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質問アジア・ボンド・ファンド(ABF)とは何ですか?

教えて!にちぎん

回答

1997年(平成9年)に発生したアジア通貨危機以降、危機の教訓から、アジア債券市場の育成に向けた機運が高まりました。これを受けて、EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)を通じた中央銀行間協力の一環として、2003年(平成15年)6月にアジア・ボンド・ファンド(ABF、Asian Bond Fund)の創設が発表され、アジアの国債および政府系機関債に投資する債券ファンドが組成されました。

アジア債券市場育成の狙い

アジア通貨危機の原因としては、いくつかの点が指摘されていますが、その一つとして、アジア諸国の企業が設備投資のような長期間にわたる支出を行う際、資金調達の面で、海外の金融機関が貸し出す外貨建ての短期資金に傾斜していたこと(「(期間と通貨の)ダブル・ミスマッチ」と呼ばれます)が挙げられます。もし、これらの企業が、直接金融を通じて、自国通貨建ての長期資金を調達できていれば、混乱の度合いは、より軽微なものにとどまっていた可能性があります。つまり、自国通貨での債券市場が発達すれば、企業にとって資金調達手段の選択肢が広がり、「ダブル・ミスマッチ」の解消に繋がる環境整備が進むことになります。

このほか、債券市場が重要な理由として、(1)幅広い金融資産の価格形成における基礎(ベンチマーク)としての役割を果たす(特に国債市場)こと、(2)民間の市場参加者に対し、資金運用や金利リスクのヘッジ手段を提供すること、(3)中央銀行に対し、金融調節を円滑に実行する場や、先行きの経済・金融情勢に関する市場参加者の期待が映し出される場を提供すること、などが挙げられます。

アジア・ボンド・ファンドに関する取り組み

アジア・ボンド・ファンドには、「ABF1」と「ABF2」の2つの枠組みが用意されています。いずれも予め定めたインデックスに沿って運用する債券投資信託で、その投資対象は、オーストラリア、日本、ニュージーランドを除くEMEAP加盟8か国・地域の政府および政府系機関が発行する債券です。

両者の異なる点として、ABF1の対象となる債券が米ドル建てであるのに対し、ABF2は現地通貨建てとなっています。また、ABF1では、参加者はEMEAPメンバーの中央銀行のみに限定されていましたが、ABF2では、各国・地域の債券市場の整備状況を踏まえて、民間投資家にも開放することが企図されていました。その狙いどおり、2011年(平成23年)5月には、ABF2のすべてのファンドが民間投資家に開放されました。その後、2016年(平成28年)7月には、EMEAPメンバー中央銀行は、ABF1が所期の目的を達成したと判断したことから、ABF1を償還し、その償還金をABF2に再投資することを公表しました。

2018年(平成30年)6月には、EMEAPメンバー中央銀行は、ABF2のうち、汎アジア債券インデックス・ファンド(PAIF、Pan-Asia Bond Index Fund)が保有する債券の貸し出しを開始することを公表しました。この取り組みにより、現地通貨建て債券貸借市場の発展と、域内短期金融市場の機能強化に資することが企図されています。

関連ページ

アジア・ボンド・ファンドに関する日本銀行の公表資料については、EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)のページをご覧ください。

参考