けの『大学生のための人生とお金の知恵』、成人式配布用の『新成人のための人生とお金の知恵』、若手ファミリー層向けの『ママとパパのための幸せとお金の知恵』、中高年層向けの『大人のためのお金と生活の知恵』と取りそろえた。金融広報中央委の広報誌『くらし塾 きんゆう塾』も四半期ごとに発刊し、全国の図書館や公民館などに配布している」

「われわれの活動のベースとなる情報収集という目的に加え、金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)を高めることの大切さを国民に広く知ってもらう狙いもあり、調査・情報収集活動にも注力している。『家計の金融行動に関する世論調査』は、家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握・公表することを通じ 1)金融知識を身に付けることの大切さを広報 2)家計行動分析のための調査データを提供―する目的で、毎年実施している。16年には、国民の金融リテラシーの状況を把握するため、全国の18歳以上の個人を対象に『金融リテラシー調査』を行った。わが国の人口構成とほぼ同一の割合で2万5000人のモニターを選び、海外との比較や行動経済学に基づく分析などを可能にしたのが特徴だ。『子どものくらしとお金に関する調査』も5年ごとに実施している」

「金融リテラシー調査によると、金融教育を受けた経験がある人は、金融商品の購入時に他の金融機関や商品と比較するなどの望ましい行動を取る比率が高く、また『子どものくらしとお金に関する調査』でも、金融教育を受けてお小遣い帳を付ける習慣を持つ子供は、お金を扱う上で望ましい行動を取る傾向があることが分かった。お金に関する知識や望ましい行動特性などを身に付ける上で、金融教育が有効かつ必要であると言えるだろう」 「当課は、課員数は多くないが、担当する業務は多種多様であり、相互に協力し合いながら効率的に取り組んでいく必要があることから、課内のコミュニケーションの維持・向上が重要であると考えている。オフィシャルな会議はもとより、ちょっとした立ち話から効果的・効率的な業務運営につながることもある。もう一つ意識しているのはリスク管理。多数の参加者を迎えるイベントや施策が多く、これらを計画通り安定的に運営するためには、事前に想定されるリスクに対していかに準備しておけるかが重要だ」

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