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平成23年度入行式における白川総裁挨拶

2011年4月1日
日本銀行

皆さん、日本銀行への入行、誠におめでとうございます。この場に出席されている94名の方に加えて、支店で入行式を迎える25名の方を合わせ、119名の新入行員が、本日から私たちの仲間に加わりました。皆さんの元気なお顔を拝見し、たいへん嬉しく感じます。皆さんは、今、大きな希望を胸に抱かれて、この場に臨んでいることと想像します。私も39年前の今日、皆さんと同じようにこの部屋で入行式に臨んだことをつい昨日のことのように思い出しますが、これから皆さんと一緒に仕事をする日本銀行の役職員を代表して、心より歓迎の言葉を申し上げます。

私もそうでしたが、入行した時のことは後々まで強い記憶となって残るものです。余りにも痛ましいことですが、去る3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、多くの尊い命が失われました。そして多くの方が被害を受け、今なお、過酷な生活を余儀なくされています。経済活動をみても、東北地方だけでなく、他の地域においても、生産活動を中心に大きな影響が及んでいます。しかし、復興に向けた動きも始まっています。他の多くの人と同様、私も、日本が困難に直面した時に発揮する力や強靭さを信じています。国民が力を合わせれば、日本はこの試練を必ず乗り越え、復興と新たな発展を遂げていけると確信しています。日本銀行は、通貨、金融という仕事を通じて、そうした国民の努力をしっかり支えていかなければならない立場にあり、地震の発生直後から、本支店・事務所が一体となって使命達成のため懸命に取り組んでいます。

日本銀行の使命は、「物価の安定」と「金融システムの安定」です。普通の言葉で言うと、「人々が通貨を安心して使えるようにすること」です。具体的には、全国どこでも現金が円滑に流通し、預金による受払が安全確実に行われ、物価も安定している状態を実現していくことです。これらは国民生活や経済活動の基盤とも言えるものであり、そのいずれが欠けても健全な国民生活は損なわれ、ひいては経済の発展は実現しません。

今回の大地震を経験し、日本中の誰もが、様々なインフラ、基盤が円滑に運行することの重要性を改めて認識させられています。日本銀行は、1882年の創立以来、130年近くにわたり、通貨、金融の基盤を提供するという仕事を担ってきました。我々の先輩は、関東大震災の時も、阪神・淡路大震災の時も、被災当日も含めて全ての店舗で営業を続けました。今回の大震災でも、仙台・福島支店をはじめ、全ての本支店・事務所が通常通りの営業を続けており、通貨、金融の基盤は大きな障害なく機能しています。どの組織も自ら提供するサービスや商品を通じて社会に貢献していますが、日本銀行も同様であり、通貨、金融の基盤提供という面で、普段は「あたりまえ」と思われ余り意識されないことを、危機時を含め本当に「あたりまえ」にしていくことを通じて、社会に貢献することを目的としています。日本銀行で働いている人はそのことを日々の仕事を通じて学び、また、職場の先輩から学んできました。私はそうした日本銀行の遺伝子を大変誇りに思っています。今はまだ実感として感じにくいかもしれませんが、皆さんも、高い志と強い使命感をもって仕事に取り組み、日本銀行員の遺伝子をしっかりと受け継いでいって欲しいと願っています。

日本銀行が直面してきた困難は、もちろん災害に限りません。むしろ、「平時」という言葉を使う暇がないほど、大きく変化する経済・金融環境の中で、常に様々な課題への挑戦を求められ続けてきました。私が日本銀行に入行した1972年の前年には円の切り上げが行われ、翌年には、為替相場が固定相場制から変動相場制に移行し、続いて2度にわたるオイルショックを経験しました。1980年代後半以降は、バブルの発生・崩壊を経験し、深刻な不良債権問題や金融危機、そして長期にわたる経済の低迷やその下での緩やかな物価の下落という問題への対応が求められました。リーマン・ブラザーズの破綻を契機とした世界的な金融危機は、皆さんの記憶にも新しいことと思います。この間、情報通信革命やグローバル化の進展には目覚しいものがあり、経済や金融の姿にも、日々の仕事の進め方にも大きな変化をもたらしてきました。変化はいつもそうですが、最初はその事実も具体的な意味合いも、なかなか認識できません。しかし、変化に早く気付き、的確な対応をしていけるかどうかが、その組織に対する社会の信頼を決定的に左右します。日本銀行はこれまでも、常に政策や業務のフロンティアを切り拓きながら、様々な課題に挑戦してきました。日本銀行に与えられた使命を達成するためには、社会や経済・金融の環境変化を敏感に捉えながら新たな可能性を模索していくという姿勢が不可欠です。皆さんには、是非、好奇心、挑戦する心、そして行動力を大切にして欲しいと思います。

最後になりますが、しっかりと仕事をしていくためには、心身が健康であることが大前提となります。社会人になり環境が変わると、体調に変化をきたしやすくなるだけに、健康管理には十分に留意され、元気に活躍されることを祈念しています。これから力を合わせて、ともに頑張りましょう。