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金融市場レポート

欧州財政問題を中心とする不確実性の高まり

2010年上期のわが国金融資本市場の動向
— 金融資本市場の今後の留意点

2010年7月30日
日本銀行

要旨

欧州財政問題を中心とする不確実性の高まり

国際金融資本市場では、2009年春以降、新興国や資源国を中心とする世界経済の緩やかな回復や、先進諸国における低金利持続期待の強まりなどを背景に、リスク性資産への資金流入が継続した。もっとも、2010年に入ると、ギリシャに端を発する欧州財政問題の深刻化などから、国際金融資本市場を取り巻く不確実性は増大し、投資家の投資姿勢は慎重化した。

ギリシャの財政問題は、同国の財政再建の可能性に対する懐疑的な見方などにより深刻化していき、財政状況が悪い他の欧州周辺国に対する懸念へと拡がっていった。また、公的部門の信認低下に伴う欧州周辺国の国債価格の下落が、こうした債権を多く保有する欧州系金融機関に対する市場の見方を厳しいものにし、経営状況に対する不安感を台頭させた。欧州財政問題の拡がりは、ドル資金市場の緊張感を高めるとともに、新たな金融規制案の発表とも相まって、市場参加者にとっての不確実性を高めた。

特に欧州財政問題を巡る動向が緊迫化した4月下旬以降、それまで概ね安定基調を辿っていた市場環境は、大きく変化することとなり、リスク性資産の価格は、不安定な動きを示す場面が多くなった。欧州財政問題の深刻化は安定的な環境に慣れつつあった市場にとって大きなショックとなったほか、ユーロ圏の構造面に根差す問題の解決は容易ではないとの認識も強く、グローバル投資家はリスクを取ることに慎重になった。

2010年上期のわが国金融資本市場の動向

このように、海外市場で不確実性が増大するもとで、わが国の金融資本市場への波及は相対的には限定されたものであったが、株式市場など一部に神経質な動きがみられた。

わが国金融資本市場における海外からの影響は、各市場における需給状況や、外国人投資家の活動度合いなどによってばらつきがみられた。すなわち、各種短期金利は日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、低い水準で安定的に推移したほか、投資家の堅調な投資需要を背景に、社債の信用スプレッドは期中を通してみれば概ね低下基調を辿った。5月以降は社債市場も影響を受けたが、その程度は欧米と比べると限定的なものにとどまった。一方、株価は、欧州財政問題に対する警戒感の拡大から、海外投資家がリスク回避的になった影響を直接受け、上下に大きく振れる不安定な動きを示した。また、外国為替市場においては、欧州財政問題を背景にユーロ/円相場は大きく円高方向に振れる展開となった。6月末にかけては、それまで概ね横ばいで推移していたドル/円相場が、米国における金利先高観が一段と後退するもとで、90円を割り込み、不安定な動きが強まった。

金融資本市場の今後の留意点

内外の金融資本市場は、増大した不確実性に直面しており、先行きも、実体経済指標や金融システム関連の情報に大きく反応する、神経質な地合いが続くことが見込まれる。具体的には、ユーロ圏の各国政府、並びにEUレベルの対応が効を奏し、欧州財政問題に対する懸念が落ち着いていくか、そして、欧州金融部門への信認が確保され、経済と金融の負の相乗作用を回避することができるか、さらに、主要先進国経済が緩やかな回復にとどまるとの見方が強いなかで、新興国経済が、適切なマクロ経済政策運営によって持続的な成長経路を確保し、今後も世界経済の牽引役となっていけるか、といったことが着目点になると考えられる。

また、このところ大きく低下している主要先進国の長期金利の動きも注目されよう。欧州周辺国を除く主要先進国の長期金利は、2009年下期には低金利政策の長期継続期待の強まりから、2010年上期には欧州の信用問題を背景としたグローバル投資家のリスク回避姿勢の高まりから、概ね低下傾向を辿っている。この点、長期金利の低下が、経済の長期停滞を示唆していると懸念する向きがある。バブル崩壊後の日本の経験を踏まえ、金融危機を経てバランス・シート調整圧力を抱える主要先進国の回復が、長期にわたり、非常に緩慢なものにとどまるのではないかといった見方が聞かれる。一方で、主要先進国の財政状況が大幅に悪化するもとで、国債価格の反転下落(国債利回り上昇)リスクも根強く指摘されている。

今後、各国の長期金利の動きや、その背景にあるメカニズムについては、十分に注意を払っていく必要があろう。

日本銀行から

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