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金融システムレポート(2014年10月号)

2014年10月17日
日本銀行

金融システムの総合評価

わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融仲介活動は、より円滑に行われるようになっている。

金融システムの機能度

金融機関は、引き続き、国内外で貸出を積極化している。国内では、相対的に信用力の低い企業への貸出にも取り組むなど、リスクを取る方向での業務運営を指向している。成長事業の育成や事業再生にも着実に取り組んでいる。国内貸出は、幾分伸びを高めており、徐々に地域・業種の広がりもみられる。この間、資金需要が緩やかな増加にとどまっていることを映じて、貸出利鞘の縮小が続いている。海外では、本邦企業の国際展開の支援等に積極的に取り組んでおり、海外貸出は高い伸びを続けている。有価証券投資では、高水準の円債残高を維持しつつ投資信託等を積み増すなど、小幅ながらリスク・テイク姿勢を強めている。この間、金融資本市場を通じる金融仲介は、エクイティ・ファイナンスが引き続き高水準で推移するなど、良好な発行環境が維持されている。こうしたもとで、企業・家計を取り巻く金融環境は、より緩和的になっている。

金融システムの安定性

以上のような金融仲介活動において、信用量のトレンドからの大幅な乖離など、過熱を示す動きはみられていない。国際金融資本市場では、ボラティリティが低水準で推移するもとで、リスク資産への資金流入やリスクプレミアムの縮小を伴う「利回り追求」が強まった。本邦市場でも、総じて低ボラティリティ環境が続くもとで長期金利は低水準で推移し、株式市場やクレジット市場も堅調に推移したが、過度な期待の強気化等は窺われていない。

金融機関は、全体としてみると、充実した資本基盤を有している。自己資本比率は規制水準を十分に上回っている。金融機関の負っているリスクは、前回レポート時に比べて株式、金利リスクが幾分増加したが、自己資本も利益の蓄積等から充実が進んだ。自己資本対比でみたリスクの蓄積状況に大きな変化はみられていない。こうしたもとで、金融機関は、大幅な景気の悪化、金利の上昇といったショックに対して、相応に強いストレス耐性を有している。ただし、経済・金融のショックの背景、程度、速さによっては、金融システムの安定性に影響が及ぶ可能性がある点には留意が必要である。また、資金流動性についてみると、金融機関は、円資金について十分な資金流動性を有している。外貨資金は市場調達の比重が高い調達構造となっているが、調達の長期化等の取組みから、一定期間調達が困難化しても資金不足をカバーできる流動性を確保している。

将来にわたる金融安定の確保に向けて

先行きを展望すると、現在進行している経済のグローバル化や国・地域の産業構造の転換が、さらに進捗していくことに伴って、質・量両面で、金融システムの担う金融仲介機能、リスクも変容していく。わが国の成長力や景気・物価情勢の行方は、金利や株価形成等を通じて、金融機関の有価証券投資における投資姿勢やパフォーマンスにも影響していく。また、国際金融資本市場における「利回り追求」の強まりは、今後の展開によってはわが国に影響を及ぼし得る。このように、内外金融経済環境は継続的に変化しており、これに伴って金融システムのリスク・プロファイルも変わっていく。

また、金融機関の国内貸出利鞘の縮小傾向、収益力の低下傾向が長引けば、金融機関のリスク・テイク能力、損失吸収力を制約していく。さらに、経済のグローバル化に伴ってわが国の金融システムが海外との結びつきを強めるもとで、抜本的な国際金融規制改革、グローバル金融システムの構造変化が進行している。これらの要素も、中期的にはわが国金融システムの安定性、機能度に影響を及ぼしていく可能性がある。

以上のような点を踏まえ、将来にわたって金融安定を確保していくうえでの金融機関経営の課題は次の3点である。これらへの取組みが、先行きの金融機関の健全性や収益力を規定する重要なファクターになっていくと考えられる。

第一に、金融機関は、景気回復に伴う資金需要への適切な対応に加え、国・地域の産業活力向上への貢献が期待されている。成長事業への投融資、事業再生や産業の新陳代謝等への積極的な取組みを含め、活力ある金融仲介機能の発揮とそれを可能とする金融手法、リスク管理力の強化が必要である。

第二に、わが国経済のグローバル化の進展により、金融機関の海外業務は今後も拡大していくと見込まれる。外貨資金は市場調達の比重が高いことも踏まえ、業務拡大に対応した安定調達基盤の確保、与信管理等の充実が必要である。また、国際的に活動する大規模金融機関は、金融システム全体の安定性と機能度に大きな影響力を有することから、国際規制改革等への適切な対応を含め、より高い基準での健全性と経営管理が求められる。

第三に、大幅な「預金超過」が続くもとで、資産負債管理(ALM)における有価証券投資の重要性は引き続き高い。昨年来、金融機関の間では、投資信託や外国証券への投資を増やすなど、リスク・バランスを見直す動きもみられているが、引き続き円債が有価証券投資の中心を占めており、円金利リスクは時系列的には高めの水準にある。金融機関は、ALMの明確な方針を定め、適切なリスク・テイクと管理を行っていくことが必要である。

日本銀行は、以上のような課題に対する金融機関の取組みや収益力の状況等について、日常的なモニタリングや考査を通じて金融機関との対話を深めていくとともに、金融機関の経営管理、リスク管理の向上を促していく。また、国・地域の産業や企業の実情、活力向上に向けた課題や金融面から取り得る対応などについても、金融機関と意見交換を行っていく。金融仲介機能やリスク管理の向上に資するテーマについては、セミナーの開催等を通じて、問題意識やノウハウの共有を図っていく。

また、日本銀行は、金融システム全体の安定確保に向けて、マクロ・プルーデンスの視点から、引き続き、金融システムの安定性と機能度を検証していく。そのうえで、必要に応じ、リスクの所在、課題や所要の対応などについて、幅広い金融システム関係者との間で、認識の共有や協議を行っていく。

日本銀行から

本レポートは、原則として2014年9月末までに利用可能な情報に基づき作成されています。
本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局金融システム調査課

E-mail : post.bsd1@boj.or.jp

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