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金融システムレポート(2013年10月号)

2013年10月23日
日本銀行

金融システムの総合評価

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。

金融資本市場や金融機関行動において、過度な期待の強気化など、金融面の不均衡を示す動きは、現時点では観察されない。金融資本市場では、2013年度に入って各市場のボラティリティが高まったが、その大きさは、過去のストレス時に比べれば限定的なものにとどまっている。

金融機関(銀行・信用金庫)では、全体としてみると、規制上の自己資本比率、リスク量対比でみた自己資本、いずれの観点からも、資本基盤は充実しているとみられる。また、十分な資金流動性も確保されている。このため、大幅な景気後退や金利上昇など、さまざまな経済・金融面のショックに対しても、資本基盤、資金流動性の両面で、金融機関は相応に強いリスク耐性を備えている。金利が景気の改善を伴わずに大きく上昇する場合でも、金融システムは基本的に安定性を維持するとみられるが、金利上昇の背景や程度、速さによっては、想定を超えて影響が及ぶ可能性がある点には留意が必要である。また、個別にみると、資本基盤が相対的に弱く、リーマン・ショック後の資産内容の回復が遅れている金融機関もみられる。こうした金融機関では、経済・金融面に大きなショックが生じた場合、自己資本比率が大きく低下する可能性があることから、着実に自己資本の強化に取り組んでいく必要がある。

金融仲介活動は、前回レポート時に比べて、より円滑に行われるようになっている。すなわち、量的・質的金融緩和の導入後、企業・家計を取り巻く金融環境は、より緩和的となっている。金融機関の貸出は徐々に伸びを高めているほか、社債やエクイティ調達など、金融資本市場を通じた金融仲介も活発になっている。

こうしたなか、金融機関の基礎的な収益力は、趨勢的な貸出利鞘の縮小などから、低下傾向に歯止めがかかっていない。これらは、現下の金融システム全体の安定性や仲介機能に影響するものではないが、中長期的には克服していくべき課題である。

概観(II〜VI章要旨)

II.外部環境の点検

国際金融資本市場や海外経済では、前回レポート時と比較すると、欧州債務問題に対する懸念や、今年前半に高まった米国緊縮財政の影響に対する懸念が幾分後退した。一方、米国連邦準備制度(FRB)による資産買入れの早期縮小観測と、その強まりを一因とした各国金利の上昇や、新興国市場からの資金流出などに関する懸念が強まった。わが国では、経済に前向きの動きがみられるもとで、企業の財務状況は総じて改善した状態にあるほか、家計の雇用・所得環境にも改善の動きがみられている。こうしたもとで、家計は投資信託などリスク性資産の保有を幾分増加させている。もっとも、一部の中小企業の脆弱さには、大きな変化はみられていない。

III.金融仲介活動の点検−量的・質的金融緩和導入後の動向を中心に−

企業・家計を取り巻く金融環境は、前回レポート時と比べると、より緩和的になっている。社債・株式など金融資本市場を通じた金融仲介は、活発になっている。金融仲介機関の活動をみると、量的・質的金融緩和のもとで日本銀行による国債買入れが増加するなか、金融機関(銀行・信用金庫)の国債保有残高は減少した。一方で、日銀当座預金が増加したことに加えて、貸出が伸びを高め、海外資産も増加しているため、金融機関の運用資産は全体として伸びを高めている。貸出の伸びは大企業向けが中心であり、中小企業向けは総じてみるとなお弱めであるが、足もとでは中小企業向けについても幾分前向きな動きがみられつつある。この間、保険会社等の運用動向には、大きな変化はみられていない。

IV.金融資本市場から観察されるリスク

わが国の金融資本市場では、金利、株価、為替いずれの市場においても、今年度入り後にボラティリティが上昇する局面が見られた。もっとも、リーマン・ショックなど過去のストレス時に比べると、ボラティリティの上昇は限定的なものにとどまっている。この間、わが国における春以降の長期金利の上昇は、欧米に比べて限定的なものとなっており、とりわけ6月以降、海外金利が総じてみれば水準を切り上げるもとで、わが国長期金利の安定が目立っている。この背景としては、財政悪化懸念の高まりが窺われないなか、日本銀行の大量の国債買入れによる債券需給の引き締まりなどが指摘できる。株価はひところより落ち着いてきたとはいえ、なお、やや振れの大きい展開が続いている。

V.金融仲介機関に内在するリスク

金融機関(銀行・信用金庫)では、全体としてみると、規制上の自己資本比率、リスク量対比でみた自己資本、いずれの観点からも、資本基盤は充実しているとみられる。自己資本は、内部留保の蓄積等から充実が進んでいる一方、リスク量は信用リスク量や金利リスク量の減少等から抑制されている。金利リスク量は、これまで増加傾向が続いていたが、今年度に入って減少に転じた。信用リスク量の減少は、金融機関の資産内容の改善などを反映している。もっとも、個別にみると、資産内容の改善が遅れている先もみられる。その他のリスクも含め、リスク量対比で資本基盤が脆弱な先も一部にみられる点には留意が必要である。また、金融機関の基礎的な収益力は、趨勢的な低下傾向になお歯止めがかかっていない。この間、金融機関は、十分な資金流動性を確保している。

VI.金融システムのマクロ的なリスク評価

金融面の各種リスク指標を点検すると、ほとんどの指標でマクロ的に留意すべき過熱方向の動きは示されていない。マクロ・ストレス・テストによれば、大幅な景気後退が生じるケースや景気の改善を伴わずに金利が大きく上昇するケースを想定しても、金融機関の自己資本は相応の水準に維持される。ただし、金利上昇のケースでは、その背景や程度、速さ次第で、金融機関の資金利益や投資行動、企業・家計の債務返済負担などに大きな変化が生じ、金融機関の収益や自己資本に想定を超えた影響が及ぶ可能性がある。さらに、個別にみて、リスク量対比で資本基盤が脆弱な金融機関では、経済・金融面に大きなショックが生じた場合、自己資本比率が大きく低下する可能性がある点にも、留意が必要である。この間、資金流動性の面では、一定期間の継続的な預金流出や金融資本市場の機能低下といったストレスにも対応し得る流動資産が確保されている。

日本銀行から

本レポートは、原則として2013年9月末までに利用可能な情報に基づき作成されています。
本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局金融システム調査課

E-mail : post.bsd1@boj.or.jp

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