公表資料・広報活動

ホーム > 公表資料・広報活動 > 公表資料 2001年 > EMEAP決済システム・ワーキンググループ「東アジア・太平洋地域における外為決済リスク」

EMEAP決済システム・ワーキンググループ
「東アジア・太平洋地域における外為決済リスク」

2001年12月14日
EMEAP決済システム・
ワーキンググループ

日本銀行から

 報告書本文の仮訳は、こちら (eme0112a.pdf 189KB) から入手できます。

日本銀行仮訳

プレス・リリース

 EMEAP*決済システム・ワーキンググループは、本日、「東アジア・太平洋地域における外為決済リスク」と題する報告書を公表した。この報告書は、EMEAPのホームページ(www.emeap.org(外部サイトへのリンク))から入手可能である。

  • アジア・太平洋中央銀行役員会議(Executives' Meeting of East Asia-Pacific Central Banks and Monetary Authorities、略称EMEAP)は、東アジア・太平洋地域の11ヶ国の中央銀行・通貨当局による共同組織である。オーストラリア準備銀行、中国人民銀行、香港金融庁、インドネシア中央銀行、日本銀行、韓国銀行、マレーシア中央銀行、ニュージーランド準備銀行、フィリピン中央銀行、シンガポール通貨庁、タイ中央銀行といった中央銀行・通貨当局から構成されている。

 EMEAP決済システム・ワーキンググループは、1998年7月、メンバーが共通の関心を有する決済システムに関する諸問題を検討し情報交換を行うフォーラムとして、EMEAP総裁会議によって創設され、日本銀行国際局参事役の沼波正が議長を務めている。創設以来、ワーキンググループは、EMEAP地域における外為決済リスク削減策について熱心に議論してきた。

 この報告書は、EMEAP地域における外為決済リスクの重要性を強調している。外為決済リスクは、売渡通貨を引渡したものの、買入通貨を受領しないリスクであり、巨額の外為決済取引高とこれに伴うシステミック・リスクの可能性を勘案すると、全ての地域の中央銀行・通貨当局にとって関心事である。このリスクは、EMEAPメンバーにとっては特に重大な関心事である。外為取引における2通貨の支払いに係る時差は、外為決済エクスポージャーの大きさを決める主な要因の一つであるが、EMEAP諸国は、米ドルが域内の外為取引の一方通貨として大半を占める中で、米国との時差がもっとも大きい場所に地理的に位置している。

 こうした背景から、本ワーキンググループは、EMEAP地域における外為決済リスクの規模を明らかにし、銀行の現行の決済慣行を把握するため、この地域で活動している銀行に対し調査を行った。この報告書は、こうした調査結果に基づいて作成され、外為決済リスクの削減方法について、いくつかの実践的な勧告を行っている。EMEAP地域の銀行が、外為決済リスクが如何に大規模であるかを十分に認識し、リスク削減策導入の重要性についての認識を一層高めるのに、この報告書が役立つものと期待している。

要旨

 世界の中央銀行は、かなり前から外為決済リスクに懸念を抱いてきた。こうした懸念を有するのは、金融機関の外為決済エクスポージャーが多大であり、一取引当事者が破綻しただけでもシステミックな問題が生じる可能性があるからである。このため、こうしたリスクを正確に測定・管理し、可能な場合にはこれを削減するための枠組みを構築すべく、これまで多大な取組みが行われてきた。

 アジア・太平洋地域においてこうした懸念に対処するため、EMEAP1決済システム・ワーキンググループのメンバーは、外為決済リスクの削減方法として何があるかについて検討することで合意した。こうした検討の一環として、メンバーはその管轄下にある民間銀行の外為決済の慣行について調査を行った。

 このEMEAPの調査の目的は次のとおりである。

  • 外為決済リスクに係る概念について、幹部および現場レベル双方において民間銀行の理解度を高めること。
  • 外為決済リスクの管理と、こうしたリスクの大きさや存続期間に影響を及ぼすバックオフィスの慣行について、EMEAP域内で現状での最善の慣行を導入するよう促すこと。
  • 外為決済リスクの削減について、個別の銀行および中央銀行・通貨当局が採用しうる他の選択肢を見出すこと。
  1.  東アジア・オセアニア中央銀行役員会議(Executives' Meeting of East Asia-Pacific Central Banks and Monetary Authorities)の略称。

外為決済リスクの定義

 外為決済リスクとは、外為取引の一当事者が売渡通貨を引渡したにもかかわらず、買入通貨を受取れないリスクをいう。このリスクは、一つの取引に係る2つの通貨の受渡しが、多くの場合、時差の異なる2ヶ国において行われることによって生じる。このため、取引の一方当事者は通常、買入通貨を受取る前に売渡通貨を支払わなくてはならない。したがって、売渡通貨の支払指図がもはや一方的には取り消せなくなる時点から、買入通貨をファイナルな形で受領する時点まで、時に数日間にも亘って信用リスクが生じる。

調査結果

 EMEAPの調査によると、EMEAP域内における外為決済リスクの存続期間は2営業日(週末および祝日を除く)を超える。これは、過去に行われたG-10諸国中央銀行の調査結果と一致している。こうしたリスク存続期間のゆえに、ある時点におけるある銀行の外為決済リスク・エクスポージャー総額は、一日の取引の数倍に達し、当該銀行の自己資本を上回ることもしばしばある。

 調査の過程で、EMEAP域内の銀行における、健全なリスク管理やバックオフィスの慣行がいくつか明らかになった。例えば、多くの銀行は、外為決済において自国通貨の最終的な受取りを決済日当日に確認していた。また、外為決済リスクを信用リスクの一形態として、正式に管理している銀行もあった。

 しかし、銀行のリスク管理やバックオフィスの慣行にはまだ改善の余地があることは明らかである。多くの銀行は、売渡通貨の支払指図の取消期限について、コルレス銀行と正式な取決めを結んでいなかった。また、一部ないし全ての決済の最終的な受取確認時刻を不必要に遅らせている銀行もあった。特に懸念されるのは、バイラテラル・オブリゲーション・ネッティングが法制上認められている国が多数あるにもかかわらず、あまり利用されていない点である。

 この報告書は、優れた通貨同時受渡し(Payment-versus payment、PVP)システムが構築されれば、外為決済リスクを除去することが可能である点について触れるとともに、自国通貨がPVPシステムによる決済の対象になっていない場合であっても、外為決済リスクを削減するチャンスがあることに銀行が注意を払うよう促している。PVPシステムの利用が望ましいかどうかを検討するに当たって、民間銀行は、こうしたシステムの運営やリスク管理策を、支払決済システム委員会の「システミックな影響の大きい資金決済システムに関するコア・プリンシプル」に照らして注意深く検討すべきである。また、たとえPVPベースで決済される取引について外為決済リスクが除去されるとしても、民間銀行は、自らのコルレス銀行に係る信用リスクは残存していることにも留意すべきである。

勧告

 この報告書は、民間銀行が外為決済リスクに対するエクスポージャーを削減するため、決済やリスク管理の慣行の改善に努めるよう勧告している。特に、民間銀行は次のようなことが可能となるような対策を採るべきである。

  • 外為決済リスクの日々の管理について、銀行の幹部が確実にこれを把握し、かつ正式に関与するようにする。
  • 外為決済リスクが日中に変動しうるという性質を考慮することも含めて、銀行がエクスポージャーのレベルを過小評価することのないよう、エクスポージャーを適切に測定する。
  • エクスポージャーに対し、与信管理に準じた適切な管理を行う。
  • エクスポージャーの存続期間を最短にすべく、バックオフィスの事務を改善し、きちんと文書化された取極めをコルレス銀行との間で結ぶ。
  • 外為決済リスクの規模を縮小するため、バイラテラル・オブリゲーション・ネッティングが法的に有効な場合、取引相手とネッティングの取極めを結ぶ。
  • 利用可能でかつ適切と考えられる場合、PVPシステムを利用する。

 この報告書は、EMEAP域内の中央銀行・通貨当局に対しても次のように勧告している。

  • 民間銀行の幹部が、外為決済リスクに対する自行のエクスポージャーを管理する上で正式な役割を確実に担うようにするため、必要なあらゆる手段を採る。
  • 当該国でバイラテラル・オブリゲーション・ネッティングが法的に有効な場合、銀行がネッティングを利用するよう積極的に促す。
  • 外為決済リスクの測定・管理のための指針を示す。
  • 銀行が引続き外為決済リスクに対する高い認識と理解を持ち続けるよう、追加的手段が必要か検討する。これには、調査結果の公表、追加的調査の実施、さらに、特に当該銀行の調査結果が業界の最善の慣行に達していない場合は、その銀行の幹部と調査結果について議論することなどが挙げられる。
  • 上記の目的を達成するため、プルーデンス上の監督当局の関与について検討すること。
  • 外為決済リスクの削減に資するRTGSシステムの改良を含め、今後とも各国の決済システムの改善を図る。