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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2012年7月)

2012年7月5日
日本銀行

(1)世界経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。

(2)わが国の経済は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。

(3)先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。

(4)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっており、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。

(5)景気のリスク要因としては、欧州債務問題の今後の展開が最も強く意識しておくべき要因である。このほか、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。
 物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。

(6)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和の動きが続いている。わが国の金融システムを取り巻く環境をみると、現状、わが国金融機関の資金調達に大きな影響は生じていないものの、欧州債務問題が金融資本市場の連関等を通じてわが国に波及するリスクなどには、今後とも十分な注意が必要である。

(7)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく。