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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2017年10月20日

1.はじめに

本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。信用組合業界は、平素より、相互扶助の理念に基づく協同組合組織の金融機関として、地域・業域・職域で活動する中小企業や個人に対して金融サービスを提供し、わが国経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対して、日本銀行を代表し、心より敬意を表したいと思います。

本日は、最初に、最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営についてご説明し、次に、金融システムを巡る話題についてお話しします。

2.最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営

まず、わが国の経済情勢についてお話しします。わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しています。先行きについても、緩やかな拡大を続けると考えています。

やや詳しくみますと、海外経済が改善する中、わが国の輸出は増加基調にあります。内需についても、企業の収益が過去最高水準で推移し、業況感が着実に改善する中で、設備投資は緩やかな増加基調にあります。この点は、今月初めに公表した短観においても改めて確認されました。雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費は底堅さを増しており、公共投資も増加しています。このように、最近のわが国経済は、外需と内需の両方によってバランスよく牽引されており、景気拡大の持続性は高いとみています。

景気拡大の動きは、地方にもはっきりと拡がっています。短観の業況判断DIは、4年近くにわたり、すべての地域でプラス基調を続けています。これは、リーマン・ショック以前の景気回復局面ではみられなかったことであり、今回の景気回復局面の好ましい一つの特徴です。

一方、物価面では、なお弱めの動きが続いています。携帯電話関連の値下げといった一時的要因もありますが、幅広い企業において、省力化投資の拡大や営業時間の短縮などにより、賃金コストの上昇を吸収しようとする動きがみられていることも、最近の物価の弱さの背景になっています。

もっとも、このところ、やや異なる動きもみられています。パート労働者を中心に賃金の上昇圧力が着実に高まる中、外食や運輸などの業種では、吸収しきれないコストの上昇分を価格に反映させる動きが、少しずつではありますが、着実に拡がってきています。値上げに対する消費者の許容度も、雇用・所得環境の改善を背景に、少しずつ増しているようにみられます。このようにして、実際に価格引き上げの動きが拡がれば、中長期的な予想物価上昇率も着実に上昇すると考えられます。日本銀行では、先行きの消費者物価の前年比は、2%の「物価安定の目標」に向けて、上昇率を高めていくと考えています。

続いて、金融政策運営についてお話しします。現在、日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促しています。新たな枠組みを導入してから1年が経過しましたが、わが国のイールドカーブは、短期政策金利を「▲0.1%」、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」とする「金融市場調節方針」と整合的な形で、円滑に形成されています。こうしたもとで、わが国の金融環境はきわめて緩和した状態にあります。

日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、引き続き、強力な金融緩和を粘り強く進めていく方針です。

3.金融システムを巡る話題

次に、金融システム面の話題について、お話しします。

わが国の金融システムは安定性を維持しており、金融仲介活動は引き続き円滑に行われています。すなわち、金融機関は積極的な貸出姿勢を続けており、信用組合においても、貸出残高が前年比2~3%台の伸びで推移しています。そのもとで、民間企業などの資金調達環境はきわめて緩和した状態にありますが、全体として金融経済活動に行き過ぎた動きはみられていません。

もっとも、地域金融機関の収益をみると、貸出利鞘の縮小等を背景に、基礎的収益力は趨勢的に低下しています。先行きも、地域の人口減少や営業基盤の縮小が続き、構造的に収益へ下押し圧力がかかり続けることが予想されることから、信用組合の経営環境は厳しさを増していくと考えられます。

そうした環境下でも、地域経済の活力を高めるにあたっては、それぞれの地域に深く根差して事情に精通している信用組合の役割は大変大きいと期待されています。また、地域経済の活力向上は、信用組合自身の経営基盤の強化にもつながっていくものです。

こうした期待に応えるため、各信用組合におかれては、渉外体制の整備などを通じた貸出業務の強化のほか、地域企業に対するコンサルティング機能の発揮を通じた創業・事業承継支援や経営改善支援等に取り組んでおられます。このほか、金融商品の販売などを通じ、高齢化が進むもとでの家計の金融ニーズに対応しておられます。業界全体では、取引先の販路拡大や、新商品開発等を目的として組合員の相互交流の拡大を図る「しんくみネット」を運営したり、各地でビジネス交流事業を支援するなど、取引先の営業・経営支援活動にも注力されています。こうした皆様の取り組みが、今後、さらなる成果を上げ、地域経済の活性化につながっていくことを強く期待しています。

4.おわりに

最後になりますが、今後、信用組合業界が、ますます発展していかれることを祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。