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金融システムレポート(2012年10月号)

2012年10月19日
日本銀行

概観

わが国の金融システムを取り巻く環境

わが国の金融システムを取り巻く外部環境をみると、先行き不透明感が引き続き高い状態にある。

国際金融資本市場では、欧州債務問題などを背景とした投資家のリスク回避姿勢は足もとでやや後退しているものの、引き続き神経質な展開が続いている。欧州では、財政状況の厳しい国において、財政、金融、実体経済の間で負の相乗作用が働いているとみられる。新興国経済は、中国をはじめ多くの国で減速している。米国では、家計の債務返済負担が和らぐ方向にあるものの、引き続き経済の重石となっている。

わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。こうしたもとで、企業は引き続き慎重な財務運営を続けており、企業の財務状況は総じて改善した状態にある。ただし、一部の中小企業では厳しい財務状況が続いているほか、住宅ローンを抱える家計では所得との対比でみた債務の元利返済額の比率が引き続き高めとなっている。公的部門については、財政赤字が続くもとで、政府債務残高が累増している。

金融機関の金融仲介活動

わが国では、企業・家計を取り巻く金融環境は緩和した状態にある。CP・社債市場では総じてみれば良好な発行環境が続いているほか、貸出市場でも企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾向が続いている。こうしたもとで、銀行の国内貸出残高をみると、設備資金は盛り上がりに欠けるものの、復興関連の運転資金や企業買収関連を中心に増加している。また、大手行は海外貸出に注力しており、海外の貸出市場におけるシェアを高めている。この間、地域金融機関の貸出残高は全体として増加しているものの、地方圏では、地元向け貸出が伸び悩んでいる。こうした中、金融機関は、地元企業の経営改善に向けて、販路開拓や事業承継の支援など顧客ネットワークを活かした取り組みを進めている。

金融システムにおけるリスク

金融的な不均衡という観点から金融システムの状況を点検すると、期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する指標は観察されない。もっとも、金融機関の国債保有残高が一段と増加していることには注意する必要がある。また、銀行・信用金庫が抱えるリスク量は、総じてみると自己資本との対比で引き続き減少しているが、基礎的な収益力は低下している。仮に、人口減少や高齢化の進行などによって、わが国の経済成長率が中長期的に低下を続ける場合、金融機関の収益力も低下を続ける可能性がある点には注意が必要である。

金融システムのリスク耐性

マクロ・ストレス・テストの結果によれば、わが国金融システムのリスク耐性は全体として相応に強い状態にある。すなわち、リーマン・ショック時なみの大幅な景気後退が生じるケースや国内金利が一律に1%pt上昇するケースを想定しても、銀行の自己資本基盤が全体として大きく損なわれる事態は回避されると試算される。また、円貨・外貨ともに、市場調達が部分的に活用できなくなるケースが生じたとしても、銀行は、全体として概ね十分な量の資金流動性を確保していると試算される。

もっとも、大幅な景気後退が生じる場合、貸出債権の質が低い銀行では自己資本比率の低下幅が大きくなる点には注意が必要である。さらに、国内金利が上記想定を超えて大きく上昇する場合、銀行の自己資本は相応に減少するほか、その影響は金融と実体経済の相乗作用の中で増幅される点にも注意が必要である。また、外貨流動性の面では、複数の外貨調達手段が同時に活用できなくなるようなきわめて厳しい状況を想定すると、追加的な資金繰り対応が必要となる可能性もある。

金融システムの安定性確保に向けた課題

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。もっとも、金融機関が、経済や金融資本市場のストレスへの対応力を確保しながら、円滑な金融仲介活動を維持していくためには、以下の3つの経営課題に重点的に取り組む必要がある。

第一の課題は、リスク管理の実効性向上である。信用リスクについては、業況が悪化した企業に対して、経営改善支援のための取り組みを強化するとともに、再生可能性に応じて信用リスク管理面での適切な対応を図ることなどが重要である。市場リスクについては、ストレス・テストを含む複数の計測手法を活用してリスクを多面的に把握し、バランスのとれたポートフォリオの構築と自己資本に応じたリスク量の管理が必要である。資金流動性リスクについては、円貨・外貨ともに厳格な管理が引き続き求められる。

第二の課題は、自己資本基盤の一層の強化である。金融機関は、様々なストレスの顕在化に備えるのみならず、内外における成長分野向け投融資など、収益性・リスクの高い分野での金融仲介活動を続けていくためにも、自己資本の充実は不可欠である。また、国際統一基準行には、新しい自己資本比率規制が2013年から順次適用される。金融機関は、自己資本基盤を着実に強化していく必要がある。

第三の課題は、安定的な収益基盤の構築である。金融機関は、他の業種と比べて大きな顧客ネットワークを有しており、それを活かしながら地元企業の販路拡大や事業承継などをより効果的に支援する余地がある。こうした利用価値の高い情報サービスの提供を通じて、取引機会を拡大させることや適切な手数料を確保することは、金融機関の収益力向上に結びつくと考えられる。また、創業期の企業を含め成長性のある企業に対する支援においても、金融機関はABLなど金融手法面の工夫やファンド機能の活用などを通じて、潜在的な資金需要を掘り起こすことが期待される。さらに、戦略的な業務提携や統合は、経営効率の改善のみならず、顧客ネットワークの拡充効果も通じて、金融機関の収益基盤強化につながり得る。

日本銀行から

本レポートは、原則として2012年9月末までに利用可能な情報に基づき作成されています。
本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局金融システム調査課

E-mail : post.bsd1@boj.or.jp

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