「リスク管理チェックリスト」(II.融資部門)
1.総論
(1) 経営陣の信用リスクに対する認識
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| ・信用リスク管理の必要性に関する経営陣の認識 | 信用リスク管理について経営陣が明確な方針を持ち、堅実な業務運営に努めているか | ・ 審査管理部門と営業推進部門を実質的に分離するなど、営業推進を優先した過度の与信を排除 ・ 各行庫本体および関連会社の信用リスクがオン・オフともに存在することを正確に理解 ・ 資産内容の健全化に対する方針が明確 ・ 自己査定について、その意義を十分理解し、その適正な実施、償却・引当への的確な反映に配意 ・ 自己査定結果を信用リスク管理面の強化等に有効に活用することの重要性を認識 ・ 自行庫の自己資本等体力に見合った信用リスク管理の必要性を認識 |
(2) 資産の自己査定と適正な償却・引当額の算定
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.自己査定基準 | 自己査定基準は適切か | ・ 自己査定基準を、役員会での承認等所定の手続を経て、正式な内部規程として制定 ・ 自己査定基準の内容は行政当局から示されている資産査定に関する考え方と整合的 ・ 営業店等における円滑かつ適正な自己査定実施のための運用マニュアル等を整備 ・ オフバランス取引(デリバティブ取引、先物為替予約、コミットメント、偶発債務等)についても自己査定の対象に取り込み |
| 2.自己査定のための組織・体制 | 適正な自己査定の実施の観点から、相互牽制や人材配置等に十分に配慮した組織・体制となっているか | ・ 自己査定の実施部署、監査部署を明定 ・ 営業店や本部貸出承認部署とは独立した部署が自己査定またはその監査を行うなど、相互牽制機能を確保 ・ 査定実施部署および監査部署には、査定実務に精通した人材を配置 ・ 営業店等に対し、本部監査部署等が自己査定にかかる所要の教育・指導を適時適切に実施 |
| 3.自己査定の妥当性・正確性 | 自己査定作業を、自己査定基準に沿って適切に行っているか | ・ 自己査定対象与信(ラインシート)の抽出を自己査定基準に沿って適切に実施 ・ 債務者区分の判定や査定区分の決定、担保調整等を、自己査定基準に沿って適正に実施 ・ 自己査定結果が妥当性を欠いていた場合、原因を究明し、その過程で得られた経験を自己査定の精度向上に活用 |
| 4.自己査定結果の経営陣への報告 | 経営陣に対し、自己査定結果について適時適切に報告しているか | ・ 自己査定結果について、経営陣に的確に報告 ・ 自己査定実施上の問題点等、自己査定体制の整備に繋がる内容についても経営陣に適宜報告 |
| 5.適正な償却・引当額の算定 | 自己査定結果を基に適正な償却・引当額の算定を行っているか | ・ 償却・引当基準を役員会での承認等所定の手続きを経て正式な内部規程として制定 ・ 償却・引当基準は会計監査人の償却・引当に関する考え方と整合的 ・ 各債権の償却・引当の所要額を、自己査定結果に基づき、内部の償却・引当基準に沿って適正に算定 ・ 貸倒実績率算出のためのデータ整備を実施 |
(3)信用リスクの統合管理
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.統合管理体制の整備 | 信用リスクを統合的に管理する体制整備が進んでいるか | ・ 関連会社を含め、特定先(業種、企業ないし企業グループ等)への信用供与集中状況を定期的にチェック ・ 信用リスクを統合的に管理(内外、オン・オフ、有価証券保有、本体・関連会社等) ・ 統合された信用リスクを定期的に把握し、経営陣に報告 ・ 信用リスク測定のためのシステム・サポート体制を整備 ・ 新商品、新業務にかかる新たな信用リスクを役員会等で事前に検討 ・ 信用リスク定量化へ向けた体制整備と定量的把握手法を確立 |
| 2.限度枠の設定・与信集中の回避 | 信用リスクに対する限度枠を設定、かつ厳格に管理し、特定先への与信集中を回避しているか | ・ 業種別等のローン・ポートフォリオのバランスに配慮 ・ 特定先・同グループに対しては、限度枠を設定するなどして与信集中を回避 ・ デリバティブ取引の信用リスク・エクスポージャー、有価証券の取得等を含めた信用リスクに対し、体力に見合った限度枠を設定 ・ 信用リスクを把握するための方法論、モデル等を定期的に見直し |
| 3.管理手法の高度化 | 与信先に対する客観的な信用格付とその定期的見直し(ローン・グレーディング&レビュー)の制度を導入し、活用しているか | ・ 定量・定性要因の組合せによる客観的な企業判定(格付)基準が存在 ・ 格付を定期的に見直し ・ 企業格付等を勘案して限度枠を設定 ・ 高位格付先の不良化案件が皆無ないし僅少 ・ 信用格付を踏まえ貸出金利を設定 ・ 客観的な信用格付を事前審査・中間管理に活用 |
| 4.報告体制の整備 | 明確なレビュー方針のもと、役員会等に的確な報告を行っているか | ・ 明確なレビュー方針のもと、役員会等に対し、特定先(業種・銘柄等)への与信集中状況を定期的(四半期毎等)に報告 ・ 役員会等に対し、信用リスクの状況、限度枠利用状況等を必要に応じ報告 |
(4) 融資規律
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.店長専決権限 | 本部の営業部店に対する与信権限の委譲が適切か | ・ 権限の委譲が経営方針や業容に照らし適切 ・ 店長専決案件に対する本部の事後チェック制度を導入 |
| 2.本部稟議決裁 | 本部審査部署が営業店を的確に牽制し、審査機能を有効に発揮しているか | ・ 審査役が営業店に対し必要に応じて追加調査や貸出条件の付加を指示 ・ 常務会、審査会等が有効に機能 |
| 3.貸出条件のフォロー状況 | 決裁時の指示条件が守られているか | ・ 貸出条件記録簿等により厳格に管理 ・ 内部検査等でその履行状況をチェック ・ 条件未整備案件をシステム的にガード |
| 4.融資規律違反発生の有無 | 融資規律違反発生の事実がないか | ・ 事後稟議、決裁権限違反、不正融資等の事実がない ・ 期日管理が厳格で、処理遅延が皆無ないし僅少 |
| 5.マニュアルの整備 | チェック・ポイント等与信・審査マニュアルを整備し、統一的取扱ができる体制としているか | ・ 与信・審査マニュアルを作成 ・ 内容の適時見直し・改訂を実施 |
(5)人材育成
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| ・審査管理能力向上のための人材育成 | 国内・海外とも組織的に審査管理担当者のレベル・アップを図っているか | ・ 日常の業務運営を通じて、職員の審査管理能力向上に向け努力 ・ 融資担当者、融資担当役席等、各階層毎の融資業務研修を定期的に実施 ・ 審査管理・営業推進部門間の交換トレーニー等各種トレーニー制度を導入 ・ 海外拠点でのローカル・スタッフの研修制度が充実 |
2.国内審査管理
(1) 事前審査1(信用調査)
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| ・企業・個人事業主の信用調査 | 与信先の経営実態の良否を十分把握しているか | ・ 与信先の会計方針の健全性および財務諸表の信頼性をチェック ・ 財務諸表による財務内容分析、資金繰り表等によるキャッシュ・フロー把握等を実施 ・ 経営者の経営手腕や健康状態等を把握 ・ 各種の信用情報を収集 ・ 調査部門等の業界・業種分析結果を活用 |
(2) 事前審査2(資金使途等)
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| ・事業計画・資金使途の審査、返済能力の検討 | 事業の先行きや個別資金の使途、返済能力等を十分検討しているか | ・ 事業計画の妥当性を検討 ・ 資金使途のチェック ・ 返済財源等の把握 (運転資金=業況見通しと返済能力) (設備資金=利益償還可能額と借入金の関係) ・ 極度枠の設定ルールが明確でその運用が厳格 ・ 商手割引について売上高と割引残高、商手支払人と販売先等の整合性チェックを励行するなど成因分析を徹底 ・ 利益償還能力判断のために、資金運用表等を活用 |
(3) 中間管理1(実行後のフォロー)
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.与信先の業況トレース | 与信先について、実行後の財務分析等による業況トレースを行っているか | ・ 決算期毎に財務分析を実施 ・ 試算表の作成・徴求等により財務内容の変化をフォロー ・ 財務分析により資金使途を確認 |
| 2.大口与信先の管理 | 大口与信先の管理体制が整っているか | ・ 大口与信先を重点管理 ・ 取組方針を役員会等で決裁のうえ明確化 ・ オフバランス等を含めた信用リスクを随時把握可能 |
| 3.グループ企業の管理 | グループ企業間等の資金流用の実態を把握しているか | ・ 名寄せ管理を実施 ・ グループ企業全体の業況やグループ資金貸借等を把握 ・ 連結ベースでの財務内容を把握 |
(4) 中間管理2(システム・サポート)
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.財務分析システム等の整備 | 事前審査・中間管理等に有効に機能するシステムを整備・活用しているか | ・ 機能的な企業財務分析システムを導入し、活用 ・ 審査・管理に必要かつ十分な最新データを常に収録 ・ 貸出稟議システムを導入し、有効に活用 |
| 2.個人ローン管理のための信用情報収集 | 個人の信用情報について組織的な蓄積を行っているか | ・ 保証会社から情報を入手 ・ 個人信用情報センター等への登録照会 ・ オートコール・システムを導入し、有効に活用 ・ 独自の個人情報システムを構築 |
(5) 中間管理3(問題先管理)
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.問題先管理のための施策 | 問題先を重点管理するための体制が整っているか | ・ 問題先債権を区分し、別途管理 ・ 問題先の整理回収・処理方針が明確で、かつ本支店一体となって管理 ・ 延滞先リスクを営業店に定期的に還元 ・ メイン行庫、他行庫動向を注視 ・ 問題先について、毎月の業況トレースや適時の資金繰りチェックを励行 |
| 2.問題先に対する経営指導 | 問題先の再建策等につき具体的な経営指導を行っているか | ・ 問題先経営者から常時経営実態をヒアリングし、適切に指導 ・ 専担者を配置するなどして問題先の再建を支援 ・ 問題先に対し再建案を策定させ、そのフィージビリティをチェック |
(6) 債権保全
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | ||
| 1.担保管理・評価替え | 債権保全に配慮しているか | a.全般 | ・ 担保管理の基準(時価評価等)が妥当 ・ システム・サポート体制の拡充・強化に注力 ・ 与信先の業況変化に応じて機動的な保全強化を実施 |
| b.不動産担保 | ・ 実地調査の励行 ・ 定期的に評価替えを実施 ・ 担保余力を常時把握 ・ 火災保険付保の状況を、適切に管理 ・ 状況に応じ、随時の評価替えも実施 | ||
| c.有価証券担保 | ・ 定期的(月1回等)に評価額見直しを実施 ・ 状況に応じ、随時の評価額見直しも実施 | ||
| 2.保証人の保証能力・保証意思の確認 | 保証人の保証意思および保証能力を確認しているか | ・ 保証意思確認書等(署名は自署)で保証意思・第三者担保提供意思を確認 ・ 保証人の資産状況、年収、健康状態等を把握し、定期的に見直しを実施 | |
3. 海外審査管理
(1) 事前審査
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.信用調査 | 与信先の信用状況の良否を把握しているか | ・ 外部機関の格付を活用 ・ B/S、P/L、キャッシュ・フロー表等により財務内容を分析 ・ 親会社、関連企業の状況を十分に把握 ・ 本部と海外拠点等、関係部署の連携が緊密 ・ 財務諸表等のデータ・ベースを構築したうえで、定量的な信用判断が可能 |
| 2.事業計画・資金使途の審査、返済能力の検討 | 事業計画や個別資金の使途、返済能力等を十分検討しているか、特に日系子会社の場合には、親会社の状況・保証能力だけでなく、子会社単体での実力も検討されているか | ・ 事業計画、資金使途の妥当性を検討 ・ 返済財源、キャッシュ・フローを把握し、その妥当性を検討 ・ 日系子会社単体での実力を評価 ・ 日系子会社の海外プロジェクト案件の検討において関連部署との連携が緊密 |
| 3.適切な契約条項の付与 | 契約書の中に、与信先の開示義務や財務制限条項、デフォルト発動要件等の適切な条項が盛込まれているか | ・ 借入資格や財務状況の開示義務、各種財務制限条項、デフォルト発動要件等を完備 ・ 弁護士等から契約書全文にかかるリーガル・アドバイス等を取得 |
(2) 中間管理
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.定期的な業況把握 | 与信実行後も、与信先についてその業況を定期的にチェックし、その結果に基づき適切な対応をとっているか | ・ 決算期毎に財務分析を実施 ・ 決算期毎および適時にクレジット・ラインを見直し ・ 債権内容の問題化の程度に応じて、業況チェックの頻度を増加 ・ 与信先の業況変化に応じて、貸出金利見直し、債権保全強化等機動的に対応 |
| 2.問題債権管理 | 問題債権を管理するための組織・制度を整備し、現地当局の指導や法制に沿った適切な債権管理または回収を実施しているか | ・ 問題債権を通常の貸出債権と区別して、より厳格に管理 ・ 問題債権については、企業・案件格付等を勘案した頻度で業況をチェック ・ 問題債権管理に関する本支店間の連携が緊密 ・ 現地当局の指導や法制に沿った債権管理を行うとともに問題債権については適切な引当金計上等により対応 ・ 債権管理がメイン行、幹事行等任せでなく、問題解決にあたって契約の範囲内で主体的に努力 |
| 3.サブパート・アウト、サブパート・イン | リード(パート・アウト行庫)はサブパート・アウト後も適切な債権管理に努め、パーティシパント(パート・イン行庫)に対して適切な情報提供を行っているか、また、パーティシパントは実質的な債権者として適切な債権管理を行っているか | ・ リスクの所在についての認識が明確 ・ 契約の許容範囲内で、パーティシパントはリードからの情報収集に努力 ・ 契約の許容範囲において、リードは債権に関する情報をレンダーズ・アグリーメントに従い適切にパーティシパントに開示 ・ リードは名目上の債権者として適切な債権管理を行っており、パーティシパントとの間にトラブルが皆無 ・ パーティシパントは、広く情報網を整備し独自に債権管理が可能 |
| 4.ローン・コミットメント | コミットメントの実行状況を定期的に把握してクレジット・ライン管理に努めるとともに、流動性リスクの観点から未実行分についても適切な管理を行っているか | ・ 定期的に、形態別実行残高および未実行残高を把握 ・ 実行残高および未実行残高を資金繰り統括部署に定期的(月1回等)に報告 ・ 取引先毎のコミットメント取引状況と簿上与信を随時合算把握可能 ・ 簿上分と合算した与信先別のクレジット・ラインを設定 ・ 自行庫の資金調達能力と与信先毎の実行確率を勘案してクレジット・ラインを設定 |
(3) 債権保全
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.担保の管理・評価 | 債権保全に配慮しているか | ・ 担保管理の基準が的確 ・ 担保の実地調査を可能な限り実施 ・ 定期的ないし随時の担保の評価替えを実施 ・ 担保余力を常時把握 ・ 与信先の業況変化に応じて機動的な保全強化を実施 |
| 2.保証人の保証意思および保証能力の確認 | 保証人の保証意思や保証能力を確認しているか | ・ 保証意思確認書等により、保証意思や第三者担保提供意思を確認 ・ 財務諸表等により定期的に保証人の保証能力を確認 |
(4) カントリー・リスク管理
| チェックポイント | 着眼点( 例 ) | |
| 1.情報収集・分析 | 各国の状況に関する情報を収集し、与信管理に活用できるよう分析を行っているか | ・ 国別の政治・経済状況等について、外部機関から随時情報を収集 ・ 自行庫の調査セクションが独自に調査 ・ 現地出張等により情報を充実 |
| 2.国別格付 | カントリー・リスク判定のために統一的判断基準を採用し、これを定期的に見直しているか | ・ 外部機関の格付・情報を利用 ・ 格付見直しを定期的(年2回等)に実施 ・ 外部機関の格付・情報も参考にしつつ独自の格付を設定 ・ 格付付与の基準が明確かつ客観的 ・ デフォルト等緊急事態発生時には機動的な格付の見直しが可能 |
| 3.国別与信限度枠 | 国別格付等を基準に、適正な国別与信限度枠を設定し、それが遵守されているか | ・ 国別与信限度枠を設定 ・ 実績追認ではなく、限度枠設定根拠が明確かつ客観的 ・ 限度枠見直しを定期的(年2回等)に実施 ・ 簿外や保証、有価証券も国別限度の対象 ・ 限度枠を削減したため、与信実績が限度枠をオーバーする場合の対応を明確に規定 |
以 上
