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金融システムレポート(2015年10月号)

2015年10月23日
日本銀行

要旨:金融システムの総合評価

わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融仲介活動は、より円滑に行われるようになっている。

金融システムの機能度

金融機関は、国内外の貸出において、リスクを取る方向での業務運営を引き続き指向している。国内では、大企業のM&A向けや内外事業展開等に伴う資金需要へ積極的に対応しているほか、成長性や業績回復を見込んだ下位格付け先への貸出や企業再生関連の貸出等への取り組みにも広がりがみられる。こうしたもとで、国内貸出は企業向けが牽引する形で緩やかな増加を続けており、企業規模、業種、地域のいずれの面でもさらに広がりが出てきている。海外でも、本邦企業のグローバル展開を支え、成長力の高い海外諸国の金融ニーズを取り込んでいく観点から、融資に積極的に取り組んでいる。非日系企業を中心とした取引先拡大等を企図して、貸出債権を買い取る動きもみられている。こうしたもとで、海外貸出は高めの伸びを続けているが、このところのアジア経済減速を受けて伸び率は幾分鈍化している。有価証券投資では、高水準の円債残高を維持しつつ、投資信託等による運用を一層積み増すなど、リスク・テイクを徐々に強めていく姿勢を継続している。

生命保険会社・年金などの主要機関投資家でも、リスク性資産への投資を増やす動きが続いている。金融資本市場を通じる金融仲介は、エクイティ・ファイナンスが引き続き高水準であるほか、CP・社債の発行環境も良好である。

こうしたもとで、企業・家計の資金調達環境は、より緩和的となっている。この間、家計の金融資産運用は、預金中心の構図に大きな変化はないが、投資信託等への純流入が続くなど、リスク性資産の比重が高まってきている。

金融システムの安定性

以上の金融仲介活動において、過熱を示す動きや過度な期待の強気化といった金融面の不均衡はみられていない。不動産市場は地域差を伴いつつ徐々に取引が活発になっているが、全体としては過熱の状況にはないと考えられる。

金融機関は、全体としてみると、充実した財務基盤を有している。自己資本比率は規制水準を十分に上回っている。金融機関の負っているリスクは、前回レポート時から概ね横ばいとなった一方、自己資本は内部留保の蓄積等から増加した。こうしたもとで、金融機関のマクロ的なリスクと財務基盤の適切なバランスは引き続き確保されており、金融システムは相応に強いストレス耐性を有している。資金流動性に関しては、金融機関は、円資金について十分な流動性を有している。外貨資金は引き続き市場性調達の比重が高い調達構造となっているが、銀行の安定調達基盤の拡充に向けた取り組みに進捗がみられた。一定期間調達が困難化しても資金不足をカバーできる外貨流動性を確保している。

この間、アジアなど新興国経済の減速に対する懸念が強まるもとで、夏場以降、国際金融資本市場のボラティリティが高まった。わが国においても、株価が下落するなど海外市場の影響が及んだが、金融機関の財務基盤や金融システムの安定性への影響は、今のところ限定的なものに止まっている。

マクロ・プルーデンスの視点からみた課題

将来にわたって金融システムの安定を維持していくには、引き続き、金融機関のマクロ的なリスクと財務基盤の適切なバランスを確保していくとともに、先々の脆弱性に繋がっていく可能性がある金融システムの構造的な変化に対しても、着実に対応していく必要がある。

金融機関のマクロ的なリスクは、内外貸出や有価証券投資でリスクを取る方向の業務運営を進めるもとにあっても、総じて抑制されている。もっとも、これは、近年における安定的な金融環境の継続(信用コストの低位安定、市場ボラティリティの低さ)による面が大きく、この間、信用、市場、資金流動性など各種のエクスポージャーは増加を続けている。金融機関は、引き続き、積極的にリスク・テイクを進めている分野におけるリスク対応力の強化を図っていく必要がある。とくに、海外業務では資産の拡大に対応した外貨の安定調達基盤の拡充や与信管理の充実が、市場運用ではリスクの横断的、多面的な把握と管理が重要と考えられる。また、大手金融機関のシステミックな重要性の高まり、地域金融機関の基礎的な収益力の低下といった構造的な課題は、前回のレポートから変わっていない。

日本銀行は、金融システムの安定確保に向けて、モニタリング・考査等を通じてこれらの課題に対応していく。

日本銀行から

本レポートは、原則として2015年9月末までに利用可能な情報に基づき作成されています。
本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局金融システム調査課

E-mail : post.bsd1@boj.or.jp

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