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平成30年度入行式における黒田総裁挨拶

2018年4月2日
日本銀行

皆さん、おはようございます。日本銀行への入行、おめでとうございます。今年も、本店と支店で合わせて147名の新入行員の皆さんを迎えることができ、大変嬉しく思います。日本銀行の役職員を代表して心から歓迎します。

皆さんが社会人として第一歩を踏み出す2018年は、明治元年、すなわち1868年から、ちょうど150年に当たります。この150年の間に、日本は近代国家として目覚ましい発展を遂げ、高度成長を実現して、今日のように世界の中でも大変豊かな国となりました。こうした発展の出発点となった明治初期は、欧米列強が国際的な競争を強めるもとで、国内的には、廃藩置県、地租改正、海外の先端技術導入による殖産興業、学制公布による人材育成など、わが国の経済力の向上につながる大きな変革が相次いで行われた時期でした。こうした中で、日本銀行も、西南戦争以降、政府紙幣や各地の国立銀行が発行する紙幣の増発により進行したインフレーションに対応するため、銀行券を一元的に発行するわが国の中央銀行として、1882年、明治15年に創設されました。

このように歴史を振り返ると、時代により事情は大きく異なるものの、国の経済の潜在力を高め、それを発揮できるようにする取り組みは、長い目でみて、その国の発展のために大変重要であると改めて感じます。そして、いつの時代においても、こうした課題に果敢に挑戦し、新たな取り組みを模索した人たちがいたのです。

皆さんが、日本銀行で仕事をしていく間には――明治初期の時点では今日の日本経済の姿を予想できなかったのと同様に――現時点で私たちが予想できる範囲を大きく超えて、世界経済、日本経済ともに変化していくでしょう。こうした変化に適切に対応し、中央銀行の使命を全うしていくためには、これまでの経験・知見を十分に踏まえたうえで、「常に課題に挑戦し、新たな取り組みを行っていく」という意識を持ち続けることが大変重要です。

日本銀行も、創設以来、外部環境の様々な変化に対応しながら、「物価の安定」と「金融システムの安定」を通じて、わが国経済の潜在力が発揮され、持続的な経済成長が実現していくように、絶えず努めてきました。足もとでは、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもと、強力な金融緩和を続けています。「金融システムの安定」についても、グローバル金融危機を踏まえた国際金融規制を巡る議論への参画など、国内外の金融システム安定化に取り組んでいます。また、情報通信技術や金融イノベーションの世界的な進展を踏まえて、FinTechがわが国金融インフラの効率化や金融サービスの向上に資するよう、様々な調査・研究も行っています。これらはいずれも、日本銀行が創意工夫を最大限に凝らしながら、常に新たな取り組みを続けてきた結果です。

皆さんは、本日から日本銀行の一員となりますが、今申し上げたことを実現していくためにも、心掛けてほしいことが3点あります。

1点目は、「社会人としての自覚をしっかりと持ってほしい」ということです。社会人になると、学生時代と比べて、接する世界は大きく広がります。現実の経済や社会への関わりが格段に大きくなるとともに、これに伴う責任も大きくなります。皆さんは、本日からセントラルバンカーとして、「物価の安定」と「金融システムの安定」という、日本経済のために大変重要で責任の重い仕事を担っていくことになります。このことを自覚しながら、日々の仕事に取り組んでほしいと思います。

2点目は、「中央銀行業務のエキスパートを目指して、理論と実務の両面で研鑽を積んでほしい」ということです。世界経済や日本経済が大きく変化していく中で、現状を的確に把握し、その背景を分析して、将来を見通していくことは容易ではありませんが、これを行ううえで理論的な考察は大変有益です。皆さんには、内外の様々な理論を参考にしながら、自ら考える姿勢を身に着けてほしいと思います。また、日本銀行の最大の強みの1つは、理論的な分析に基づく政策を、市場オペレーションや貸出などの業務を通じて、機動的かつ確実に実施できることです。日本銀行にとって、理論と実務はまさに車の両輪と言えるでしょう。一つひとつの実務は地道なものがほとんどですが、取り組んでいくうちに、個々の仕事の重要性や全体の中での位置付けが少しずつ理解できるようになっていきます。中央銀行業務のエキスパートを目指して、まずは実務の基本をしっかりと習得してください。

3点目は、「周囲の人の意見によく耳を傾け、力を合わせて仕事に取り組んでほしい」ということです。日本銀行の業務は、幅が広く、互いに密接に関連していることから、多くの職員が力を合わせて行っています。金融機関や企業の協力を頂いているものも数多くあります。皆さんには、上司・先輩をはじめ周囲の人の意見によく耳を傾け、チームワークよく仕事に取り組むことを心掛けてほしいと思います。

皆さんの希望に満ちた顔を拝見していると、今年も日本銀行が若く新しい力を得たことを実感します。健康に留意しながら、そして初心を忘れることなく、セントラルバンカーとして着実に歩んでいってほしいと思います。皆さんが元気に活躍されることをお祈りして、私からの歓迎の挨拶とさせていただきます。