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「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成11年12月 7日 衆議院大蔵委員会における速水日本銀行総裁報告

1999年12月 7日
日本銀行

はじめに

 去る12月3日、日本銀行法第54条に基づき、本年度上期の金融政策運営にかかる半期報告書を、国会に提出させていただきました。本日は、本報告書につきましてご説明の機会を与えていただいたことに、あつく御礼申し上げます。まずはじめに、日本経済の現状に対する認識と金融政策運営について簡単に述べさせていただきます。

日本経済の現状

 日本銀行が本年2月にゼロ金利政策という思い切った金融緩和措置を講じてから、約10か月が経過いたしました。この間、たいへん厳しい状況にあった日本経済にも、徐々に改善の兆しがみられ始めております。まず、本年前半は、公共投資と住宅投資が総需要を下支えしました。その後、夏場には、アジアを中心とする世界景気の回復を反映して、輸出が明確に増加し始めました。このため、最近では企業の生産活動も回復に転じており、その影響は企業収益にプラスに働き始めているほか、家計所得の面にも徐々に及びつつあります。また、ゼロ金利政策の効果もあって、金融機関や企業の流動性懸念は大きく後退し、企業の景況感も改善しております。このため、日本銀行では、景気の現状については「下げ止まりから持ち直しに転じつつある」と判断しております。

中長期的な課題への取り組み

 また、この1年間、バブル崩壊後長きにわたって日本経済が直面してきた中長期的な課題への取り組みについても、前進がみられました。第1は、金融機関や企業の不良資産の処理であり、第2に、新たな国際環境のもとでの産業構造の変革という課題です。

 まず、不良資産の処理は、まだ終わったわけではありませんが、公的資本の投入を柱とする金融システム安定化策などにより、不良資産問題が経済全体の危機につながる懸念はかなり後退したように思われます。本年春先頃から、企業や消費者のマインドが持ち直してきたのも、金融システムの安定化によるところが大きいと考えられます。

 もうひとつの産業構造変革という課題についても、前向きの動きが出ています。企業の大規模な事業再編、情報・通信分野を中心とした新しい企業群の台頭などは、新時代の幕開けを予感させるものです。また、本年夏頃から目立ってきたアジア経済の回復は、こうした日本経済の変革の動きと相互に好影響を及ぼし合っている面があり、日本を含めた東アジア諸国全体として、拡大していく力が働き始めている可能性があるように思います。

日本経済の展望

 以上のように、日本経済は、ようやく、バブル崩壊後の長期停滞から脱却する足掛りをつかみつつあります。株価が、この1年で約5割上昇したことも、そうした期待感を市場参加者が強めていることの反映と思われます。

 しかし、自律回復に向けての展望は、現時点ではまだ確実なものとなっているとはいえません。金融システムが一応安定したとはいっても、金融機関は中期的な経営健全化の途上にあり、金融仲介機能が十分に回復されるには至っておりません。また、経済の一部に次第に新しい流れが起こりつつあるとはいえ、全体としてみますと、過剰な債務や供給能力が残っており、引き続き設備投資や雇用・賃金の抑制要因として作用しています。こうした中で、このところやや不安定な動きとなっている為替相場についても、それが経済にどのような影響を与えるのか、注意深くみていく必要があります。

 これらを踏まえますと、足許の景気は「下げ止まりから持ち直しに転じつつ」ありますが、先行きについては、個人消費と設備投資など民間需要の動向を慎重に点検していくことが必要な段階と考えております。

当面の金融政策運営

 日本銀行は、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで、ゼロ金利政策を継続することを明確にしております。以上申し上げたような景気や物価の情勢を踏まえますと、まだゼロ金利政策を解除できる段階には至っていないと判断しています。ゼロ金利政策については、その副作用について様々なご意見があることも承知しております。しかし現段階では、最近みられ始めた経済の前向きな動きを将来につなげていくためにも、金融面から経済活動をしっかり支えていくことが重要と考えられます。

おわりに

 金融政策運営を巡っては、こうしたゼロ金利政策についての評価をはじめ、政策運営の手法や枠組みなどを含めて、様々な論点があろうかと存じます。本日は、委員会でのご意見を幅広く頂戴するとともに、日本銀行の考え方をできるだけ率直にご説明し、ご理解を賜りたいと存じておりますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

以上