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山一證券への資金融通のための富士銀行に対する貸出措置に関する件

1997年12月12日
(議決日 1997年11月24日)
日本銀行政策委員会

山一證券は、バブル経済崩壊後、収益悪化が続き、今春以降は、格付機関による格下げの動きや総会屋事件等不祥事の表面化などから、内外市場における信認の低下が一段と顕著となっていた。さらに、平成9年11月後半には、同社に巨額の簿外債務が存在する疑いが濃厚であることが、関係当局への報告により明らかとなった。こうした中で、同社では、平成9年11月24日、臨時取締役会において、廃業および解散に向け営業休止を決議した。

こうした状況の下で、本委員会は、平成9年11月24日、わが国の中央銀行として「信用秩序の維持」という自らに課された使命を適切に果たしていく観点から、臨時異例の措置として下記の決定を行った(なお、下記の措置を行うため、同日、日本銀行法第25条に基づき大蔵大臣の認可を得た)。

富士銀行に対し、同行が山一證券に対して廃業および解散を円滑に行うために要する資金を融通するための所要資金につき、貸付を行うこととし、当該貸付については、日本銀行から山一證券に対する日本銀行法第20条第2号に規定する担保品および平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれをも担保としない貸付と同等の扱いとすること。また、当該貸付は以下の要領により行うこと。

  1. (1)貸付金額
    山一證券の資金繰りを勘案し、同社が廃業および解散を円滑に行うために要する必要最小限の金額
  2. (2)貸付期間
    日本銀行が適当と認める期間
  3. (3)貸付利子歩合
    基準貸付利子歩合のうち「その他のものを担保とする貸付利子歩合」を適用する。

本委員会の上記決定は、次のような考え方に基づくものである。

  1. (1)最近の株価やアジア通貨の不安定な動き、相次ぐ金融機関の経営破綻を背景にわが国金融システムを巡る環境が急激に厳しくなっていること、および景気の減速局面が続き企業の景況感も慎重なものとなっているわが国経済の現状などを踏まえ、かつ、山一證券が内外市場において広範な業務展開を行い、多数の顧客を擁していること等を勘案すると、同社が廃業および解散を円滑に行い得ない事態が生じた場合には、他の証券会社の顧客の不安心理の連鎖、市場取引の混乱等を通じ、わが国金融システムに対する信認の著しい低下と、内外金融市場の混乱を惹き起こし、ひいては実体経済にも大きな影響が及ぶおそれがあること。
  2. (2)山一證券の廃業および解散の過程で、顧客財産の返還、既約定取引の決済、海外業務からの撤退等に必要な資金が一時的に多額に上る可能性があり、同社がこうした資金を民間金融機関のみから調達することは不可能な状況にあるため、同社が廃業および解散を円滑に行うためには日本銀行による資金供与が不可欠であること。
  3. (3)モラルハザードの防止の観点では、山一證券は廃業し、解散することとなっていること。
  4. (4)日本銀行の財務の健全性の観点では、山一證券は債務超過の状況にはないと考えられること、また、政府においても、本件の最終処理を含め、寄託証券補償基金制度の法制化、および同基金の財務基盤の充実や機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいとしていること。

なお、日本銀行は、本件に関し平成9年11月24日、次のとおり、対外発表を行った。


1997年11月24日
日本銀行

総裁談話

  1. 山一證券は、バブル崩壊後の収益悪化が続くなかで、今春以降、格付機関による格下げの動きや総会屋事件等不祥事の表面化などから、内外市場における信認低下が一段と顕著となっていた。また、最近、同社に巨額の簿外債務が存在する疑いが濃厚であることが関係当局への報告により、明らかになった。
    こうしたなかで、本日、山一證券から、廃業および解散に向け、臨時取締役会において営業休止を決議したとの報告を受けた。
    わが国を代表する大手証券会社の一つである同社が、かかる事態に至ったことは、日本銀行として、極めて遺憾である。
  2. 今般の山一證券の経営行き詰まりの直接の原因は、巨額の簿外債務の判明という極めて特殊な事情にあるとは言え、同社が内外市場において広範な業務展開を行い、多数の顧客を擁していること等を勘案すると、今後、同社の自主廃業の過程を円滑に進めていくことが、わが国および海外金融市場の安定を確保するうえで極めて重要であると考えている。
  3. こうした状況に鑑み、日本銀行としては、わが国の中央銀行として、「信用秩序の維持」という自らに課された使命を適切に果たしていくため、臨時異例の措置として同社の主力取引先金融機関とも協力しつつ、日本銀行法第25条に基づき、同社の顧客財産の返還、内外の既約定取引の決済、海外業務からの撤退等に必要な資金を供給することとした。
    なお、同社は債務超過の状況にはなく、また、政府においても、本件の最終処理を含め、寄託証券補償基金制度の法制化、および同基金の財務基盤の充実や機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいとしているので、日本銀行資金の回収に懸念が生じるような事態はないと考えている。
  4. 以上の措置により、同社と取引関係のある内外の投資家および一般債権者との間の取引は円滑な履行が確保されることとなるので、投資家、取引先ならびに金融・資本市場参加者は冷静な行動をとられるよう、強く希望したい。
  5. 日本銀行では、最近の株価やアジア通貨の不安定な動き、相次ぐ金融機関の経営破綻を背景にわが国金融システムを巡る環境が急激に厳しくなっていること、さらには、景気の減速局面が続き、企業の景況感も慎重なものとなっているわが国経済の現状などを踏まえ、仮にも金融システム全体の安定が損なわれることのないよう、中央銀行の立場から最大限の努力を行うことが極めて重要な状況にあると認識している。
  6. かかる観点から、上記の臨時異例の措置に加え、市場流動性の低下等不測の事態が生じる惧れがある場合には、市場に対して潤沢に流動性供給を行うなど必要な措置を躊躇なく講じていく所存である。
    日本銀行としては、こうした対応が政府による諸措置と相俟ち、わが国金融システムに対する内外からの信認の確保・向上に資することを強く期待するものである。