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総裁記者会見要旨 2018年4月27日(金)
午後3時半から約55分

2018年5月1日
日本銀行

(問)本日の金融政策決定会合と、同時に公表された展望レポートの概要についてご説明下さい。

(答)本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆる「イールドカーブ・コントロール」のもとで、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。また、長期国債以外の資産買入れに関しては、これまでの買入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。

本日は、展望レポートを決定・公表しましたので、これに沿って、先行きの経済・物価見通しと金融政策運営の基本的な考え方について説明します。

わが国の景気の現状については、「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」と判断しました。

やや詳しく申し上げますと、海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いています。そうしたもとで、輸出は増加基調にあります。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けています。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しています。住宅投資は弱含んで推移しています。この間、公共投資は高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境は、極めて緩和した状態にあります。

先行きについては、2018年度は海外経済が着実な成長を続けるもとで、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられます。2019年度から2020年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれます。2019年度までの成長率の見通しを、従来の見通しと比べますと、幾分上振れています。

次に、物価面では、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格の影響を除いてみると、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて、弱めの動きが続いています。もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も高まるとみられます。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。

2019年度までの物価見通しを、従来の見通しと比べますと、概ね不変です。すなわち、2019年度頃に2%程度に上昇率を高めていくという、日本銀行の中心的な見通しは、前回の展望レポートから変わっていません。

リスクバランスについては、経済に関しては、2018年度はリスクは概ね上下にバランスしていますが、2019年度以降は下振れリスクの方が大きいとみています。物価に関しては、下振れリスクの方が大きいとみています。物価面では、マクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に高まるとみられるもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要があります。

なお、展望レポートについては、片岡委員が、消費者物価の前年比について、見通し期間中に2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いほか、金融緩和のコミットメントを維持する観点から、引き続き、2%程度に達する時期を明記すべきとして、反対されました。

コミットメントについて申し上げれば、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することとしており、この点は、これまでと変わりません。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。また、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。

(問)展望レポートから2%目標に達する時期の記述が今回からなくなった点です。今まで、早期実現のために大規模緩和をし、かつその達成する時期も、一応明示してきたこととの整合性がとれなくなるのではないかというように受け取れます。これについてご説明下さい。

(答)これまで展望レポートにおいて、2%程度に達する時期の見通しを記述してきましたが、これはあくまでも見通しであって、その変化と政策変更を機械的に結びつけているわけではないという点は、これまでも繰り返し説明してきたところです。

もっとも、市場の一部では、こうした見通しを2%の達成期限ととらえたうえで、その変化を政策変更に結びつけるといった見方も根強く残っています。また、現実の物価上昇が予想物価上昇率に波及するまでに相応の時間がかかる可能性があるなど、物価の先行きに様々な不確実性がある中にあって、計数のみに過度な注目が集まることは、市場とのコミュニケーションの面からも必ずしも適当とはいえません。

このため、今回の展望レポートから、物価の先行き展望について、これが達成期限ではなく見通しであることを明確にするため、記述の仕方を見直すこととしたわけです。

なお、ご案内の通り、展望レポートの後ろに、従来と全く同様に、政策委員の大勢見通し、あるいは経済・物価に関するリスクの見方も掲載されています。

(問)時期を示して、いわば短期決戦型で2%を達成していくわけではないのだということになると、現状の副作用も伴うような大規模緩和を続けなくてもよいのではないかと、色々な見方がでてくるとは思うのですが、そういう中でもやはり今回落とした、この理由について、もう一度ご説明頂けますでしょうか。

(答)ご案内の通り、2013年4月に、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する、という際に、2年程度を念頭に置いて「量的・質的金融緩和」を始めたわけですが、その後は、そういった特定の達成時期を念頭に置いて金融政策を運営しているわけではありません。この点は、2016年9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のところでは、更に明確になっています。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指して政策運営を行っており、その点は、今後とも全く変わりはありません。従って、現状、わが国の物価は景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いていますので、そうした点を踏まえると、日本銀行としては、現在の「金融市場調節方針」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが引き続き適当であると考えています。

(問)2%の達成時期を削除した点についてですが、先程総裁は、市場との対話、コミュニケーションの点だとおっしゃいました。これは、時期を明示することによって、市場での追加緩和期待が強まる、高まることを抑えたいという意図があるのでしょうか。

(答)先程申し上げたように、現在の金融政策は、特定の達成時期を念頭に置いて運営されているのではなく、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという大きな目標のもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムが維持されているかどうかということを、毎回の金融政策決定会合で丹念に点検するものです。モメンタムが失われつつあるというようなことになれば、当然追加緩和を検討することになりますので、金融政策運営は、従来と全く変わりはありません。最初に申し上げた通り、展望レポートに2%の「物価安定の目標」が達成される時期を文章で書くことによって、それと金融政策の変更がダイレクトにリンクしているように誤解されると、日本銀行の政策委員会の金融政策スタンスが誤解されるおそれがあるということで、削除したということです。

先程申し上げた通り、経済・物価の見通しについては、政策委員の大勢見通し、更にはそれぞれの政策委員の経済・物価に関するリスク評価をきちんと示しています。

(問)前回まで2019年度頃に2%という目標があったわけですが、総裁自身は今も2019年度には2%に達する、もしくはそれくらいのレンジにいくと思っていらっしゃるのでしょうか。

(答)政策委員の大勢見通しの数字が示されていますが、私を含めて9人の委員のそれぞれについて、具体的に誰がどういう見通しを、ということは示していませんので、私だけ特別なことを申し上げるのは避けたいと思いますが、2019年度頃に2%程度に達する可能性が高いと私は思っています。ただ、それぞれの年度の具体的な経済見通しや物価見通しについて、他の8人の委員の方は言わない中で、私だけ申し上げるのは適切でないと思います。

(問)今の部分も含めてお聞きしたいのですが、まず2%の達成時期の記述がなくなりましたが、日本銀行の金融政策における目標であることについては変わりがないのか、ということを確認させて下さい。

(答)それは全く変わりありません。2013年1月に正式に決定して以降、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するということは変わっていません。また、これは2013年1月の政府との「共同声明」でも謳われていることでありますし、「共同声明」を再確認し、堅持することは、政府にも申し上げています。

(問)そのうえで、今回の展望レポートで、先程おっしゃった政策委員の中心的見通しで、2019年度、2020年度のCPIは1.8%ということで、やはり2%と比べると少し力強さに欠けるというのが正直なところだと思うのですが、それでも2019年度頃には2%程度に達する可能性が高いと黒田総裁はお考えなのでしょうか。また、その理由についても少し頂けると助かります。

(答)数字はその年度の平均ですので、年度の中で一定の動きはあり得ると思います。2%程度に達するという見通しであるといってよいと思いますが、これはあくまでも見通しですので、金融政策運営のための達成時期のようなものではありません。欧米の中央銀行も経済見通しや物価見通しを示していまして、過去の動向、特にここ数年の動向をみますと、皆、物価の見通しをずっと先送りしてきています。それはある意味で当然でして、原油価格が110ドル、120ドルから30ドルを割るくらいまで大幅に下落したというのは世界的な現象ですし、先進国の状況をみましても、経済成長は順調で、労働需給も引き締まっているわりには、賃金や物価の上昇が従来と比べるとやや鈍い状況にあります。また、いわゆるフィリップスカーブがシフトしたのではないか、あるいはフラット化したのではないかという議論も世界的に行われております。そういう意味で、経済や物価の見通しは一定の不確実性があるものですので、従来同様、政策委員の大勢見通しを示すとともに、政策委員の経済・物価見通しのリスク評価というものも具体的に示しているところです。

(問)展望レポートをみていますと、経済・物価の先行きについてのリスクをかなり意識しているという印象を受けたのですが、2%の達成時期の見通しに関する文言を削除したというのは、下振れリスクをかんがみて、今後またこの見通しを先送りしなくてはならなくなるのではないか、そうすると7度目の先送りなどと書き立てられるというのが嫌で、それで今のうちに丸ごと文言自体削除してしまおう、ということになったのではないかと勘繰りたくなってしまうのですが、実際のところ如何なのでしょうか。

(答)そうした深い意味があって行ったわけではありません。先程来申し上げている通り、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した時には、2年程度を念頭に置いて金融政策を行ったわけですが、その後は一定の達成時期というものを念頭に置いて金融政策運営をしているわけではありません。もっとも、市場の一部から、見通しと政策とが直接的にリンクしているように誤解されているようなので、そこはコミュニケーションの問題として、日本銀行の政策委員会が考えている政策スタンスをより適切に市場に伝えたいということで、こうしたことになったわけです。

私どもがみるところでは、欧米の中央銀行も、見通しは示していますが、達成時期を文書の中でコミットするような形にはしていないようです。見通しというのは一定の不確実性を伴いますし、変化することはあり得るわけですが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという私どものコミットメントに、変化は全くありません。

(問)先行き経済の下振れリスクの中で一番警戒している要因というのは何でしょうか。

(答)日本経済、世界経済についての議論の中で、色々なことがあると思いますが、世界的な意味ではやはり保護主義の影響が出てくるのではないかとか、あるいは市場が予想しているよりも早く金融引締めが米国等で起こるのではないかとか、そうしたリスクというのは大きく報道されていますし、先日の G20やIMFの会議でも議論がありました。また、地政学的リスクやその他のことも議論になっています。それらは展望レポートの中にも含まれています。

わが国については、需給ギャップは着実に改善し、失業率も下がっている一方で、予想物価上昇率をみると、足許の物価上昇にあわせて短期の予想物価上昇率は若干上がってきているものの、中長期の物価上昇予想は殆ど動いていませんので、予想物価上昇率の動きがどうなっていくかについては十分注意してみています。わが国固有のリスクともいえる、デフレマインドがなかなかなくなっていかない点には十分注意していく必要があると思っています。

(問)先程、黒田総裁ご自身は、2019年度頃に2%に達すると考えているというご説明だったのですが、これまでは、色々な公の場で質問があった時などは、日本銀行としての考え方として示されていたように、所信表明でも、再任会見でもおっしゃっていたように思うのですが、今後はそのような質問が出た場合には、個人的な考えでというような言い方で、日本銀行としての見解を示さないということなのでしょうか。今回、2020年度に中央値で1.8%というのが新しく出ましたが、これを素直に読めば、少なくとも2020年度に2%を達成すると思っている委員は多くないということになると思います。これを先送りというかは別にして、また目標達成は遠のいたのかな、と受け止めるのが素直な見方かと思いますが、如何でしょうか。

(答)それは、そうではありません。展望レポートの表をみて頂いても分かるように、2019年度の物価見通しは、前回も1.8%、今回も1.8%だったわけです。そうしたもとで、2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高いということを申し上げていたわけです。ただ、それを展望レポートの中で文章で記述すると、金融政策と直接リンクしているように誤解されるおそれがあるということで削除しただけです。2019年度頃に2%程度まで上昇率を高めていくという日本銀行の中心的な物価見通しも、前回の展望レポートから変わっていません。

(問)日本銀行としての意図がどうであれ、政策変更と結びつけられたくないというのは分かるのですが、それでも、時期を明示しないで削除したということ自体が、市場とのコミュニケーションということになるのだと思います。日本銀行が2019年度頃の達成をあきらめたとか、そのような受け止めも当然出てくると思います。そうすると、人々の期待に働きかけるという点と、デフレマインドを払拭するという点では、ネガティブな効果が出るのではないかと思いますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

(答)そこは、色々な議論があり得るとは思いますが、政策委員会としての政策意図を明確に市場にコミュニケートすることが一番重要であって、そういう意味で、誤解や誤認があっては好ましくないので、記述の仕方を変えたというだけで、金融政策のコミットメントは全く変わりませんし、従来行ってきている大規模な金融緩和を粘り強く続けるということについても、何ら変わりはありません。そこは、しっかりとコミュニケーションを図っていくという必要を私も感じていますし、こうした場も含めて、しっかりと考え方を説明してまいりたいと思っています。

(問)また記述削除の件ですが、なぜ今回だったかという点についてお聞かせ頂けますでしょうか。あわせて、今回、体制が変わって最初の会合ではありましたが、そういったことも影響していたのかということもお聞かせ下さい。

(答)私自身は、体制が変わったことが今回の決定に影響したという感じは持っていません。それよりも、従来、特定の時期を念頭に置いて金融政策を行っているわけではないということを申し上げてきましたし、特に2016年9月に導入した現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」においては、その点をかなりはっきりと申し上げてきたわけですが、依然として一部にそういった、ダイレクトに金融政策と見通しを結びつける考え方が非常に根強くあるということなので、今回、そうした誤解がないように、むしろはっきりとさせたということです。コミットメントについては、従来からはっきりしていますし、特に2016年9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入の際には、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという、「オーバーシュート型コミットメント」も導入したわけです。そういったコミットメントは変わっていません。

(問)先程のご説明の中で、最も注意している点として、中長期の予想物価上昇は緩慢であると、そういうことを挙げられました。やはりこれだけ好景気が長く続いている中でも、なかなかインフレ期待が上がらないのは、需給が改善して、物価に波及して、それが期待にいくのである、というような、日本銀行がご説明されるメカニズムのどこかに齟齬が生じているのではないか、そういう可能性があるのではないかという面もあると思うのですが、緩慢な理由も含めて、総裁は今どのようにお考えか、お聞かせ下さい。

もう1点は、達成時期の表記を削除したわけですが、これは事実上のローリングターゲットに変わったのではないかという見方もできると思いますが、その点は如何でしょうか。

(答)後者から先に申し上げますと、特定の達成時期を念頭に置いて金融政策を運営しているわけではないということをローリングターゲットだとおっしゃるのかもしれませんが、私どもとしては、カテゴライゼーション云々よりも、他の主要中央銀行と同様に、物価安定の目標を実現すべく金融政策を進めている中で、何か達成時期というものを決めて、それにあわせて毎回の金融政策を決定していくという形ではありませんので、誤解が生じないようにしたということです。何回も申し上げますが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するというコミットメントには、全く変わりはありません。

前者の期待形成については、基本的に、適合的な期待とフォワードルッキングな期待と2つあると思います。そのうえで、この両者が効いてくることを期待しているわけですが、米国のように、2%の物価安定目標の周りに予想物価上昇率がしっかりとアンカーされている国と違って、わが国の場合は、フォワードルッキングな期待形成が弱いようにみられます。2016年9月の「総括的な検証」でも詳しく述べているわけですが、需給ギャップが改善し、実際の物価上昇率が徐々に上がっていく中で、適合的に予想物価上昇率も上昇し、これがまた実際の物価上昇率にプラスに反映されていく、ということの重要性を再認識させられて、その方向で進んできたわけです。これまでのところ、一定の効果は上がっていると思いますが、先程申し上げたように、物価が上がるにつれて短期の物価予想は上がっていっても、中長期の3年、5年、10年といった予想物価上昇率は──かつてのように下がっていくという感じではなく、下げ止まって安定していますけれども──なかなか上がってきません。そこはどうしてか、と言われると、デフレマインドが強いとか、そういうことになると思います。

ただ、様々な指標や調査をみると、そこに若干の動意がみられることも事実です。慎重な賃金・価格設定スタンスが残っているとはいえ、現在の集計では、今年の春闘は昨年より少しよくなっていて、しかも中小企業においては特によいようですし、物価についても、サービス業について一定の動意がみられるということもあります。まだ色々なアンケート調査に具体的に出てきていないかもしれませんが、企業の賃金・価格設定スタンスに少し変化が出てきているということであれば、やはりその背後に、企業あるいは家計の物価予想についても、何らかの動きが出てきている可能性があると思います。ただ、現時点で様々なアンケート調査や、市場の動きからみた中長期の予想物価上昇率は安定していて、まだ上がってきていないということは事実で、今後とも十分注意してみていきたいと思っています。

(問)達成時期の削除の件についてですが、2016年9月の段階で、多くの市場関係者の間では、2%自体が中長期的な目標になったのではないか、という受け止め方が既に多かったと思います。今回、達成時期の見通しまで削除すると、まさに名実ともに中長期的な目標になったのではないか、とのとらえられ方を当然されると思うのですが、そこは全くそうではないということなのでしょうか。

(答)2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指しているという点は、日本銀行としては全く変わりありませんし、今後ともこの方針に変わりはありませんので、中長期的な目標に変更したということではありません。その点は、今後とも引き続き丹念に説明していく必要があると思っています。

(問)「できるだけ早期に2%」というのは、もともとは「共同声明」に盛り込まれていることなので、それを掲げざるを得ないと思うのですが、それがあることによって、例えば副作用が顕在化してきているとか、そういう時でも政策の修正ができにくいのではないでしょうか。ある意味で「できるだけ早期に」という建前自体が自らを縛ることになっているのではないか、という指摘があると思うのですが、その辺りどのように考えていらっしゃいますか。

(答)副作用については、金融仲介機能が低下していないかということと、いわゆる資産バブルその他金融の行き過ぎはないか、という2つの面があると思うのですが、いずれも金融システムレポートで示している通りで、まず、金融機関の金融仲介機能に現時点で何か障害が出ているということはありません。銀行の貸出も順調に伸びていますし、特に地域金融機関の貸出は順調に伸びています。他方で、過熱や金融の行き過ぎはないかということも丹念に調査していますが、この点についても現時点ではそのようなことにはなっていません。ご指摘の副作用が、金融システムに対して好ましくない影響が出てきていないかということであれば、現時点ではそのようなことにはなっていませんので、あくまでも2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために進んでいくということです。現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを決めた2016年9月の時からはっきりと言っているように、経済・物価・金融情勢を総合的に勘案したうえで、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現する、という方針ですので、金融情勢というものも十分勘案しながら、2%の「物価安定の目標」に向けて金融政策を運営していくということには変わりはありません。

(問)「2%をできるだけ早期に」という言葉自体が自らを縛っている、足かせになっているということはないですか。

(答)そのような感じは持っていません。あくまでも日本銀行として2013年1月に決定した2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するということは変わっていませんし、それが何か金融政策の運営上、足かせになっているということはないと思います。

(問)期限の件ですが、これまで見通しを期限ととらえられると誤解が生じてよくないというご説明でしたが、誤解が生じるとなぜよくないかということについてお伺いします。今までのご説明の中でも、市場の中でそうとらえている人がいるということだったのですが、市場での売買にマイナスに影響するとか、達成できないから追加緩和が必要だというように金融政策へのプレッシャーが入るとか、あるいはデフレマインドから脱却できなくなるくらい景気を冷やしてしまうとか、具体的に考えると色々あるのですが、どのようなところで誤解が生じると悪影響があるとお考えでしょうか。

(答)市場の一部に、達成時期を政策委員会として明示してそれに向けて金融政策を運営している、という誤解が生じると、見通しが変化したときには金融政策も当然変化する、という誤解が生じて、それが政策変更に対するプレッシャーになるのではないかということについては、そういうこともあるかもしれませんが、私自身はそういう感じはあまり持っていません。むしろ市場やその他に余計な影響を与えてしまってもよくないだろうということです。何よりも、政策委員会としてどういった金融政策のスタンスで臨んでいるかということを、正しく市場に理解してもらうことが、長い目でみて、金融政策の効果を高めることになると信じているからこそ、そういった誤解が生じることのないような書き方にしたということです。

(問)物価の見通しをみると、2019年度、2020年度が1.8%、もちろん総裁がおっしゃったように平均でということではあるのですが、ただ下方リスクが高いと、その中で2019年度、2020年度になっても安定的に2%を上回るという数字ではないと思います。もちろん2020年度の後半とかにあるのかもしれないのですが、これを考えると2020年度になっても日本銀行はマネタリーベースをまだ拡大し続けていると予想できると思うのですが、2020年度になっても日本銀行は出口政策にまだ取り掛かっていない可能性があるということなのでしょうか。

(答)大変スペシフィックなご質問ですが、これは見通しですから、見通しの通りになった時の金融政策はどうかということだと思います。私どものコミットメントは非常にはっきりしていて、「イールドカーブ・コントロール」にしても、「オーバーシュート型コミットメント」にしても非常に明確に示しています。そのうえで、2019年度、2020年度の1.8%という数字は、年の平均ですので、その中でどういう動きがあるのか、またどういう動きが予想されているのかというのは、各政策委員の頭の中にある話ですので分かりませんし、実際に2019年度、2020年度になったときにどういう状況になっているかということにもよると思います。「オーバーシュート型コミットメント」で、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を継続するという意味では、かなり粘り強く金融緩和を続けることにコミットしているのは事実です。ただ、具体的に今言われたような形になるかどうかというのは、その時の経済・物価の状況次第だと思います。

(問)今回の会合で若田部副総裁がどういった行動をされるかというのは市場の一部で注目があったと思うのですが、総裁はこれまで何回か、決定会合での副総裁の役割について言及されてきましたが、今日、副総裁全員、執行部の中で何の反対もなく済んだということについて、総裁はどういったお気持ちなのでしょうか。

(答)今回の決定会合における色々な議論は、ご承知のように、主な意見や議事要旨により、今後スケジュールに従って発表されますし、具体的に誰がどう言ったということは議事録で将来公表されますので、若田部副総裁も含めて、各人がどのようなことを言われたとか、それに対してどのように考えているかということを申し上げるのは避けたいと思います。従来申し上げている通り、日本銀行法により、政策委員会の9人のメンバーは、金融政策の決定についてはそれぞれ独立に議論し、決定に参加するということですし、他方で両副総裁はその決定された金融政策を執行する面では総裁を補佐することになっていますので、そういった形に変わりはないと思いますが、具体的に云々するのは僭越だと思いますので遠慮させて頂きます。

(問)先程の質問で、なぜ今、2%に達する時期を削除したかについて、納得のいく答えが得られませんでした。今回、コミットメントのように受け取られて、また見通しを変更すると政策変更が期待されるということを避けたいのは分かりました。ただ、2回か3回見通しを先送りしたくらいだったら分かるのですが、もう既に6回もやっていて、なぜそれが今まで分からなかったのかというのが非常に疑問です。これまでもやろうと思っていたけど、何となくきっかけがつかめずに続けてきてしまったものなのでしょうか。それとも、先程の体制が変わったからというのと同じですが、何か状況が変わってきて、あるいは何かこれからやりたいことがあって、ちょっとこういうことはこの先困るなということなのでしょうか。とにかく、なぜ今までやらなかったのかというのが、解けない謎です。

2点目は、これまで6回も先送りされて、1回1回、日銀から理由が示されてきました。またいつまでです、と先延ばしした時に、人々は、期待を1回1回抱いて、裏切られ続けてはきましたが、でもやっぱりこのような理由で次はこうですと言われると、もう1回信じてみようかなという気になった人もいるかと思います。それが今回そのようなものがなくなってしまいます。先程、短期とか中長期とかそんなことは一切ないとおっしゃっていたのですが、今回、大体いつまでという時間軸がなくなりました。先程総裁は、最初の2年はこの2年でやるというコミットメントに近いものだったが、その後は見通しだといいました。見通しにしても、何となくあった方が、コミットメントが強いような感じがします。時間軸が全くなくなった時に、先程総裁もそこは議論のあるところだと、どれだけその2%を信じられるかどうかについては議論があるところだとおっしゃいましたが、逆にその時間軸を全くいわないことによって生じるメリット、例えばより柔軟な金融政策が採れるというようなメリットと、デメリットについてどのようにお考えになっているか、教えて下さい。

(答)2つのご質問は、いずれも関連していると思いますが、前段については、何か特定の今後の政策を念頭に置いて行ったわけではありません。先程から申し上げているように、市場の一部に誤解を招くような表現は避けようという単純な話です。なぜ今なのかといわれましたが、それはいずれかの時点で行われるものが、今という時点になったということで、何か深い意味があるわけではありません。

後段の点については、2%の「物価安定の目標」へ向けたモメンタムが維持されているかどうかということを毎回丹念に検討して、必要に応じて政策の調整を行うということです。2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するというコミットメントには全く変わりはありません。むしろ誤解が生じるような表現をすることによって、市場に余計な影響を与えたり、金融政策に対する信認にマイナスになったりすることは避けたいということで変えた、ということです。

(問)これまでのご説明の中では、結局、達成時期が変化した時に金融政策も変化するといったような機械的なリンクをされたくないと、正しい政策スタンスを理解してほしいということだったのですが、そうなると、いま日銀が考えている政策スタンスというのは、当初のように何が何でも2%ではもうない、ということでよろしいのでしょうか。

次に、そうなった場合に、「できるだけ早く」といった言葉の意味がよく分からないのですが、「できるだけ早く」というのは何と比べて「できるだけ早く」ということなのでしょうか。

(答)2つのご質問は関連すると思うのですが、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際は、「できるだけ早く」というものを、「2年程度を念頭に置いて」というようにいわば解釈して、おっしゃる通り、かなり早急に、2%の「物価安定の目標」を達成すべく大胆な金融緩和を始めたわけです。その後、原油価格の動きその他色々あり、それから、金融システムに対する影響というものも十分考慮しなければなりませんので、そういったことを踏まえて、2016年9月から現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」というフレームワークを設定し、そのもとで経済・物価・金融情勢を総合的に勘案して、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが維持されているかどうかに応じて金融政策を調整していくという形にしています。ですから、現在は、2013年4月の時のように、2013年4月から2年程度といういわばスケジュールを念頭に置いて金融政策を行っていくというような形ではありませんが、「できるだけ早く」という点に全く違いはありません。依然として、できるだけ早く2%の「物価安定の目標」を達成するというコミットメントは全く変わりないと考えています。

以上