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金融市場レポート

国際金融資本市場の改善持続と政策対応

2009年下期の本邦金融資本市場の動向

金融資本市場の今後の留意点

市場機能面の課題と日本銀行の取組み(2009年中)

2010年1月29日
日本銀行

要旨

国際金融資本市場の改善持続と政策対応

2009年春頃を境に、過度な金融システム不安の後退や、在庫調整の進捗を受けた景気底入れ期待の拡がりを受け、市場参加者のリスク・アペタイト(投資家のリスクを取る意欲)は急回復を示した。もっとも、米欧で幅広い経済主体が過剰債務問題に直面しているもとで、投資家は国際金融情勢について総じて敏感になっており、回復した投資意欲が持続性を持つものかどうかについては、不透明感が存在していた。実際、いわゆるドバイ・ショックを契機とする国際金融資本市場の動揺に表れたように、投資家の姿勢がやや萎縮する局面もみられた。もっとも、基本的には主要な中央銀行が低金利政策を続ける姿勢を明確化したことなどから、リスク性資産への資金流入は、幾分、ペースを緩めつつも継続した。こうした資金の流れは、先進国内に止まらず、相対的に高い経済成長が期待される新興国へも向かったため、これらの国々では株価や通貨の上昇傾向が続いた。また、国際商品市況や一部の国では不動産市況も上昇した。このような幅広い範囲の資産価格の回復・上昇には、主要国での緩和的な金融環境の維持が寄与したとみることができる。しかし、一方で先進国における低金利政策の持続期待が新興国への資金流入を加速する可能性や、期待の変化がフローの急速な巻き戻しを引き起こす可能性などが意識され始めた。

2009年下期の本邦金融資本市場の動向

2009年下期入り後の状況をみると、日本銀行による積極的な資金供給の継続を受け、短期金融市場ではターム物金利が緩やかな低下を続けるなど、落ち着いた動きを示した。CP買入など各種臨時措置の終了決定による影響も観察されていない。社債市場では、高格付け銘柄に加えて、中低位格付け銘柄の信用スプレッドも全体としては緩やかに縮小するなど、概ね改善傾向が持続した。また、国債市場では、国債需給の悪化が意識されたものの、総じてみれば一定のレンジ内での動きが続いた。一方、株式市場では、米欧株価の底堅い動きとは対照的に、弱含みやすい地合いが続いた。特に11月下旬にかけては、世界的なドル安傾向などを背景に一段の円高が進行するもとで、株の下落基調が強まった。しかしながら、日本銀行が臨時の金融政策決定会合を開催し、金融緩和の一段の強化を決定した12月入り後は、円が幾分軟化するとともに、株価も反転上昇した。

金融資本市場の今後の留意点

今後の金融資本市場の動向を展望するうえでは、実体経済と国際金融資本市場の相互作用に影響を及ぼしうる要因に引き続き着目していくことが重要である。実体経済面においては、米国などにおいて、家計部門や銀行部門におけるデレバレッジ(債務削減の動き)がどのように進展し、どのような影響を金融セクターに与えるかが、引き続き大きな着目点となろう。国際金融資本市場の面では、投資家の投資姿勢が今後、どのように変化するかが注目される。現在、グローバル投資家の投資姿勢は、回復してきているとはいえ、依然、ドバイ・ショックのようなイベント・リスクを含め各種リスクに敏感であるとみられる。この点、グローバル投資家が着目している点のひとつは、低金利政策の持続性である。主要国で採用されてきた低金利政策は、資産価格の回復などを通じて実体経済活動の活性化に寄与しているが、他方で、新興国への資金流入を活発化させている。今後資金流入が加速したり、期待の変化により急激な巻き戻しが生じた場合、国際金融資本市場がどのように反応するかによっては、世界経済にも大きな影響があると思われる。グローバル投資家が着目しているもうひとつの点は、主要国における財政バランスの悪化である。財政バランスの今後の帰趨や見通し次第では、イールド・カーブをスティープ化させる投資ポジションが拡大する可能性がある。わが国の金融資本市場も、国際的な動きとの連動性が趨勢的には高まっていると考えられるため、先行きの内外の金融資本市場を展望するうえでは、これらの点に留意していくことが重要であると思われる。

市場機能面の課題と日本銀行の取組み(2009年中)

2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻に伴い、流動性の低下など、大きな影響を受けた国債レポ市場については、フェイル慣行の定着・見直しなどの市場慣行の整備や、清算機関の機能改善と利用促進、さらに国債決済期間の短縮化などによるリスク管理の強化等、市場全体で取組んでいく課題が改めて認識され、市場関係者において検討が進められている。また、社債、証券化商品、店頭デリバティブ、CPの各市場においても、市場活性化に向けた取組みが検討、実施されている。このほか、災害時の金融市場の安定を図る観点から、市場の業務継続体制(市場レベルBCP)の整備に向けた取組みも進められている。日本銀行では、こうした市場慣行の整備やインフラ強化に向けた関係者の取組みが進展することを期待しており、引き続き積極的に支援していきたいと考えている。

日本銀行から

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