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金融経済月報(基本的見解1)(2003年10月)2

  1. 本「基本的見解」は、10月9日、10日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、10月9日、10日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2003年10月14日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0310.pdf 794KB)から入手できます。


 わが国経済をみると、輸出環境が好転し、企業の業況感も改善するなど、緩やかな景気回復への基盤が整いつつある。

 最終需要面をみると、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。また、個人消費は弱めの動きを続けている。一方、設備投資は緩やかに回復しており、純輸出もこのところ幾分増加しつつある。

 以上の最終需要動向のもとで、鉱工業生産はなお横這い圏内ながら、企業収益は緩やかな増加基調を続け、企業の業況感も改善している。この間、雇用者数は下げ止まっているほか、賃金の下落にも徐々に歯止めがかかってきている。ただし、失業率が振れを伴いつつも高い水準にあるなど、家計の雇用・所得環境は、なお総じて厳しい状況にある。

 今後の経済情勢を考えると、まず海外経済については、米国および東アジアを中心に、比較的しっかりとした景気回復が続くと考えられる。そうしたもとで、輸出の増加が続き、鉱工業生産も緩やかな増加に転じていく可能性が高い。

 国内需要については、公共投資が減少傾向をたどると見込まれるほか、個人消費も、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、弱めの動きを続ける可能性が高い。一方、設備投資は、収益改善にもかかわらず投資を大幅に抑制してきた製造業大企業を中心に、回復傾向がより明確化していくと予想される。

 以上を総合すると、今後わが国の景気は、海外経済の回復を背景に、輸出や生産が増加することを通じて、次第に前向きの循環が働き始めると考えられる。ただし、企業の過剰債務圧縮や人件費抑制など構造的な調整圧力も根強いことを踏まえると、国内需要の自律的な回復力が高まるにはなお時間がかかるとみられる。また、輸出環境の先行きについては、米国の雇用面に引き続き弱さがみられることや、為替相場がドル安・円高方向で不安定な動きとなっていることなど、引き続き不透明感が存在している。

 物価面をみると、輸入物価は、夏まで原油価格を中心に国際商品市況が上昇基調で推移してきたことの影響から、下げ止まっている。そうしたもとで、国内企業物価も、たばこ税引き上げの影響もあって、横這い圏内の動きとなっている。この間、企業向けサービス価格については、前年比−1%強の下落が続いている。一方、消費者物価は、4月の医療費自己負担引き上げや7月のたばこ税引き上げなど特殊要因がかなり影響して、前年比下落幅が縮小してきており、8月の前年比は−0.1%となった。

 今後の物価情勢を考えると、輸入物価は、為替が円高方向に動いたことなどから、再び下落に向かうと予想される。ただし、国内企業物価については、輸入物価からの波及に多少のタイムラグがあることや、機械類の下落幅が縮小していることなどから、当面、横這い圏内で推移する可能性が高い。消費者物価については、米価格の上昇など特殊要因により、今後前年比で一時的に下げ止まる可能性も考えられるが、マクロの需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には緩やかな下落を続けると予想される。

 金融面をみると、日本銀行が潤沢な資金供給を行った結果、日本銀行当座預金は、9月中は概ね29兆円台で推移したが、9月末日は一層潤沢な資金供給を行った結果、34.6兆円となった。

 こうしたもとで、オーバーナイト物金利は、9月末日における一時的な上昇を除けば、引き続きゼロ%近辺で推移した。ターム物金利も、短期国債金利が9月中旬から下旬にかけて上昇したが、総じてみると落ち着いた地合いが続いている。この間、ユーロ円金利先物レートは、9月中は期先物を中心にやや高めの水準で推移したが、足許にかけては徐々に低下している。

 長期国債流通利回りは、先行きのわが国経済に対する見方が改善するなかで、中間期末要因などからやや振れの大きな展開となったが、足許では、投資家の押し目買いなどから幾分低下し、1.3%前後で推移している。こうした中、民間債(銀行債、事業債)と国債との流通利回りスプレッドは、総じてみると横這い圏内で推移した。

 株価は、9月中旬にかけて、海外投資家の本邦株式投資の継続などから大幅に上昇した後、9月末にかけては、高値警戒感が強まる中、急速な円高が嫌気されて反落した。もっとも、その後は、米国株価の反発などを受けて持ち直し、最近では日経平均株価は10千円台半ばで推移している。

 円の対ドル相場は、海外投資家による対内株式投資が継続する中、G7を前後した介入警戒感の後退から大幅上昇し、最近では109~110円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、優良企業に対して貸出を増加させようとする一方で信用力の低い先に対しては慎重な貸出姿勢を維持しているが、条件設定などの面で貸出姿勢を幾分緩和する動きも窺われている。この間、企業からみた金融機関の貸出態度は、中小企業等ではなお厳しい状況にあるが、幾分改善している。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境をみると、長期金利の上昇を眺めて社債発行市場で引き続き様子見姿勢が窺われるが、発行スプレッドは安定的に推移しており、高格付け企業を中心に総じて良好な状況に大きな変化はみられていない。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、キャッシュ・フローが設備投資を上回る状況が続いていることなどから、民間の資金需要は引き続き減少傾向をたどっている。

 こうした中で、民間銀行貸出は前年比2%前後の減少となっている。CPの発行残高は、前年を上回って推移している。社債の発行残高は、前年並みの水準となっている。

 この間、企業の資金繰り判断は、中小企業等ではなお厳しい状況にあるが、幾分改善している。

 マネタリーベースは、前年比2割程度の伸びを続けている。マネーサプライは、前年比2%程度となっている。

 企業の資金調達コストは、長期金利の上昇を受けて社債発行金利が幾分上昇しているものの、全体としてきわめて低い水準で推移している。

 以上を踏まえて、金融面の動きを総合的に判断すると、金融市場ではきわめて緩和的な状況が維持されている。この間、長期金利は先月と比べ幾分低い水準にある。また、株価は先月とほぼ同じ水準にある。マネーサプライやマネタリーベースは、経済活動との対比でみれば高めの伸びを維持している。企業金融面では、CP・社債の発行環境は高格付け企業を中心に総じて良好な状況に大きな変化はみられていない。もっとも、信用力の低い企業を中心に資金調達環境は総じて厳しいという基本的な状況に大きな変化はない。このため、金融資本市場の動向や金融機関行動、企業金融の状況については、引き続き十分注意してみていく必要がある。

以上