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学生向けコンテスト「第4回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」入賞論文(全文)と審査員の講評

2008年12月19日
日本銀行

12月6日(土)、日本銀行本店にて「第4回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」の決勝を開催しました。当日、最優秀賞、優秀賞および敢闘賞に選ばれた論文の全文、プレゼンテーション資料および審査員の講評を別紙1~6の通り公表します。

別紙1~5は、各チームから提出された論文、プレゼンテーション資料をそのまま画像イメージで転載しています(別紙2~5は応募受付順)。

別紙1:【最優秀賞】

別紙2:【優秀賞】

別紙3:【優秀賞】

別紙4:【敢闘賞】

別紙5:【敢闘賞】

別紙6:

本件に関する問合せ先

日本銀行情報サービス局

総務企画担当
重茂(おもい) (直通03-3277-2405)


(別紙6)

審査員の講評

審査員長:
西村 清彦(日本銀行副総裁)
審査員:
川本 裕子(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)
小枝 至(経済同友会副代表幹事・日産自動車株式会社相談役名誉会長)
亀崎 英敏(日本銀行政策委員会審議委員)
井戸 清人(日本銀行理事)

総評

今回が第4回の開催となる日銀グランプリですが、今年も全国各地から、ほぼ昨年並みの81通にのぼる多数の応募をいただきました。回を重ねるに連れ、現状分析の綿密さや論旨の明快さなどの点でレベルアップしてきているように感じます。特に決勝に残った皆さんの作品は、基本的に構成がしっかりしており、課題解決に向けた処方箋の具体性も高かったと思います。また、本日のプレゼンテーションにおいては、審査員から厳しい質問を受けてもしっかりと自分たちのチームの主張を展開しており、頼もしく感じました。

皆さんも日々のニュースをご覧になって感じていらっしゃるかと思いますが、現在、わが国だけではなく世界の金融・経済を巡る環境は大きく変化しています。こうした中で、皆さんが、日銀グランプリをきっかけとして、金融の問題について自分たちで深く考えたことは大変貴重な経験になると思います。これからも是非金融に関心を持ち続けてほしいと思います。日本銀行では来年度も日銀グランプリを開催する予定です。本日決勝に進出された皆さんの活躍をみて、全国の学生の方々が、わが国の金融の更なる発展に向けた今後の課題について真剣に取り組んでいただき、そして、その姿勢を持って日銀グランプリに積極的に挑戦してくれることを期待してやみません。

個別の論文について

【最優秀賞】「中小企業金融のビジネスマッチング ファイナンスエキスポの提案」

日本経済を巡る喫緊の課題の一つである地域の中小企業金融を活性化させるため、赤字企業や小規模な事業者に対する融資に消極的な金融機関と情報開示が不足する中小企業に対してそれぞれにインセンティブを与える仕組みとして、各地域における「ファイナンスエキスポ」の開催が提案されました。中小企業のマッチングイベントは他にも例がありますが、「ファイナンスエキスポ」はオープンなイベントなので、中小企業が普段付き合いのない金融機関に質問したりアピールしたりすることが容易になるという効果も期待できます。加えて、現状分析に当たり、実際に地元の中小企業や信用金庫にインタビューを行った実行力は評価でき、こうした地道な調査を経て地元の関係者の生の声が反映された提案内容には、説得力があります。また、寸劇を交えたプレゼンテーションは分かりやすかったと思います。

一方、中小企業であっても、ある程度の規模を持つ先にとっては既に取引先金融機関を持っているため、イベントに参加するインセンティブが低いとみられます。また、赤字企業の中から将来性がある先をどのように見極めるかという点や金融機関が赤字企業への融資によって生じるリスクをとり得るのかという点については、十分に説得的ではなかったとみられます。更に、金融機関がプレゼンテーションを行うメリットについても明確ではなかったと感じました。こうした点について、更なる掘り下げが必要であったと思います。

【優秀賞】「大学発地域密着型ベンチャーファンドの形成 ~地域に根差した大学ベンチャー支援のしくみ~」

地域経済の活性化のために、地域内へのベンチャー企業の設立を促進し、その効果を地域経済に還元するための仕組みとして、国や地方公共団体等による施策とセットに、全国各地の大学によるベンチャーファンドの設立が提案されました。大学によるベンチャー企業設立などの事例は既にみられますが、大学自身が自ら出資したうえでファンドを設立することにより、ファンドの運用に大学が主体的に責任を持つ仕組みとしていることや、地元との結びつきを強めるためにファンドを小口化して地域住民が購入しやすくしていることなどがユニークです。また、地方公共団体による支援を提唱している点に地方経済活性化に向けた情熱を感じます。加えて、大学自身がファンドに出資し積極的に運営に取り組むことにより、起業に興味を持つ大学生が増え、将来的には日本においてベンチャー企業が受け入れられやすい風土が醸成されるという効果も期待されます。

一方、公益法人である大学がベンチャーファンドへの投資を行い得るのかという点が十分に考察されていないのではないかという疑問が残ります。更に、ベンチャー企業が本社を地元から移転させてはならないという契約を結ぶスキームも、ベンチャー企業のインセンティブを阻害するのではないかという懸念が拭えません。実現可能性を高めるためにも、こうした点についてさらに検討を深めてほしいと思います。

【優秀賞】「電子マネーと企業ポイントの新たな交換システムの構築」

企業が商品等を購入する顧客に対して発行するポイントを電子マネーに交換できる仕組みとして、消費者のみならず発行企業にもメリットが生じるように、「顧客の差別化」という観点を組み入れた新しい交換システムが提案されました。発行企業が顧客を囲い込みたいというニーズと、顧客がポイントをどこでも使えるようにしたいというニーズをともに充たすために、「顧客の差別化」という観点を採用し、発行企業にポイント交換レートの設定権限を持たせた点は面白い発想です。この発想に至るまでに、既存のポイント交換スキームなどについてしっかりと調べている跡がうかがわれます。また、ポイント交換会社の利益発生の仕組みや、新たな交換システムに参加する発行企業のメリットまで具体的に検討している点は評価できます。また、対話型のプレゼンテーションはユニークであったと思います。

面白い発想ではありますが、そもそも企業ポイントとは顧客を囲い込むために企業が発行するものであり、多くの企業が参加するほどのメリットがあるのか、また、企業間でポイント交換比率などをどのように決定するのか、という疑問が残ります。また、必要となるシステム構築費用やそのコストを誰がどのように負担するのか、などの点について、より深い考察を加えてほしかったと思います。

【敢闘賞】「しあわせ@ホーム ~日本における中古住宅市場形成と資産形成にむけて~」

日本の中古住宅市場の整備を促進するため、中古住宅の評価に関する情報を提供する新たな機関の設立と、同機関による評価を貸出審査基準に取り入れた中古住宅ローンを実行する公的金融機関の設立が提案されました。住宅市場のうちでも、新築ではなく中古の住宅市場に注目するという着眼点が新鮮です。アメリカなど海外の事例も参考にしながら議論を組み立てていました。そのうえで、中古住宅市場の整備を促進するためには情報開示と住宅金融のあり方を見直すべきとして、それぞれについて具体的な提案を行っている点が評価できます。

ただし、日本と米国では人口動態が異なることや戸建住宅の評価の難しさなどを踏まえると、日本ではそもそも中古住宅市場に発展の余地が少ないのではないか、アメリカの事例では情報開示は民間が主体となって実現しているのに日本ではなぜ政府系機関でなければならないのか、単一の「住宅情報管理機関」で中古住宅市場の情報を全てカバーすることは可能なのか、といった疑問が残りました。着眼点は面白いと思いますので、こうした点についても検討を深めてもらえればと思います。

【敢闘賞】「日本版金融経済教育システムの構築へ向けて ~ライフステージ別金融経済教育の導入~」

金融サービスの複雑化・多様化を踏まえ、社会人がそれぞれのライフスタイルに応じた実践的な金融経済教育を受ける機会を増やすための金融経済教育システムが提案されました。英米や日本の現状について丹念に調査した跡がうかがわれます。そのうえで、金融経済教育を受ける機会が多い学生に比べてそうした機会が少ない社会人が、仕事をしながらでも主体的に金融経済教育を受けるインセンティブを高めるために、ライフステージ別にその時々で必要な知識の習得を図るというアイデアを提案しており、具体的な提案と評価できます。

一方、ライフステージ別金融経済教育の実践の場として企業内研修以外の場が提示されておらず、多くの社会人がこの教育に接する機会があるのか、疑問が残ります。また、こうした教育にかかるコストを誰がどのように負担して運営していくのかについての考察が欠けている点に物足りなさを感じます。このほか、最近ではライフステージが多様化しており、提案で例示されたステージが当てはまらない社会人が増えているほか、現実の問題として主婦や高齢者を対象とした金融犯罪が増えていると思われますので、こうした人々についての言及がみられなかったのは残念でした。提案の実現可能性を高めるため、こうした点についても検討を深めてもらえればと思います。