日本銀行本店

「リスク管理チェックリスト」の改訂について

1998年 6月19日
日本銀行考査局




1.改訂・公表の趣旨

 日本銀行考査局では、昭和62年12月に「リスク管理チェックリスト」を作成し、平成8年5月に全面改訂を行い、これを実地考査において考査員が各金融機関の経営全般にわたるリスク管理状況を調査する際に活用するとともに、個々の金融機関が自己責任原則に基づいて自らのリスク管理体制を点検・整備していく上で活用することを期待して、日本銀行取引先金融機関および各業界団体に送付してきた。

 前回改訂以降の約2年間には、金融・社会情勢が大きく変化したほか、本邦金融機関の経営悪化等の問題への対応のため、制度面でも大きな改正が行われた。また、金融自由化、リスク管理技術の高度化が着実な進展をみせ、バーゼル銀行監督委員会等の国際的な議論の場においても、リスク管理を巡って、少なからぬ合意がなされ報告書等が公表された。こうした中で、日本銀行考査局では、日本銀行法改正に伴う考査運営の見直しの一環として「リスク管理チェックリスト」の一部改訂作業に取組み、本年3月に対外発表を行った「10年度の考査の実施方針」の中でも、「リスク管理チェックリストのコンプライアンス関連項目拡充」の方針にも言及していたところである。

 本日、日本銀行考査局は、当該改訂版を完成させるとともに、取引先預金取扱金融機関および各業界団体にも送付した。さらに、考査の透明性確保の見地に加え、「リスク管理チェックリスト」の直接の対象ではない預金取扱金融機関以外の金融機関(証券会社、短資会社等)、考査の対象となっていない金融機関(一部信用金庫、信用組合、農協、労働金庫等)、事業法人等にとっても同様に参考となる部分があるとも思われるため、ここにその内容を公表するものである(「リスク管理チェックリスト」本文は別添)。


2.リスク管理考査における利用方法

 日本銀行考査においては、金融機関の経営上の体力、および損失発生等を防止しその体力を維持するリスク管理能力の双方を点検しており、「リスク管理チェックリスト」は、考査員がリスク管理能力の点検(リスク管理考査)を行う際のハンドブックとして活用している。同時に、リスク管理考査を円滑に進め、かつ考査先との十分な意見交換を行う目的から、考査実施の都度、考査先にこれを用いた自己評価を依頼する形でも利用している。

 もとより、リスク管理体制の構築は、自己責任原則の下で、個々の金融機関の自主的な判断に基づいて行われるべきものであり、そのあり方は個々の経営方針や業務の実態等により自ずと異なるものである。日本銀行考査局では、こうした認識から、「リスク管理チェックリスト」を、画一的に用いるのではなく、個々の金融機関の実情を十分に勘案して活用してきており、今後ともそのように活用していく方針である。


3.改訂版の概要

 改訂版「リスク管理チェックリスト」は、前回改訂(平成8年5月)以降の金融・社会情勢や制度改正、リスク管理を巡る国際的議論等の動向を反映させる形で、従来版を考査等で利用した経験や、日本銀行の取引先金融機関から寄せられた意見・要望も踏まえつつ、その一部を改訂・増補したものである。

 全体の枠組みについてみると、業務分野別分類構成(「I.経営・内部管理部門」、「II.融資部門」、「III.市場部門・ALM」、「IV.事務・EDP部門」)をとっていることや、各々の「チェックポイント」にリスク管理の状況を点検する際の「着眼点(例)」を、基本的内容から高度な内容に向けて難易度順に配列して付記していることなど、従来の仕様を維持している。すなわち、従来版と同様に、先進的な金融機関にとっても体制整備になお時間を要する点も含んでおり、各金融機関が遵守すべき一律の最低基準等を示したものではなく、多くの金融機関が各々の業務展開に合わせて参考とし得る柔軟性を有したものとなっている。

 また、主な改訂・増補内容をみると、「I.経営・内部管理部門」では、コンプライアンス関連の項目を大幅に拡充して、経営陣がその重要性を認識し、社内のコンプライアンス意識を確立しているか、コンプライアンスを実践するための組織体制や具体的な手続きが存在し機能しているかなどの観点を盛り込むとともに、バーゼル銀行監督委員会が公表した「内部管理体制の評価のためのフレームワーク」の趣旨も勘案している。「II.融資部門」では、自己査定制度の導入を受けて、自己査定にかかる項目を新設している。「III.市場部門・ALM」では、バーゼル銀行監督委員会が公表した「金利リスク管理のための諸原則」の趣旨を勘案するとともに、特定取引勘定の導入に対応するべく所要の修正を行っている。

(本件に関する照会先)

日本銀行 考査局 考査課兼総務課 リスクアセスメント第2グループ

電話 03-3279-1111 内線(6395、6470)



リ ス ク 管 理 チ ェ ッ ク リ ス ト

(リスク管理のチェック項目一覧)

I.経営・内部管理部門

1.経営方針等
 (1) 経営方針の健全性、明確性等
 (2) リスク管理の考え方の浸透度

2.内部管理
 (1) 組織・権限・報告体制
 (2) 人材の確保・育成 
 (3) 内部検査

3.収益管理、関連会社のリスク管理等
 (1) 収益管理
 (2) 関連会社のリスク管理

4.コンプライアンス、ディスクロージャー等
 (1) コンプライアンス体制の確立
 (2) ディスクロージャー、会計処理

5.コンティンジェンシー・プラン
 ・ コンティンジェンシー・プランの策定・浸透


II.融資部門

1.総論
 (1) 経営陣の信用リスクに対する認識
 (2) 資産の自己査定と適正な償却・引当額の算定
 (3) 信用リスクの統合管理
 (4) 融資規律
 (5) 人材育成

2.国内審査管理
 (1) 事前審査 1(信用調査)
 (2) 事前審査 2(資金使途等)
 (3) 中間管理 1(実行後のフォロー)
 (4) 中間管理 2(システム・サポート)
 (5) 中間管理 3(問題先管理)
 (6) 債権保全

3.海外審査管理
 (1) 事前審査
 (2) 中間管理
 (3) 債権保全
 (4) カントリー・リスク管理


III.市場部門・ALM

1.総論
 (1) 経営陣のリスク認識等
 (2) リスク管理制度
 (3) 市場実務・取引内容
 (4) その他体制整備

2.トレーディング
 (1) 管理体制
 (2) マーケット・リスク等管理
 (3) 市場取引にかかる信用リスク管理

3.有価証券投資
 (1) 管理体制
 (2) マーケット・リスク管理
 (3) 信用リスク等管理

4.資金繰り
 (1) 管理体制
 (2) 流動性リスク等管理

5.ALM
 (1) 金利リスクの把握
 (2) ALM組織の運営
 (3) ALMの実践


IV.事務・EDP部門

1.総論
 ・経営陣の事務・EDPリスクに対する認識

2.事務
 (1) 組織・体制
 (2) 現金・現物・重要鍵
 (3) 異例事務
 (4) その他事務

3.EDP
 (1) 組織・体制
 (2) 防犯・防災・バックアップ対策
 (3) 企画・開発体制
 (4) 運用体制
 (5) 不正利用防止策


ページ先頭に戻る