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BIS・IOSCO報告書「証券決済システムのディスクロージャーの枠組み」

(日本銀行仮訳)

1997年 3月10日
国際決済銀行

日本銀行から

日本銀行では、先般記者発表文の仮訳を掲載したBIS・IOSCOの報告書「証券決済システムのディスクロージャーの枠組み」の仮訳をこのほど作成しました。本件についてのわが国関係者の理解と関心が深められるよう、作成した本仮訳を追加的に公表する次第です。なお、報告書のうち序文、目次、用語集、委員名簿の部分は仮訳には含まれておりませんので申し添えます。

この仮訳について不明確な点や疑問点などがあれば、日本銀行信用機構局決済システム課までご照会下さい。ただし、報告書原文は英文ですので、あくまでも最終的な解釈は報告書原文に依拠すべきものである旨ご留意下さい。

なお、報告書原文は、BISとIOSCOのホームページ(http://www.bis.org/(外部サイトへのリンク)およびhttp://www.iosco.org/(外部サイトへのリンク))で閲覧できますので申し添えます。

証券決済システムのディスクロージャーの枠組み(仮訳)

G10各国中央銀行で構成される支払・決済委員会(CPSS)および国際証券監督者機構(IOSCO)は、世界の支払・決済慣行について共通の関心を示してきた。CPSSおよびIOSCO双方は、証券決済システムの効率性およびリスク管理に対する共通の関心は、共同のイニシアティブを通して高められるものと確信している。こうした問題意識のもと、1996年、CPSSとIOSCOは、証券決済システムのディスクロージャーの枠組みを構築するため共同作業部会を組成した。この作業部会は、公的部門および民間部門双方の証券決済システム運営主体の代表、証券監督当局、中央銀行から構成され、先進国と新興市場の双方が参加した。

「証券決済システムのディスクロージャーの枠組みを構築する」という作業部会の目的は、証券決済に関するリスクを明らかにするためのCPSSおよびIOSCOによるこれまでの重要な作業を踏まえたものである。1992年のCPSSによる「証券決済システムにおけるDVP」に関する報告書(DVP報告書)は、証券決済システムにおける直接参加者間のリスクの種別・原因を、定義、分析している。また、同報告書は、DVPメカニズムの意味を明らかにし、市場参加者にとってリスクの異なる3つのDVPの実現手法を解説している。

1995年にCPSSによって作成された「クロスボーダー証券決済」に関する報告書(クロスボーダー報告書)では、DVP報告書の検討範囲を拡大する形で、クロスボーダー証券取引の決済に市場参加者が用いる手法の分析がなされている。同報告書は、クロスボーダー取引においてDVPが実現されている場合にも存在し得る様々なリスク、すなわち、再構築コスト・リスク、流動性リスク、預金リスク、カストディ・リスク、システミック・リスクを概観している。特に、同報告書は非居住者のクロスボーダー取引の決済に標準的な慣行(市場参加者が仲介業者を経由し証券を保有する形態)には、常にカストディ・リスクが存在する点に焦点をあてている。

クロスボーダー報告書は、カストディ・リスクの特徴とともに、クロスボーダー取引における回転売買の決済やシステム間に跨る決済に用いられる手順を理解しておくことの重要性を強調している。同報告書は、クロスボーダー決済に関する複数仲介業者間の複雑な関係が、国内市場および決済システムの監督に課題を投げかけていると結論付けている。また、最も基本的な問題点は、クロスボーダー証券決済の仕組みに透明性が欠如していることに起因している旨述べている。

1990年、IOSCOは、約定と決済の期間短縮や資金・証券の同時受渡等のG30の9つの勧告の早期実現を支持する報告書を発表した。これらの勧告の達成状況については、その後(1993年、94年、95年、96年)に報告書が公表されている。1992年には、IOSCOは、集中化、自動化された証券決済システムの構築を促すべく、「新興市場における支払・決済 —— その青写真」と題する報告書を発表した。

より最近では、1996年のIOSCOによる「市場監督当局の協調と破綻対応手続に関する報告書」(IOSCO報告書)において、市場における破綻対応手続の透明性が重要である点が述べられている。これは、破綻手順の透明性が、市場参加者にとっての不確実性を排除するとともに、実際の破綻時に秩序ある処理を容易にし、さらに市場参加者が市場に対する適切な評価を下し得る効果をもたらす、との考え方に基づいている。

これらの報告書およびCPSSとIOSCOによるその他の作業は、一貫して市場メカニズムについての透明性確保が重要であることを強調してきた。しかし、同時に、世界的規模での決済量増大と金融取引拡大によって、証券決済システムの運営者は、より迅速な証券・資金の受渡やより効率的なシステム間のリンク構築を求められるようになっている。さらに、一連の報告書にあるように、各証券決済システムで利用される技術および提供されるサービスは一見類似していることから、決済プロセスやリスク管理方法における重大な相違点が覆い隠されてしまう可能性がある。

このため、証券市場参加者にとって、各システムのルールや運用規則、準拠法、基本的なカストディの仕組み、システム間のリンクについて、注意深く検討することが極めて重要である。これらの関連情報の多くは公表ベースで入手可能である一方、膨大かつ詳細な規則集にのみ記載されていることが少なくない。多くの証券決済システムは、参加者のために情宣用パンフレットを発行しているが、その様式がまちまちであるため、参加者にとって異なるシステムで採用されているリスク管理手法の類似点・相違点を評価することが困難となっている。

こうした認識のもと、市場参加者が証券決済システム参加に関する重要なリスクを把握する一助となるよう、CPSSおよびIOSCOは、システム運営者および参加者がシステムに係る権利、義務、エクスポージャーに対する明確な理解を得るために利用できる「ディスクロージャーの枠組み」を共同で構築することが有意義であると判断した。CPSSおよびIOSCOは、こうしたディスクロージャーの枠組みの構築に際し、多数の民間証券決済システムからの参加を歓迎した。

この枠組みは、現状および将来の直接・間接参加者に情報を提供し、その便宜を図るため、証券決済システム運営者によって回答されることを目指している。なお、この枠組みは、証券決済システムの規則や手順に代替したり、法的な取極や拘束力のある契約といった、証券決済システムにとっての規範的基準の設定を試みるものではない。さらに、この枠組みは、必ずしも証券決済システムが個々の事情に照らして公開すべき全ての情報を示しているわけではなく、したがって、参加者がシステムを十分に理解するためには、直接証券決済システム(の運営主体)と意見交換することが必要となるかも知れない。しかしながら、この枠組みは、市場参加者および監督当局にとって、システミック・リスクも含め、証券決済システムに関係し得るリスクを評価するために必要な情報を、整理・理解する手助けとなろう。

この枠組みは、証券決済システムの直接参加者のリスクに焦点を当てているが、市場参加者と国内・海外カストディアン間の関係についても、同様な論点が存在することは明らかである。したがって、この枠組みは、こうしたカストディアンとの関係に関する特別な側面をカバーするよう企図されたものではないものの、カストディ・サービスを利用する先にとっても、参考資料として有益であろう。

以下の章は、証券決済システムの重要な情報、すなわち、組織構成や市場の環境、所有権に関する取極、規則と手順、参加者との関係、他の証券決済システムや仲介業者とのリンク、資金・証券振替の手続、破綻対応手続、回転売買の決済、リスク管理策、および運営上のリスク、といった分野の情報を導き出すことを目指したものである。このディスクロージャーの枠組みは、証券決済システムが回答する質問集の形式をとっている。CPSSおよびIOSCOは、証券決済システムが質問集に回答し、その回答を市場参加者、監督当局、およびその他の関係者の利用に供することを勧奨するものである。質問集への回答に盛り込まれた情報の正確性を維持するため、証券決済システムは定期的に少なくとも年1回回答を見直し、必要に応じて適切な修正を行う必要がある。このように証券決済システムが回答した質問集は、市場に対するシステム運営の透明性向上に寄与するであろう。

証券決済システムのディスクロージャーの枠組み(Questionnaire)の回答作成にあたっての注意事項

  1. 全ての質問に回答して下さい。質問が適切でなければ、それはどういう場合か、またなぜ適切でないか、を説明して下さい。
  2. 各章には、大方のケースにおいて、まず見出しとなる質問があり(A、B…というようにイタリックで表示)、次にそれを補足するためのより具体的な質問が置かれています。見出しとなっている質問が主たる質問ですので、これについては十分に回答して下さい。1つ1つの補足質問に全て回答しても、必ずしも見出しの質問に十分に回答したことにはならない場合がある点に留意して下さい。
  3. 質問の順番に添って質問を記述した上で回答を続けて下さい。回答の重複を避けるために有益な場合には、必要に応じて関連する回答に相互参照すべき旨を示して下さい。
  4. ディスクロージャーの枠組みの用語集では、使用する用語の意味を定義しています。回答文の中でも用語はこれと同じ意味で使用して下さい。回答文の中で使う用語が当該システムで特有の意味を持つ場合や、一般には容易に理解し難い使用法をとる場合には、その意味を分かりやすく説明して下さい。
  5. 質問の中には、回答が理解しやすいように、特に図や表の使用を求めているものがありますが、これに限らずヒントになるような図や表があれば付け加えて下さい。それらの図や表には全て分かりやすい説明を添えて下さい。
  6. 質問に対する回答が複数の場合は(例えば、証券決済システムの決済モードが複数ある場合など)、各々について回答したうえ、どちらがより質問の回答として相応しいかも示して下さい。
  7. 質問への回答は、指示された場合を除き、単に規則や法律をそのまま引用したりしないようにして下さい。但し、回答を補足する意味で適当であれば、関連規定の所在を示して下さい。
  8. 時刻に関する質問には、証券決済システム所在地の現地時間に基づき回答して下さい。
  9. 回答は、常にそれが正確な説明である状態を維持するために、定期的(少なくとも毎年)に見直し、修正して下さい。証券決済システムに大きな変化があった場合には、出来るだけ早く反映して下さい。いかなる頻度で修正が行われたかを知り得るように、回答には日付を示して下さい。

各章質問項目の仮訳

I.Basic Information(基礎的情報)

本章は、証券決済システムの基本的特徴を明らかにし、その運営方法が市場の中で占める役割を浮き彫りにするものである。一連の質問は、証券決済システムの基本的機能、例えば決済サービスの対象や、その他のサービス等に関するものである。また、証券決済システムの組織構成や所有権に関する質問は、その法的基盤やコーポレート・ガバナンス等の情報を導き出すためのものである。

証券決済システムは、様々な組織構成を取り得るし、様々な業務上の機能を持ち得る。例えば、システム所有者は、中央銀行、システム参加者、あるいは営利ないし非営利の独立民間主体であり得る。証券決済システムに関係する各者の責任を明確にする第一歩として、その所有形態、組織構成、政策決定過程、財源、服すべき監督当局などにつき整理しておくことは有用である。

A. 証券決済システムの名称は何ですか。

B. 証券決済システムは何処に所在し、いかなる時間帯(time zone)に位置していますか。

C. 証券決済システムはいかなるサービス(機能)を提供していますか。

  1. 証券保管機構としてのサービスですか、証券決済サービスの機能ですか。それとも両者ですか。
    1. a)証券決済システムに預託可能な証券の範囲はいかなるものですか(例えば、債務証書、株式、ワラント<各種の権利証書>など)。
    2. b)証券決済システムにおいて振替サービスの提供される証券の範囲はいかなるものですか。
    3. c)適格証券は券面が廃止されたものですか、券面が不動化されたものですか、それとも券面の物理的な移動を要するものですか。
    4. d)証券決済システムは券面の保護預かりを行っていますか。
  2. 証券決済システムが、資金口座を提供し、証券決済に対応する資金の振替も自ら行っていますか。行っている場合、いかなる通貨についてですか。
  3. 証券決済システムには、約定照合サービスがありますか。証券決済システムで取扱う証券に関して、他に当該サービスを提供する機関がありますか。
  4. (単に決済の段階でネット金額の振替を行うものではなく)「約定のネッティングサービス」(訳注:約定段階で法的にネッティングされ、債権債務が直ちに縮減されるもの)を提供していますか。証券決済システムで取扱う証券に関して、他に当該サービスを提供する機関がありますか。ネッティングが行われる場合、どのようなタイプのネッティングですか(バイラテラルですかマルチラテラルですか)。
  5. 証券決済システムは、証券貸借サービスを提供していますか。
  6. 証券決済システムは、利払い、配当、元本償還、もしくは源泉税還付等の取扱に係るカストディ・サービスを行っていますか。
  7. 参加者との取引において、証券決済システムがセントラル・カウンターパーティーや相手方当事者となることがありますか。
  8. その他(具体的に)。

D. 証券決済システムの組織の性格はどのようなものですか。

  1. 証券決済システムは公的機関ですか、それとも民間機関ですか。
  2. 証券決済システムは営利目的のものですか、それとも非営利目的のものですか。
  3. 証券決済システムの設立およびシステムを通じた証券振替の法的基盤はどのようなものですか。

E. 証券決済システムの組織や所有関係を表す図表を示して下さい。

  1. 証券決済システムの所有者は誰ですか。
  2. 証券決済システムは、どのような機関によって運営されていますか。第三者にアウトソーシングされている証券決済システムの機能がもしあるならば、それは何ですか。
  3. 証券決済システムに理事会はありますか。
    1. a)その構成はどのようなものですか。
    2. b)その責任はどのようなものですか。

F. 証券決済システムの財源を説明して下さい。

  1. 払い込み資本や内部留保ですか。
  2. 保証や保険による補填ないしその他の類似の取極ですか。
  3. クレジット・ラインやL/Cですか。
  4. 株主ないし参加者への負担割当ですか。

G. 証券決済システムやその運営主体は公的機関による認可や監督に服しているかどうか説明して下さい。

II.Rules and Procedures of the SSS(証券決済システムの規則)

証券決済システムは、自らの業務のあらゆる重要な側面に関し明確な規則を持つことが肝要である。参加者が当該規則を入手できれば、証券決済システムの行動を予測し、これに基づいて判断を下すことができる。これは、とりわけ決済のフェイルの解決、あるいはその他証券決済システムの業務上あり得べき障害の除去にとって重要である。

また、規則には、組織のコーポレート・ガバナンスの核となる意思決定の仕組みや手順について記述されているのが通例である。証券決済システムの運営主体にとって、意思決定過程と決定内容伝達手段の堅確性は、そのシステムの公平かつ効率的なリスク管理能力に対して参加者が抱く信頼度を左右するものとして重要である。

以下の質問は、参加者がどのようにして証券決済システムの規則集を入手し、いかに当該規則にコメントし、どのように証券決済システムおよびその参加者に規則改訂や適用が知らされ、いかなる状況で当該規則が超越され得るかにつき、幅広く焦点を当てたものである。同時に、これらの質問は、システムの規則が証券決済システム運営において果たす役割に関して、参加者の理解を深めることをも意識している。

A. 証券決済システムには、参加者の権利、義務、および証券決済システムの責任を律する詳細な規則集がありますか。

  1. 参加者は規則の写しをどのようにして入手できますか。
  2. 参加者に与えられた他の資料(例えばユーザーガイド)は、規則と同等の位置付けですか。
  3. 監督機関による承認の要否を含めて規則改訂の手続を説明して下さい。
    1. a)規則改訂にはどのような権限が必要ですか。規則改訂の権限は、規則変更の種類によってどう違うのですか。
    2. b)参加者は規則が変更になったことをいかにして知らされるのですか。
    3. c)参加者もしくはその他が規則改訂の提案に対しコメントする手続はありますか。

B. 規則は、参加者と同様に、証券決済システムをも拘束するものですか。証券決済システムはいかなる場合に、誰の権限により、明記されている規則を撤回もしくは停止することが出来ますか。

III.Relationship with Participants(参加者との関係)

証券決済システムの評価にあたって、システムとその参加者との関係を参加者が理解しておくことが重要である。参加承認の条件や異なる種類の参加資格の存在についての理解は不可欠である。証券決済システムの口座の仕組み(account structure)を理解することも、適切にシステムを評価するにあたって重要である。参加者は、この口座の仕組みが当該証券決済システムにおける別の口座等を利用する形で、顧客資産の分別管理を可能としているか、また必要としているか、について理解せねばならない。

本章では、こうした論点に加え、証券決済システムへの参加終了手続およびその影響についても取扱う。ロスシェアやその他取極の存在により、参加資格の終了が、証券決済システム参加者の全債務を消滅させるとは限らない。参加者に対して証券決済システムが負う責任に関する一般的制限が、本章で取扱う最後の質問である。これらの質問は、証券決済システムに関する様々なリスクに関するエクスポージャーの規模を参加者が定量化するために、重要な項目であることは明らかである。

なお、これらの質問は参加者と証券決済システムとの関係の基本的枠組みを提供しているが、両者の関係について最も重要なポイントの多くは、決済フェイルや破綻の処理に関するものである。これらの項目に関する特定的な質問は、後述第VII.章で取扱う。

A. 証券決済システムにおける参加資格の種類を示して下さい。

  1. 各参加資格はどのように異なるのですか。
  2. 同一資格に属する参加者は、全て同一の規則に従いますか。重要な例外があれば、参加者によって規則が異なるケースとその理由付けを含めて、説明して下さい。

B. 参加者は、証券決済システムにおいて、自己資産口座から分別して顧客資産口座を開設できますか。

  1. 可能な場合、顧客全体のための単一の混蔵寄託口座ですか、それとも複数の顧客毎の個別口座ないしサブ・アカウントですか。
  2. 分別保管は任意ですか、それとも強制的なものですか。
  3. 第三者名義のサブアカウントが証券決済システムに置かれることで、当該第三者はシステムの規則の下で参加者としての権利を有することがありますか。

C. 各参加資格について、参加者に求められる資格要件を示して下さい。

  1. 参加者はシステム所在地に居所を置くことが必要とされますか。
  2. 参加者は何らかの監督に服していることが必要とされますか。
  3. 参加者は証券決済システムへの出資を求められますか。
  4. 財務上、経済上、法人格上、またはその他の要件がありますか(例えば、最低自己資本や適格性テスト)。もしあれば示して下さい。

D. 証券決済システムは、参加者による規則遵守を確保するために参加者を監視していますか。もし監視していれば、説明して下さい。

E. 証券決済システムにおいて、参加者の参加資格終了条件は何ですか。参加資格の終了によって参加者の義務は全て消滅しますか。そうでない場合、どのような義務が残り得ますか。

F. 証券決済システムが参加資格を剥奪し得るのはどのような場合ですか。

G. 義務の基準(軽過失、重過失、故意、無過失責任、その他)や不可抗力の判定基準、証券決済システムの責任制限(間接、結果責任の排除等)を含め、証券決済システムの参加者に対する義務の範囲について説明して下さい。また、これらの責任制限はどこに示されていますか(例えば制定法か契約かなど)。

IV.Relationships with other SSSs and Commercial Intermediaries(他の証券決済システムや仲介業者との関係)

多くの証券決済システムは、自らのため、またシステム参加者およびその顧客のため間接的に、重要な役割を担う仲介業者との関係を有している。特に、証券決済システム間の関係ないしリンクは、決済の仕組みのインプリケーションを理解するうえで重要である。例えば、サブ・カストディアンとして他の証券決済システムや民間の仲介業者を利用する形でリンクを行う場合、リンクに関する情報開示は、参加者がリスクを完全に評価するために不可欠であろう。リスク評価は、こうしたリンクが振替のみを可能とするものか、あるいは両証券決済システムの資金口座にも関係するものかによって、異なるであろう。後者のリンクでは、決済の混乱が即座に他システムへと波及する可能性を高めるかどうかを確認するため、特に注意を払うに値する。

第三者との交渉や契約締結を行うのは、証券決済システムであってその参加者ではない。このため、証券決済システムが仲介業者の選定および監視に用いる基準、仲介業者の役割、仲介業者との関係から派生するリスクに対処するための特別なリスク管理メカニズムについては、参加者に十分知らされていることが重要である。また、証券決済システムが第三者ないし仲介業者の代わりに資金・証券の前払いを行う場合、こうした行為が証券決済システムやその参加者にリスクをもたらす可能性があるため、このような事実を明らかにすることも重要である。

A. 証券決済システムは他の証券決済システムとリンク(サブ・カストディアンや資金決済の委託を含む)ないしその他の関係を有していますか。

  1. リンク先の他証券決済システムおよび当該システムとのリンクを通じて振替が可能な証券の種類について説明して下さい。
    1. a)リンク先の証券決済システムの名称および所在地。
    2. b)上記先へのリンクを通じて振替が行われ得る証券の種類。
    3. c)上記先へのリンクを通じた証券の振替処理は非DVPのみですか。DVPも可能ですか。DVPの場合、証券振替と対応する資金決済のタイミングについて説明して下さい。
    4. d)リンク先の証券決済システムは貴システムに対してカストディ・サービスを提供していますか。もし提供している場合、信用リスクやカストディ・リスクを負うのはどちらですか。

B. 証券決済システムは、上記質問にある他証券決済システム以外に、サブ・カストディアンや資金決済のコルレス先を利用していますか。利用している場合にはサブ・カストディアン名と資金決済コルレス先名、および各々の責任を示して下さい。

C. 他の証券決済システムや、カストディアンもしくは資金決済コルレス先の選定・見直しの基準について、財務上や事務処理上の要件、あるいは保険や公的監督の存在を含めて、説明して下さい。

D. 証券決済システムは、証券発行ないし支払の代理人(issuing or paying agent)といった仲介業者に対して、あるいはこれらの仲介業者に代わって、資金や証券の貸出を行いますか。

E. 他の証券決済システムや仲介業者が証券決済システムに対する義務を履行できない事態について、証券決済システムや参加者の防御手段として、リスク管理策、担保、その他の資金や証券の流動性確保策を含め、どのような方法があるか、説明して下さい。

V.Securities Transfers, Funds Transfers,and Linkages between Transfers(証券・資金の振替と両振替のリンク)

証券決済システムの業務の中核となるのは、実際の決済手続である証券および資金の振替である。本章の質問は、初めに決済手続の開始に先立って行われる決済指図の照合手続に焦点を当てた質問をおいている。照合後の支払指図が拘束力を持ち、参加者が理解しておくべき重大な付加的義務が課される市場もある。

次に、本章では、証券の登録に係る問題を取扱う。この点については各国法が異なるため、本ディスクロージャーの枠組みが「登録のインプリケーションに関する法的分析(例えば、証券決済システム自体が登録機関ではない場合のシステムで移転される証券の権利に関する問題)を代替するもの」と位置付けられるものではない。その代わり、証券決済システム自体が登録手続に関わっている状況や、証券が買手名義で登録される途中に参加者がフェイルした場合に生じ得るリスクに焦点を当てている。特に、証券決済システムの規則がそのような事態に取引の組戻を行うと定めているものか否かを理解することが重要である。

さらに、証券決済システムにおいて証券振替に付随する資金振替がどこで行われるかという問題も含め、証券および資金振替の仕組みを取扱う。これらの質問では、システムの資金振替の遂行能力という観点から、証券決済システムが参加者に与信を行う状況についても言及する。証券決済システムにおいてどのようなタイプの資金口座が提供され、その口座の資金について参加者は誰に対してリスクを負っていることになるのか、また証券決済システム自身がこうした口座に係る信用リスクを負うのか、といった点について参加者が理解しておくことは明らかに重要である。

さらに、証券決済システム内の処理タイミング、すなわち、システムがDVP化されているか、どのようなDVPモデルが採用されているかにつき検討する。DVPとは、確定的な資金振替の生じる際にのみ確定的な証券受渡が行われることを確保するメカニズムで、元本リスクをなくし、流動性リスクの削減に寄与するものである。

実際のDVP実現に伴う論点は、主として、DVP決済を構成する証券振替および資金振替のファイナリティに関わるものであり、この点についてはDVP報告書に記述されている。振替は各々が取消不能(irrevocable)かつ条件付きではない(unconditional)ことになったときに確定する。当事者が自らの指図をもはや取消すことのできない場合に、振替は取消不能となり、システムがこれを組戻す余地が存在しなくなった場合に、条件付きではないことになる。振替処理が暫定的なものであると、たとえDVP化されていても、ファイナリティが得られずに振替が後で組戻され得るというリスクが残る。

こうした「ファイナリティ・リスク」が適切に認識・管理されない場合、連鎖的な影響をもたらす惧れがある。証券決済システムの参加者が、受渡証券の振替が確定していなくても受取証券を即座に利用可能となることが少なくない。その際、こうした参加者が、再び証券を売却したりカストディアンたる顧客の利用に供した後、当初の振替が組戻しになった場合、当該参加者ないしその顧客の行ったその後の振替も組戻され、取引関係のない先にまで組戻の影響を広めることとなる。また、最終的には、参加者間で損失を負担することにもつながる。こうした理由から、以下の質問は振替が確定する状況を明確化するよう試みている。

また、証券決済システムによって提供される決済の保証についても取扱う。保証が存在する場合には、参加者は、証券決済システムの保証に係る責任の範囲も含めて、保証実行の原因となる事態や保証が適用される範囲を理解する必要がある。

A. 決済指図が証券決済システムで(振替)処理される前に照合が行われるかどうか、どのようにして行われるかを説明して下さい。

  1. 照合は、例外なく全ての取引に必須ですか。
  2. 照合が行われない場合にはどのような手続きがとられますか。
  3. 照合後の決済指図は、参加者に対して拘束力を持ちますか。
    1. a)その場合、参加者が債務を履行できないケースの措置(決済の強行、罰則、残高不足等)を具体的に記述して下さい。
    2. b)そのような措置が採られるのは、証券決済システムのルールに基づくものですか、あるいは国内法規制によるものですか。
    3. c)照合後の指図が拘束力を持つ時点、また「事前照合」(pre-matching)が行われる場合には、それらの時点をも示した時間割を示して下さい。

B. 証券決済システムでは、証券は登録されますか。

  1. 登録機関はどこですか。
  2. 通常、証券決済システム(ないしそのnominee=代理人)の名義で証券の登録を行いますか、あるいは実際上の所有者の名義ですか。証券決済システム内で保管されている証券が、証券決済システム(ないしその代理人)または所有者のいずれの名義でもないというケースがありますか。
  3. 証券決済システムがカストディアン・サービスを行っている場合、本来の所有者の名義で証券を保有していますか。
  4. 証券決済システムが証券の買手への登録手続をとるのは、いかなる場合ですか。
  5. 通常、上記4.の登録手続にはどのくらい時間がかかりますか。参加者は登録の完了をいつ知らされますか。
  6. 証券の買手への登録手続が完了する前に、証券決済システム内で証券の振替が行われることがあり得ますか。その場合、破産の発生、その他の事情により買手名義に登録されないような結果となるケースでは、振替の組戻ないし取消を行うことが証券決済システムのルールで定められていますか。

C. 証券決済システム内で、証券の振替が行われる方法について記述して下さい。

  1. 証券の振替は、参加者口座の貸記または借記として行われるのですか、それともそれ以外の方法によりますか。
  2. 処理は継続的に(即時ベースで)行われますか、あるいは1ないし複数のバッチ処理で行われるのですか。
  3. 継続的に処理が行われる場合、処理時間帯は何時から何時までですか。バッチ処理の場合、処理の開始および終了時間はいつですか。
  4. 証券決済は毎日行われますか。週ないし月の特定日のみにしか決済を行わない証券があれば示して下さい。

D. 証券決済システムの確定的な資金振替は、決済システム自身に設けられた参加者口座の残高の貸記または借記によって行われるのか、それとも他の商業銀行や中央銀行における参加者口座の残高の貸借振替で行われるのか、あるいはその他の方法によるのか、説明して下さい。

  1. 証券決済システム自身に参加者の資金口座が開設されているのですか。その場合、こうした口座は、民間銀行ないし中央銀行の預金口座と同様のものですか、あるいは「(資金の)記録のための」口座(cash memorundam accounts)としてのみ機能するものですか。
  2. 参加者が預金について信用リスクを負うのは、いかなる相手方(証券決済システムないしその他)に対してですか。
  3. 参加者に対し与信を行うもしくは資金を前払いすることによって証券決済システム自身が信用リスクにさらされることになるのは、いかなるケースですか。
  4. そのような与信はどのくらい続き得ますか。通常はどのぐらいの期間続くのですか。

E. 証券決済システムはDVPシステムとなっていますか。そうである場合には、DVP報告書の分類に従って、システムがどのDVPモデルにあたるか記述して下さい。また、図を用いて、証券決済システム内で証券振替と資金振替の処理が行われるタイミングを示して下さい。証券決済システムにおいて、決済の処理につき複数の選択肢を提供している場合、各選択肢について回答を作成し、各選択肢のいずれがより多用されているかを示して下さい。

  1. 資金振替と証券振替の処理は同一システム内で行われますか、あるいは、別のシステムで行われるのですか。別のシステムの場合、どのようにリンクされていますか。
    1. a)各々の証券振替は、取引1本毎に特定の資金振替とリンクされていますか。それとも、ネットベースの資金決済その他の方法で資金決済とリンクしているのですか。
    2. b)証券決済システムは大口取引を複数の取引に「分割」しますか、あるいは参加者がそのような分割を行うことを要請していますか。
  2. 証券や資金の振替が確定するのはいつですか。
    1. a)証券決済が確定するのはいつですか。それはいかなる出来事の後ですか。
    2. b)資金決済が確定するのはいつですか。それはいかなる出来事の後ですか。こうしたタイミングで、証券と引換えに受領した資金を同日中に再度振替えることが可能ですか。
    3. c)証券の最終的な受渡しが資金の最終的な振替より先行する場合、(証券の買手)参加者は資金のファイナリティ確定に先立って、こうした証券を自由に処分できますか。その場合、(証券の売手によって)資金が受け取られないとどのような措置が採られますか。
    4. d)資金の最終的な受渡しが証券の最終的な振替より先行する場合、(証券の売手)参加者は証券のファイナリティに先立って、こうした資金を自由に処分できますか。その場合、(証券の買手)参加者が証券を受け取れないとどのような措置が採られますか。
    5. e)証券や支払通貨の種類によって、振替確定の時点は異なりますか。それらを記述して下さい。
  3. 参加者は証券や資金の振替が、まだ暫定的な段階でその通知を受けますか。それとも、確定した時点でのみ通知を受けるのですか、あるいはその両方のタイミングで通知を受けるのですか。

F. 証券決済システムは、資金や証券の振替を「保証」していますか。

  1. 証券決済システムが振替を保証するのは、いかなる場合で、どの時点ですか。
  2. 保証によって、証券決済システムはどのような義務を負いますか。
  3. 保証は、証券決済システムのルールによるものですか、それとも国内法規制に基づくものですか。

VI.Default Procedures(破綻対応手続)

破綻は、市場参加者および証券決済システムが経験する事態の中で、最も困難かつ負荷の大きい事象である。IOSCOの報告書では、破綻対応手続の分野における透明性確保の必要性を強調しているが、これは、こうした透明性の確保が緊急時でも重要な市場メカニズム機能の確実性を高め、延いては1つの破綻がさらなる混乱を引き起こすリスクを削減することとなるためである。

破綻の定義はシステムによって異なるため、IOSCOの報告書では、措置が発動される状況および措置の発動者と範囲を開示するよう勧告している。証券決済システムの規則ないし参加者との契約書において、「破綻」(default)という言葉が使われないケースもある。このようなケースでは、証券決済システムは参加者の支払不能(insolvency)に対する証券決済システムの対処方法や、決済実行を始めとするその他の参加者に対する債務を履行するための特例措置が発動される状況について、参加者のために明示すべきである。

こうした点に関し、本章では、破綻その他の特例措置が発動される事態の際にシステムが債務を履行するために利用可能な資源を明らかにするように試みるものである。参加者は、こうした資源やその利用手順を理解しておくことが重要である。また、ここでの質問は、証券決済システムによって証券と資金の振替が組戻される可能性も取扱っている。組戻は流動性の逼迫や与信の損失を再配分するものであるため、組戻(unwind)の起こるあらゆる状況を参加者が理解しておくことが肝要である。

A. 証券決済システムのルール上、参加者の「破綻」の原因となったり、証券決済システムが例外的な決済方法や組戻を行ったりするのは、いかなる事態ですか。

  1. 適用される法律における基準によって、参加者が支払不能とされる場合ですか。
  2. 規定された時間内に支払や証券の受渡しができない場合ですか。
  3. ルールにおいて破綻もしくは特例措置の行使決定に際しての裁量が認められている場合には、このような裁量権を行使し得る者とその状況を記述して下さい。

B. 参加者破綻もしくは特例措置を採ることを決定した際、その後証券決済システムではどのような手続が採られますか。

  1. 破綻の起こったことを、参加者はいつどのようにして知らされますか。
  2. 証券決済システムは、これらの状況の下でも、参加者に対する全ての債務を履行すべきものと期待されていますか。そうである場合、システムの債務履行のための財源について説明して下さい(担保、参加者の基金・保険、ロスシェア取極など)。
  3. 参加者への通知タイミングや重要な締切時限、および2.の財源使用順序などを示すスケジュールについて説明して下さい(例えば、いつ証券決済システムは参加者に債務を履行し、参加者はいつロスシェアの分担に応じる必要があるか、など)。
  4. 証券決済システムが証券振替や資金振替を組戻すこととなる状況を全て説明して下さい。
    1. a)証券決済システムによる証券振替ないし資金振替の組戻実施の決定は、いかなる主体によって、どのように行われますか。
    2. b)参加者は証券や資金の振替の組戻実行の決定をいつどのように知らされるのですか。
    3. c)参加者は、組戻から生じる証券や資金口座の赤残を、どのくらいの期間、受容する必要がありますか。
    4. d)決済の組戻の際には、全ての振替が組戻されることになりますか、あるいは振替の一部(例えば、全ての証券購入あるいは一部の参加者の証券購入のみ)のみが組戻されることになるのですか。
    5. e)振替の一部のみの組戻が行われる場合、どのような振替をいかなる順序で組戻すかを決定するための手続について説明して下さい。
  5. 証券決済システムの所在地において、倒産は遡及的に効果を生じ(ゼロアワー・ルール等)、資金や証券の振替の組戻し原因となることがあり得ますか。
  6. 上記質問V.E.2.の答えで定義された証券や資金の振替が組戻されるのはどのような状況か説明して下さい。

C. 証券決済システムの参加者が、かつて実際に破綻宣告を受けたことはありますか。

  1. その時ロスシェアの手続は採られましたか。
  2. こうした破綻が証券決済システムや参加者に損失を招いたことはありますか。

VII.Securities Overdrafts, Securitites Lending, and Back-to-Back Transactions(証券口座の赤残、証券貸付、回転売買)

近年、証券決済システムでは、特にクロスボーダー取引で高まっている迅速な証券決済のニーズに答えるために、様々な方策をとっている。本章では、こうした手続に関して生じ得るいくつかの問題点に焦点を当てる。

本章の最初の質問は、証券決済システムの参加者の証券口座が赤残となる可能性に関するものである。赤残になるということは、参加者がシステム内の口座に保有していない証券を振替ることができることを意味する。このため、同システムが証券を取得できず、所要の決済を全て終了させられなくなる事態が発生し得るという点で、大きなリスクを内包していることは明らかである。したがって、そのような赤残が生じる状況、および証券決済システムがこれに対処する措置について、参加者が理解しておくことが重要である。また、ここでの質問は、証券決済システムがそのような赤残を削減ないし消滅させるために取り得る措置についても言及している。

本章の質問で取扱われるもう1つの重要なテーマは、証券決済システムの証券貸付の仕組みの有無とその発動条件である。証券決済システムが証券貸付を発動するのはいつか、またシステム内の口座に保管されている証券がこうした貸付などに利用されるのはいつかについて、参加者は理解しておく必要がある。また、証券貸付の仕組みの有無や条件は、様々なケース、特に回転売買(back-to-back transactions)において、証券決済システムにおける決済の円滑化機能に影響を与え得る。

回転売買とは、クロスボーダー証券決済に関する報告書において主要な論点となったもので、ある取引当事者に同一期日での同一証券の買いと売りを要求する一組の取引である。こうした取引は、証券の買手と売手が不要な資金調達コストを回避できるという利点がある。

回転売買の慣行は、買取証券が組戻されるリスクがないため、現実にかつ確定的に証券が受け取られた後に売渡される限りにおいては、特にリスクを発生させるものではない。しかしながら、とりわけクロスボーダー取引での決済のタイミングやファイナリティの時間差の存在は、状況によって証券決済システムで証券の買取が確定する前に売渡しを行い、事実上の一時的な(日中)証券貸付を容認する慣行につながっている。本章の質問では、こうしたケースの起こる状況を明らかにし、参加者がこれらの慣行に伴うリスクを理解できるよう試みる。

A. 証券決済システムの証券口座に赤残(O/D)が生じることがあり得ますか。

!!
  1. このような赤残が生じるのは、いかなる場合ですか。
    1. a)こうした状況の下では、常に、取引がフェイルすることはなく、証券口座の赤残になるのですか。常に赤残になるものではないとすると、証券決済システムにおける取扱の相違を説明して下さい。
    2. b)こうした状況は、証券決済システムのルールに明示的に記されていますか。
  2. このような赤残はどのくらいの期間続けることができますか。通常はどのくらいの期間続きますか。
  3. 証券口座の赤残は、どのように回避され、解消され、管理されていますか。
  4. (例えば、証券口座の赤残を抱えた参加者がフェイルしたり、市場で証券が手当てできないことなどにより)赤残が解消できない場合、証券決済システムではいかなる手続が採られますか。
    1. a)参加者に損失を割り当てるロスシェア条項を適用するのですか。
    2. b)証券決済システムが損失を負担するのですか。
    3. c)その他、具体的に記述して下さい。

B. 証券決済システムが決済を確実に行うために証券貸付を行うのはいかなる場合ですか。

  1. 証券貸付の手続は自動的に行われるのですか。もしそうでない場合、証券貸付の要否を決定するために証券決済システムが用いる手続を記述して下さい。
  2. 参加者は、いかなる時点で自己の決済を完了させるために証券貸付を受けることを知らされますか。
  3. 証券決済システム保管証券のうち、貸付適格とされるのはいかなる証券ですか。預託証券を貸付に利用させるか否かを参加者が決められるのですか、それとも強制的なものですか。
  4. 貸付証券は証券決済システムにおいて特定の参加者を貸手とするものと認識されているのですか、それとも貸付適格証券の集合体が貸付主体と位置付けられるのですか。証券を貸付したことになる参加者は取引当事者となるのですか。

C. 証券決済システムはどのように回転売買の決済を行いますか。

  1. 参加者による同一決済日の証券の受渡しの指図が、回転売買として同日中に決済されるのは、いかなる場合ですか。
    1. a)参加者が、振替の履行に必要な証券を証券決済システムに確定的な形で預託している場合だけですか。
    2. b)参加者が、振替に必要な証券を証券決済システムに暫定的な形で保有している場合のみですか。
    3. c)証券の暫定的ないし確定的な受取り前でも、照合された受取指図の価格が振替額と同額以上の場合ですか。そのような取扱は、照合が拘束力を持つ証券の場合に限られますか。
    4. d)証券の暫定的ないし確定的な受取り前で、第三者が証券決済システムに振替額と同額以上の額の証券の受渡しを約束した場合ですか。この場合その保証者自身は、確定的な振替によって証券を受け取っていなくてはなりませんか。証券決済システムはこのような約束をどのように評価しますか。またその点について証券決済システムの規則に明記されていますか。
    5. e)その他、具体的に記述して下さい。
  2. 回転売買の対象となる、あるいはこれに関係する証券の流動性の額に上限を設定するなど、上記の回転売買に関する取極について採用している限度額制度などの管理策を記述して下さい。
  3. 証券決済システムの参加者の資金の支払指図が回転売買として同日中に決済されるのは、いかなる場合ですか。参加者は、与信を受けずに引渡すべき証券の代金を運用できますか。

VIII.Risk Control Measures(リスク管理策)

本章は、証券決済システムで採用されているリスク管理システムの概要を紹介することを目的としている。健全なリスク管理の要素は、リスク評価および当該システムで扱われる新しい商品やサービスのリスク管理プロセスに投入される人材(幹部および理事会)等多面に亘る。また、内部監査/外部監査ないし監督当局による監督は、導入されているリスク管理手法が健全で整合的なものであることを確保するのに重要な役割を果たす。

証券決済システムの提供する様々なサービスには、様々なリスクが生じ得る。例えば、決済サービスを提供する過程で、証券決済システムが参加者に対し明らかな形または隠れた形で資金・証券貸付を行う場合、システムは信用リスク、顧客リスク、流動性リスクに晒される可能性がある。また、カストディ・サービス提供の関連で、証券決済システムが第三者に対しまたはその代わりに資金貸付を行う場合、信用リスクを負うかもしれない。こうしたリスクに対しては、担保の利用やリスク・エクスポージャーの限度枠設定等様々なリスク管理手法があり得る。また、ここでの質問は、証券決済システムが直面する様々なリスクの管理・削減に有益なその他の手段についても言及しているが、これらは、必ずしも証券決済システムが採用し得るあらゆる手法をカバーするものではない。

A. 証券決済システムがリスク管理の任を負う領域での、その役割と責任を記述して下さい。

  1. リスク管理策や手続を証券決済システム内部で検討する手順を説明して下さい。
  2. 証券決済システムが提供する新商品、サービスの見直しや承認に関するリスク管理策はありますか。どのようなレベルの組織がこうした承認を行うのですか。
  3. 証券決済システムには、運営ないしマーケティング部門から完全に独立した権限を持ったリスク管理部門がありますか。
  4. 理事会はリスク管理策や手続を検討しますか。理事会には、リスク管理委員会あるいは監査委員会がありますか。

B. 証券決済システムに関して行われる内部監査/外部監査ないし監督当局の監督としての検査について記述して下さい。このような監査や検査のそれぞれについて、以下の質問事項に答えて下さい。

  1. 監査ないし検査を行うのはどのような主体ですか。
  2. 監査ないし検査の範囲はどのようなものですか。
    1. a)内部管理の適切さおよびその順守状況は、これらの対象となっていますか。
    2. b)証券決済システム自体がそのルールに沿っているか否かも、これらの対象ですか。
  3. 監査ないし検査の頻度はどの程度ですか。
  4. 参加者は、監査報告書ないし検査報告書を参加者が閲覧できますか。

C. 証券決済システムは、保有証券を(時価)評価する能力を備えているか説明して下さい。

  1. 証券決済システムのリスク管理システムにおいてこうした評価方法がどのように使われているか、示して下さい。
  2. 証券の評価は、どのくらいの頻度で行われますか。
  3. 証券の評価方法の基準は何ですか。
    1. a)利用している外部の価格情報などのデータソースは何ですか。
    2. b)価格評価推計モデルが使われている場合、モデルの選び方やモデルの計算結果の算出方法を記述して下さい。

D. 証券決済システムは、保管している、またはシステムを通じて振替えられる証券について担保権(lien)を取得しますか。

  1. 証券決済システムの担保権は、参加者自身の保有する証券にのみ適用されますか、あるいは参加者の顧客の保有する証券にも拡大されますか。
  2. このような担保権に基づいて、証券決済システムが証券を利用することができるのはいかなる状況、いかなる方法においてですか。

E. 証券決済システムがリスクを限定ないし軽減するため担保を徴求するのは、いかなる場合ですか。

  1. 1.証券決済システムは、自らの担保システムを保有していますか。
  2. 他の証券決済システムや決済システムと共用の担保システムですか。
  3. 証券決済システムの担保は、同日中に預託または返却され得ますか。
  4. 証券決済システムの取引で、担保の利用を伴うのはいかなる取引ですか。
  5. 利用される担保の種類ないし適用される掛目に関し、何か基本方針はありますか。
  6. 担保の評価方法はどのように作成され、見直されますか。
  7. 担保に関する方針は、証券決済システムの書面のルールにどの程度記載されていますか。

F. 証券決済システムでは、リスクのモニターないし管理のためにエクスポージャーの限度額を用いていますか。

  1. 用いられる限度額やその対象となるエクスポージャーのタイプを説明して下さい。
  2. 限度額は、全参加者および証券決済システムがリンクしている他の証券決済システムにも適用されますか。また、こうした限度額の適用について例外がありますか。
  3. 限度額は、参加者個々に、ないし全体、あるいはその両方に適用されるのですか。
  4. 限度額は、隠れた形の与信あるいは証券貸付(例えば、受渡証券を、暫定的で未だ確定していない証券の振替の実行に利用する場合など)にも明示的な与信と同様に適用されますか。
  5. 証券決済システムでは、自動的に限度額を超過した取引を拒絶しますか、それとも順守状況を事後的に管理するに止まりますか。
  6. 限度額に関する方針はどのように作成され、また見直されますか。
  7. 限度額に関する方針は、証券決済システムの規則にどの程度記載されていますか。限度額の設定や変更のための追加的な権限は誰が有していますか。

G. 証券決済システムにおいて、上記以外のリスク削減策があれば記述して下さい。

  1. 証券決済システムないしその参加者は、処理が行われる間、継続的に参加者の口座をモニターすることができますか。
  2. 証券決済システムでは、信用不安に直面していることが判明した参加者に対し、適用する特別なリスク管理の仕組みがありますか。
  3. 証券決済システムは、破綻に適用される場合または以下第6章に示す場合以外のためのロスシェアの取極を有していますか。それらのロスシェア取極めは参加者の事前の拠出に基づく基金を有していますか。

IX.Operational Risks(運営上のリスク)

証券決済システムの運営の失敗は、参加者が同システムに保有する資産へのアクセスを制限し、他の用途にこれを用いることを妨げるなどにより、他の支払・クリアリング・決済システムへの波及的影響を持つ。さらに、問題の長期化は関連証券の取引を削減ないし停止させ、市場参加者に重大な結果をもたらす。

証券決済システムの運営に強固な内部管理を十分維持しておくことによって、運営上のリスクを削減することは望ましい慣行である。不可避の障害や自然災害の際には、証券決済システムは同システムの運営再開に必要なあらゆる業務上の機能および資源を確保するため、十分練られた業務続行計画を具備しておくべきである。

A. 証券決済システムが利用するコンピュータ・システムおよびその他システムの信頼性の評価方法を、証券決済システムがこうした目的で内部的に用いる基準も含めて記述して下さい。

  1. 証券決済システムの正常オンライン稼働率(percentage uptime)はどの程度ですか。
    1. a)システム全体でどの程度ですか。
    2. b)(コミュニケーション・ネットワーク、CPU等)主な構成要素毎に分けてみるとどうですか。
    3. c)重要な処理時間帯では、どの程度ですか。
  2. 証券決済システムでは、過去2年間に重要なシステム障害を生じたことがありますか。
    1. a)このシステム障害により、決済は遅延、中断、あるいはストップしましたか。
    2. b)そのようなシステム障害の特徴を記述して下さい。

B. 証券決済システムにおける緊急措置ないし災害復旧措置について記述して下さい。

  1. 正式な形で業務続行計画をたてていますか。
    そのような計画を参加者がレビューすることはできますか。
  2. こうした計画のテストの頻度はどの程度ですか。このテストには、証券決済システムの参加者も参加していますか。
  3. 業務続行計画の主な要素は何ですか。
  4. メイン・システムが使用不能になった場合、証券決済システムが業務を再開するのにどのくらい時間がかかりますか。

C. 証券決済システムの運営および安全管理策に関する内部管理の特徴は何ですか(管理方法の変更ないしリモート・アクセスに関する管理方法の変更等)。

  1. 証券決済システムが、正当な参加者の認証済の決済指図に基づいてのみ決済を行うように、実施されている管理策あるいはセキュリティ上の手続を記述して下さい。
  2. 証券決済システムの内部監査/外部監査には、システム運営および安全管理策に関する内部管理が含まれますか。
  3. システム運営および安全管理策についての内部管理は、証券決済システムに適用される規制の内容に含まれていますか。

D. 証券決済システムでは(通信システムの提供者等)第三者に対し、システム上ないし運用上の最低基準を課していますか。

  1. 証券決済システムでは、その基準が継続的に満たされることをどのようにして確保するのですか。基準が満たされない場合、システムはどのような制裁手段を利用できるのですか。
  2. 第三者の引き起こしたシステム上の問題により損失を被った場合、証券決済システムではこの損失をどのように分配しますか。

以上