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学生向けコンテスト「第5回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」入賞論文(全文)と審査員の講評

2009年12月17日
日本銀行

12月5日(土)、日本銀行本店で、学生向けコンテスト「第5回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」の決勝を開催しました。当日、最優秀賞、優秀賞および敢闘賞に選ばれた論文の全文、プレゼンテーション資料および審査員の講評を、以下のとおり公表します。

別紙1:【最優秀賞】

別紙2:【優秀賞】

別紙3:【優秀賞】

別紙4:【敢闘賞】

別紙5:【敢闘賞】

別紙6:審査員の講評

別紙1~5は、各チームから提出された論文、プレゼンテーション資料を、そのまま画像イメージで転載しています。別紙2~5は、応募受付順です。

本件に関する問合せ先

情報サービス局 総務企画担当

竹内(直通03-3277-2405)


(別紙6)

審査員の講評

審査員長
西村 清彦(日本銀行副総裁)
審査員
小島 邦夫(経済同友会専務理事)
藤沢 久美(シンクタンク・ソフィアバンク副代表)
須田 美矢子(日本銀行政策委員会審議委員)
中村 清次(日本銀行政策委員会審議委員)

総評

日銀グランプリは今回が第5回目の開催です。本年は、過去最高となる121通の応募が全国各地から寄せられました。内容面でも、回を重ねるにつれ、採り上げるテーマの幅が広がるなど、全体としてレベルアップしてきていると思います。

特に、決勝に残った皆さんの作品は、わが国の金融に関する課題に関し、問題意識を持ったうえで、自分たちで考えた独自性ある提言に結びつけている点が良かったと思います。また、本日のプレゼンテーションも意欲と工夫がみられ、審査員からの質問にも丁寧に回答するなど、誠実さに好感を持ちました。

昨年秋以降の世界的な金融危機を受け、多くの国々で正しい金融知識の普及、金融教育の重要さが指摘されています。こうした中で、大学生の皆さんが、日銀グランプリをきっかけとして金融の問題について自分たちで深く考えたことは、貴重な経験になると思います。これからもぜひ金融に関心を持ち続けてほしいと思います。日本銀行では来年度も日銀グランプリを開催する予定です。全国各地で一人でも多くの学生の皆さんが、若者らしい問題意識、発想に基づき、自ら主体的に考え、自分の足で調べることを通じ、わが国の金融面の課題に挑戦し、提言をしていただきたいと思います。

個別の論文について

【最優秀賞】「オープンソース方式による資産運用アドバイス・サイトの構築~中立的で個別的なアドバイス~」

資産運用について、ウェブサイト上に、中立的・個別的・無償のアドバイス・サイトを設ける、との提案です。

まず、資産運用アドバイスに対するニーズが高まっているにもかかわらず、中立的で個別的、安価なサービスが提供されていない、との切り口は鋭さを感じさせました。そして、提言として、Linuxなどのオープンソースのソフトウェア開発方式をモデルとして、ウェブ上に、中立的で個別的、かつ無料のアドバイス・サイトを構築する、と提案したことは、斬新でした。アドバイザーの質を担保するため、テストを受験させたり、事後評価を行うなど、実現のためのアイディアを具体的に示したことも、好感されました。また、実際の提案内容をイメージした具体的で分かりやすいプレゼンテーション資料を作成し、今後、実現に向けて取り組んでいく姿勢が示された点は高く評価されます。

一方、共同で1つの成果物を作り上げていくオープンソース方式のソフトウェア開発と異なり、資産運用は、一言でいえば千差万別です。資産の持ち主の考え方・環境、資金の性格、金融経済環境の見方などによって大きく異なります。このため、利用者が複数のアドバイスを受けた場合に、どれを選択したらよいかサポートする仕組みについて、より具体的な提案が欲しいと思います。また、質の高いアドバイザーはFP(ファイナンシャル・プランナー)などの資格を有し、収入を得る機会を別に持っていますが、本スキームは無報酬であり、論文で指摘されている理由だけで質の高いアドバイザーを確保できるかという点に疑問が残りました。更に、サイトの中立性を重視する中で、アドバイザーがどこまで踏み込んだ提案ができるのかという問題もあります。中立性を保つことによる使いにくさについての検討も欲しかったところです。

【優秀賞】「ECOMOカードが日本を救う~クレジットカードを利用した環境ビジネスへの投資スキーム~」

環境ビジネスの成長を促進するため、「ECONOMYもECOLOGYも両立させる」とのコンセプトに基づく新しいクレジットカード「ECOMOカード」の導入を提案されました。

カードから環境への資金の流れのみならず、環境からカードへの資金の流れも作って環境への貢献とビジネスの成長が両輪で動くシステムを構築しようと試みたこと、そのための具体的なスキームも提示したことが、非常に良かったと思います。カードの実現可能性を高めるために、利用者への還元について懸賞方式・商品方式を編み出すなど、懸命に考え、工夫した跡がうかがわれました。また、プレゼンテーションも明快で、テキパキとした受け答えに好感が持てました。

一方で、それでもなお、このカードのECONOMY面、特に「このカードを利用者に使ってもらうことができるのか」については、幾つか疑問が残りました。まず、手数料収益の一部を環境関連企業に分散投資し、その配当収益を消費者にポイントとして間接的に還元するというものの、その配当収益は不安定であると予想されるうえにカード使用額に比べて小さくなるため、通常のカードより魅力的なものとなるかどうか疑問です。また、このポイントは、「懸賞」への応募に使用させ、「懸賞」の商品には環境関連企業の商品を安価で提供してもらうことで、少ない原資でより高い効用を得られるスキームとしているものの、従来のカードのポイントも環境関連企業の商品の取得に使用できることから、環境関連企業のサポートをいかに取り付けるかが重要ではないでしょうか。更に、ファンドの運営にかかるコストをいかに捻出するのかという問題もあります。こうした点についての検討をさらに進めることが、ECONOMYとの両立のうえで必要であると思われます。

【優秀賞】「ESCO事業を利用した環境金融の育成」

採算がとりにくい省エネのための設備改修工事を金融面から活発化させる環境配慮型の投資信託等を提案されました。

まず、環境と金融の融合との問題意識に立ち、省エネ化のための設備診断、設備改修工事などを行うESCO事業者に着目し、自ら実施したアンケート結果を踏まえ、工事の初期費用を負担するなど金銭的負担が大きく、採算が見合う案件が少ない、などの問題点を指摘しており、着眼の良さと現状把握に向けた努力の跡がうかがわれました。また、こうした調査に基づいて、対策として提案された「地域別環境配慮型投資信託」の内容には首肯できるものがあります。併せて、プレゼンテーションはよくまとまり、受け答えも明快で好感が持てました。

しかしながら、「地域別環境配慮型投資信託」のスキームをより利用しやすくするためには、幾つか検討の余地が残っているのではないでしょうか。まずは、論文自体指摘しているように、投資家を募る上で収益性を考慮した金融商品を作る必要がありますが、そのための具体的な施策を政府に頼るのは安易な印象を受けました。また、既に存在する社会的責任投資、プロジェクトファイナンスなどとの比較において、ファンドにすることでどのような効果が期待できるのかについて分析があれば良かったと思います。さらに、ファンドや証券化の仕組み、地域別にすることのメリットに関する説明は必ずしも十分ではなかったとみられます。

【敢闘賞】「中小企業M&A事業承継を活性化させる新システムの提案—事業承継準備シート—」

中小企業のM&Aによる事業承継を活性化させるために、「事業承継準備シート」という新しいしくみを導入することを提案されました。

まず、日本経済の基盤である中小企業の事業について、親族内の承継が少子化等によって年々難しくなっており、M&Aによる事業承継を活性化すべき、との問題意識は明快でした。その実現のため、「事業承継準備シート」を導入し、中小企業の経営者が事業承継の可能性を考えさせるきっかけとする、との提案をされたことには、ユニークさを感じました。また、M&Aの買い手や仲介業者に対し売り手側の情報が不足している点に着目し、解決策を検討した点は評価したいと思います。

一方、まだまだ事業意欲のある中小企業経営者に対し、10年前から買収の対象となるようなシートの登録をさせるには抵抗が予想されます。その辺をどう説得してシートに記入してもらうかが課題であると思います。また、中小企業の評価に当たっては、財務諸表だけでなく、企業経営者のノウハウや会社の雰囲気といった点も重要です。こうした点も含め、実際の企業経営者へのインタビューを通じて、今回の提案内容に一歩踏み込んだ検討があればよかったと思います。

【敢闘賞】「金融経済教育ビッグバン~金融経済教育導入室および『日本版シチズンシップ』の導入~」

国が「金融経済教育導入室」を設置し、金融経済教育の進め方を決定すること、金融経済知識をシチズンシップ(市民としての基礎的な人間力)と位置付け、金融経済教育を一元的に実施することを提案しました。

まず、現在の我が国の学校教育における金融経済教育は必ずしも効果的に行われているとは言い難い、との問題意識に立ち、我が国のみならず米国・英国の金融経済教育の状況も調べたうえで、具体的な提案を行ったことは、評価します。また、自分たちの受けた金融経済教育に対する経験に基づいたプレゼンテーションには、説得力がありました。

一方で、議論の出発点として、これまでのわが国の金融経済教育の実情に関する調査が若干不十分であったと思います。また、これまでとられてきた施策がどうして浸透してこなかったかという点について考察が望まれたところです。