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道北地区金融経済懇談会における後藤審議委員挨拶要旨

1999年 6月 3日
日本銀行

1.はじめに

 日本銀行の政策委員会審議委員を務めている後藤です。本日は、ここ旭川市を中心とする道北地区の各界を代表する皆様方と懇談する機会を得ることができまして大変光栄に存じます。また、私どもの札幌支店および旭川事務所が種々のご高配を賜っておりますことを、この場を借りてお礼申し上げます。

 私は、平成7年10月に、旧日本銀行法の下で政策委員会委員に就任しました。それまで、私は農林水産省で永年農政に携わり、農林水産事務次官を務めました。この間、外務省、内閣、県庁の仕事も経験しました。退官後は、農林漁業金融公庫総裁等に就任し、農業金融の仕事にかかわってきました。こうした経歴から、旧法における政策委員会の委員の1人である「農業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者」として選任されたわけです。その後、平成10年4月に現在の日本銀行法が施行された際に、同法附則の規定により、新法下の審議委員に就任し、現在に至っております。

 昨年4月に新たな日本銀行法が施行されてから、既に1年以上経過しました。新法では、日本銀行の「独立性強化」と「透明性向上」を理念としていますが、この1年余りの期間を通じ、そうした理念に基づく政策や業務の運営が定着しつつあるというのが実感です。

 政策委員会は、旧法の時代にはスリーピングボードなどと皮肉られることもありましたが、新法下において、委員の顔ぶれは一層多彩となり、議論も多様かつ大変活発になりました。最近は、審議委員と執行部との議論よりも審議委員同士の議論の応酬がだんだん増えているように見受けられます。こうした委員会の運営においては、各委員が自らの判断と責任をもって投票し、それのみに基づいて決定するという手続が貫かれており、日本銀行の独立性が次第に強固なものとなりつつあるように思います。

 こうした独立性の強化と並んで大切なのが、透明性の向上です。金融政策運営については、通常、月2回、事前に公表された日程で金融政策決定会合を開催し、そこで方針を決定することとされていますが、その議事の概要については、議事要旨を作成し、約1か月後に公表することとしています。議事要旨は、会合における政策決定プロセスを明らかにしており、透明性の向上に繋がっています。マスコミ、市場関係者等からの評判もまずまずではないかと思います。また、日本銀行は、半年に1回、金融政策に関する政策委員会の議決事項およびそれに基づき行った業務の状況について、報告書を作成して国会に提出し、説明を行うこととされています。実際、10年度上期の報告書については、昨年12月および本年2月に、衆参両院において、その概要の説明および議員の質問への答弁を行いました。

 このほか、各事業年度に係る財務諸表について大蔵大臣の承認を受けたときは、当該年度の日本銀行の政策運営および業務の状況について業務概況書を作成し、財務諸表および決算報告書とともに公表することとなっております。先般、10年度分を公表しましたが、このようなさまざまな機会を捉えて透明性の向上に努めています。

 さらに、私が本日お伺いしているように、各地における金融経済懇談会に審議委員が出席して、日本銀行の政策運営についてご説明するのも、透明性向上の一環と言えようかと思います。

2. 最近の金融経済情勢と金融政策のあり方

最近の金融経済情勢

 まず、最近の金融経済情勢と金融政策のあり方についてお話しすることとします。

 昨年秋から今年にかけて公共投資の増加などから景気の悪化テンポは次第に和らいできましたが、民間経済活動の自律的回復が展望できない中で、長期金利の上昇、円高、株安などの先行き不安が生じたため、日本銀行は、本年2月12日に、一段の思い切った金融緩和措置を実施しました。こうした緩和措置により、オーバーナイト物コールレートがゼロ%近い水準で推移するもとで、金融機関の流動性確保に対する安心感が広がっています。金利ゼロ%への誘導は、翌日物の資金需要がある限り、日本銀行が資金を供給し続けることを意味しますので、流動性リスクプレミアムが著しく低下しているわけです。ゼロ金利という思い切った金融緩和は、過去に例をみない政策的実験であります。

 さらに、大手行に対する公的資本の投入もあって、ジャパンプレミアムは、一昨年秋以来久方振りに、ほぼ解消された状態にあります。3か月物のターム物金利も、ユーロ円金利(TIBOR)でみて0.1%まで大幅に低下しました。この間、為替相場も年初に比べ、円安方向への展開となっています。長期金利は全般に低下し、株価も底固い動きとなっています。

 デフレ懸念が払拭されるまではこの金融緩和を続けるという本行が表明している方針を受けて、金融資本市場では、全体として、経済を下支えする方向での好ましい展開が続いています。

 そこで実体経済面の動きですが、足許の景気については、財政・金融政策に支えられて、「下げ止まっていますが、自律的回復へのはっきりした動きが見られるには至っていない。」と判断しています。

 すなわち、最終需要の動向をみますと、設備投資は減少基調を続けており、個人消費についても、全体として回復感に乏しい状態が続いています。また、純輸出──輸出から輸入を控除したネットの輸出──は、横這い圏内の推移となっています。一方、住宅投資は、このところ持ち直しており、公共投資は、春先の発注大幅増を受けて、高水準の工事が進捗しているものとみられます。

 このような最終需要の動向や、在庫調整が引続き進捗していることを背景に、鉱工業生産は下げ止まっています。さらに、金融システム不安の緩和や株価の持ち直し等の金融環境の改善もあって、企業・消費者心理は下げ止まっているように窺われます。ただ、企業収益は引続き低迷しているほか、失業率が既往ピークを更新し続けるなど、家計の雇用・所得環境も悪化しています。また、企業金融面でも、改善の動きが続いているものの、先行きの資金繰りに関する不安感は、未だ払拭し切れてはいない模様であります。

 今後の経済情勢につきましては、在庫調整の進展により生産回復の条件が次第に整いつつあるもとで、政府の経済対策や日本銀行による金融緩和措置などが引続き下支え効果を発揮することが見込まれます。また、金融環境の改善も、景気に対して徐々に好影響を及ぼしていくことが期待されます。しかし、他方で、企業行動をみますと、収益の長期低迷が続き、リストラの動きが本格化しつつあります。こうした企業リストラは、生産性向上に繋がると期待される一方、短期的には、設備投資の抑制に働くほか、雇用・所得環境の悪化などを通じて家計支出にもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。これらを踏まえますと、民間需要の自律的回復は依然として期待しにくい状況にあります。

道北地区の経済情勢

 道北地区の経済情勢については、旭川事務所の見方によれば、全体として景気は依然底這い状態にありますが、各種経済対策の効果から一部に持ち直しの動きがみられているようであります。すなわち、個人消費は、消費者の慎重な購買態度を背景に大型小売店の販売が前年割れを続けておりますほか、普通乗用車の販売も前年を下回っております。一方、公共投資は、引き続き順調な発注が続いておりますほか、旭川市の住宅着工戸数も持ち直してきているとのことです。この間、昨年11月に北海道拓殖銀行の営業譲渡が完了したこともあって、企業マインドも幾分改善してきているように見受けられます。しかしながら、現在のところは、全国ベースでみた場合と同様、そうした動きが民間経済の自律的な回復をもたらすには至っていないようです。

「量的緩和論」の評価

 こうした中で、これからの金融政策のあり方について、「量的緩和」ということが一部の学者・エコノミスト等から主張されています。いわゆる「量的緩和論」を巡る議論には、若干混乱があるように見受けられますので、ここで私なりに議論の整理をしてみたいと思います。

 まず、議論の前提として、「金利」と「量」は表裏一体であり、同時に決定されるということを申し上げておきたいと思います。すなわち、インターバンク市場は、リザーブ──日本銀行における金融機関の準備預金──の需給を調整する市場であり、その需給がオーバーナイト物コールレートという金利に反映されることとなりますが、通常、リザーブ需要と金利は負の相関──リザーブ需要が金利の低下に伴い増加するという関係──を持っていますので、中央銀行が金利を低下させることはリザーブ供給を増加させることにほかなりません。従って、金利の引下げは量の増加を伴うものであるし、逆に量の拡大は金利の低下を伴うものです。このように、「量」と「金利」は独立して決まるものではなく、同時に決定される関係にあります。「日本銀行はこれまで金利を引下げる政策を採ってきたが、これからは量を拡大する政策を採るべきである」といわれることがありますが、「金利」と「量」はそれぞれ独立に操作できるものではありません。

 次に、こうした関係をご理解頂いた上で、量的緩和論を意味のあるかたちで定義しようとすれば、インターバンク市場調節のための操作目標として量的指標を採用する立場ということができようかと思います。金利と量が同時決定されるのであれば、どちらでも同じではないかとも思われますが、金利と量の関係は常に安定的ではなく、外的ショックにより変化しやすいということがあります。例えば、インフレ率が上昇している局面で引締めを行う場合、「金利」を操作目標とする政策を採ると、名目金利をインフレ率でデフレートした実質金利が本来望ましい水準よりも低目にとどまってしまい、金融引締め効果が十分効かないことがあり得ます。一方、金融システム不安などから資金需要が実体経済とは独立に増加するような状況にある場合には、「量」を操作目標としていると、意図しない引締めを行う結果となるリスクがあります。

 こうした操作目標の選択の問題は、その時々の情勢にも依存するので、どちらがよいかは一概には言い切れません。ただ、私見を申し上げれば、少なくとも当面は、物価上昇率が短期的に大きく変動する状況──言い換えれば、名目金利と実質金利が大きく乖離する状況──にはない一方、西暦2000年問題や2001年4月以降のいわゆる「ペイオフ解禁」を控え、流動性への選好が一時的に高まる可能性も想定され得ることを勘案すれば、「量」をターゲットにすることには疑問があると考えています。

 さらに、ゼロ%近い金利の下で主張されている最近の量的緩和論は、名目金利の低下余地が殆どなくなる中で、量的指標を操作目標としてリザーブの供給をさらに増やし、期待インフレ率の上昇を通じて実質金利の引下げ、投資刺激と貯蓄抑制を図ろうとするものです。

 しかしながら、こうした量的緩和の議論には、次のような問題があると思われます。

 まず第1に、量的緩和論で想定しているような政策波及効果が確実に働くのかどうかということです。言い換えれば、量的緩和が期待インフレ率の上昇に繋がるのかということです。

 第2に、実質金利を引き下げて、かつマイルドなインフレにとどめるといったコントロールは可能なのかという点が疑問です。

 第3に、仮に期待インフレ率の引上げに成功したとしても、そのことが名目金利の上昇をもたらし、実質金利の引下げに繋がらないのではないかということです。

 第4に、長期にわたり採られてきた低金利政策には、個人金融資産の利子収入の激減、年金財政などへの影響について社会的批判がありますが、さらにここで政策的にインフレ期待を醸成することによって金融資産を実質的に目減りさせるべきかどうかということです。

 以上のような点から、私としては、期待インフレ率を高めるような政策に対しては、慎重であるべきと考えています。

構造改革の重要性

 今日の金融市場をみると、市場関係者が資金の運用難からリスクを取る行動に出て、ターム物から格付がやや低目の社債にまで金利低下の波及が広がっていることに見られるように、流動性は既に十分潤沢に供給されているということができると思います。マネーサプライは前年比4%弱の伸びを続けていますし、マーシャルのk──M2+CDの対名目GDP比──の動きをみても、金融緩和が進展していることが見て取れます。こうした中で、追加的な金融緩和を求める声は市場からは聞かれなくなっています。今後マネーサプライが増加していくかどうかは、金融機関の資金仲介機能や実体的な資金需要の回復に依存していると思います。また、ゼロ金利を永久に続けるわけにはいかないとすれば、「行きはよいよい、帰りはこわい」ということも頭のどこかに置いておかなければなりません。

 平成不況が何故このように長期化し、なかなか回復しないのでしょうか。まず第1に、バブル時代の負の遺産(不良債権と不良資産)の処理がまだ終わっていないということがあります。第2に、製造業の生産性向上に依存した成長メカニズムが行き詰り、情報化や高齢化といった社会の変化に応じた産業構造の転換が求められていることもあげられると思います。第3に、量的拡大経営から期間収益、キャッシュフロー重視への転換が遅れ、資本効率が低下して企業の投資意欲が盛り上がらない一方、高齢化社会への展望が拓けないことを背景に老後への不安から90年代に入って貯蓄率が予想に反して高止まり、貯蓄と投資のインバランスが拡大したことがあります。

 こうした構造問題を解決していくためには、過去の負の遺産の整理だけでなく、新しい産業分野や就業機会の創出によって収益性の高い投資機会や時代のニーズに対応した雇用の場を広げて行く一方、高齢化社会への不安を和らげ、人々が安心して消費できるような制度的環境を整備していくことが必要になると思います。政府が近く産業構造転換政策と雇用政策を今日的視点から取りまとめ、早急にその実行を図ろうとしておられるのも、このような方向に沿ったものでありましょう。

 いずれにせよ、個別企業の「構造リストラ」に加えて、こうした経済の構造調整を進める過程では、経済にデフレ圧力がかかることは否めません。財政政策や金融政策が経済を下支えしているうちに構造改革を進めることが必要です。日本銀行としては、企業や家計が早期に活力を取り戻すことを期待しながら、金融政策運営面から、経済活動をしっかりと下支えしていく考えです。

3.わが国金融システムの現状と日本銀行の役割

わが国金融システムの現状

 次に、金融システムの現状について、お話しすることとします。不良債権問題については、バブル崩壊後、様々な対応がなされてきましたが、残念ながら、なお問題の最終的な解決には至っていません。

 この間、関係者による懸命な対応が続けられてきました。実際、不良債権問題への対応のための制度面の整備は、昨年の金融再生法、早期健全化法の成立により大きく進展しました。こうした枠組みの整備を受けて、昨年10月に日本長期信用銀行に対して、12月に日本債券信用銀行に対して、それぞれ特別公的管理の開始が決定されたほか、本年4月に国民銀行に対して、5月に幸福銀行に対して、それぞれ金融整理管財人による管理を命ずる処分が行われたことは、周知のとおりです。

 また、本年3月末には、大手15行に総額約7.5兆円の公的資本が投入されました。日本銀行としても、かねてから「わが国金融機関は過少資本状態にあり、信認回復のためには、公的資金による思い切った資本増強が急務である」と主張してきました。こうした資本投入は、わが国金融システムの再生と信認回復に向けた、大きな一歩として率直に評価してよいと思います。

金融システム安定化のための日本銀行の役割

 ここで、金融システム安定化のための日本銀行の役割について述べたいと思います。金融システムの安定化により、信用秩序を維持することは、金融政策の遂行と並んで、中央銀行の本来的な業務です。各種の金融取引や企業間取引の資金決済は金融機関相互間の決済ネットワークによって網の目のように結ばれているので、一箇所で生じた支払不能などが次々と連鎖、波及し易い特性(システミック・リスク)をもっています。経済の基本インフラともいうべき信用秩序維持に関する業務は、金融政策のようにすべて日本銀行に委ねられているわけではありません。金融機関の破綻処理等を適切に進めるには、法的な枠組みや行政的手続などが必要であるとの考え方を前提としたうえで、日本銀行は、「最後の貸し手」として、信用秩序維持の観点から適切な流動性供給を行うことになります。

 このように、信用秩序維持のための日本銀行の「最後の貸し手」としての役割は、預金保険制度などのセーフティーネットを前提としたうえで、システミック・リスクを防止し、決済システムの安定的な運行を確保するため、流動性を供給することに尽きるわけです。このことは、見方を変えれば、預金保険制度などのセーフティーネットの整備の状況如何で、日本銀行の対応が変わってくるということも意味します。

 日本銀行は、これまで、その時々のセーフティーネットの枠組みの中で、最善の努力をしてきました。金融機関の破綻処理に当っては、現在、預金保険制度によって、預金の払戻しができなくなった金融機関の損失を資金援助のかたちで全額補填するなどにより預金者の保護が図られています。これに対し、日本銀行の実施する特融は、破綻金融機関が預金保険制度の資金援助の活用等により引受け先金融機関に営業譲渡されるまでの間のつなぎ資金を供給する役割を担うものです。

 このように、日本銀行の「最後の貸し手」としての役割は、基本的には一時的な流動性の供給であり、明白に回収不能なケースについての損失補填を行うものではありません。しかしながら、日本銀行は、これまでの金融システム不安への対応に当って、セーフティーネットが十分整備されていない状況の下で、システミック・リスクを回避するためのやむを得ざる臨時異例の対応として資本性の資金供与も行ってきました。例えば、日本銀行は、一昨年4月の日本債券信用銀行の経営再建策の策定に当たり、政府からの強い要請を踏まえ、同行に対し、新金融安定化基金(日本銀行拠出分)による優先株の引受を行いました。それにもかかわらず、昨年12月、同行が特別公的管理に移行したため、残念ながら当該出資金が毀損する結果に至りました。こうした出資金の毀損は、セーフティーネットが整備されていない中で、信用秩序の維持を図るためのやむを得ないコストという評価ができようかと思いますが、基本的には中央銀行の対応範囲を超えた性格のものであったと思われます。

 日本銀行に対し、「日本が滅びても、日銀が生き延びればよいのか」と言った声も聞かれますが、私は、事実は全くその逆であると思います。日本銀行は、セーフティー・ネットが整備されていない中で、金融システムの安定確保のため、本来の役割に照らしかなり踏み込んだ対応を採ってきたと言えるのではないかと思います。

日本銀行のバランスシート長期固定化の問題

 日本銀行がその政策目標を達成するうえで、資産の流動性を確保することは不可欠の要件です。金融政策面でいえば、変化の激しい金融市場において金利をコントロールするには、瞬時に金融資産の取得、処分を行い、資金の供給、吸収を図ることが必要です。

 そうした観点からは、日本銀行のバランスシートの長期固定化が進むことは決して望ましいことではありません。

 日本銀行では、負債の主体を占める銀行券発行高約50兆円にほぼ見合う規模の国債を資産として保有しています。そのうち6割程度に相当する約30兆円が長期国債となっています。このほか、実質的な長期資産である預金保険機構向け貸付けが増加してきており、現在、6兆円程度あります。これらを合計した長期固定資産の銀行券発行高に対する比率は7割以上にも上ります。米国でも、長期固定資産として長期国債を比較的多く保有していますが、それでも銀行券発行高に対する長期国債の比率で算出した長期固定比率は5割程度にとどまっています。主要国の中で、日本ほど中央銀行のバランスシートの長期固定化が進んだ国はないようです。

 こうした中で、私は、日本銀行が、常に機動的な政策運営を行えるように、資産の流動性確保に努め、関係方面の協力も得ながら工夫を凝らしていくことが重要であると考えています。

4.おわりに

 以上、色々申し述べて参りましたが、経済情勢と金融システムの双方の建て直しを確かなものとすることが当面の日本経済の大きな課題です。

 アジア諸国の経済が漸く持ち直しの方向にある一方、5月18日に米国の金融政策について引締め方向のバイアスが付されたことがわが国の株価、為替などに影響を及ぼしつつあります。このような状況のもとで、株価や長期金利は、補正予算編成や企業業績の行方といった国内要因もあって、このところ調整局面を迎えているように見受けられます。国境のない金融経済の舵取りはますます難しくなっていますが、日本銀行は、金融政策や信用秩序維持の両面で、その責務を果たすべく力を尽くしていきたいと思います。

 私の話は以上です。ご清聴ありがとうございました。

 本日は、折角の機会ですので、私どもに対する忌憚のないご意見を賜りたいと存じますので、どうぞよろしくお願いします。

以上