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【講演】「2%」への招待状

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日本経済団体連合会審議員会における講演

日本銀行総裁 黒田 東彦
2014年12月25日

目次

1.はじめに

日本銀行の黒田でございます。本日は、わが国の経済界を代表する皆様の前でお話し申し上げる機会を賜り、誠に光栄に存じます。

今年も残すところ1週間となりました。今年の日本経済を振り返りますと、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動による振れはありましたが、基調的には緩やかな景気回復が続きました。企業収益は大幅に改善しており、企業セクター全体としてみれば、リーマン・ショック前のピークと同程度の良好な水準を維持しています(図表1)。こうした好調な収益を背景に、企業の設備投資や雇用スタンスは積極化しています。有効求人倍率は、1.10倍と、1992年以来、22年振りの高い水準となっており、失業率は、構造的失業率に近い3%台半ばまで低下しています(図表2)。こうした労働需給の引き締まりを受けて、賃金も緩やかに上昇しています。

物価面をみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースでみて、昨年末以降1%台前半で推移してきました(図表3)。基調的な物価情勢は改善を続けており、予想物価上昇率も、やや長い目でみれば、全体として上昇してきています。ただ、夏場以降、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働くもとで、消費者物価の前年比はプラス幅を縮小し、10月には+0.9%となりました。日本銀行は、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防止し、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、10月末に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したところです。

このように、日本経済は、長年続いたデフレから脱却し、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、着実に歩みを進めています。とはいえ、「景気の回復が実感できない」という声が少なからず聞かれることも事実です。特に、「『量的・質的金融緩和』のメリットを受けているのは、大企業と金融資産を保有している富裕層だけで、全体に拡がっていないのではないか」、「デフレ脱却とはいっても、物価が上昇する一方、賃金がそれに見合って上昇しなければ、生活はかえって苦しくなるのではないか」といった意見を耳にします。

日本経済は、現在、デフレのもとでの「縮小均衡」から、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」への移行過程の真っ只中にあります。こうした大きな変化が相応のスピードで生じる過程においては、業種や企業規模、所得環境などによって、影響が異なった形で現れることは、避けがたい面があります。しかしながら、日本経済が良い方向に向かっていることに疑問の余地はありません。景気の現状に満足されていない方の中でも、「デフレの頃の方が良かった」と思っておられる方は、まずいらっしゃらないのではないでしょうか。

本日は、日本銀行が目指している経済の姿を、デフレ経済との対比において、できるだけ具体的にお示ししたいと思います。そのうえで、現在、我々がどの段階にいるのか、先行きどのような課題が残されているのかをご説明します。デフレから脱却し、2%の「物価安定の目標」を実現することは、決して一部の企業や金融資産の保有者だけの利益になるものではなく、幅広い業種や様々な人々にメリットをもたらすものであることを申し上げたいと思います。

2.デフレ経済の姿

わが国では、90年代後半以降15年にわたってデフレ、すなわち「物価が持続的に下落する状況」が続きました。こうしたもとでは、企業も家計も、先行き「物価は上がらない」、あるいは「物価は緩やかに下落していく」ことを前提に行動するようになります。その結果、支出行動は消極的なものになっていきました。

すなわち、企業にとっては、売上の増加を期待できないことから、人件費や原材料費の引き下げといったコストカットを行い、あるいは設備投資をできるだけ圧縮して、利益を確保し、財務状況を安定化させることが最大の経営課題となりました。しかしながら、こうしたコストカットや投資の抑制は、他社の財やサービスに対する需要の減少にほかならず、企業部門全体としてみれば、結局、収益を増加させることはできませんでした。

また、企業のコストカットは、家計にとっては、賃金の下落の形で現れました。わが国の雇用を重視する慣行により、失業が急増するといった事態は避けられましたが、雇用形態の非正規化や賃金の引き下げを受け入れざるをえませんでした(図表4)。こうした状況下で、ベースアップの慣行が失われました。90年代前半までは、「給料は毎年上がっていく」というのは、サラリーマンのいわば常識でしたが、30代以下の若年層には、そうした経験がありません。将来にかけて所得が増加するとの展望を持てない中で、多くの家計は、消費の抑制に努めました。「モノの値段は、だんだんと下がっていく」という見方が定着すれば、消費は先送りされる傾向が強まります。こうして、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落といった悪循環が続くことになりました。

こうしたデフレ下での現象は、様々な角度から分析することが可能ですが、マクロ経済政策の面からは以下のように整理することができます。ポイントは、「現実の物価下落とともに低い予想物価上昇率が定着し、実質金利が高止まりした結果、金融緩和が十分には進まなかった」ということです。わが国の金利水準は、ずっと低い状態でしたが、デフレ下では、企業の皆様は、借入をして実物投資をしようとは思われなかったと思います。物価全般、あるいは自社の製品価格が下がるという予想のもとでは、名目金利がいくら下がっても、実質金利はそれに比べて高いものとなるため、企業にとっての金利負担は大きなものになるからです(図表5)。逆に、現預金については、金利がマイナスになることはなかったため、物価が趨勢的に下落するもとで、実質的な収益率が上昇しました(図表6)。企業にとっては、リスクを取って設備投資を行うよりも、コストカットなどで内部留保を積み上げ、これを現預金として保有することが相対的に有利な「投資」となったのです。これはデフレ環境のもとでは合理的な行動です。実際、企業の現預金は、1995年度の185兆円から、2013年度には243兆円と、大幅に増加しています。

それでも、実物投資による実質の収益期待が十分高ければ、極めて低い水準の名目金利は、魅力的でありえたと思います。ところが、わが国の場合、90年代半ば以降、潜在成長率が急速に低下するもとで、企業が直面する期待成長率も大きく低下しました(前掲図表5)。経済学の用語でいえば、自然利子率、つまり景気に中立的な実質金利の水準が低下したということになります。標準的な経済理論では、金融緩和の程度は、実質金利が自然利子率よりどれだけ低いかで決まります。わが国の場合、デフレ予想によって実質金利が高止まりし、一方で潜在成長率の低下で自然利子率が低下した結果、名目の金利水準が低いにもかかわらず、金融緩和は不十分なものに留まり、十分に経済を刺激することができませんでした。企業の皆様が感じた「金利は低いが投資をする気にはなれない」というのはこの現象です。これに対するブレークスルーは、予想物価上昇率を引き上げて実質金利を低下させるか、成長力を引き上げて企業の期待収益率や自然利子率を上げるか、のどちらかです。そして、今、わが国はその両方に取り組んでいます。日本銀行が行っている「量的・質的金融緩和」が前者であり、政府の成長戦略のもとで企業の皆様が取り組んでおられるのが後者だということです。

3.2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の転換

そこで「量的・質的金融緩和」についてお話しします。「量的・質的金融緩和」のメカニズムは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現に向けて強く明確なコミットメントを示し、人々のデフレマインドを変えることを起点としています。同時に、巨額の国債買入れによって、長期金利を含めてイールドカーブ全体に低下圧力を加え、名目金利をさらに低下させました。その結果、実質金利が低下し、名目だけでなく、実質でみても、「金融が緩和している」と感じて頂ける状況が生まれているはずです。その金融環境のもとで、他の政策などとも相まって、民間需要が高まり、経済全体としての需給ギャップが改善し、現実の物価も上昇しました。企業や家計が実際に物価上昇を経験すれば、「物価は上がるものだ」という実感が生まれるため、予想物価上昇率は、さらに上昇することが期待できます。

この流れを推し進めて2%の「物価安定の目標」が実現した経済においては、企業・家計にとって合理的な行動は、現預金を保有することではなく、投資・消費を行うことになるはずです。物価が緩やかに上昇するもとでは、現金保有の実質収益率はマイナスになります。コストカットで内部留保を積み上げ、それを現預金として保有しているだけでは、企業価値を毀損してしまいます。企業は、生産体制の整備・効率化や研究開発、人材の確保や開発などを戦略的に進めることが必要になります。さらに、配当や自社株買いなどの資本政策も重要になります。要するに、「資本コストを上回る投資・収益機会を見出し、企業固有の付加価値を生み出していく」ことが経営課題である通常の経済環境に戻るということです。このように企業のスタンスが前向きなものに変化することは、中長期的にみた日本経済の成長率を高めることにもつながると考えられます。

なお、デフレから脱却すべきなのはわかるが、なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか、という疑問をよく聞きます。一言でいえば、先進国のほとんどが、毎年2%程度の物価上昇を「物価が安定している状態」と捉えているということです(図表7)。15年にわたるデフレ期(1998年度〜2012年度)における消費者物価の前年比の平均は、いくらくらいだと思われるでしょうか。正解は、わずかマイナス0.3%です。多くの方は、「物やサービスの値段は、もっと大きく下がっていたはずだ」と感じられるのではないでしょうか。時間の制約から詳細な議論は割愛しますが、消費者物価指数には、物価上昇率を高めに表わすといった上方バイアスがあるため、消費者物価指数の前年比がゼロ%程度というのは、実感としては、かなりデフレ的な状況なのです。逆に言えば、消費者物価が安定的に2%上昇するという状況は、決して「物価が大きく上がっている」ような状況ではありません。むしろ、実感としては、「物価は、全体として概ね横這いか、ごく緩やかに上昇している」といった状態に近いと思います。

また、為替相場の面でも、他の主要国がグローバル・スタンダードに基づいて毎年2%程度の物価上昇を実現する一方、わが国でデフレ状況が継続していたため、趨勢的に円高が進行してきました(図表8)。この点、米国と同程度の緩やかな物価上昇が続く英国やカナダにおいては、物価上昇率の差を反映する購買力平価はほぼ一定であり、対ドルの為替相場もその周辺で推移しているのと、極めて対照的です。もちろん、理論的には、企業の競争力には物価上昇率の違いも加味した実質の為替相場が影響するので、物価上昇率の差に見合った趨勢的な円高は問題ではないという見方もあります。しかし、企業の皆様にとっての内外コスト差は必ずしも物価全般の差ではないので、そうした円高であっても計画が立てづらくなるというのが現実感覚に合っているのではないかと思います。今後、2%の物価上昇率が実現すれば、少なくとも、内外価格差に起因する円高進行リスクは小さくなります。つまり、為替レートがある程度安定していることを前提に、経営資源の最適な配分という観点から、グローバルな投資計画を立てられるようになると考えられます。

4.デフレ経済からの転換にあたって

それでは、今日本経済は、デフレ下の「縮小均衡」から、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」への移行過程のどの辺りにいるのでしょうか。ここで改めて、わが国経済の現状を整理しておきたいと思います。

まず、企業部門では、収益が改善しており、消費税率の引き上げ後の需要の減少にもかかわらず、前向きな投資スタンスが維持されています。先週公表した短観で事業計画をみると、収益見通しが業種・規模を問わず幅広く上方修正される中、設備投資をしっかりと増加させていく姿となっています。また、アンケート調査によると、過度の円高が修正されるもとで、設備投資の国内回帰の動きもみられます(図表9)。家計部門については、労働需給の引き締まりを映じて名目賃金が上昇しています。名目賃金の伸び率は、2014年度上期で1.1%と、同時期の消費者物価上昇率1.3%とほぼ同水準です。「物価の伸びに賃金が追い付かず実質賃金がマイナスとなっている」という見方が拡がっていますが、これは、消費税率引き上げを含めた物価上昇率で計算しているためです。来年4月には、消費税率引き上げが物価の前年比に与える影響は無くなります。こうしたことを踏まえると、基調的な実質賃金の動きは、消費税率引き上げの影響を除いたベースで判断するほうが良いと考えられます。いずれにしても、マクロ的には賃金は上昇し、雇用者数も増加しているため、雇用者所得は2%程度の伸びを続けています。雇用・所得環境の着実な改善を受け、個人消費は基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいます。株価は大幅に上昇しており、これが企業の設備投資や家計の支出行動にプラスの作用をもたらしています。

また、デフレマインドの転換は、着実に進んでいます。今春の賃金交渉において物価上昇を意識した賃上げ要求が行われ、10数年振りにベースアップが復活したほか、企業がデフレのもとでの低価格戦略を転換し、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きがみられるなど、企業の賃金設定や価格戦略にも影響を与えています。さらに、来春にかけての賃金交渉においては、いくつかの労働組合が2%程度のベースアップを要求することを決定しています。中央銀行が設定する物価安定目標が労使間の賃金交渉において意識されているという点で、注目すべき動きと言えます。日本銀行としても、強い関心をもって、今後の交渉の帰趨を見守っていきたいと考えています。

こうした経済・物価状況の中で、日本銀行は、10月31日の金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」を拡大しました(図表10)。具体的には、これまで「年間約60〜70兆円」のペースで拡大してきたマネタリーベースを「年間約80兆円」拡大することとしたほか、長期国債の保有残高の増加ペースを年間約30兆円増加させ、「約80兆円」とし、ETFやJ-REITの買入れも3倍にしました。その背景をここで改めて整理しておきます。消費者物価は、4月をピークに前年比伸び率が低下していました。消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや、夏場以降の原油価格の大幅な下落が原因です。誤解のないように申し添えますが、今回の追加緩和は、「原油価格が下がったこと」そのものに対応したものではありません。原油価格の下落、特に今回のように産油国の事情など供給面の要因に強く反応しているケースでは、資源輸入国であるわが国経済は大きなメリットを受けます。物価面では、短期的に下押し要因となる一方で、やや長い目でみれば、需給ギャップの改善をもたらし、物価の基調的な上昇につながるものです。

にもかかわらず、金融緩和を行ったのは、わが国がなおデフレマインドの転換の途上にあり、現実の物価上昇率の伸び悩みがこの転換を遅らせてしまうリスクがあると判断したからです。デフレからの転換をもたらしてきたエンジンは、第1に2%を早期かつ安定的に実現するという日本銀行の強いコミットメント、第2にそのもとで進んだ実際の物価上昇の2つです。ここで、「原油価格の下落」という長期的には望ましい現象の結果であっても、実際の物価上昇の足踏みが長引くような場合、後者のエンジンは弱まる可能性があります。その結果、2%の実現に疑いが生じるようなことになれば、「量的・質的金融緩和」のメカニズムが全体として弱まってしまうリスクが生じます。そこで、「量的・質的金融緩和」のもとでさらに強力に緩和を進めるとともに、2%の早期実現の決意にいささかの揺るぎもないことを改めて「行動」の形で示すこととしたということです。

その後の市場の反応などをみると、日本銀行の「2%の早期実現の決意」はしっかりと伝わったように思います。また、企業の皆様にも良くご理解頂いていると感じています。来春の賃金交渉や価格設定において、その効果が現れることを期待します。そうであれば、「量的・質的金融緩和」のもとで進めているデフレマインドの転換は進み続けることになります。それは、先般の追加緩和がその役割を果たしたということですし、この先、原油価格の下落のプラスの面が生きてきます。すなわち、デフレマインドの転換が進むもとで、原油価格の下落が経済活動や物価の基調を押し上げる効果が次第に発揮され、短期的な物価下押し効果が減衰するにしたがって、現実の物価上昇率も上昇することになると考えられます。

先ほど述べました通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現することを目指しています。そして、その状況とは、企業や家計が2%の緩やかな物価上昇を前提に意思決定を行い、行動するようになることだと考えています。したがって、原油価格の動向やその予想物価上昇率への影響を評価していくうえでも、こうした観点からデフレマインドの転換がどのように進んでいくかを、注視していきたいと思います。

日本銀行の金融政策の方針は、「量的・質的金融緩和」導入時から一貫しています。すなわち、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」実現のために必要であれば、躊躇なく調整を行う方針です。

5.おわりに

最後に、年末ですので、来年がどんな年になるか申し上げます。企業にとっては、資源価格の下落と円安で収益環境は良好であると思います。家計にとっても、賃上げが行われる一方で、物価上昇率は、原油価格の今後の帰趨次第ではありますが、当面現状程度で推移し、消費税引き上げ分が前年比でみて4月に剥落しますので、実質賃金は回復します。景気面ではフォローの風が吹いていると思います。そうした中で、来年の課題は、榊原会長も常々おっしゃっていることですが、この好環境を活かして個々の企業が何を行い、次の循環につなげていくのかということです。

さきほど申し上げた通り、経済全体としての「パイ」は、拡大しています。もっとも、移行途上にある現時点においては、「パイ」の拡大のメリットが、グローバルに展開する企業や金融資産を保有する人などに偏在していることは否定できません。もとより、中小企業の収益や家計の所得も、デフレ期に比べれば増加しており、多くの人が何らかのメリットを受けているのですが、その程度には、企業規模や業種、家計の所得階層などによってばらつきがあります。この事実は、単に「パイの分配」の問題に留まらず、次の循環を作るうえで重要なポイントです。すなわち、多くの「パイ」を獲得した主体の支出性向が低い場合、次の循環が働かなくなるからです。高い収益を挙げている企業が積極的に「収益を使っていく」ことが求められています。

ここで強調しておきたいのは、企業がこのように「収益を使っていく」ことは、日本経済に好影響を及ぼすのはもちろんですが、その企業自身にとっても直接的なメリットをもたらすという点です。2%の「物価安定の目標」が実現すると考える人々にとっては、現在の実質金利は極めて低く、実物投資の採算は良いはずです。逆にデフレ脱却を信じない人にとっては、引き続き実質金利は高く、積極的な行動は抑制されます。デフレを脱却したあとは、こうした人々も参入してきますので、例えば人手の確保の競争は激しくなるでしょう。また、当然のことですが、2%の物価上昇が安定的に実現すれば、金融環境もやがて経済に中立的なものになっていきます。

要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。

ご清聴ありがとうございました。また、企業経営者の皆様にとって、言わずもがななことを申し上げた点ご容赦ください。どうか、良いお年をお迎えください。