公表資料・広報活動

ホーム > 公表資料・広報活動 > 講演・記者会見 > 講演・挨拶等 2005年 > 「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明── 平成17年10月18日、参議院財政金融委員会における福井日本銀行総裁報告(岩田副総裁代読)

「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

平成17年10月18日、参議院財政金融委員会における福井日本銀行総裁報告(岩田副総裁代読)

2005年10月18日
日本銀行

[目次]

はじめに

 日本銀行は、去る6月、平成16年度下期の「通貨及び金融の調節に関する報告書」を、国会に提出いたしました。本日、日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

日本経済の動向

 最初に、最近の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

 わが国の景気は、昨年夏以降続いていた景気の「踊り場」から脱却し、回復を続けています。

 この点をやや詳しくご説明しますと、輸出は、ひと頃中国向けを中心に伸び悩みがみられましたが、海外経済の拡大を背景に緩やかな増加を続けています。生産も、IT関連分野における在庫調整が一巡したこともあり、振れを伴いつつ増加傾向をたどっています。設備投資は、企業収益が高水準を続け、企業の業況感にも小幅の改善がみられるもとで、広範な業種にわたって着実に増加を続けています。また、家計部門については、企業が過剰雇用の調整や人件費の抑制を進める中で、長らく厳しい状況に置かれてきましたが、このところ、雇用者数の増加が続き、賃金も増加に転じていることから、雇用者所得は緩やかに増加しています。このように雇用・所得環境は着実に改善しており、そのもとで、個人消費は底堅く推移しています。

 先行きについても、海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられるほか、国内民間需要も、企業の過剰設備や過剰雇用などの構造的な調整圧力が概ね払拭されたもとで、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高いと考えられます。こうしたことから、緩やかながら息の長い景気回復が続いていくとみられます。もとより、高騰を続ける原油価格やそのもとでの海外経済の動向など、景気に対するリスク要因は存在しており、十分注意を払ってみていく必要があると考えております。

 物価面についてみますと、国内企業物価は、原油価格高騰の影響などから上昇しており、先行きも、上昇傾向をたどるとみられます。消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比については、規制緩和等に伴う電気・電話料金の引き下げの影響もあって、小幅のマイナスとなっています。先行きについては、米価格の下落や電気・電話料金引き下げといった一時的な要因の影響が剥落していく過程で、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくとみられます。その後も、潜在成長率を上回る成長が続くとみられ、需給ギャップは縮小を続けることなどを踏まえますと、基調として、消費者物価の前年比上昇率は高まっていく方向にあると考えております。

 金融面では、企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にあります。金融機関の貸出姿勢は積極化しており、こうしたもとで、民間銀行貸出は、98年以降減少を続けてきましたが、このところ減少幅が緩やかに縮小し、足もとでは前年並みの水準となっています。また、CP・社債といった資本市場を通じた資金調達環境も良好な状況が続いています。

最近の金融政策運営

 次に、最近の金融政策運営について、申し述べさせて頂きます。

 日本銀行は、量的緩和政策のもとで潤沢な資金供給を続けております。先週10月11日、12日に開催された金融政策決定会合においても、「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標を維持することを決定いたしました。

 量的緩和政策の枠組みは、日本銀行が、金融機関が準備預金制度等により預け入れを求められている額を大幅に上回る日本銀行当座預金を供給することと、そうした潤沢な資金供給を消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで堅持することを約束すること、の2つの柱から成り立っています。

 このうち潤沢な資金供給は、金融システムに対する不安感が強かった状況において、金融機関の予備的な流動性需要に応えることを通じて、金融市場の安定と緩和的な企業金融環境の維持に大きく寄与しました。その後、本年4月よりペイオフの全面解禁が行われるなど、金融システム不安が大きく後退するもとで、金融機関の予備的な流動性需要は趨勢的に減少してきています。日本銀行では、こうした情勢を踏まえ、5月の金融政策決定会合以降、市場機能への影響にも配慮しながら最大限の資金供給努力を行ったうえで、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高が一時的に目標値を下回ることがありうることとしています。これは、金融市場における価格形成や効率的な資金配分を極力阻害せずに資金供給を行うことで、量的緩和政策をより円滑に運営していく観点から実施しているものです。

 現状では、量的緩和政策は、市場金利の安定を通じて、企業が引き続きコスト面で安定した資金調達を行うことを可能にするなど、緩和的な金融環境の維持に貢献しています。このような金利を通じた景気支援効果は、景気が回復し、企業収益が改善する状況において、強まっています。

おわりに

 以上申し述べましたとおり、日本経済は、「踊り場」を脱却し、回復を続けております。先行きについても、緩やかながら息の長い景気回復を続けていくとみられますが、この点については、今後とも丹念にみて参ります。日本銀行では、明後日、支店長会議を開催する予定ですが、地域経済の状況についても、各地の支店長からの報告をもとに、しっかりと点検したいと考えております。

 日本銀行といたしましては、今後とも、経済物価情勢を良く見極めながら、適切に政策運営を行って参ります。現在、消費者物価指数の前年比が小幅のマイナスとなっているもとにおいては、先程申し上げた「約束」に沿って金融緩和を続けることで、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現のために、金融面からの支援を行う所存です。

 こうした政策面での対応に加え、日本銀行が、わが国の中央銀行として、国民のみなさまから負託された責務を適切に果たしていくため、本年3月に策定いたしました「中期経営戦略」に沿って、私どもが提供する様々な中央銀行サービスの高度化を進めるとともに、規律ある組織運営に引き続き努めて参りたいと考えております。

 ありがとうございました。

以上