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金融市場レポート

2007年後半の動き

2008年1月31日
日本銀行金融市場局

要旨

 2007年後半の国際金融市場は、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した動揺が拡がる中、振れの大きい展開となった。すなわち、これまで急速な拡大を続けてきた証券化市場では、サブプライムローンの延滞率上昇を背景とした格付けの低下などを契機に、投資家によるリスクの再評価が進み、スプレッドが拡大した。また、株価は、投資家のリスク削減によるポジション調整などから、夏場に世界的に下落した。9月には、FRBの利下げなどを背景に米国景気に対する慎重な見方が後退したことから、株価はいったん反発したが、その後、米国経済の減速懸念や米欧主要金融機関の財務内容に関する不透明感が高まるにつれて、調整色の強い相場展開となった。そうしたもとで、長期金利は、質への逃避や実体経済の減速感などを背景に、ボラティリティを高めつつ、低下基調で推移した。為替市場でも、ボラティリティが急上昇し、これまで低ボラティリティの継続を前提に金利差に注目して積み上げられてきたキャリー・トレードのポジションが巻き戻された。その結果、高金利通貨が減価し、円などの低金利通貨は増価した。また、米ドルは、米国の金融環境や実体経済を巡る不透明感の強まりを背景に、減価傾向をたどった。この間、短期金融市場では、金融機関の年末越え資金の確保が意識され、資金調達圧力が高まったことなどから、ターム物金利のスプレッドが拡大するなど不安定な動きが続いた。

第I章:2007年後半の金融市場動向

 国内の金融市場は、こうした国際金融市場の動向に左右される展開となったが、その振れ幅は、市場によってまちまちであった。すなわち、わが国の株価の下落幅は、サブプライム問題の直撃を受けた米国などに比べても、大きなものとなったが、これには、改正建築基準法施行に伴う住宅投資の減少や円高進行等を背景に、市場参加者の国内景気見通しが慎重化したことなどが影響している。また、長期金利は、米欧金利の低下の影響や景気に対する見方の慎重化などを背景に低下した。一方、クレジット市場では、夏場以降、スプレッドが拡大したが、その拡大幅は米欧に比べると総じて限定的であった。これは、米欧の証券化市場に対するエクスポージャーが相対的に小さかった本邦金融機関が、企業の信用力や財務の良好なファンダメンタルズが維持されるもとで、積極的な信用供与スタンスを継続したことなどによる。また、短期金融市場でも、年末を越えるターム物金利を中心に上昇圧力がかかるなど、米欧市場での逼迫が円金利にも波及したが、米欧に比べれば、総じて落ち着いた動きとなった。

第II章:サブプライム住宅ローン問題と国際金融市場の混乱

 証券化商品の裏付け資産の一部に過ぎない米国のサブプライム住宅ローンが、その延滞増加を契機に、国際金融市場に大きな影響を与えたのには、幾つかの理由が考えられる。第一に、貸手が市場を通して原債権の信用リスクを様々な投資家に分散させる、いわゆる「組成販売型」の金融仲介システムにおいて、リスクの適正な価格付けという市場の最も重要な機能が十分果たされていたかどうかについて強い懸念が生じたことである。サブプライム関連の証券化商品に予想外の損失が発生したことにより、投資家は、証券化商品全般について同様の問題が生じる懸念を強め、リスクの再評価を進めていくこととなった。第二に、証券化商品の評価損が拡大するにつれて、市場参加者の手元資産の投げ売りや新規投資の手控えの動きが強まり、これらが金融資産の市場流動性と投資家の資金流動性の相乗的な収縮をもたらしたことである。流動性の収縮は、投資家のリスクアペタイトを一段と減退させ、その影響が、証券化市場を含むクレジット市場全体や株式市場などに拡がった。第三に、銀行のバランスシートからいったん切り離されたリスク資産が、証券化市場の混乱の過程で、再び銀行のバランスシートに組み戻されたことである。意図せざるバランスシートの拡大に直面した米欧の銀行は、短期金融市場でカウンターパーティー・リスクが意識される中、資金調達コストの上昇に見舞われた。そして、最後に、銀行の信用創造の抑制などによってマクロ経済に影響が及ぶのではないかという懸念が、米国経済の先行きの不確実性を高め、これがまた、資産価格のボラティリティの上昇と市場流動性の収縮につながったことである。

 金融資産の市場流動性が収縮したことで、リスクの再評価プロセスはさらに難しさを増している。年明け後(2008年1月中)の状況をみると、短期金融市場の逼迫は改善しているが、証券化市場やクレジット市場の調整は深まっている。このため、国際金融市場の動向については、そのマクロ経済面への影響やフィードバックといった観点も含め、引き続き注視していく必要がある。

第III章:市場機能面の課題と日本銀行の取組み

 日本銀行が、金融市場の機能や効率性向上に貢献する観点から、2007年中に取組んできた市場の基盤整備のための主要な課題は、次の2点である。

(1)短期金融市場の活性化

 短期金融市場は、2006年3月の量的緩和政策の解除後、着実に機能を回復してきている。日本銀行は、市場の自律的な機能向上プロセスを主として実務的な視点から支援・促進していくことを狙いに、07年2月から約半年間のプロジェクトとして「短期金融市場の機能向上への取組み」を実施した。市場参加者の間でも、短期金融市場の機能向上に繋がる自発的な取組みが数多く見られた。こうしたもとで、短期金融市場は07年中を通して着実に取引が活発化した。

(2)災害時における市場の業務継続体制の強化(市場レベルBCP)

 地震やテロなどの災害でも必要な取引を行えるようにしておくことは、個々の市場参加者の利益に適うだけでなく、金融市場や経済全般の安定にも資するものである。災害に対する堅牢性は、国際金融センターの重要な条件の1つでもある。2007年は短期金融市場(コール市場)、外国為替市場、証券市場の各市場において市場レベルBCPの取組みが大きく進展した。

日本銀行から

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