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金融市場レポート

2006年後半の動き

2007年1月31日
日本銀行金融市場局

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要旨

I.2006年後半の金融市場動向

 わが国では、2006年7月の金融政策決定会合で金融市場調節の操作目標(無担保コールレート<オーバーナイト物>)の誘導水準が概ねゼロ%から0.25%前後に引き上げられた。短期金融市場ではこれを受けて金利水準が切り上がり、金利機能が活性化した。この間、景気は緩やかな拡大を続けたが、先行きの物価上昇期待が抑制されていたこともあって、長期金利は低下基調を辿るなど、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が維持された。

 国際金融市場をみると、世界経済が米国を中心にやや減速しつつも拡大基調を維持するとの見方が各国で共有される中で、活発な企業合併・買収等もあって、良好な企業業績の持続期待が広がり、世界的な株式・クレジット市場の堅調地合いが継続した。

 わが国でも、足許の好調な企業業績等を受け、株式市場、クレジット市場ともに総じて堅調を続けたが、株価については、内外投資家や企業が先行きの景気や物価、企業業績に対して慎重な見方を崩さなかったことを背景に、米欧株価に比べると上昇ペースが一様ではなく、振れを伴う展開となった。また、円相場は、ボラティリティが極めて低い環境が継続する中、わが国の金利が相対的に低い水準に止まったため円安傾向を辿った。

 市場毎にみると、短期金融市場では、翌日物レートは、7月の利上げ前後や年末など振れを伴う局面もみられたものの、総じてみれば安定して推移した。一方、ターム物レートは、先行きの政策金利を巡る市場の予想を映じて推移した。この間、利上げ実施後の短期金融市場では、取引が活発化し、各市場間の裁定取引も円滑に行われるようになってきている。

 債券市場では、先行きの景気・物価見通し、政策金利水準調整に対する見方や、米国長期金利の低下を受けて、長期金利は中長期ゾーン中心に総じて低下基調を辿り、イールドカーブがフラット化した。

 株式市場では、世界経済の持続的な拡大を背景に好調な企業業績が好感される中、株価は、5〜6月のいわゆるグローバル・リスク・リダクション時における年初来安値から総じて上昇基調を辿った。もっとも、企業が総じて慎重な年度業績見通しを維持したことや、内外投資家の先行きの景気・物価に対する見方に不透明感が残ったため、上昇ペースは一様ではなく、振れを伴う展開となった。

 クレジット市場では、企業の財務ファンダメンタルズが引き続き良好であったほか、金利のインプライド・ボラティリティが低位で安定したことなどから、春先から拡大してきた社債などの対国債スプレッドやCDSプレミアムは、夏場以降、緩やかに縮小した。

 外国為替市場では、低ボラティリティ環境が継続する中、内外金利差が意識されやすい状況が続き、投資家などが高金利通貨を選好する傾向が強かったことから、低金利通貨である円は、主要通貨やアジア通貨に対して下落傾向を示した。一方、米ドルは高金利通貨にもかかわらず、米国の景気減速観測の高まりや外貨準備構成通貨の分散に関する思惑などから、弱含みとなった。

II.市場機能面の課題と日本銀行の取り組み

 日本銀行は、金融市場の機能や効率性向上に貢献する観点から、様々な市場に関して調査活動を行うとともに、それに基づいて市場の基盤(インフラ)整備のための取り組みを行っている。日本銀行が06年中に取り組んできた主要な課題は、次の2点である。

(1)短期金融市場

 06年は、3月に量的緩和政策が解除された後、7月には政策金利がゼロ%から0.25%に引き上げられ、短期金融市場における取引が活発化した。もっとも、5年に及ぶ量的緩和政策の下で、短期金融市場が大幅に縮小した状況が続いたため、さらなる機能向上に向けた課題も少なくない。日本銀行は、06年中を通じ、短期金融市場における取引動向を詳しく調査し、その結果を公表するとともに、市場参加者との意見交換などを通じて、機能向上への課題について認識の共有に努めた。

 短期金融市場の機能の向上については、より安定的な金利形成、円滑な金融市場調節を可能にするという意味で、日本銀行も大きな関心を有している。07年にかけても、市場参加者の方々と意見交換を行いながら、マーケットの自律的な発展を支援していく方針である。

(2)災害時における市場機能の継続(市場レベルBCP)

 地震やテロなどの災害時においても、必要な取引を行えるようにしておくことは、市場参加者の利益に適うだけでなく、金融市場や経済全般の安定にも資するものである。わが国においても、近年、市場レベルBCPの重要性が認識されるようになっており、06年は、短期金融市場、外国為替市場、証券市場それぞれにおいて、体制整備が着実に進展した。

 日本銀行は、各市場における関係者の議論に参画したり、BCP専用ウェブサイトの構築や共同訓練など、具体的な取り組みの推進に協力した。今後は、各市場における検討がさらに深められることとともに、対応の具体化、実践的な共同訓練、現在市場別に進められているBCPの市場間の連携などが課題になると思われる。日本銀行では、引き続き自らのBCP対応をしっかりと進めていくとともに、関係者の取り組みをサポートし、市場レベルBCPの充実に貢献していく方針である。