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総裁記者会見要旨 2019年6月20日(木)
午後3時半から約60分

2019年6月21日
日本銀行

(問)本日の金融政策決定会合の決定内容と背景となる経済・物価情勢についてご説明をお願いします。

(答)本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとで、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。その際、長期金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得るものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施します。

また、長期国債以外の資産の買入れに関しては、これまでの買入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITの買入れについては、年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動し得るとしています。

なお、今回の決定会合では、前回4月の会合において実施することとされた「強力な金融緩和の継続に資する諸措置」に関し、日本銀行適格担保の拡充、および成長基盤強化支援資金供給の利便性向上にかかる基本要領の改正等について決定しました。

次に、経済・物価動向について、説明します。わが国の景気の現状については、「輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している」と判断しました。

やや詳しく申し上げますと、海外経済は、減速の動きがみられますが、総じてみれば緩やかに成長しています。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、弱めの動きとなっています。一方、企業収益や業況感は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて良好な水準を維持しており、設備投資は増加傾向を続けています。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しています。住宅投資は横ばい圏内で推移しています。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。この間、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境については、極めて緩和した状態にあります。

先行きについては、わが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられます。国内需要は、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿ると考えられます。輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられます。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%台後半となっています。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しています。先行きについては、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。

リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられます。こうした海外経済を巡る下振れリスクは大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要があります。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。政策金利については、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。

(問)2%の物価安定目標についてお尋ねしますが、先日の国会で安倍総理は、もう既に完全雇用を目指すという意味においては、金融政策も目標を達成しているという答弁をされていて、その前の麻生大臣も、2%の目標にこだわる必要はないという趣旨の発言をしておられます。こうした発言からみると、政府側の2%の目標達成に向けた意思というのが薄れているようにも感じられるのですが、日銀として、達成の実現に時間がかかるもとで、この目標の実質的な位置付けというのに変化がないのかどうか、改めてご見解をお願いします。

(答)この2%の「物価安定の目標」は、2013年1月に日本銀行政策委員会で決定した目標ですが、これは第1に統計上のバイアス、第2に政策対応力の確保などを考慮したうえで、第3にいまや2%の「物価安定の目標」というのはグローバルスタンダードになっていますので、その目標を目指すことが長い目でみた為替レートの安定にも資することから、決定したものです。物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、その実現を目指すことが必要と考えていることに変わりはありません。

もちろん、日本銀行も、これまで何度も申し上げてきた通り、単に物価だけが上がれば良いと考えているわけではありません。企業収益や雇用の改善、賃金の増加とともに、物価上昇率が緩やかに高まっていく好循環が続いていく状況を作り出すことが、物価安定のもとでの持続的な成長にとって重要と認識しています。

こうした認識のもと、日本銀行としては、引き続き現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当と考えています。

(問)追加緩和の手段についてですが、FRBによる利下げの観測も拡がる中で、本日、日本の長期金利は-0.17%まで一時下がり、為替も107円台半ばまで円高が進んでいます。こうした中で、日銀として採り得る追加緩和についてですが、大規模緩和の導入から6年以上が経って、金融機関の体力も低下している中、新たな追加の措置に対する耐性というのが低下しているようにも思えるのですが、コストに照らしてベネフィットが大きい、そういう手段の余地は限られているようにも見受けられるのですが、その辺りのご見解を改めてお願いします。

(答)日本銀行は、従来から政策の効果とともに、金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響なども考慮しながら、金融政策を運営してきています。こうした点に関して、現状、金融機関は充実した資本基盤を備えていますし、現時点では、低金利環境の継続によって、金融仲介機能が停滞方向に向かうといったリスクは大きくないと判断しています。また、国債や株式市場の機能度も、全体として維持されていると考えています。

その一方で、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは、名目金利から予想物価上昇率を差し引いたいわゆる実質金利を引き下げることによって、経済活動の改善に大きく寄与していると考えています。

日本銀行は、これまでも、政策のベネフィットとコストを比較衡量しながら適切に対応してきていますし、これからもそういった対応は可能であると考えています。

この点は、仮に将来、2%に向けたモメンタムが損なわれて、追加緩和を検討するような場合も同様であり、これまで申し上げてきた通り、追加緩和の手段としては、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、様々な対応が考えられますが、日本銀行としては、これらを組み合わせて対応していくことを含め、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していく方針に変わりはありません。

(問)アメリカのFedが、昨日の会合で政策金利については維持をしましたが、将来の利下げについて示唆をするような発言をされました。また、ECBも、利下げの検討を表明したわけでして、主要国の中央銀行で緩和姿勢が強まってきたということは言えるのだろうと思います。一方で、日銀は、今回の決定会合で金融政策について大規模緩和を維持したわけですけれども、今後、実際に米欧が利下げに踏み切った場合、これに追随をしていくお考えはあるのか、あるいは近い将来、緩和に向けた追加策を打つ必要性が増していると黒田総裁はお考えなのかどうか、お願いします。

(答)日本銀行も含め、どの中央銀行も、自国の経済・物価の安定を実現することを目的として、それぞれの置かれた状況に応じて最も適切な政策運営に努めていると思っています。もちろん、主要国の金融政策運営が、国際金融市場あるいは世界経済に影響を及ぼすという可能性は十分あり、その大きさは、その時々の経済情勢や市場環境によっても異なり得ると思っています。日本銀行としては、こうした点も注意深く確認しながら、経済・物価・金融情勢を踏まえて、毎回の金融政策決定会合において、適切な金融政策運営を行っていく方針であり、その際、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれるような状況になれば、躊躇なく追加緩和を検討していくことになると思っています。

(問)長期金利が本日、-0.16%と2年10か月振りの低水準をつけたわけですけれども、現在の金融調節方針ですと、±0.1%の倍程度という表現をされていましたが、このレンジを超えることは許容され得るのか、お考えをお願いします。

(答)ご指摘のように、金融市場調節方針に関して、長期金利の水準については、経済・物価情勢に応じてゼロ%程度から上下にある程度変動し得るということ、その変動幅については、概ね±0.1%の倍程度というものを念頭に置いているということを申し上げています。このように、そもそも金利のある程度の変動を許容しているのは、金利形成の柔軟性を高めることで、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減し、現在の政策枠組みの持続性を強化することが狙いです。何か金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はなく、上下にその倍程度と申し上げている通り、ある程度弾力的に対応していくことが適当だと考えています。

(問)先程の質問に追加で質問させて頂きたいのですが、世界経済の逆流、それから変調というのを、ECBですとかFRBが警戒している中で、こうした動きというのを実際決定会合でどんなふうに議論されたのでしょうか。

また、この世界経済の変調を受けて、今日文言で新しく「海外経済を巡る下振れリスクは大きいとみられ」ということも追加されているように、日銀もそろそろ追加緩和を検討せざるを得ない局面になってきているとみていらっしゃるのでしょうか。

(答)世界経済の動向について詳しく議論したことは事実ですが、具体的にどのような議論があったかということについては、それぞれ開示されるスケジュールが決まっていますので、そちらをご覧頂きたいと思います。

確かに、今回の公表文では、従来よりも詳しく、世界経済のリスクを示していまして、私どもも、世界経済について下方リスクが強まっていることは認めています。今回、具体的にそのリスクについて述べるとともに、それに対して、金融政策運営の観点から、こうした重視すべきリスクを今後とも十分点検して、経済・物価・金融情勢を踏まえて、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために必要な政策の調整を行うと申し上げています。

ただ、その一方で、先日のG20での議論でも、その際発表されたIMFの世界経済見通しでも、今年の後半から来年にかけて世界経済は成長を加速していくというメインシナリオは変わっていません。リスクが高まっているということは事実ですが、メインシナリオが狂ってきて今の時点で世界経済の成長が回復しないとか、不況に陥るおそれがあるとか、そういうことではないと考えています。なお、米国経済について、FRBがFOMCで議論した後に経済見通しを公表していますが、よくみると、米国の経済見通しは、成長率がむしろ上方修正されています。世界最大規模の米国経済について、FRBは成長率を、0.1くらいですが、むしろ経済成長の見通しを上げているということですし、また中国についても、第1四半期の成長率は6.4%と、次々に経済対策を打ってきて、底打ちしつつあるようにもみられます。米国、中国という世界第一、第二の経済について、今のところ先程申し上げたリスク、この公表文に書いてあるような様々なリスクがあることは事実ですし、特に保護主義の帰趨については懸念をしているわけですが、メインシナリオは依然として変わっていないということです。

そのリスクに十分配意・注視し、日本についても、仮に「物価安定の目標」の実現に向けて進んでいくモメンタムが損なわれるようなことがあれば、躊躇なく追加緩和を検討するということであると思っています。

(問)老後に2千万円必要だという問題が波紋を拡げているわけですが、この老後不安というのが、日本の消費にどのくらい影響を与えているとみていらっしゃいますか。

(答)これはなかなかよくわからないわけでして、よくそのように言われることも事実ですし、色々な議論があることは事実です。他方で、現在の公的年金は、十数年前に改革をして持続性が非常に高まり、そのうえで5年毎に再計算され、きちんと支給される仕組みになっていますので、いま特に不安が高まるといった実態はないと思います。なお、2千万円云々の報告書については、私からコメントすることは差し控えたいと思います。

(問)総裁が冒頭から指摘されているように、海外経済のリスクがある中で、国内に目を向けると10月に消費増税が待っているわけですが、前回の増税を振り返ると、景気減速のリスクは相応にあるかと思うのですが、次回会合以降、予防的・先制的に追加緩和を議論するような余地があるのか、その辺りのお考えを教えてください。

(答)日本銀行はわが国の景気の先行きについて、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けると考えており、こうした中心的な見通しというのは、予定通り消費税率が引き上げられるということを前提にして作られています。それと同時に、日本銀行としては、その時々の消費者マインドや雇用・所得環境によって、税率引き上げが経済に及ぼす影響は変化し得るということも指摘しています。そうした点も含めて、経済・物価の不確実性を踏まえ、金融政策運営面では当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。少なくともですから、2020年春より先までということもあり得るわけですけれども、いずれにせよ、消費税率の引き上げそのものについては、財政運営の問題ですので、具体的にコメントするのは差し控えたいと思います。現在の日本銀行の経済見通しというのは、10月に予定通り消費税率が引き上げられることを前提に作られており、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるというようにみています。そのうえで、消費者マインドなどは、その時々で変わり得ますので、その点は十分注視していくということだと思います。

(問)アメリカのFacebookが2020年から新たな暗号資産を導入すると発表したんですが、円やドルの預金とか国債とかで裏付けして、従来の仮想通貨と違って価格の乱高下を防ぐというような特徴があるようなのですが、一方でマネロンの懸念も出ていますけれども、現時点で総裁は暗号資産をどのように評価されているでしょうか。

(答)Libraという暗号資産を発行するというプロジェクトがあることは報道により知っていますが、内容についてはまだ十分には承知していませんので、具体的なコメントは差し控えたいと思います。

暗号資産については、支払決済手段として価値を本当に安定させることができるのか、技術上の安全性・安定性が確保されるのか、それからご指摘のようなマネロン対策など関連する諸規制の対応が十分なされるのか、といった面で、従来から色々な議論があるところです。

日本銀行としては、どのようなものであれ、暗号資産が支払決済手段として人々の信認を十分確保し得るのか、決済・金融システムにどのような影響を及ぼし得るのか、といった点も含めて、内外の関係当局とも連携しながら、動向を注意深くみていきたいと思っています。

(問)株主総会のシーズンでありますので、ETFの買入れと議決権の関係について、ちょっと伺いたいと思います。3月の記者会見では、ETFを構成する株式については、スチュワードシップコードに基づいて、投資信託委託会社によって適切に議決権が行使されると考えているというようなお答えがあったかと思います。もう1歩進めて、日銀が事実上の大株主になっているような会社が少なからずあると思うのですが、日銀が議決権行使について明確な方針を示さない、示していないということが、例えば議決権の行使の空洞化ですとか、ひいてはコーポレートガバナンスの歪みみたいなところにつながるというような指摘がかねてあるようなんですけれども、その点についてご見解を伺えればと思います。

重ねて、ETFのポートフォリオをみますと、金融機関の株式も少なからずあると思うのですが、日銀は考査等を通じて監督する立場にあるという一方で、金融の株式に関しましては、株価の上昇をある意味期待するような立場、ある意味相反するような立場にもあると思うんですけれども、その点についてどうお考えか。あと、以上の点を踏まえて、日銀の議決権の行使の指針というのを、今あると思うんですが、何か見直しをしていくようなお考えというのがあるのかどうか、伺えればと思います。

(答)ETFのように株式市場全体を平均的に代表するようなものの買入れは、個別の株式等に対する影響をできるだけ無くして、株式市場全体のリスク・プレミアムの上昇を防ぐという意味で行っているわけです。そもそもETFのような、いわゆるパッシブなインデックス的な運用というのは、米国等でも非常に広く行われていまして、日本でも最近拡がってきてはいますが、まだ米国とか欧州のレベルには全然達していないと思います。こういったものは、そもそも日本銀行が買おうと、あるいは一般の投資家が買おうと、あくまでもスチュワードシップコードを受け入れた投資信託委託会社によって議決権が行使され、日本銀行であれ他の投資家であれ、ETFの購入者が直接議決権を行使することはないという仕組みになっているわけです。そのような形の投資も株式市場全体にとって有益なものであるから行われているのだと思います。

そのうえで、日本銀行としては、個別の株式、特定の株式を買うのではなく、あくまでも株式市場全体を平均的に代表するような形になるようにETFを買っていますし、特に代表性の最も高いETFにシェアを移していっているわけです。こうしたことを通じて、日本銀行はどのくらい株式を保有しているかというと、株式市場全体の4.8%程度に留まっていますので、株式の価格、特に個別の株価に特別な影響を与えているということはないと思っています。あくまでも、株式市場全体の機能が十分果たされるように、株式市場全体としてのリスク・プレミアムの過度の上昇を防ぐという形で運用されているということであり、そういったことがコーポレートガバナンスに悪影響を与えてはいないと思っています。

従って、現在のような形でETFを購入し、スチュワードシップコードの受け入れを表明した投資信託委託会社によって適切に議決権が行使されるという扱いを変える必要はないと思っています。また、ETFは、株式市場全体を平均的に代表するように構成されており、その中に金融機関の株も入っているとは思いますが、金融機関の株価を引き上げようといった意図があるわけではなく、取引先の金融機関に対して考査を行っていることとの利益相反等が起こる可能性はないと思っています。

(問)アメリカでトランプ大統領がパウエル議長に利下げを求めたり、ヨーロッパでも南欧の政治家からもう一度QEをやってくれみたいな声も出たり、いわゆる中央銀行の独立性に対して政治が介入してくるということが目立ってきていますが、総裁は今の政治の中央銀行に対する介入ということをどのようにご覧になっているのか。

増税に絡んで個別にコメントすることはないということでしたが、政府として、リスクが顕在化する場合には機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行していく方針であるということは、安倍首相もおっしゃっているわけで、例えば増税によって政府が補正予算なり経済対策を打つとなった場合、日本銀行にもあわせて緩和や、同じように足並みを揃えてやっていってほしいというような声が、政治の方から高まる可能性もあるかと思います。そういう事態というのは想定されたり、考えられたりしていますか。

(答)前段の欧米の状況について、私から申し上げることは僭越だと思いますが、米国の場合も欧州の場合も、それぞれの中央銀行法によって中央銀行の独立性は担保されていると思いますし、ECBの場合は条約でそれが担保されていると思います。

それから、政府が機動的なマクロ政策運営をするというのは、骨太の方針の原案に出ていたと思いますが、それ自体は当然の話だと思いますし、何かそれが問題だとも思いません。またご指摘のように、政府が景気対策で歳出を増やすというようなことがあったときに、日本銀行として何か協力するかということですが、もちろん政府と中央銀行の間で政策の協調を行うことは日本銀行法にも書いてありますし、何も問題ないと思います。仮に政府が国債を増発して、歳出を増やすということをやったとした場合にも、イールドカーブ・コントロールのもとで金利が上がらないようにしていますので、インプリシットにそういう事態には協調的な行動がとられる形になっていると思います。いずれにせよ、日本銀行としては常に経済・物価情勢や金融情勢を踏まえて、適切な金融政策を運営していくという方針に変わりはないということです。

(問)イールドカーブ全体のフラット化についてなのですが、2016年9月の総括検証で、日銀は過度なフラット化は広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面等を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるとしています。それでイールドカーブ・コントロールを導入したと思うのですが、今そのときくらいにフラット化していて、もちろん要因は違うのですが、これについてどのように総裁はお考えになっているか、何かすべき必要性を感じていらっしゃるかどうか、お願いします。

(答)「総括的な検証」で指摘しています通り、特に超長期金利が過度に低下すると、保険や年金等の運用利回りが低下し、これがマインド面等を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意が必要だと思っています。現時点で、そういった悪影響は明確にはみてとれませんが、日本銀行としては、今後とも経済・物価・金融情勢を総合的に勘案しつつ、2%の「物価安定の目標」の実現のために、最も適切なイールドカーブの形成を促していく方針です。現状ややフラット化が進んでいる点は注視しており、適切なイールドカーブを実現していくという「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の趣旨に沿って、必要があれば適切に対応していきたいと思っています。

(問)決定会合のスケジュールについてですが、Fedの来月の決定会合というのは、1日日本銀行よりも遅いですね。Fedの利下げというのは、マーケットの1つの指標では100%織り込まれています。何か前もってできるのかどうかということなのですが、総裁としては何か必要であれば緊急の決定会合を開けば良いというお考えなのか、それとも何かリスクがあるとしたら、迅速に早めに前もって対応すべきというふうにお考えなのか、お願いします。

(答)FRBのFOMCの日程と日本銀行の金融政策決定会合の日程は、シンクロナイズしていません。両者とも、年8回の金融政策決定会合、FOMCということですが、それぞれの国の色々な統計や、その他の発表のスケジュール等によって、あるときは金融政策決定会合がFOMCより前になったり、またあるときは後になったりするということは自然だと思いますし、それで何か特別なことがあるとも思っていません。

いずれにしても、マーケットの予想をみますと、FRBが7月に金利を下げるという予想が100%となっています。今の時点で全て織り込まれているととらえるかどうかですが、もしおっしゃるように織り込まれているとすれば、7月に何かあっても何も変わらないということになります。それでどうこうということではありませんが、私どもとしては、常にその時々のあらゆるデータを踏まえて、経済・物価・金融情勢を総合的に判断して、適切な金融政策を決定していくという方針に全く変わりはないということです。

(問)今回の文言にもある海外経済を巡る下振れリスクで、先日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議等での印象みたいなことをお聞きしたいのですが、全体としては年後半の海外経済、世界経済の回復シナリオは共有されたというご認識は先程もお聞きしましたが、例えば米中等の貿易摩擦、貿易戦争、あるいは新興国の債務の積み上がり、各国の中央銀行総裁あるいは財務大臣等の間での認識、あるいは危機意識みたいなことで、総裁が特に印象に残った点というのはございますでしょうか。

(答)先日の福岡におけるG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、麻生副総理とともに議長を務めまして、そうした中で、ご指摘の世界経済の現状と展望、あるいは必要になった場合の政策対応といったことについて議論になりました。

私の印象を申し上げますと、4月にIMF・世銀の春の会合がある際にもG20があり、日本が議長国を務めたわけですが、そのときと比べて非常に見通しが暗くなったということはなかったように思いました。むしろ、比較的変わらない、という感じがしました。その1つの理由は、ご承知のように第1四半期のGDPがどこも非常に良かったことです。米国は3.1~3.2%、中国は6.4%成長、そして欧州も予想以上に良かったです。G20のメンバーでも、例えば韓国のように第1四半期の成長がマイナスになったという国もありましたが、米国、中国、欧州そして日本も第1四半期の年率で2.1%、後で上方修正が入って2.2%ということになりました。昨年の後半からずっと減速していた世界経済が、G20のコミュニケにもありますように、むしろスタビライズした、底を打ちつつある、という感じであり、どんどん悪くなっていく感じはありませんでした。一方で、直前にメキシコからの輸入に対する5%関税の賦課という米国の方針が出て、大変なことになると思っていましたが、それが無期延期になり、ややほっとした感じも皆にありました。他方、米中の貿易摩擦の方はなかなか展望が拓けない状況にあり、保護主義の問題については、春のときよりもリスクが高まったのではないかと思います。IMFも、このような状況が続き、更に米中で全面的に25%の関税がかかることになると、世界経済にかなりの影響が出るという試算を出しています。足許の世界経済はむしろ安定化に向かい、春先に懸念したよりも悪くなっていないにもかかわらず、その先のリスクについては、懸念が非常に高まっていた感じを持ちました。

従って、私どもも、世界経済についてのメインシナリオは維持されており、日本経済についてもメインシナリオは維持されていると思いますが、世界経済の下方リスクはやや高まっているということではないかと思っています。

(問)日銀が持っているETFを貸し株に使うことができるという措置については、今準備中だと認識していますが、市場関係者と話すと、ETFの流動性が向上するということに関しては、すごくポジティブな効果がありそうだという反面、別の問題なのかもしれませんが、ETF、株式の特性として、償還がないわけです。債券とは違って。従って、一定規模日銀が持っていることに関して、出口にかかわる不透明感というのでしょうか、いつどんな形で売ってくるのか分からないという不透明感が、海外投資家を含めて市場関係者の間でじわじわ拡がっているような気がします。現時点で難しいのはよく承知していますが、債券とは違う特性もありますので、ETFの出口ということに関して、今現状お考えのこと、ご所見がありましたらお聞かせ頂けないでしょうか。

(答)ETFの貸出しの件は、現在検討中で、市場関係者とも十分意見交換をして適切な形にしたいと考えています。これ自体新しいことですので、財務大臣の認可が必要であり、もう少し時間がかかると思います。

なお、ETFの買入れは、金融緩和のフレームワークの一環でして、年間6兆円増というのを1つのめどに、弾力的にマーケットのリスク・プレミアムの状況を踏まえて、買入れを行うということです。その方針に現在全く変わりはありませんので、カレンダーベースで、何年のいつまでにやめますとか、あるいはもっと長くやりますとか、そういうことを申し上げる立場にありません。あくまでも現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の一環として行っていますので、当然2%の「物価安定の目標」は達成される、実現されるという状況になったときに、全体として出口の議論が行われるということにはなると思いますが、今の時点でこれをどうするかは全く考えていません。

(問)発表文にある、先程の「リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響」というところにちょっと疑問があります。4番のところで、「リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響」というところなのですが、巷間言われているのは、Fedは利下げをするということですから、これはリスクというよりは、むしろ世界経済を押し上げる方向に働くということで、新興国にとっても、米国の金利が上がったら資金が流出するリスクもあるのですが、これがリスク要因になっているのはなぜかということと、「国際金融市場に及ぼす」とあえて書いてあるので、ひょっとしたら円相場への影響なのかとも思ったのですが、それについてまずお答え頂けますでしょうか。

(答)このセンテンスは、以前からあるものですが、米国のマクロ政策運営には、当然、金融政策だけではなく財政運営もありますし、マクロ政策全体の運営の仕方は、世界最大の米国経済に一定の影響を与えます。それが世界の経済、更には国際金融市場にも影響を与えるため、どちら側に転ぶかは分かりませんが、不確実性というものがリスク要因としてあるということだと思います。仮に、米国の金利が上昇する、あるいは金融政策で政策金利を引き上げるということになった場合に、ご指摘のように、一部の新興国が懸念していた資本流出によって、当該国の為替が下落するおそれがあり、それを防衛するために金融政策を引き締めることとなります。それがその国の経済に必ずしもそぐわなくても、スモールオープンエコノミーとしてはそうせざるを得なくなる懸念があるということは、昨年の夏頃までは大分言われていましたが、その後は、特にアジアの新興国などは資本が戻ってきたこともあって、昨年の後半から今年の前半にかけて、アジアの殆どの新興国は金利を下げています。そういう意味で新興国にとって好ましい方向に向かっていることは事実だと思います。ただ、米国の財政政策について、債務上限であるとか、予算であるとか、そういうことの不確実性を言う人もいます。私どもとしては、金融政策だけに限って、しかも新興国に対する影響だけを言っているのではなく、むしろ不確実性とリスクを広く捉えて言っているとご理解頂きたいと思います。

(問)先程の発言で、総裁は政府が経済対策を打った場合に日銀も足並みをそろえるのか、という質問に対して、それは当然協力するという中で、イールドカーブ・コントロールというのは、政府が国債を増発して歳出を増やす場合に、金利が上がらないようにしているとおっしゃられましたが、私の理解では、イールドカーブ・コントロールは金融政策としてやっているのであって、政府が国債を発行しても金利が上がらないように助けるということではないのではないかと理解しています。つまり財政拡張的になるのを、通常は金利が上がってヘジテイトするところを日銀がそれを抑えているから、財政拡張してしまうのだという批判に対して、日銀の通常の答えは、いやそういうことではないのだということだったので、先程のお答えについてもう一度お願いします。

(答)現在のイールドカーブ・コントロールの下で10年物国債の操作目標をゼロ%程度としているのは、あくまで金融政策として行っているものであり、財政ファイナンスを助けるという趣旨でないことは事実です。ただ、財政政策と金融政策のポリシーミックスという点で捉えてみれば、仮に、日本銀行として現在のイールドカーブ・コントロールを維持する必要性があって、その間に国債の増発によって長期金利が上がるということが防止されるという意味では、結果的に財政政策と金融政策の協調というポリシーミックスになり得るということです。あくまでも財政のためにやっているということではないということはおっしゃる通りです。

(問)躊躇なき追加緩和を実行される場合の副作用対策をセットされるかについてのお考えと、もしされる場合の具体的な方法について教えてください。

(答)2%の物価上昇に向けたモメンタムが損なわれるということが起これば、当然、躊躇なく追加緩和を検討するということですが、その場合に、経済・物価・金融情勢に即して、4つのオプションのどれをどのように、更には組み合わせて行うかについては、効果と副作用のバランスをとり、ネットで最も効果のある措置をとることになると思います。どのような対応がとられるかというのは、そのときの経済・物価・金融情勢に合わせて最も適切な措置をとるということに尽きると思います。

(問)副作用対策についても検討されているということですか。

(答)当然そういうことを行う際には、副作用が小さくなり、ネットで緩和の効果が最も大きくなるような措置を検討するということです。

(問)為替レートの安定についてお尋ねしたいのですが、本日未明のFRBの公表からドル円レートが107円台に入っておりまして、欧米中銀が利下げをしたとすると、日銀が現状維持であれば、相対的にハト派だったものがちょっとタカ派にみられるという指摘もあります。そういった中で、今回の現状維持が為替レートの安定に与える影響について、例えば輸出企業の収益圧迫と物価下落という懸念もあると思うのですけれども、今のドル円レートが、そういったものに与える懸念についてのお考えを教えてください。

(答)まず第1に、日々の為替レートの動きを決めるものが何かというのは色々な説があります。金利格差という説――金利格差といっても短期金利、中期金利、あるいは長期金利の格差なのか――があります。最近のように資本フローが株式とかその他も含めた形で行われているときに、何か特定の金利格差――短期金利か長期金利かは分かりませんが――で為替レートが決まるとの考え方はだんだん少なくなっていると思います。もう少し幅広い色々な要素で決まってくるということだと思います。

そうした中で、昨日今日の状況をみると、確かにFRBの決定とその後の公表文がドルの為替レートに影響したとは思いますが、全体をみてみると、円だけが上がったのではなくて、ドルが下がって、ユーロやその他の通貨も上がっているということだと思います。こうした動きは昨日今日の話で、為替レートは先程申し上げた色々な要素で変わりますので、断定的なことを申し上げるのは適切でないと思います。

いずれにせよ、金融政策は為替レートを目標にしているわけではなく、物価の安定、そうしたもとで持続的な成長ができることを考えています。為替レートが経済・物価に影響することはあり得るわけですし、そこは十分注視していますが、何か金融政策を為替レートに紐付けて行うというようなことは全くないということです。

以上