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平成28年度入行式における黒田総裁挨拶

2016年4月1日
日本銀行

皆さん、おはようございます。そして、日本銀行への入行、おめでとうございます。今年も、本支店合わせて156名の新しい仲間を迎えることができ、大変嬉しく思います。日本銀行の役職員を代表して、皆さんを心から歓迎します。

今日から皆さんは、中央銀行で働くことになります。その皆さんに対する期待をお話ししますが、まずは、中央銀行としての日本銀行の基本的な役割と最近の変化についてお話しします。皆さんへの期待の背景について理解を深めて欲しいと思います。

日本銀行は、1882年に開業し、130年超の歴史を積み重ねています。最古の中央銀行であるスウェーデンのリクスバンクやイングランド銀行は、さらに長く300年超の歴史があります。中央銀行には、長い歴史の中で確立された基本的役割があります。それは、「銀行券や中央銀行当座預金という通貨を発行し、人々がこれを安心して使えるようにすることを通じて、経済の発展に貢献すること」です。そのために中央銀行は、通貨価値の安定――言い換えれば物価の安定――を図り、金融システムの安定に努めるとともに、銀行券の円滑な流通を確保し、決済システムを整備してきました。銀行業務を的確に行い、「通貨の信認」を確保するという役割を果たしてきています。

このような日本銀行の基本的役割は変わりませんが、これを実現する具体的な施策は、常に変化し、近年ますます発展・高度化しています。私は、社会人としては約50年のベテランですが、日本銀行員としてのキャリアは3年と皆さんより少しだけ先輩です。ただこの3年間でも、日本銀行の施策は大きく進化しています。

金融政策面では、早期のデフレ脱却のため「量的・質的金融緩和」を進め、1月には前例のない「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入しました。金融システム面では、個別金融機関の健全性だけではなく、金融システム全体のリスクを分析し対応を図るマクロプルーデンスに注力し、国際金融規制面でも貢献しています。決済システム面でも、最新のIT技術を取り入れ、高度な機能と柔軟性を持つよう大口資金決済制度を新しく見直しました。IT技術と金融サービスを融合する新しい潮流であるフィンテックに取り組むための新しい体制整備も先日公表したところです。

このように、日本銀行は、常に経済・金融を取り巻く環境変化を捉え、新しい手段をとりながら、中央銀行の基本的役割を果たしてきています。私たちは、経済・金融活動を下支えしながら、日本経済が健全な発展を遂げることを心から願い、精一杯の取り組みをしています。皆さんは、今日からそうした日本銀行の一員となるのです。

そこで次に、今後、皆さんが日本銀行で成長し活躍してもらうために意識しておいてほしいことを3つお話しします。

1つ目は、「セントラルバンカーとしての専門性を磨き、それを公的な目的に活かすというパブリック・マインドを強く持ち続けること」です。

中央銀行の基本的役割である銀行業務を的確に遂行するには、職員一人ひとりが専門家として、セントラルバンキングのプロフェッショナルになることが必要です。プロになることは簡単ではありませんが、まずは配属された職場で実務の「基本動作」をしっかり身につけてください。「基本動作」の積み重ねが、より専門的な力の獲得へと皆さんを導いてくれます。

その際、皆さんには、「日本銀行の仕事を通じて、わが国の経済・社会の基盤を支えていく」という使命感を持ち続けて欲しいと思います。日々の仕事には外部から見えやすいものと、そうでないものがありますが、どの仕事もその一つひとつが、わが国経済の健全な発展を支えることに結びついています。

2つ目は、「理論と実践の両面を大事にすること」です。

政策・業務運営を考える際は、もちろんその時々の課題に即して実践的なアプローチをとることが必要ですが、同時に理論的なアプローチも意識しておくことが大切です。理論的なアプローチを常に意識の中に入れることにより、物事を俯瞰的に捉え長期的な視点で対応を考えられますし、そうした視点をもってこそ、時代の変化を的確に捉えた迅速な対応が可能になります。皆さんには、こうした視点を身につけた上で、効果的な政策・業務運営の企画・立案にチャレンジしていって欲しいと思います。

3つ目は、「自分の考えをしっかり持ち、これを内外に示しながらコミュニケーションを的確に行う力を養うこと」です。

私自身、固定為替相場制の時代に政策当局者の立場で「変動相場制が望ましい」とする論文を執筆し、また、時代に先駆けてインフレーション・ターゲティングの論考を寄稿しました。理論に基づく自説をもとに対外コミュニケーションに努めることで、自説がブラッシュ・アップされるとともに、多様な考え方を知り、自分の中に取り込むことができたと思います。その結果、多様な見方を尊重するマインドが育ち、対外的なネットワークも一段と強固になったと考えています。やや異なる文脈ではありますが、一人ひとりの職員にこうした意識が根付けば、組織全体でも、真の意味での多様性――ダイバーシティ――が尊重される企業文化が育まれていくと思っています。

以上が皆さんに期待する3つのことです。

最後になりましたが、環境が変わると、体調に変化をきたしやすくなります。健康管理に留意しながら、今日の初心を忘れることなく、元気に仕事に励んでください。

ようこそ、日本銀行へ。今日から、日本経済発展のため、私たちと共に前進していきましょう。