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25年後の「金融政策と銀行行動」

2005年5月28日「日本金融学会2005年度春季大会」における岩田副総裁講演要旨

2005年6月6日
日本銀行

[目次]

はじめに

 本日は、伝統ある日本金融学会の講演にお招き頂き、光栄に存じ上げます。2年余り前から日本銀行に奉職しておりますが、私と金融政策との関わりを振り返ってみますと、浜田宏一教授との共著で「金融政策と銀行行動」を分析してからすでに25年が経過しています。

 1980年代以降、日本経済は、資産価格の急騰と急落、その後の経済停滞と金融不安、デフレという大きな変化を経験してきました。一方で、情報の非対称性や契約の不完備性、また最適な金融政策運営などを巡る金融理論の展開も目覚しいものがありました。先進国における金融政策運営についても、銀行貸出やマネーサプライを重視する政策から直接物価安定を重視する政策への変化が見られます。

 2001年3月以来、日本銀行は量的緩和政策を採用しています。本日は、「金融政策と銀行行動」を出発点とし、その後の金融論や金融政策運営の展開も踏まえて、量的緩和政策の有効性とデフレ克服についての所見を述べ、皆様のご批判を仰ぐことに致したいと思います。

1970年代までの日本銀行貸出政策と窓口指導

 1980年に出版された「金融政策と銀行行動」で著者らは、日本の銀行行動をTobinが長年大学院講義に用いていたマニュスクリプト (Tobin(1998)) で展開した銀行の利潤最大化行動モデルを導きの糸にして分析しました。

 1960年代から1970年代にかけての日本の金融政策の特徴は、日本銀行の個別民間銀行向け貸出に関する量的制約(「貸出限度額規制」)と個別民間銀行の企業向け貸出増加に関する量的制約(「貸出増加額規制」)の存在でした。民間銀行は、通常のバランスシート制約、預金準備の制約に加えて、「貸出限度額規制」と「貸出増加額規制」の2つの付加的な制約の下で、利潤最大化を図っていました。

 クーン=タッカーの定理によれば、この2つの付加的な量的な制約は規制の強さに応じた潜在価格をもつはずであり、その潜在価格の大きさを実証的に推定できれば、金融政策がどの程度有効であるかを示すことが出来るはずです[注1]

 他方、準備預金制度は、民間銀行に対し利子のつかない日本銀行当座預金口座に預金をおくことを義務付けるものであり、銀行の預金供給に対する「暗黙の税」の役割を果たし、預金供給を抑制する効果があります。

 「貸出限度額規制」の制約の強さを示す潜在価格は、市場調達金利であるコールレートと日本銀行貸出に適用される公定歩合の差で表すことができます。また、「貸出増加額規制」の制約の強さを示す潜在価格は、取扱い費用を除く貸出の限界純収入とコールレートの差に等しいはずです。ところが、当時の貸出市場においては、公定歩合を中心とする利子率決定の制度的な硬直性や貸出市場における信用割当の存在が貸出金利の決定過程で大きな影響を与えていました。このため、実証的に「貸出増加額規制」の制約の強さを示す潜在価格を明確に把握することが困難でした。また、コールレート自体も完全に市場で価格決定がなされているか疑問の余地がありました。

 かりに日本の貸出市場で信用割当が発生しているとすれば、貸出金利は、需要と供給を等しくするところでは決定されず、超過需要が発生しているはずです。そこで観察される貸出量と貸出金利は、需要曲線と供給曲線の左側の部分のみであるという「不均衡の計量分析」を適用して、日本においても信用割当が発生している可能性があることを指摘しました。

情報の経済学

 この「金融政策と銀行行動」を著してから25年が経ち、この間に、分析や政策の枠組みにも大きな変化がみられました。その一つが、1970年代以降の「情報の経済学」の発展です。

 情報の経済学の観点からすれば、銀行貸出には情報の非対称性や契約の不完備性といった問題があります。従って、貸出の取扱い費用には、民間銀行による貸出先企業のモニタリング費用や情報生産費用ないしは情報生産に必要な資本が含まれるはずです。

 さらに、貸出金利や金融仲介機関の財務健全性のみならず、企業の保有する内部資金・債務比率とならんで、代理人費用を低減させると考えられる純資産や企業による代替的な資金調達手段(コマーシャルペーパー等)の利用可能性が銀行の貸出行動に影響を与えている可能性があります(星岳雄(2000))。

2つの量的制約の解除

 また、金融政策の実施手法も、外部環境の変化とともに変わりました。1970年代末から金利自由化の流れが加速し、金融市場が整備される中で、市場機能の活用、具体的には、日本銀行当座預金の増減を通じて銀行間の資金需給やコールレートを変化させる政策運営が採用されるようになりました。

 まず、1979年にコールレートの建値制度が廃止され、ついで1991年6月に「貸出増加額規制」(窓口指導)が廃止されました。また、1996年には「日本銀行貸出」を通常の金融政策の手段としては用いないことになりました[注2]

 銀行行動の分析を始めた当初から、2つの付加的な量的制約は、アメリカにおける電力会社に対する付加的な公的規制(利潤率規制)に類似した面があるのではないかとの問題意識をもっていました。すなわち、付加的な利潤率規制には、電力会社の資本装備を過大にするという効果があるのと同様に、量的制約には、税制や補助金の存在と同様に資源配分を歪める効果があります (Averch=Johnson (1962))。日本の銀行に対する2つの付加的な量的制約が資源配分に与える効果を考慮すれば、金融市場における金利機能の向上とともにその役割を終える運命にあったといえます。

自己資本比率規制の導入

 民間銀行の健全性については、1988年12月に、BISによる自己資本比率規制が日本にも導入されました。さらに、2007年3月には、銀行におけるリスク管理をより効率的に行なうことを狙いとした新しいBIS規制の導入が予定されています。

 自己資本比率規制は、民間銀行の健全性を維持するという観点から、新たな「バランスシート規制」を課すものです。岩田=浜田の枠組みで考えますと、リスクウエイトが100%とされる企業向け銀行貸出に対する付加的な制約が課されることを意味しています。強制的な自己資本比率(8%)が課されると貸出の限界純収入は、自己資本比率規制が賦課されない場合と比べて、上昇することになります。貸出の機会費用である市場金利に自己資本比率規制である8%をかけた分だけ、銀行貸出の供給曲線は上方にシフトし、同じ貸出金利の下での貸出供給量は減少することになります。

 この貸出供給減少効果は、預金準備率の賦課が預金供給に与える効果と類似しています(付録I参照)。Montgomery(2005)は、国内基準行はともかく、国際基準行にとって、コア資本の制約が強い時期には、自己資本比率規制の存在が銀行の貸出行動に有意な影響を与えたことを報告しています。また、自己資本比率の低下は、保有する担保が乏しいために直接金融へのアクセスが限定されており、銀行にとってはモニタリング費用のかかる中堅中小企業向けを中心とする融資を抑制したとの研究結果もあります[注3]。他方で、自己資本比率規制は、預金供給には直接影響が及ばないこともあり(岩田一政(1995))、銀行は貸出を減少させる代わりに、リスクウエイトがゼロである国債保有を大幅に増加させました。

 この自己資本比率規制の効果は、銀行保有資産のリスクを明示的に考慮する場合には、やや異なったものとなります。自己資本比率規制がリスク資産である貸出を減少させるかどうかは、代替的な保有資産と銀行貸出の分散や共分散の大きさに依存しているため、貸出を減少させるかどうか不確定になる可能性があります。

 また、民間銀行にとって最適なリスクウエイトと現実のBIS規制のリスクウエイトが乖離する場合には、——新しいBIS規制ではこの乖離を埋めようとする試みがなされている訳ですが——資源配分を歪める効果をもつことになります。さらに、マクロ経済情勢が悪化し、銀行部門全体がマクロ的なショックを受けた場合、同一の自己資本比率を維持することが適切かどうかという議論があります。しかし、一方で、好況期に不況期の備えとして自己資本を蓄積しておくようなリスク管理がなされるべきだとの議論もあります。いずれにしましても、BIS規制が、民間銀行のリスク管理に対する自己規律を強めるよう作用したことは確かでしょう。

ゼロ金利政策

 これまでみたような、金融政策の実施手段の変化や、規制環境の変化に止まらず、金融政策運営という面で、わが国は、ここ数年の間に、25年前には想像もできなかった局面を迎えました。

 1980年代後半の資産価格バブル崩壊の後、1990年代後半から日本経済はデフレという戦後経験したことのない問題に直面することになりました。日本銀行は、1999年2月に、デフレ懸念を払拭するために「無担保コールレート(オーバーナイト物)をできるだけ低めに推移するよう促す」ゼロ金利政策を採用しました。日本銀行は、景気回復が進むなかで、2000年8月にゼロ金利政策を解除し、オーバーナイトのコ−ルレートを0.25%に引き上げました。しかし、ゼロ金利を解除した後に、日本経済は米国を中心とするITバブルの崩壊もあって後退を始め、デフレは深化することになりました。

量的緩和政策

 2001年3月には、デフレの進展を阻止することを目指して量的緩和政策を採用しました。量的緩和政策は、短期金利を操作目標とはせず、民間金融機関が日本銀行に預ける「当座預金残高」を操作目標にしています。当座預金残高といっても、6兆円程度の所要準備がありますので、「超過準備目標政策」といってもよいでしょう[注4]

 この目標を達成する手段としては、短期の手形、短期国債のオペレーションなど短期の市場調節に加えて、短期の市場調節によって目標達成が困難である場合に長期国債の買入れ増額を行なってきました。

 2001年3月以降、日本銀行が採用している量的緩和政策は、過去の「貸出限度額規制」とは3つの点で異なっています。

 第一に、金融引締めを目的とする政策ではなく、民間銀行が望ましいと思う銀行準備よりも多くの流動性を供給し、デフレを克服しようとする政策であることです。

 第二に、個別銀行による日本銀行からの「借入れ準備」に対して量的制約を課すものでなく、金融調節を通じて市場に流動性を供給する政策であることです。すなわち、日本銀行の当座預金取引先である金融機関全体に対して預金準備を上回る「当座預金残高」目標を達成しようとする政策です。この量的緩和政策の下で、短期金利は、直接の操作目標ではありませんが、事実上ゼロに貼りつく状況になっています。

 第三に、この量的緩和政策を終了するためには、「安定的にコアの消費者物価指数がゼロ%を上回ること」という条件が満たされることが必要であるという事前のコミットメント(約束)がついています。

 このコミットメントの効果を分析するためには、政策評価のための動学的な枠組みが必要です。1990年代以降、動学的な一般均衡モデルを用いて最適な金融政策のあり方を探る研究は大きく進捗しています[注5]

量的緩和政策の役割

 量的緩和政策の役割を巡っては、様々な議論があります。比較的異論の少ない点は、金融システムの安定化効果と、イールド・カーブに対する政策持続効果でしょう。量的緩和政策は、市場に十分な流動性を供給することを通じて金融市場や金融システムを安定化させた、といってよいでしょう。株価が急落し、金融市場が不安定化した時期に、量的緩和政策が金融仲介機能を支え、デフレスパイラルを回避する上で大きな役割を演じたことは確かであると思われます。

 民間銀行は、負債の側でいつでも引き出しの可能な預金を受け入れる一方、資産として貸出——その中には、長期の貸出のほか、短期であっても一定のクレジットラインに基づきロールオーバーされることが前提となるものや、明示的なコミットメントラインに基づくものもあります——を供与しています。負債、資産の両面で共通しているのは、顧客の必要に応じて流動性を供給するというコミットメントを行なっていることです。量的緩和政策には、潤沢な流動性を供給することを通じて、民間銀行の流動性供給に関するコミットメントを補強する効果があると言えます。

 資産価格の急落や為替レートの大幅な変動といったマクロ経済的なショックにより民間の流動性供給が不足する状況の下で、公的な流動性供給のニーズは極めて高かったと言えます。換言すると、日本銀行による大量の流動性供給は、銀行部門の流動性管理について、市場を通じる取引を日本銀行をカウンターパーティとする取引が補完することによって、システミックリスクを防止する役割を果したと解釈することも出来ます[注6]

 また、量的緩和政策の持続性について事前のコミットメントがついていることによって、将来の利子率に関する市場の期待に働きかけることが可能です(政策持続効果)。この「政策持続効果」が利子率に与える効果については日本銀行を中心に多くの実証分析が行なわれています。これら実証分析の結果は、デフレ克服を実現する程に十分な刺激効果を持ったかどうかは確かではありませんが、少なくとも1~2年の範囲であれば、利子率に対する政策持続効果は作用していたことを示しています(図表1)。

 注意すべきことは、市場利子率から観察される政策持続効果は、量的緩和政策のみならず景気動向やデフレ脱却の可能性によって影響を受けることです。量的緩和政策の強化にもかかわらず、2003年半ば以降、政策持続効果の及ぶ期間がやや短縮化していますが、景気の回復に伴って、期待物価上昇率がプラスの方向にシフトしていることが作用している可能性があります(図表2)。

 また、当座預金残高目標の引き上げは、市場に対する流動性供給を増加させるのみでなく、ゼロ金利の下で日本銀行の政策目標達成のためのコミットメントを強化し、「政策持続効果」(時間軸効果)を強める効果がありました。量的拡大のアナウンスメントは、金融緩和方向への政策運営のシグナルを市場に送り、景気を下支えするという役割を果したといえます。

 当座預金残高目標の引き上げや長期国債の買入れ増額についても、相対的にその効果は小さく、明確に取り出すことは容易ではないものの、市場利子率に与えた可能性を否定することが出来ないとの実証結果も得られています[注7] (Oda and Ueda(2005)、Bernanke, Reinhart and Sack(2004))。

 ゼロ金利といっても市場金利がすべてゼロにはなっていないことを考慮しますと、量の代わりに金利を金融政策の操作目標として採用し続けることも理論的には可能です。

 現実に、デフレが克服されるまで、翌日物の金利から始まってゼロ金利の範囲をより長い満期の金利に順次及ぼしてゆく政策を採用すべきであるという提案もあります (Orphanides and Wieland(2000))。当座預金残高目標を引き上げる過程で短期の金融市場調節の対象となる手形の満期は1年近くまで延長され、1年物の金利はゼロ金利に接近していることを見ますと、量的目標の引き上げは、この提案が勧める金利面での変化を伴っていたといえます。

量的緩和政策を巡る4つの批判

 私自身は、量的緩和政策は、この「金融システムの安定化」、「政策持続効果」という効果以外にも重要な役割を担っていると考えています。他方で、銀行貸出はむしろ減少を続けており、量的緩和政策が金融市場や経済活動に与える効果はゼロであるので、早期に終了した方がよいとする批判があります。以下では、代表的な批判を示した後、それに対する反論を提示するかたちで、量的緩和の役割を改めて整理してみたいと思います。なお、その際に、まずは、——この講演のタイトルにもありますとおり——25年前に模索した岩田=浜田モデルの拡張というかたちで論点を整理し、それでもなお捉えきれない側面を、拡張したモデルを別途の視点から補うかたちで検討したいと思います。

 量的緩和の役割に関する第一の批判は、短期金利がゼロ金利になっている場合には、流動性の供給が金融市場に与える効果は小さいものになり、かりに、経済が「流動性の罠」に陥っているとすれば、量的緩和政策の効果はゼロになるというものです。

 第二の批判は、当座預金残高目標を達成する過程において、短期の資金供給による効果はゼロであり、長期国債の買入れによる資金供給についてのみ効果があるというものです。

 当座預金(貨幣)と代替性の高い債券(手形や短期国債など)は、市場調節によって入れ替えを行なっても意味がないが、代替性の高くない債券(長期国債や外貨建て債券)を用いた市場調節には効果があると主張するものです。本年4月末時点で、短期オペの残高が60兆円弱あるのに対し、長期国債は毎月1.2兆円(年間14.4兆円)買入れており、残高も66兆円程度ありますが、この後者の分のみが有効であるとするものです。

 第三の批判は、かりに量的緩和政策が金融市場に何らかの影響を与えたとしても、景気を下支えし、デフレ脱却を実現するために十分な効果をもっていないのではないかという点に向けられています。

 最後に、第四の批判は、量的緩和政策は、市場機能を麻痺させ、投資家のリスクテイクを容易にしすぎることによって資産価格のバブルを促進するなどの副作用が大きすぎるという点を強調するものです。

量的緩和政策の有効性

 では、岩田=浜田モデルの枠組みをいくらか拡張した上で、量的緩和政策の有効性を検討するとどのようなことが言えるのでしょうか?ここでは、自己資本比率規制の効果と貸出市場の需給決定要因を明示的に取り入れた上で、量的緩和政策が銀行貸出や市場利子率に与える効果を調べることにします。銀行貸出の供給は、銀行の利潤最大化から導くことが出来ます。銀行貸出に対する需要については、貸出金利、国債金利と企業部門の最適な債務比率からの乖離比率によって影響を受けると仮定します(付録I参照)。

 拡張された岩田=浜田モデルの枠組みから、量的緩和政策に対する第一と第二の批判について以下のようなことが言えます。

 まず、第一に、当座預金残高引き上げの有効性は、当座預金残高目標実現のために実施される短期、長期の市場オペレーションを通じた資金供給増加が金融市場や経済活動に与える効果の有効性の問題に帰着するということです。

 第二に、この市場オペレーションを通じた資金供給増加の効果は、すべての金利がゼロではないという状態の下で、市場利子率(ここでは国債、貸出の利子率)に与える効果を通じて銀行の貸出行動に影響が及ぶことになります。

 第一の批判が指摘するように、銀行部門の段階で銀行準備の利子弾力性が無限大になる「流動性の罠」に陥っている場合には、資金供給増加の効果はゼロになります。しかし、かりに短期の市場利子率がゼロに張り付いていたとしても、より長めの金利が正である限り、そしてその金利が資金需給に反応して変動し、銀行が望ましいとする超過準備が変化する限り、銀行部門の段階で「流動性の罠」にあるとの判断を下すことは適当ではないでしょう。

 「流動性の罠」に陥っていない場合には、十分に大きな刺激効果があるかどうかその大きさを実証的に確かめる必要があるものの、貸出供給行動にプラスの効果が発生するはずです。さらに、市場利子率の変化を通じて国債市場における需給が変動するので非金融民間部門の資産選択行動にも影響が及ぶはずです。 

 第三に、企業が望ましいと考える債務を上回る超過債務の存在、または、企業部門が保有する担保価値の圧縮は、銀行貸出を減少させ、市場利子率を低下させる効果があります(付録I)。企業の超過債務の大きさは、バブル期前からバブル期ピークにかけての銀行貸出増加分として捉えると、GDP比率でみて2~3割程度(100~150兆円)存在したと推定されますが、この超過債務は、90年代後半以降、徐々に減少に向かいました(図表3)。短期借入金について中小企業は1995年以降、大企業は97年以降、長期借入金については、大企業、中小企業とも98年以降減少に転じています。巨額の債務返済は、銀行貸出を減少させるとともに、金融緩和政策ともあいまって、市場金利を低い水準で安定させました。

 量的緩和政策の実施にもかかわらず銀行貸出が減少を続けているのは、企業部門が超過債務を返済し続けているからです。現在でも非製造業の中堅中小企業を中心として、最適な債務比率を上回る債務が存在しており、債務圧縮圧力が残っています[注8]

 量的緩和政策が新規の企業向け貸出を増加させる効果があったとしても、企業の債務返済額の方が大きければ、ネットでは銀行貸出は減少します。

 加えて、金融資本市場では銀行優位の間接金融システムから資本市場の機能活用に重点をおく市場型システムへの転換が起こりつつあります。こうした構造変化の下では、量的緩和政策の実施が銀行貸出に与える効果は減殺されることになりますが、それでもなお、政策の有効性自体を否定するものではありません。何故なら、この政策がとられていなかったとすれば、銀行貸出の減少はより大きなものになっていたはずだからです。実際に、銀行貸出残高の減少幅は、わずかずつではありますが、着実に縮小しています。また、第二地銀を含めた地銀の銀行貸出の前年比は、正の伸びとなっています(図表4)。

 なお、企業が過剰債務の削減を優先する局面では、量的緩和の「政策持続効果」による長めの金利の低下が、企業の利子負担軽減——もちろん、その裏では家計部門が多額の利子所得を失った訳ですが——を通じて、企業部門の債務削減を後押しした可能性があります。これは、岩田=浜田モデルのインプリケーションからすればやや逆説的ではありますが、量的緩和のポジティブな役割と捉えられるでしょう。中小非製造業を中心とする過剰債務が解消すれば、銀行部門全体の貸出も増加に転じる可能性があります。

デフレ克服についての有効性

 これまで、岩田=浜田モデルを拡張した枠組みによって、量的緩和に対する批判に応えました。しかし、量的緩和に対する第三の批判および第四の批判——量的緩和政策は、デフレ脱却に対して十分な有効性をもっていないのでないかという批判と、量的緩和には副作用が大きすぎるのではないかという批判——に応えるには、これを超えた視点が必要となります。

 そもそも、日本のデフレについては、2つの見方があります。1つは、経済に大きなマイナスの需要ショックがあり、実物資本の需要と供給を等しくする自然利子率が一時的に大きく低下した結果、デフレになったとするものです。すべての市場金利がゼロになっている状態ではないことに着目すると、自然利子率の一時的な落ち込みであるという見方も成り立ちます。

 もう1つの見方は、マクロ的なショックがあり、名目金利がゼロ以下にはならないという制約に直面したために、ゼロ金利の下でデフレ均衡に陥ったというものです。自然利子率には大きな変化がないとしても、名目金利がゼロであるために、デフレ率が実質金利(=自然利子率)に等しくなる状態(フリードマン均衡)になったとするものです。日本は、GDPデフレータで見る限り90年代半ば以降緩やかなデフレにあり、景気循環を超えたデフレが持続しているという意味では、デフレ均衡の近傍にあると見ることも出来ます(岩田一政(2002))、岩本康志(2004))。

 前者の見方に立つとすれば、自然利子率が回復した後でも、より長く緩和政策を継続するというコミットメントを行うことによってデフレを克服することが可能になります。ここで重要なポイントは、「より長く」緩和政策を続けるというところにあります。

 FRBのBernanke理事は、一昨年の金融学会の講演でデフレに陥る前であれば、この方法で対応が可能であるが、実際にデフレに陥った後では、マネーでファイナンスされた減税と「物価水準目標政策」の組み合わせを採用することを勧めています(Bernanke(2003))。この処方箋の本質は、減税をマネーでファイナンスするので将来政府債務が増加しないという意味での「非リカード型財政政策」と「物価水準目標政策」の2つの政策の組み合わせにあります。

 「物価水準目標政策」は、物価水準の一定の径路を常に維持するという意味で「タイムレス・パースペクテイブな政策」です。裁量的な政策は初期条件の変化があるたびに将来の政策を組み直す政策であり、動学的な整合性に欠け、最終的には中央銀行に対する信頼が失われるという問題があります。これに対して「物価水準目標政策」は、経済における初期条件の相違を無視することによって動学的な整合性を維持しようとする政策です。

 現実に「物価水準目標政策」を適用しようとする場合には、日本のようにすでに長期間デフレを経験している経済では、デフレ基調が定着する以前を初期時点とすれば、初期時点と一定の上昇率で推移する物価水準径路との差が大きいため、物価上昇率が一時的に大きく上昇すること(オーバーシューテイング)が求められることになります。日本のように政府債務と財政赤字幅が大きい経済において、物価水準一定の径路に復帰する移行過程で長期金利の大きな振れを招くリスクのある政策を実行することは困難でしょう。

 日本のデフレがデフレ均衡の状態に近いとする見方をとる場合にも、Bernanke理事の処方箋は示唆を与えてくれます。仮に政府が10年程度で本源的赤字をゼロにするという緩やかな財政健全化目標に沿った政策を採用する場合には、政府債務の残高が名目値で増加し、実質値の伸びは自然利子率(=デフレ率)を上回るはずです。この結果、家計の異時点間の予算制約を考慮しますと、消費者には使い残しが生ずることになります。消費者はこの使い残し分を支出しようとするので、「異時点間のピグー効果」が発生することになります。

 ここで注意すべき点は、物価上昇率が正である正常な均衡の下では、本源的な赤字をゼロにする政策は、消極的な(リカーデイアン型)財政政策ですが、デフレ均衡の下では積極的な(非リカーデイアン型)財政政策になることです[注9]

 政府債務のみならず中央銀行の債務であるマネタリーベースも考慮しますと、民間部門にとっての外部資産である政府債務とマネタリーベースの和が、名目値で増加を続けるとすれば、「異時点間のピグー効果」が発生するはずです。賃金の伸びが名目でも実質でも減少した停滞期においても、個人消費は、底固い動きを示してきました。60歳以上の高齢者による純金融資産保有は、700兆円程度に達するとの試算もあり、預貯金保有比率も高い水準にあります。この高齢者の消費性向が近年高まりを示し、個人消費を下支えする要因になっていることは、ピグー効果の存在を示唆しているように見えます[注10]

 以上のことからコア消費者物価の変化率が「安定的にプラスになるまで」量的緩和政策を続けるというコミットメントが明示された量的緩和政策と本源的な赤字をゆっくりと減少させる財政政策の組み合わせによって、デフレ均衡から出ることが可能になるはずです。

 量的緩和政策のコミットメントは、日本銀行が物価上昇率が安定的にプラスになることを望んでいることを間接的に市場に伝えています。この意味で、コミットメントは、「物価安定の錨」を提供する役割を果しているといえます。他方で、「物価水準目標政策」のもつメリットである「物価水準目標」を達成しなかった場合には、将来これを取り戻すという鞭(歴史依存性)がついていないことに留意する必要があります。

デフレ脱却と速度制限論

 理論的にデフレ脱却することが可能であるのみならず、コアの消費者物価は、2002年を底にして少しずつデフレ幅を縮小させ、基調的なコア消費者物価は、0.1−0.2%のマイナスで推移しています(図5、6)。この過程で重要なことは、GDPギャップの水準ではなく、GDPギャップの縮小幅がデフレ幅縮小に対応しているということです。デフレ幅の縮小は、現実の実質成長率が潜在成長率を上回ることによって実現します。

 GDPギャップの水準ではなく、変化に注目する見方は「速度制限論」と呼ばれています。「速度制限論」は、1930年代のアメリカでデフレギャップがゼロとなる以前に、デフレ幅が縮小したことに由来しています。

 さらに、テーラー・ルールの決定要因としてGDPギャップに加えて、GDPギャップの変化を入れた方が金融政策の成果を高めることが出来るという主張もあります。

 「速度制限論」は、フィリップス曲線から導出することが出来ます(付録II)[注11]。GDPギャップの縮小が物価上昇率を押し上げる大きさと現実のコア消費者物価のデフレ幅縮小がほぼ見合ったものであることは、コア消費者物価上昇率が、GDPギャップとの関係を示す過去20年のフィリップス曲線の傾きに沿った形で推移していることから見て取ることが出来ます(図表7)。

ゼロ金利の基本的な問題点

 最後に、量的緩和政策の副作用のうち、市場機能や市場規律がうまく機能せず効率的な資源配分が損なわれるという第四の批判については、量的緩和というよりも短期金利がゼロであることに基本的な原因があります。ただし、景気回復が持続し、デフレ克服の可能性が高まってくるに従って、ゼロ金利が長めの金利に与える効果は次第に弱まり、期間の長い金利からイールドカーブの傾きが急になってくると考えられます。

 ゼロ金利は、ミクロ的な市場機能を損なうばかりでなく、マクロ経済にも問題を引き起こします。一般的にいって、利子率を一定水準に維持する政策を採用する場合、貨幣供給量のコントロールが困難になり、物価のコントロールも難しくなります(Woodford(1995))。ゼロ金利の下でデフレが持続する状況の下では、貨幣供給量の変化と物価水準の関係はより一層不明確になる可能性もあります[注12]。このことは、日本銀行が「物価安定の錨」をしっかりと下ろすことが、どこの国よりも重要であることを示唆しています。

 仮に物価上昇率がゼロ以上になった場合には、量的緩和政策のコミットメントにおける「安定的にゼロを上回る」、あるいは「デフレに再び戻らない」という言葉の意味を数値的に明確化することが求められることになるでしょう。

結び

 日本経済が、4月末に公表した「展望レポート」のシナリオに沿って、潜在成長率を上回る成長を続けるとすれば、デフレを克服することは可能です(参考表)。さらに、不良債権問題の処理に伴って資源配分が改善する結果、全要素生産性が上昇し、自然利子率が回復することが期待できます。また、デフレ幅が縮小する中で期待物価上昇率がプラスになってきていることを考慮しますと、名目金利はゼロのままであったとしても実質金利が低下することになります。銀行の超過準備に対する需要が減少する中で、同じ当座預金残高を維持することは、流動性の超過供給の度合いがより強まっていることを意味しています。自然利子率の上昇と実質金利の低下とがあいまって、デフレ克服の可能性はますます高まってくることになります。

 正常な均衡への回帰の過程において、量的緩和政策におけるコミットメントが有している「物価安定の錨」の機能を活用すること、さらに正常な均衡に復した場合でも中長期的に望ましい物価安定の数値的な定義を明確にしておくことが、経済をデフレにもインフレにもしない上で必要になると思います。

以上

脚注

  1. [注1] 2つの付加的な量的制約は相互に連関している。例えば、民間銀行が日本銀行の定める「貸出増加額規制」を上回って貸出を行なう(含み貸出)と、派生預金の増加から超過準備が増加する。この時、「貸出限度額規制」の制約が緩和され、金融政策の引き締め効果が減殺されることになる。
  2. [注2] なお、2001年2月に補完貸付制度(「ロンバート型貸付」制度)が導入された。この補完貸付制度は、予め明確に定められた条件で、しかも担保価額の範囲内で日本銀行が資金を受動的に供給する制度である。過去の金融政策の資金供給手段としての日本銀行貸出とは異なり、金融市場の円滑な機能の維持と安定性確保を目的としている(日本銀行(2004))。
  3. [注3] 自己資本比率規制が、銀行のポートフォリオ、国債保有、貸出に与えた効果についてはMontgomery(2005)を参照されたい。とりわけ、非上場企業の設備投資活動に対して、メインバンクの健全性指標としての自己資本比率の低下が有意なマイナスの影響を与えたことについては、福田=粕谷=中島(2005)を参照されたい。
  4. [注4] あるいは、民間銀行による日本銀行からの借入れは、現在の時点でほとんど存在していないことを踏まえれば、ボルカー議長の下で米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策運営で用いた「非借入れ準備」を操作目標にしたと言ってもよい。1970年末から80年代初めにかけて、FRBは、インフレを抑制するためには、貨幣供給量(M1)の伸びを低下させることが不可欠であると考え、操作目標として、伝統的なフェデラルファンド・レートではなく、銀行準備の供給量、より詳しく言うと銀行準備から中央銀行借入れを除いた「非借入れ準備」を操作目標とする引き締め政策を採用した。この時、市場金利は高騰し、大きく変動したが、公開市場操作を通じて銀行準備を絞り込むことによってインフレ克服に成功した。なお、この際、「影の公開市場操作委員会」を中心とするマネタリストは、操作目標として「非借入れ準備」の代わりにマネタリーベースの伸びを6%とするよう勧告していたが、現実には採用されなかった(Lindsey=Orphanides=Rasche(2005))。
  5. [注5] Neo-Wicksellianの金融理論に基礎をおく一般均衡の枠組みの中で最適な金融政策のあり方を論じた書としてWoodford(2003)がある。
  6. [注6] Rochet=Tirole(1996)は、システミックリスクに対して、中央銀行を中心とする民間銀行の流動性管理や政府による民間銀行の債務保証よりも、民間銀行の自主的な相互モニタリングが重要であると論じている。他方、決済システムにおいて、日中の流動性リスクを市場が効率的に価格付けすること(第三者に影響が及ぶ可能性のある流動性リスクに保険をかけること)が困難であるとすれば、中央銀行が流動性をゼロ金利で供給することによって効率性を高めることが出来る。現実に、日銀ネットやヨーロッパにおけるTARGETなどの決済システムにおいて、中央銀行は担保を要求した上でゼロ金利での当座貸越を行なっている。量的緩和政策の下での日本銀行によるゼロ金利での流動性供給は、オーバーナイトの取引について日中の流動性リスクに対する中央銀行による当座貸越と類似した役割を果すことを意味している。
  7. [注7] Oda=Ueda(2005)は、ゼロ金利のコミットメントを考慮した上で、量的拡大に伴うシグナル効果について、その規模は大きくないが、市場がシグナルとして受け取った可能性があると指摘している。Bernanke=Reinhart=Sack(2004)は、イベント・スタデイに基き、長期国債の買入れが長期金利や株価に影響を与えた可能性について実証分析を行なっている。
  8. [注8] 西岡=馬場(2004)は、最適資本構成の理論に基く最適負債比率と現実の負債比率の差を過剰債務比率と定義した上で、東証上場第1部の企業のうちA格以上については過剰債務の調整がほぼ終了しているが、BBB格以下の企業については2000年度頃まで過剰負債比率が上昇しており、調整にはなお時間が必要であると論じている。
  9. [注9] ここでの「リカーディアン型財政政策」とは、物価水準の径路の変化にかかわりなく、遠い将来の政府債務の割引現在価値がゼロになる政策を意味している(Woodford(1995))。
  10. [注10] 異時点間のピグー効果によってデフレ脱却を図るという考え方は、Benhabib,Schmitt-Grohe and Uribe(2002),岩本康志(2004)にも共通している。
  11. [注11] 付録IIは、前連邦準備理事ローレンス・マイヤー氏との会話に基くものである。ニューケインジアンのモデルを採用する場合でも、同様の結果を得ることが出来ることについて塩路悦朗氏よりコメントを頂いた。また「インフレを加速させない失業率」モデルにおいて、ラグ構造は複雑になるが、GDPギャップの水準とその変化が物価上昇率の加速・減速に影響を与えると田中=木村(1998)は指摘している。
  12. [注12] Cole=Kocherlakostas(1995)は、消費をするには前もってキャッシュを用意する必要があるという強い仮定を置いた場合にも、名目金利がゼロとなり、デフレ率が自然利子率に等しくなる「フリードマン均衡」は、長期的には近似的に時間選好率を越えない率での貨幣供給量の縮小が必要であるが、短期的には貨幣供給量の大幅な変化と両立すると論じている。

参照文献

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