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【挨拶】

デフレからの早期脱却と日本銀行の2つの基金

新潟県金融経済懇談会における挨拶

日本銀行副総裁 西村 清彦
2012年12月5日

目次

1.はじめに

日本銀行の西村でございます。本日は、新潟県の行政および金融・経済界を代表する方々との意見交換の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。皆様には、新潟支店を通じたヒアリングや各種のアンケート調査にご協力頂いております。私どもは、ご提供頂いた貴重な情報をもとにわが国の金融経済情勢を把握し、金融政策を運営しております。そして本日の機会を含め、支店活動など様々な形で日本や世界の情報を皆様方と共有していく所存でございます。この場をお借りして、日頃のご協力に厚くお礼申し上げますとともに、今後ともご協力のほどを宜しくお願い申し上げます。

本日、私からは、「デフレからの早期脱却と日本銀行の2つの基金」というテーマでお話ししたいと思います。まず前半では、夏場以降の金融経済情勢の変化についてお話しし、後半では、日本銀行の金融政策運営の基本的な考え方について、2つの基金 ――10月末に2か月連続で増額を決定した資産買入等の基金と、新たに創設することを決定した貸出支援基金――を中心にご説明します。

2.海外経済の動向

海外経済減速の強まり

まず海外経済の現状ですが、昨年後半以降、欧州債務問題の悪影響が貿易や企業マインドのルートを通じて世界的に拡がり、多くの国や地域で、製造業部門を中心に減速した状態が続いています。日本銀行では、4月と10月に、経済・物価情勢についての点検結果を展望レポートとして取り纏め、1月と7月にその中間評価を行っています。今年7月の中間評価では、海外経済の不確実性を景気のリスク要因として織り込んでいましたが、これが短期間のうちに表面化したというのが、本年夏場以降の金融経済動向に対する私の率直な印象です。

欧州債務問題のリスクが表面化し、その影響が広がりをみせました。欧州債務問題の悪影響は、ユーロ圏域内の貿易取引の減少や企業マインドの悪化を通じて、周縁国だけでなくコア国でも一段と強まっています。ユーロ圏の実質GDPが4四半期連続でマイナス成長となるなど、欧州経済は緩やかに後退しています。こうした欧州経済の弱さは、欧州域内にとどまらず、域外の輸出にも影響を与え、さらには世界的なサプライチェーンを通じて、世界中の貿易や経済成長に影響を及ぼすに至っています。

これに加えて、世界経済の牽引役として期待が寄せられてきた新興国経済も、勢いを欠いています。中国経済は、一部経済指標にごく足もと改善の兆しがみられるものの、ウエイトの高い欧州向け輸出が落ち込んでいることに加え、リーマン・ショック後の過剰投資の影響が顕在化し、素材産業など幅広い分野で在庫調整局面が予想以上に長引いています。NIEs、ASEAN経済では、欧州や中国の最終需要の弱さの影響もあって、輸出や製造業の設備投資といった企業部門を中心に、持ち直しの動きが緩やかになっています。

海外経済の展望

海外経済の先行きについては、当面減速した状態が続くとみられますが、その後は、米国の持続的な回復や中国の持ち直しを背景に減速した状態から次第に脱し、緩やかな回復に転じていくと考えています。もっとも、海外経済の先行きについては、回復時期を含めて不確実性が小さくありません。欧州債務問題がさらに深刻化する可能性は、引き続き意識しておく必要があります。米国経済については、緩やかな回復基調を続けていますが、いわゆる「財政の崖」の問題など財政政策の先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力には注意が必要です。中国経済では、過剰設備を抱える素材業種を中心に、需給バランスの改善に時間がかかる可能性があります。また、日中関係の影響が既に各所で顕在化していますが、日本経済にとっては、その広がりが懸念されるところです。

本年夏まで不安定な動きをみせていた国際金融資本市場ですが、夏場以降、欧州当局が様々な施策を講じてきたこともあって、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いています。もっとも、スペインやギリシャの財政・経済構造改革は途半ばであり、今後の市場の展開には十分注意していく必要があります。

3.日本経済の動向

日本経済の弱含み

わが国経済に目を転じると、本年前半は、復興関連需要が公的・民間の両面で増加するもとで国内需要が堅調に推移し、1〜3月の実質GDPは年率5.2%と高い成長を記録しました。しかし7〜9月は一転して年率−3.5%と、2011年10〜12月以来のマイナス成長になりました。海外経済の減速した状態を反映して、輸出、鉱工業生産ともに減少しています。これまで堅調に推移してきた内需にも、輸出や鉱工業生産の弱さの影響が一部及び始めています。例えば、設備投資は、海外経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられています。今後も、設備投資先送りの動きが出てこないか、注意してみていく必要があります。製造業の新規求人数は6月以降、前年比マイナスとなっているほか、所定外労働時間も、製造業を中心に幾分減少しています。個人消費は、エコカー補助金終了に伴う反動減もあり一頃ほどの勢いがありません。国内需要は、防災・エネルギー関連投資を含めた広い意味での復興関連需要などに支えられ、全体としてみれば底堅さを維持するとみられますが、輸出の弱さを補うほどの増加になるとは考えにくい状況です。こうした状況を踏まえ、日本銀行は、わが国景気の全体について、「弱含みとなっている」と判断しています。

この間の物価動向ですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、リーマン・ショック後の2009年8月に、過去最大のマイナス幅となる−2.4%を記録しました。その後、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスが緩やかな改善を続ける中で、消費者物価の前年比下落幅は2009年末頃から着実に縮小を続け、最近では概ねゼロ%となっています。

日本経済の展望

わが国経済の先行きについては、先ほど申し上げた海外経済の見通しを前提とすると、当面、輸出や鉱工業生産は減少を続け、景気全体も「弱めに推移する」と考えています。日本銀行は、景気が弱含みに転じたこの局面で、追加緩和が必要と判断し、10月末の金融政策決定会合で、2か月連続で金融緩和を一段と強化することを決定しました。決定内容については後ほどお話ししますが、新たに決定した措置やこれまでの金融緩和の累積効果、政府による成長力強化への取り組みの効果によって、日本経済は、「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道」を踏み外さずに歩んでいけると考えています。海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、輸出や鉱工業生産は持ち直しに転じ、経済全体として前向きな支出活動も徐々に強まっていくと予想しています。10月の展望レポートにおける成長率見通しの中央値は、2012年度が+1.5%、2013年度が+1.6%、2014年度が+0.6%となっています。この成長率見通しには、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響が反映されていますが、その分を調整すると、2013年度、2014年度ともに1%台前半という見通しになります。

こうした見通しを巡っては様々な不確実性が存在することも事実です。上振れ要因・下振れ要因の双方がありますが、現下の局面では、下振れ要因により注意すべきと思います。とりわけ、海外経済の減速が一段と長引くことで、わが国の輸出や鉱工業生産の持ち直しが遅れ、ひいては内需への悪影響が一段と強まることがないかという点については、今後も丹念に点検していくつもりです。

続いて、消費者物価の先行きについてお話しします。消費税率引き上げの直接的な影響を除いて消費者物価の先行きを展望すると、当面はゼロ%近傍で推移した後、企業収益や雇用の増加、賃金の上昇など、経済全般の改善を反映するかたちで、徐々に緩やかな上昇に転じると想定しています。10月の展望レポートで提示した消費者物価見通しの中央値は、2012年度が−0.1%、2013年度が+0.4%、消費税率引き上げの直接的な影響を除くと、2014年度が+0.8%となっており、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていく姿となっています。

この物価見通しは、景気見通しの下方修正を反映したマクロ的な需給バランスの改善の遅れや、原油価格下振れの影響を織り込んでいるため、7月の中間評価時点と比較すると下振れています。それでも、日本銀行の消費者物価見通しは、民間エコノミストの見通し対比、なお高めです。

両者の違いは、景気動向、言い換えればマクロ的な需給バランスが物価変動にどう影響を与えるか、見方が違っているためだと私は解釈しています。民間エコノミストの方々は、景気の緩やかな拡大が続いた2000年代半ば頃、マクロ的な需給バランスの改善に比べ、消費者物価の上昇が抑制されていたことを強く意識されていると思います。実は、この時期は景気の緩やかな拡大にもかかわらず物価が上がりにくい状況にありました。供給力の過剰はなかなか解消されないうえ、少子高齢化の影響で国内市場の伸びが抑制され価格競争が激しさを増しましたし、国内製品と競合する中国など新興国からの安値輸入品の増加が目立ちました。国際的な競争激化を背景とした賃金抑制の動きも、製品価格の上昇を抑えたと考えられます。加えて地価の大幅な下落が続いたことから、生鮮食品を除く消費者物価の構成品目の2割という大きな比重を占める家賃が上昇から下落に転じ、消費者物価全体の上昇を抑えました。

当時と比較すると現在では、中国からの安値輸入品は目立たなくなっているほか、供給過剰の解消も少しずつですが進んでいます。また少子高齢化に対応し製品やサービスの差別化に成功した事例も増え、消費者が高付加価値の高価格商品にも関心を示すなど、企業が価格を引き上げやすくなる方向に働く要因が散見されます。加えて地価の下落基調にもようやく歯止めがかかり、ラグを伴いながらも家賃も下げ止まることが予想されます。こうした最近の変化も踏まえ、展望レポートの中心的な見通しでは、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して緩やかに上昇していくと想定しています。ただ以上申し上げた変化はまだ力強いものとはいえず、外からのショックには依然として脆弱であり、下振れリスクには注意する必要があると思っています。

4.第1の基金:資産買入等の基金

金融緩和の波及経路の2つの段階

次に、日本銀行の金融政策運営に話題を進めたいと思います。

日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識し、強力な金融緩和を推進しています。こうした金融緩和が実体経済に影響を及ぼすまでの波及経路は、2つの段階に分けて整理することができます。第一段階は、金融緩和によって、企業や家計が十分な資金を低利で調達できる金融環境を実現する段階です。第二段階は、そうした緩和的な金融環境が十分に活用され、企業や家計による前向きな投資・支出活動の拡大に繋がっていく段階になります。以下では、こうした整理に沿って、2つの基金の役割についてお話しします。

緩和的な金融環境

日本銀行は、10月末の金融政策決定会合で、資産買入等の基金を大幅に増額することを決定しました。これは、先ほどの第一段階の働きかけを念頭に置いた措置です。2010年10月に、総枠は35兆円程度、増額の完了期限は2011年末までとして導入した資産買入等の基金は、増額と延長を重ね、この9月と10月には、2か月連続で10兆円規模の思い切った増額に踏み切りました。その結果、総枠は91兆円程度と巨額なものになり、増額の完了時期は2013年末まで延長しています。その狙いは、政策金利が実質的にゼロ%となったもとでも、長期・短期の国債のほか、中央銀行としては異例の措置ではありますが、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)といったリスク性資産も幅広く買い入れることで、長めの金利やリスク・プレミアムに働きかけ、緩和的な金融環境を実現することにあります。

資産買入等の基金の導入以降におけるわが国の金融環境をみると、歴史的にも国際的にも極めて緩和した状態が実現しており、この点では、所期の目的を達していると考えています。例えば、企業の資金調達コストは、銀行の新規貸出約定平均金利が短期・長期とも1%程度と低水準になっています。家計の資金調達コストも、35年固定の住宅ローン金利が2%を切っています。また、金融機関は貸出姿勢を積極化する動きを続けているほか、CPや社債の発行環境も総じて良好な状態が続いており、資金調達に関する安心感が確保されています。また、円高が日本経済に及ぼす負の影響を和らげるとともに、円高の進行に歯止めをかける役割も果たしています。東日本大震災や欧州債務問題といった強い逆風の中でも、極めて緩和的な金融環境は維持されてきました。

この資産買入等の基金は、強力な金融緩和政策の継続期間に関する約束、いわゆる時間軸政策のもとで運営しています。すなわち、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な金融緩和を推進していく」ということです。先ほど申し上げたとおり、10月に公表した展望レポートでは、消費者物価の前年比について、2014年度には「1%に着実に近づいていく」という見通しを立てていますが、「1%が見通せる」という判断には至っていません。資産買入等の基金の増額は2013年末に完了しますが、その後も、この約束にしたがって基金の運営を行っていきます。

5.第2の基金:貸出支援基金

緩和的な金融環境の活用

金融緩和の第一段階の措置によって実現した緩和的な金融環境を、幅広い経済主体にいかに活用して頂くかが、第二段階のポイントになります。

現在、企業の有利子負債にかかる平均支払金利は1%台半ばまで低下しています。これは、企業の総資産利益率(ROA)が3%程度であることに比べ極めて低い水準です。企業は、自身の収益力に比べてはるかに低い金利で、十分な資金を借り入れることができる状態にあります。一見、資金を借り入れて投資さえすれば、企業は儲かるようにみえますが、必ずしもそうした状況にはありません。むしろ、資金を借り入れても製品・サービスが売れないのではないかと、収益環境に確信をもてない状況、言い換えれば、成長期待の低迷が企業の前向きな活動を阻んでいる状況にあり、緩和的な金融環境は十分に活用されていません。

この閉塞感を打破するには、日本経済の成長力強化に向けた取り組みが不可欠です。成長力の強化が進み、成長期待が持ち直していけば、企業の収益見通しが改善したり、投資に関する期待収益率が上昇することで、企業の投資など前向きな支出活動に繋がっていきます。いったん好循環が始まれば、緩和した状態にある金融環境が一層力を発揮し、好循環の持続性が高まっていくことになります。これが、私どもの目指す金融緩和の第二段階です。

企業活動の環境を整備するという点では、政府の役割も重要です。政府と日本銀行は、デフレ脱却に向けた当面の取り組みについて、互いに共有している認識を改めて明確にするため、「デフレ脱却に向けた取組について」という共同文書を10月末に公表しています。環境整備における政府の役割の重要性は、この文書のうえで改めて確認したことでもあります。政府には、デフレを生みやすい経済構造を変革するという観点から、思い切った規制緩和をはじめ、日本経済の成長力強化に向けた取り組みを強力に推進していくことで、新たな需要を生み出していくことを強く期待しています。

「貸出増加を支援するための資金供給」の枠組みの創設

金融緩和の第二段階への働きかけを強めていくという点においても、日本銀行も中央銀行として最大限の貢献を果たしていくため、2010年に「成長基盤強化を支援するための資金供給」(成長基盤強化支援)を導入しました。成長基盤強化支援は、わが国経済の成長に資する投融資を行う金融機関に対し、低利かつ長期の資金を供給するための枠組みです。金融機関の貸出行動に直接的に働きかけるという点で、これもまた、中央銀行としては異例の措置ではありますが、皆様方に政策意図にご賛同頂いた結果、成果を挙げることに成功していると思っています。この支援策をひとつのきっかけに、成長力強化の重要性が広く認識されるようになったことを心強く思っております。

日本銀行はさらに、10月末の金融政策決定会合において、金融機関の積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すため、「貸出増加を支援するための資金供給」(貸出増加支援)の枠組みの創設を決定しました。これは、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額まで、低利かつ長期の円資金を供給するものです。資金供給の総額の上限は設定せず、無制限としています。対象とする貸出には、円貨建てのほか、外貨建ても加えています。経済のグローバル化が進展する中、金融機関や企業の成長力は、海外業務展開と大きくかかわっています。円貨建てか外貨建てかにかかわらず、金融機関の貸出を支援していくことは、日本経済の成長を促すうえで効果的であり、金融機関が国際的な営業基盤を強化していくことは、成長力のある日本企業を金融面から支える力を強めることにも繋がると判断した次第です。この点、貸出を伸ばすことは、金融機関自身の中長期的な収益基盤の強化に繋がるものであり、方向としては、金融機関が目指すべきものと一致していると考えています。実際、金融機関が仲介するビジネス・マッチングが着実に成果をあげていることもあって、このところ、金融機関の貸出残高は緩やかな増加を続けています。

新たに導入する貸出増加支援と、既存の成長基盤強化支援はそれぞれ、金融機関の取り組みを後押しすることを通じて、わが国の緩和した金融環境の一層の活用を促すことを狙いとしています。その意味で、2つの支援策は補完的なものです。貸出増加支援は、金融機関が貸出を総額として増やしていく、あるいは企業や家計が借入を活用して前向きな経済活動を伸ばしていくという動きを、経済全体としてプラスの実績が拡大するように、金融面から後押ししていくものです。これに対し、成長基盤強化支援は、企業や金融機関が成長基盤を強化していくうえで、呼び水として作用することに主眼を置いたものです。この新たな資金供給と既存の成長基盤強化支援を合わせて、「貸出支援基金」とします。第2の基金である貸出支援基金のもと、2つの支援策がそれぞれ所期の目的を達することで、金融緩和の第二段階への働きかけが強まっていくことを狙いとしています。さらに、第1の基金である資産買入等の基金の効果と相まって、金融緩和の効果が全体として強力に発揮されることを期待しています。

最近1年間をみると、日本銀行の取引先である銀行および信用金庫のうち、貸出が増加した先の貸出残高の合計額は約15兆円増加しています。これをそのまま当てはめると、新たな枠組みのもとで金融機関が資金供給を受けられる額は、15兆円程度となります。成長基盤強化支援の5.5兆円と合わせると、貸出支援基金の規模は20兆円程度となります。金融機関の貸出がこれまで以上のペースで増加すれば、貸出支援基金の残高は20兆円を超えて拡大していきます。さらに、第1の「資産買入等の基金」と第2の「貸出支援基金」を合わせれば、優に110兆円を超えます。日本の2011年名目GDPは468兆円ですから、実にその四分の一という資金規模になります。日本銀行の現在の金融緩和が、かってない規模になっていることをご理解頂けると思います。

私どもとしては、貸出増加に向けた金融機関の取り組みにより、新たな資金供給の総額が拡大していくことを強く期待しています。このため、制度設計に当たっては、金融機関にとって使い勝手が良いものになるよう検討しているところです。年内には詳細を固め、出来るだけ早期に実施に移したいと考えています。

本日は時間に限りがありますので、2つの基金に絞って、日本銀行の金融政策運営についてご説明しました。ここで改めて強調しておきたいポイントは、日本銀行は、これまでも、そしてこれからも、経済・物価見通しの実現が難しくなったり、見通しを巡るリスクが大きく高まる場合には、適切かつ果断な対応をとる用意があるということです。今後も、当面の物価安定の目途の達成に向けて、新しい手法も駆使しながら、強力に金融緩和を推進していく所存です。

6.おわりに

最後に、新潟県経済についてお話しし、本日の話を締め括りたいと思います。

デフレ脱却のためには、成長力強化に向けた取り組みが欠かせないことを繰り返し申し上げました。この点、当地に拠点を置く企業を拝見しますと、県内多くの産地において、これまで長きにわたり、優れたモノ作りの技術を培い、集積されてきました。海外企業との競争が年々強まる中にあっても、こうしたモノ作りの技術や販路拡大のノウハウを活かして、国内や海外の市場でトップ・シェアを誇る企業が少なくありません。まさに、国際的な金融危機などの逆境の中でも、成長力強化に向けて不断に取り組んでこられた成果であり、頭の下がる思いです。

また、当地は、石油や天然ガスなど、わが国有数の天然資源に恵まれた土地柄ながら、再生可能エネルギーの分野にも早くから取り組んでこられました。冬場の日照時間が短い雪国において大規模な太陽光発電(メガソーラー)の事業化を目指すという着想に基づいた取り組みは、既に形を成し、発電所の運営が開始されています。昨年の東日本大震災を経験して、全国的に、再生可能エネルギーの利用や、環境性能に優れた自動車や家電製品の普及ペースが加速しているように感じています。今後、世界各国がエネルギー制約の課題に直面していくことを考えますと、新潟県のこうした経験を先行して蓄積していくことにより、将来的には、海外でも先行者利益を享受する機会が広がります。

今年1年を振り返りますと、佐渡市で放鳥されている国の特別天然記念物であるトキのひなの誕生が確認されるという、36年振りのニュースが全国的にも話題になりました。こうした明るいニュースが経済の面からも聞こえてくるよう、私どもも、中央銀行として最大限の努力を続け、皆様の取り組みを全力で応援してまいりたいと考えています。

本日は、ご清聴ありがとうございました。

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