日本銀行本店

「証券化市場フォーラム」全体会合(第1回)の議事の概要

2003年11月13日
日本銀行金融市場局



 日本銀行は、今般、資産担保証券市場の発展を支援するための、市場のインフラ整備に向けた取り組みの一つとして、金融市場局が事務局となり、標記フォーラムの第1回会合を開催した。以下は、本会合における議事の概要を取りまとめたものである。


(開催要領) ・日時:2003年11月7日(15:30〜18:15) ・場所:日本銀行本店 ・参加者:別添参照

(議事次第) 1.開会挨拶 2.事務局説明 3.自由討議 4.閉会挨拶


1.開会挨拶(日本銀行金融市場局参事役・内田真人)

○ 本フォーラムの狙いについて、わが国の証券化市場が直面する課題に関し、オリジネーター、アレンジャー、投資家等の市場関係者や専門家を招いて市場横断的な議論を行い、問題の所在を整理・共有すること、更には、一つでも多くの課題について具体的な提言を行うこと、と説明した。


2.事務局説明

○ 本フォーラムへの参加希望者から事前に募ったアンケート結果を踏まえ、わが国証券化市場の現状と課題について、以下の3点に整理した。

(1) 投資家が限定されている結果、流動性が必ずしも十分でない。更にその背景には、投資判断に必要な情報が十分に行き渡っていないことなどがある。
(2) 債権譲渡にかかる手続の煩雑さや、市場慣行が証券化を阻害している。
(3) 組成にかかるコストを高めたり、組成の機動性を阻害する要因がある。

3.自由討議

○ 参加者から出された主な意見は次のとおり。

(1)本フォーラムの意義について

  •  複数の参加者が、わが国の証券化市場が一段と発展するために、その課題について市場横断的に討議する場として、本フォーラムは有意義であり、建設的に議論に貢献していきたい、と述べた。また、ある参加者は、個々の市場参加者の努力だけでは実現が難しい課題も、本フォーラムを活用し、市場参加者の力を一つに合わせていけば成し遂げられるのではないか、との認識を示した。

(2)市場の透明性・流動性を巡る論点
  •  多くの参加者が、証券化商品の意義や投資ニーズの大きさを指摘したうえで、その流動性(特に、流通市場における円滑な売買の可能性)は、現状、十分とは言えず、市場の発展のためには流動性を高める工夫が必要、との認識を示した。

  •  流動性が十分でない背景の一つとして、投資判断に必要な情報が十分かどうかという点に意見が集まった。

     一部の参加者は、最上位格付を取得することが多い証券化商品について、現在提供されている情報は過度に詳細であり、市場全体のコスト・ベネフィットの観点からはむしろ阻害要因になっているのではないか、との意見を述べた。

     これに対し、複数の参加者は、最上位格付であっても、投資判断には詳細な情報・精査が不可欠であり、問題の所在は、提供されている情報が投資家の欲する内容・フォーマットに沿っていないことにあるのではないか、と指摘した。また、投資家自身が必要な情報をより積極的に求めていくことが市場の一段の発展に繋がる、との指摘もなされた。

     加えて、発行後の情報開示について、複数の参加者が、私募形式の商品を中心に不十分としたほか、仲介業者からも、情報開示が充実すれば、自社アレンジ以外のものでも、より多くの案件についてマーケット・メイクが可能になるとの指摘があった。なお、公募商品の場合、全ての投資家に均一に情報を開示する必要があるため、却って機動的な開示が難しい面がある、との指摘もあった。

  •  また、何人かの参加者は、市場の流動性を高めるためには、継続的な発行を含め、発行量の拡大が重要、と指摘した。このうちのある参加者は、積極的な情報開示の必要性と顧客情報の守秘との間のバランスの取り方が難しい、と指摘した。さらに複数の参加者は、信用リスクを取りたくても、まとまったロットがないのが実情である、と指摘したうえで、銀行に対し貸出債権を流動化させるインセンティブを付与することが必要、との意見を述べた。

  •  なお、ある参加者は、債券形式であっても信託受益権形式であっても、証券化商品として信用リスクを移転する経済的機能は同じであり、信託受益権の流通性を高める観点から、投資可能対象に信託受益権を含めるような運用ルール面での見直しや、必要に応じた法制面での対応も検討すべき、との意見を述べた。

  •  このほか、新しいBIS規制の導入は、メザニン以下の証券化商品の需要を減少させる可能性があり、今からメザニン以下の商品への投資家層を育成しておく必要がある、との意見が聞かれた。

     また、投資家の裾野拡大のため、個人投資家の資金の受け皿として、投資信託の活用を指摘する声もあった。

(3)売掛債権、銀行貸出債権の証券化を巡る論点
  •  売掛債権の証券化が進まない背景として、複数の参加者が、債権に譲渡禁止特約が付されているケースが多いこと、逆相殺や債権の減額リスクがあり得ることなどを指摘した。また、債権譲渡の際の対抗要件取得手続の煩雑さも問題である、との意見も出された。なお、ある参加者は、譲渡禁止特約に関して、売掛債権の流動化を促進するには、同特約について定めた民法の規定を、新規立法も含めて、見直す必要がある、との意見を述べた。

  •  このほか、複数の参加者が、売掛債権や貸出債権の裏付資産プールを適切にリスク評価するためには、投資家などがリスク分析ツールの内容を理解し易くするための工夫や、使用データの質・量両面での充実が必要、と指摘した。

  •  これを受けて、データベースの提供者としての立場から、本フォーラムを、市場参加者が求めるデータの質・量を汲み上げる場として積極的に活用したい、との意見が述べられた。また、格付機関としての立場からも、デュー・デリジェンスの実施状況を含め、データの正確性を評価するなど、情報の円滑な流通を支援したい、との意見が述べられた。

(4)証券化ビークルに関する論点
  •  複数の参加者は、わが国の証券化ビークルについて、近年、急速に制度整備が進み、使い勝手も次第に向上してきている、との評価を示した。

  •  一方、残された課題として、ある参加者は、同一SPVによる複数回発行の可能化(そのための鍵となる担保付社債信託法の見直し)、事後設立規制の見直し、特定持分信託・特定目的信託の一層の活用といった点につき、税制面での対応も含め、市場参加者のニーズを整理することが重要、と指摘した。

  •  また、サービサーに関して、いわゆるコミングリング・リスクの問題や、バックアップ・サービサーへの事務移管手続を巡る課題も討議対象とすべきではないか、との意見も出された。

(5)住宅ローン債権の証券化を巡る論点
  •  複数の参加者が、投資対象としてのMBSの魅力の高さを指摘しつつ、本年度下期に発行が予定される、いわゆる「買取型」の住宅金融公庫債について、同スキームがオリジネーターに活発に利用されるためには、証券化の意義付けについてオリジネーター側での整理が必要、との意見を述べた。この点に関し、オリジネーターが負う、貸出の約定から証券化商品の発行までの間の金利変動リスク(パイプライン・リスク)のヘッジ手段の整備や、民間銀行、公庫の双方における自行(庫)の住宅ローン商品と公庫買取適格ローンとの関係の整理の必要性を指摘する声もあった。

  •  民間住宅ローン債権の証券化については、抵当権を巡る法制面での課題の整理のほか、団体信用生命保険料込みで行われる金利設定方式の見直しなどが必要、との指摘がなされた。

  •  また、将来に向けた投資家層の拡大のため、CMOの機動的かつ低コストの組成が可能となる制度整備、情報開示の充実が必要、との意見も出された。

○ なお、討議の過程で、日本銀行による資産担保証券の買入れスキームについて、複数の参加者から、次のような意見が示された。
  •  「裏付資産に占める中堅・中小企業関連資産の割合が、金額ベースで5割以上であること」との要件は、企業金融全体の円滑化あるいは証券化市場全体の活性化という観点から、これを緩和する方向で見直しを要望したい。

  •  「裏付資産が金融機関の貸付債権である場合には、その債務者が金融検査マニュアルに定める「正常先」に分類されているものであること」との要件は、証券化商品の特性を勘案すると、不要ではないか。

  •  「複数格付機関からの格付取得が必要」との要件の見直しを要望したい。

  •  資産担保債券の買入れ対象先選定について、選定の頻度を引き上げて欲しい。

  •  日本銀行による買入れ額の増加は、価格形成を歪めるリスクがあるため、見直しに際しては、こうした点にも十分配慮し、慎重な検討をお願いしたい。

○ 以上を踏まえ、今後、以下のイ)〜ホ)の各論点毎に、「分科会」を開催して議論を掘り下げていくこととなった。
イ) より透明性・流動性の高い市場に向けた課題 ロ) 証券化ビークルに関する課題 ハ) 売掛債権の証券化についての課題 ニ) 銀行貸出債権の証券化についての課題 ホ) 住宅ローン債権の証券化についての課題
4.閉会挨拶(日本銀行金融市場局長・中曽宏)

○ 証券化市場の拡大・充実は、わが国の金融仲介チャネルが複線化し、経済の持続的な成長を支えていくうえで極めて重要であることを指摘のうえ、本フォーラムがわが国証券化市場の一層の発展に繋がるよう、今後の議論に期待するとともに、事務局としても最大限の努力をすることを表明した。また、日本銀行による資産担保証券の買入れスキームに関する意見に対しては、分科会における議論を含め、よく耳を傾けていきたい、と述べた。


以  上


本件に関する照会先:
 日本銀行金融市場局金融市場課
   井上(03-3277-1236、tetsuya.inoue@boj.or.jp
   菅野(03-3277-1244、hiroyuki.kanno@boj.or.jp



(別 添)


「証券化市場フォーラム」参加者


あおぞら銀行 金融商品開発部 次長 梶谷 博之
オリックス 投資銀行本部 マネージングディレクター 上島 健一
格付投資情報センター ストラクチャードファイナンス部
グループリーダー・チーフアナリスト
北原 一功
埼玉りそな銀行 資金証券部 部長代理 山口 英司
CRD運営協議会 調査役 石丸 好太
J.P.モルガン証券 インベスターソリューションズグループ
ヴァイス・プレジデント
戸谷 和彦
大和証券エスエムビーシー ストラクチャード・ファイナンス部長 桜井 俊典
ドイツ証券 証券化商品調査部 ディレクター 江川 由紀雄
東京海上火災保険 金融開発部・ストラクチャードファイナンス・グループ グループリーダー 森島 和正
東京三菱銀行 金融商品開発部 主任調査役 高野 隆市
日本生命保険 資金証券部 課長 川森 幸三
日本リスク・データ・バンク 代表取締役社長 大久保 豊
農林中央金庫 開発投資部 副部長 岩井 寿男
野村證券 アセット・ファイナンス部資産金融課課長 鈴木 清久
BNPパリバ証券 証券化商品部 部長 大塚 康成
日立キャピタル 本社第五営業本部 営業部長 西田 政夫
みずほコーポレート銀行 ストラクチャードファイナンス営業部
参事役
田吉 禎彦
みずほ証券 市場営業グループ 投資戦略部シニア
クレジットアナリスト
東覚 健二
三井住友銀行 投資銀行営業部 副部長 小林 博司
三菱信託銀行 資産金融部 総務企画グループグループ
マネージャー
神谷 厚至
ムーディーズ・ジャパン ストラクチャードファイナンスヴァイス
プレジデント−シニアアナリスト
石原 俊介
モルガン・スタンレー証券 証券化商品部 エグゼクティブ ディレクター 栗田 雅裕
UFJ銀行 コーポレートファイナンス部 調査役 稲葉 勝
UFJ信託銀行 資産金融部 次長 肝付 正路
横浜銀行 ビジネス企画部 調査役 武藤 節
リーマン・ブラザーズ証券 グローバルストラクチャードファイナンス部シニア ヴァイス プレジデント 渡辺 学
(オブザーバー)
金融庁 総務企画局企画課 課長補佐 堤  雅彦
経済産業省 商務情報政策局取引信用課 経済産業省調査員 金子 正明
住宅金融公庫 証券業務部 証券化支援企画課 証券化支援企画課長 加藤 隆
全国銀行協会 業務部 次長 服部 茂樹
東京証券取引所 経営企画部 審議役 安達 精司
日本証券業協会 市場本部 市場部 市場課長 倉林 滋人
中央大学専門職大学院 国際会計研究科 教授 川北 英隆
筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 弥永 真生
西村総合法律事務所 弁護士 小野 傑
森・濱田松本法律事務所 弁護士 佐藤 正謙
(事務局)
日本銀行金融市場局 局長 中曽 宏
参事役 内田 真人
課長 栗原 達司
企画役 井上 哲也
調査役 菅野 浩之
副調査役 藤田 研二

以  上


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