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【挨拶】

グローバル外為行動規範の策定に向けて

BIS FXWG・MPG東京会合での冒頭挨拶の邦訳

日本銀行副総裁 中曽 宏
2016年2月26日

目次

はじめに

このたび、グローバル外為行動規範の策定に向けたBISの外為作業部会(Foreign Exchange Working Group<以下、FXWG>)と民間市場参加者グループ(Market Participants Group<以下、MPG>)1による合同会合を東京で開催することを、心より歓迎いたします。

ここに至る流れを振り返りますと、昨年3月、主要な金融センターを有する8つの外為市場委員会がここ東京に集い、「グローバルな序文(Global Preamble)」2を採択、外為市場取引にかかる明解、頑健かつ実行可能なベスト・プラクティスの指針を策定・促進していくことにコミットしました。これを踏まえ、昨年5月には、BISの中銀総裁が、「外為市場における単一のグローバルな行動規範(以下、グローバル外為行動規範)」の策定のための作業部会(FXWG)を立ち上げ、同作業部会では、世界各国16中銀と30名を超える民間専門家が集まり、活発にプロジェクトに参加しています。このプロジェクトは、間違いなく、金融市場の不正行為(ミスコンダクト)に対応するための昨今のグローバルな取り組みの土台を築くものです。FXWGおよびMPGメンバーの大変な努力とガイ・デベル議長の素晴らしいリーダーシップによって、本年5月に予定されているグローバル外為行動規範の第一回対外公表に向け、大きな進捗が図られてきています。日本銀行は、本日FXWGの一員としてMPGとの共同会合をホストできることを光栄に思います。

本日の挨拶では、まず、なぜグローバル外為行動規範が必要なのか、そしてなぜ中央銀行にとってそれが重要なのか、について私の考えを述べさせていただきたいと思います。そのうえで、ここにお集まりの皆さんの間で共有されている外為行動規範の核となる考え方について、私自身からも賛同の意を表したいと思います。

1BIS市場委員会傘下に、外為市場における単一のグローバルな行動規範の策定と遵守を促進する目的で、16中銀により構成される「外為作業部会(Foreign Exchange Working Group)」が設立されました。また、FXWGをサポートする目的で、外為市場における30名以上の民間専門家により構成される「民間市場参加者グループ(Market Participants Group)」が設立されました。プレスリリースは、以下から入手可能(http://www.bis.org/press/p150724.htm)。
2グローバルな序文は、以下から入手可能(http://www.fxcomtky.com/announce/pdf_file/global_preamble.pdf)。

なぜグローバル外為行動規範が必要なのか

まず、グローバル外為行動規範の策定が、外為市場の健全な機能にどのように資するのか、私の考えを述べたいと思います。

グローバル外為行動規範は、頑健、公正で、流動性が高く、開かれた透明な外為市場の促進を目的としています。これは、外為市場の健全な機能と発展にとって重要な目的です。

では、なぜ外為市場が円滑に機能していることが中央銀行にとって重要なのでしょうか?私たち中央銀行は、物価および金融システムの安定を目標に政策を運営するうえで、金融市場動向を注意深くモニタリングしています。金融市場は経済金融情勢に関する市場参加者の見方について重要な情報を提供し、また、私たちの政策の効果を浸透させていくうえでも欠かせない役割を果たしています。金融市場がこのように中央銀行にとって重要な役割を担うためには、金融市場が円滑に機能していることが欠かせないのです。

金融市場が円滑に機能するためには、十分な市場流動性が必要です。したがって、私は、グローバル外為行動規範を策定していくなかで、中央銀行は、市場流動性を高める努力にコミットし続けていくべきだと考えています。BISの定義によると「流動性の高い市場とは、大口の取引を小さな価格変動で速やかに執行できる市場」3です。グローバル外為行動規範が目指す、頑健、公正で、開かれた透明な外為市場――すなわち、多様な参加者が多様なビジネスモデルのもとで自信を持って取引を行うことのできる市場――は、まさに市場流動性をサポートするものであり、外為市場機能の強化につながっていくものと信じています。

3Bank for International Settlements (1999), "Market Liquidity: Research Findings and Selected Policy Implications," CGFS Publications No 11.

グローバル外為行動規範の重要な考え方

次に、ここにお集まりの皆さんの間で共有されている、グローバル外為行動規範に関するいくつかの核となる考え方について触れたいと思います。これらの考え方は市場機能の改善につながるものであり、私自身も強い賛同の意を表したいと思います。

原則ベース(principle-based)の行動規範

第一に、グローバル外為行動規範は、参加者の多様性を考慮し、仔細なルールを定めるのではなく原則を示すもの(principle-based)であるときに最も効果的になるということです。

外為市場は、規模が大きく国境を跨いだ取引が行われ、多様な市場参加者が参加するユニークな市場です。実際、これほど多様な金融機関および非金融機関が日々取引を行う市場は他にありません。また、外為市場は、相対での取引が主流となっており、電子取引プラットフォームの形態も、ブローカー経由のものから、シングル・ディーラー・プラットフォームやマルティプル・ディーラー・プラットフォーム経由のものまで多種多様です。また、外為取引に関する規制環境も世界各国で異なっています。

こうした世界全体に亘る市場参加者の多様性や市場構造の複雑性を踏まえると、規範的なルールではなく、原則ベース(principle-based)の行動規範がより適していると言えます。こうしたアプローチに関して、ガイ・デベル議長が昨年11月の講演で指摘した重要なポイントに改めて言及したいと思います。「歴史的にみて規範的であればあるほど、抜け道を見つけやすくなる。なぜなら、ルールは原則よりも裁定が働きやすいからである」4。私は彼の考え方に賛成です。

4G. Debelle (2015), "The Global Code of Conduct for the Foreign Exchange Market," Speech at FX Week Europe conference. スピーチは、以下から入手可能(http://www.rba.gov.au/speeches/2015/sp-ag-2015-11-25.html)。

公的セクターと民間セクターの協働

第二に、公的セクターと民間セクターが協働していくことが欠かせないということです。

外為市場は、これまでも公的セクターと民間セクターの緊密な協働を通じて発展してきました。たとえば、主要金融センターの外為市場委は通常、中央銀行と民間市場参加者の双方により運営されています。

今回のグローバル外為行動規範も、公的セクターと民間セクターの協働により作業が進められてきています。セルサイドおよびバイサイドの双方で構成されるMPGが、市場の実務やイノベーションに関する専門知識を踏まえ、貴重な知見を提供しています。

今後とも、適切な行動規範のもとで民間主導のイノベーションが起こり、市場機能の改善につながっていくことが望ましいと考えています。公的セクターは、そうした外為市場におけるさらなるイノベーションやしっかりとした市場機能をサポートすべく、民間セクターのインセンティブを適切に醸成していくよう努めていくべきだと考えています。

市場参加者にとって使いやすい行動規範

第三に、グローバル外為行動規範は、簡潔、明確で使い勝手のよいものであるべきという考え方です。行動規範は、市場参加者が日々の業務において実務的なレベルで参照し遵守してこそ、はじめて意味を持ちます。

さらに、行動規範において、多様な市場参加者や多様なビジネスモデルを踏まえ、市場参加者がやってもよいことをはっきりと示していくことの重要性を強調しておきたいと思います。これは、市場機能を高めていくためには、市場参加者の過度な委縮を防ぐことが重要だからです。市場参加者とのより明確な対話を通じて市場機能の改善を図るためのイニシアティブとして、東京外為市場委では、昨年4月に「東京ブルーブック」を策定しました5。東京ブルーブックは、簡潔で明確な表現や、実務に即した具体例を用いることによって、東京市場参加者の行動規範に対する理解の向上を助けています。

5東京ブルーブックは、以下から入手可能(http://www.fxcomtky.com/coc/code_of_conduct2015.pdf)。

結びに代えて

単一のグローバルな外為行動規範の策定とその遵守は、必ずや、外為市場の機能強化と活発で健全な市場発展に繋がっていくことでしょう。日本銀行は、今後とも、グローバル外為行動規範への取り組みを全力でサポートしていきます。そして、この東京会合が、私たちのプロジェクトを一段と前進させる貴重な機会となると確信しています。

ご清聴ありがとうございました。

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