実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則
(日本銀行仮訳)
1997年 9月23日
バーゼル銀行監督委員会
(日本銀行から)
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プレス・ステートメント
○ バーゼル銀行監督委員会は、G10諸国の中央銀行総裁の了承を得て、本日、実効的な銀行監督のための「バーゼル・コア・プリンシプル」を公表する。当文書は、1997年4月に公表された公開協議用文書の改訂版であり、監督体制が実効的たりうるために、バーゼル委員会がなくてはならないと考える25の諸原則が提示されている。
○ 「バーゼル・コア・プリンシプル」は、15の新興市場諸国の監督当局との緊密な協力の下にバーゼル委員会によって作成されたもので、その他多数の世界中の監督当局とも幅広く有益な協議が行われた。
○ 諸原則は、実効的な監督システムの基本的な要素を述べている。そのカバーする範囲は包括的であり、実効的な銀行監督のための前提条件(preconditions for effective banking supervision)、免許と銀行組織(licensing and structure)、健全性規制(prudential regulation and requirements)、継続的な銀行監督の手法(methods of ongoing supervision)、徴求情報(information requirements)、監督当局の公式の権限(formal powers of supervisors)及びクロスボーダーの銀行業務(cross-border banking)といった問題を取り上げている。
○ 「バーゼル・コア・プリンシプル」は、世界中の監督当局及び他の公的当局がその管轄内の全ての銀行に対して監督を行ううえでの基礎的な参考資料となるよう意図されている。世界中の監督当局に対し、「コア・プリンシプル」を遅くとも1998年10月までに了承することが推奨される。この場合の了承には、現行の監督体制を当諸原則に照らして点検することを請負うことが含まれる。監督体制に所要の変更を加えるために要する時間は、監督当局が既に必要な法的権限を有しているかどうかに依存するため、様々であろう。法改正が必要である場合には、各国の立法者は、当諸原則が全ての重要な面で適用されうるために必要となる法改正につき、早急に検討するよう望まれる。
○ 本諸原則のテキストは、9月23日より、インターネット上のBIS Web Siteのhttp://www.bis.org/、各国監督当局、ないしは国際決済銀行にあるバーゼル委員会事務局から入手することができる。
注
1. バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。
2.
バーゼル銀行監督委員会は、直接または世界各地の銀行監督者との数多くの接点を通じて、この分野における活動を何年にも亘って続けてきた。過去1年半の間、バーゼル委員会はこれまでに培ってきた非G10諸国との関係、ならびにメンバー諸国内の銀行監督の強化のための作業を用いて、全ての国における銀行監督の強化に向けての努力を拡大していくうえでの最善の方法を検討してきた。当委員会は1997年4月に2種類の文書を公表した:
・
G10、非G10諸国の双方に適用可能な、実効的な銀行監督のための包括的な内容を盛り込んだ「コアとなる諸原則」(「バーゼル・コア・プリンシプル」)のドラフト;及び、
・
その殆どがコア・プリンシプルにおいて引用されている、現行のバーゼル委員会の提言、指針及び基準の「コンペンディアム(Compendium)」(定期的に更新の予定)。
両文書は、G10諸国の中央銀行総裁の了承を得、全ての国における金融安定の強化のためのメカニズムを提供することを展望して、デンバー・サミットの準備に向けてG7及びG10諸国の蔵相に提出された。
3. 今回発出される文書は1997年4月の文書の改訂版である。諸原則の数は25のままであり、実質的に修正された箇所は若干である。他の修正は殆どが文章面でのものである。
4. 当諸原則を作成するに当たり、バーゼル委員会は非G10諸国の監督当局と緊密に連携してきた。当文書はバーゼル委員会及び、チリ、中国、チェコ、香港、メキシコ、ロシア、タイの代表で構成されるグループで準備された。他にも、9ヶ国(アルゼンチン、ブラジル、ハンガリー、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ポーランド及びシンガポール)も作成作業に密接に関与してきた。当諸原則の起草作業では、さらに、直接ないしは地域の銀行監督者グループを通じて、より多くの個別監督当局及びIMFと世銀とも幅広く有益な協議が行われた。
5. 当文書では、各国の監督当局がその管轄内の全ての銀行に対する監督に当諸原則を適用すべきことを呼びかけている。当諸原則は最低基準であり、多くの場合、各国の金融システムに特有の状態やリスクに対処するための他の措置によって補完されることが必要になるかもしれない。
6. 「バーゼル・コア・プリンシプル」は、全ての国において、また、国際的に、監督当局及び他の公的当局の基礎的な参考資料となるよう意図されている。当文書を用いて、既存の監督体制を見直したり、その法的権限の範囲内で実務的に可能な限り早急に欠陥を是正するための計画を起動したりするのは各国の監督当局となるが、実際、多くの監督当局は積極的に現行の監督制度を強化することを目指している。
7. 当諸原則は、監督当局、地域の監督者グループ、さらには市場全体からのチェックが可能なように設計されている。バーゼル委員会は、他の関係機関とともに、各国の当諸原則の実施状況をモニタリングする一定の役割を果たしていくつもりである。IMF・世銀や他の関係機関が、マクロ経済及び金融システム全体の安定性を促進するためのそれぞれの作業との関連で、各国が自らの監督体制を強化することを支援する際に、当諸原則を用いることが勧められる。
8. 世界中の監督当局は、「バーゼル・コア・プリンシプル」の最終版を了承することが奨励される。バーゼル委員会のメンバー及び起草作業に参加した他の16ヶ国の銀行監督当局は全て当文書の内容に同意している。
9. バーゼル委員会は、全ての国が当「コア・プリンシプル」と整合性を確保することは、国内的及び国際的に金融の安定性の向上の過程における大きな前進になることを確信している。この目的を達成するのにどの程度の時間がかかるかは様々であろう。多くの監督当局は現在、諸原則全てを実施する法的権限を有していないため、多くの国で本質的な法的枠組みの変更や監督当局の権限の変更が必要となるであろう。バーゼル委員会は、こうした場合には、当諸原則が全ての重要な面で適用できることを確保するための所要の法改正につき、各国の立法者が早急に検討することが不可欠である、と確信している。そうした新たな法律制定の必要性に関しては、実施に向けての進捗状況のモニタリング・プロセスの中で、バーゼル委員会によって斟酌されるであろう。
10. バーゼル委員会は、Compendiumに掲載されている文書で行ったように、主要なリスク分野及び銀行監督上の主要な要素について、その基準設定活動を追求し続けるであろう。「バーゼル・コア・プリンシプル」は、当委員会が、適切な場合には非G10の監督当局や地域の銀行監督者グループと協力しつつ、将来行っていくべき作業の基点となるであろう。当委員会は、他の監督機関や関係者と共に、各国レベルで当諸原則を実施に移す作業を奨励する用意がある。最後に、当委員会は、非G10諸国の監督当局との交流を強化し、技術支援及び研修に対するこれまでの大きな投資を一層増加させていくことにコミットしている。
11. 25のコアとなる諸原則は以下に示されている。
実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則のリスト
実効的な銀行監督のための前提条件
1.実効的な銀行監督システムでは、銀行監督に関与している当局のそれぞれに明確な責任及び目的が与えられているであろう。該当する各当局は、機能上の独立性や適切な資源を有するべきである。また、銀行設立の認可及び継続的な監督、法律及び健全性基準(safety and soundness concerns)の遵守状況に対処する権限、監督官への法的保護といった規定を含め、銀行監督に関する適切な法的枠組みが必要である。監督当局間での情報の共有及びこれらの情報の機密保持のための取決めもなされているべきである。
免許と銀行組織
2.免許を付与され、銀行として監督に服すべき組織が行うことのできる業務は、明示的に定義されなければならない。また、「銀行」という名称の使用は、可能な限り管理されるべきである。
3.免許付与当局は、免許付与の基準を設定し、一定の基準に満たない企業の申請を却下する権限を有していなければならない。免許付与のプロセスでは、最低限、銀行の株主構造、取締役及び上級管理職、業務計画及び内部管理、資本基盤を含めた財務状況の見積もりに対する評価を行わなければならない。提案されている所有者あるいは親会社が外国銀行である場合は、母国監督当局の事前の同意が得られているべきである。
4.銀行監督当局は、現存の銀行に対する主要な所有権や支配力を他の主体に移譲させる提案を点検し、棄却する権限を持っていなければならない。
5.銀行監督当局は、銀行による大型の買収や投資を点検し、関連会社との関係や銀行の組織構造が銀行を不当なリスクに晒したり、実効的な監督を妨げることがないようにするための基準を設ける権限を有していなければならない。
健全性規制
6.銀行監督当局は、全ての銀行に対し、慎重で適切な最低自己資本適正度に関する規制を設定しなければならない。こうした規制は、銀行が引受けるリスクを反映し、自己資本の内容を、損失を吸収する能力を勘案して定義したものでなければならない。少なくとも国際的に活発な活動を行っている銀行に関しては、こうした規制は、バーゼル自己資本合意で設定されたものと同等以上でなければならない。
7.監督システムの重要な要素は、貸出や投資の決定、貸出・投資ポートフォリオの継続的管理に関する銀行の方針、慣行及び手続きに関する評価である。
8.銀行監督当局は、資産内容や貸倒引当金・貸倒準備金の妥当性を評価するための適切な方針、慣行及び手続きを銀行が設定し、それが守られていることに関し、納得させられなければならない。
9.銀行監督当局は、ポートフォリオ内の集中を経営陣が認識することが可能な経営情報システムを銀行が有していることに納得させられなければならず、単一の借手あるいは関連のある借手グループに対するエクスポージャーを制限するような健全性維持のための上限を設定しなければならない。
10.関連貸出による乱用を防ぐため、銀行監督当局は、銀行が関連ある会社や個人に対してはarm's-lengthベースで貸出を行うこと、当該貸出が実効的にモニターされること、リスクを管理ないしは軽減するための他の適切な方策が採られることを要求しなければならない。
11.銀行監督当局は、銀行が、その国際的な貸出・投資活動に付随するカントリー・リスク及びトランスファー・リスクを識別・モニターし、管理するために適切な方針及び手続きを有し、こうしたリスクに対して適切な引当が行われていることに関し、納得させられなければならない。
12.銀行監督当局は、銀行がマーケット・リスクを正確に測定・モニターし、適切に管理するシステムを有していることに納得させられなければならない。監督当局は、正当な理由がある場合に、マーケット・リスク・エクスポージャーに対して特定の上限を設定する権限と、特定の自己資本を賦課する権限の双方ないしはいずれかを有していなければならない。
13.銀行監督当局は、銀行が、その他の全ての重要なリスクを識別・測定し、モニター・管理し、適切な場合にはこれらのリスクに対して自己資本を積むための包括的なリスク管理プロセス(適切な役員会及び上級管理者の監視を含む)を有していることに納得させられなければならない。
14.銀行監督当局は、銀行が業務の性質及び規模に応じた内部管理を実施していることを確認しなければならない。これには、権限及び責任の委譲のための明確な取決め、銀行の与信・資金の支払い・資産及び負債の経理のそれぞれの機能の分離、これらのプロセスの統合、資産の保全、適切な独立した内部あるいは外部監査及び適用される法律・規則の遵守状況を検査するためのコンプライアンス機能、といったものが含まれるべきである。
15.銀行監督当局は、銀行が、金融部門における高水準の倫理的・職業的基準を促進し、銀行が意図的に、もしくは意図せずして犯罪分子に用いられることを防ぐための、厳格な「顧客を知る」ルールを含む、適切な方針、慣行及び手続きをとることを確認しなければならない。
継続的な銀行監督の手法
16.実効的な銀行監督のシステムは、何らかの形態のオン・サイト及びオフ・サイトの双方の監督によって構成されるべきである。
17.銀行監督当局は、銀行の経営者との定期的なコンタクトを有し、金融機関の業務に精通していなければならない。
18.銀行監督当局は、単体及び連結ベースで、健全性に関する報告書及び統計報告書を徴求し、調査し、分析する手段を持たなければならない。
19.銀行監督当局は、オン・サイトの検証もしくは外部監査人の活用を通して、監督に関する情報について独自に検証する手段を持たなければならない。
20.銀行監督の重要な要素は、監督当局が連結ベースで銀行グループを監督しうることである。
徴求情報
21.銀行監督当局は、銀行の財務状況や業務の収益性について正確かつ公正に把握することを可能にする、整合的な会計基準や慣行に沿った適切な記録が各銀行で保管されていることに納得させられなければならない。また、当局は、銀行が、財務状況を公正に反映する財務諸表を定期的に公表していることに納得させられなければならない。
監督当局の公式の権限
22.銀行監督当局は、銀行が健全性基準(例えば、最低自己資本比率)を満たせなかったとき、規制違反が存在するとき、もしくはその他の何らかの形で預金者が不安を抱かされた場合には、適時の是正のための措置を採り得るような適切な監督手法を持ち合せていなければならない。極端な状況においては、こうした手法には免許を剥奪する、ないしは剥奪を提言する権限が含まれるべきである。
クロスボーダーの銀行業務
23.銀行監督当局は、自国内の国際的に活発な活動を行っている銀行に対し、世界中に広がるこれらの銀行組織の、特に外国の支店、ジョイント・ベンチャーならびに子会社において行われている業務の全ての主要な側面に対し、適切にモニターし、適切な健全性基準を適用するようなグローバルな連結ベースの監督を行わなければならない。
24.連結ベースの監督の主要な要素のひとつは、現地監督当局を始めとする様々な他の関係する監督当局とコンタクトを設け、情報交換を行うことである。
25.銀行監督当局は、外銀の現地業務が国内の金融機関に求められるのと同様の高い水準で行われることを要求しなければならず、母国監督当局が連結ベースの監督を実行するうえで必要とする情報を共有する権限を持っていなければならない。
目 次
前文
25の諸原則
セクションI 序文
セクションII 実効的な銀行監督のための前提条件
セクションIII 免許付与のプロセス及び銀行組織の変更の承認
A. 株主構造
B. 業務計画、管理システム及び内部構造
C. 取締役及び上級管理職の適格性審査(fit and proper test)
D. 資本を含めた財務の見通し
E. 親会社が外国銀行である場合の母国監督当局による事前の承認
F. 銀行の株式の譲渡
G. 銀行による主要な買収や投資
セクションIV 継続的な銀行監督に関する仕組み
A. 銀行業務に伴うリスク
B. 健全性に係る規則・規制の策定と実施
1. 自己資本充実度
2. 信用リスクの管理
3. マーケット・リスクの管理
4. その他のリスク管理
5. 内部管理
C. 継続的な銀行監督の手法
1. オフ・サイトの監視
2. オン・サイトの検証及び(and/or)外部監査人の利用
3. 連結ベースの監督
D. 銀行の情報提供義務
1. 会計基準
2. 報告の範囲と頻度
3. 提出された情報の正確性の確認
4. 監督情報の機密性
5. ディスクロージャー
セクションV 監督当局の公式の権限
A. 是正のための手段
B. 清算手続
セクションVIクロスボーダーの銀行業務
A. 母国監督当局の義務
B. 現地監督当局の義務
付I 政府所有銀行に関する特別な問題
付II 預金保護
