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金融システムレポート・金融システムの現状と評価

銀行セクターを中心に

2005年 8月
日本銀行

以下には、(はじめに)を掲載しています。

はじめに

 わが国の金融システムは、10年以上にわたって取り組んできた不良債権問題の解決にようやく目処をつけ、新しい局面に入っている。本年4月1日のペイオフ全面解禁は、そうした金融システムの局面変化を象徴するものであったと位置付けることができる。日本銀行は、こうした局面変化を踏まえ、「ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について」(本年3月18日)を公表し、日本銀行の金融システム面への対応のあり方を、これまでの危機管理重視から、金融システムの安定を確保しつつ公正な競争を通じて金融の高度化を支援していく方向へと切り替えていくことを表明した。その中で、信用機構局と考査局を統合して金融機構局とし、同局内に「金融高度化センター」を設置することなどとともに、金融システムの安定度・機能度の評価とこの面の日本銀行の施策について定期報告を行っていく方針を示した。この「金融システムの現状と評価 — 銀行セクターを中心に — 」、および、今回同時に公表される「金融システム面における日本銀行の施策」は、その定期報告(金融システムレポート)の第1号である。

 金融システムの安定を維持する上では、まず、個別銀行の健全性確保が重要となる。とりわけ、金融システムや経済全体が脆弱な状況においては、金融機関の破綻がシステミック・リスクを顕現化させる惧れが強まるため、個々の銀行の健全性確保は極めて重い意味を持つ。また、金融システムの不安定化を回避するためには、マクロ的な不均衡や潜在的リスクを予防的に検証していくことも重要である。すなわち、広く銀行セクターに共通のマクロ的なリスク要素を逸早く察知することや、銀行をはじめ、企業や家計など各経済主体の金融行動に何らかの行き過ぎや歪みがないかどうか、それがシステミック・リスクの顕現化につながる惧れがないかどうかなどを点検することである。また、日本経済の健全な発展に向けて金融システムがどのように機能しているかを点検し、その改善の方向を模索することも重要である。この「金融システムの現状と評価 — 銀行セクターを中心に — 」は、以上のような問題意識の下に作成されている。

 日本銀行は、今後、本レポートを年1回のペースで公表していく予定であり、これを通じて、金融システムに関する包括的な分析・評価を行っていく方針である。また、「金融システム面における日本銀行の施策」を同時に公表していくことにより、日本銀行が行う諸施策の透明性向上を図っていきたいと考えている。