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地域金融機関の貸家業向け貸出と与信管理の課題―アンケート調査結果から―

2016年3月24日
日本銀行金融機構局

要旨

わが国では、晩婚化や高齢化、人口の社会移動(地方圏→大都市圏、郊外→市街地)等を背景に貸家需要が増加している。貸家業向け貸出は、基本的には、こうした社会的要請に金融面から応えるものである。

貸家の需給や採算性は、物件毎の特性の違いに加え、物件所在地の人口・世帯数等の長期的な要因の影響を受けるが、近年の貸家の増加は、富裕層の資産運用や節税ニーズなど、足もとの供給側の要因に動機づけられている面もある。

このように、貸家市場の動向は様々な需給要因の影響を受けるが、いずれにせよ、金融機関において、貸家業向け貸出の実行段階における物件毎の収支見通しの検証、実行後の中間管理などは、自身のリスク管理として重要である。同時に、こうした金融機関の取り組みは、時間軸が長く、また地域性・個別性も強い貸家の需給を適切に結びつけ、ひいては、貸家市場全体の持続性を高めていくことにも資するものである。日本銀行は、こうした問題意識に基づいて、地域金融機関の貸家業向け貸出のリスク管理に関するアンケート調査を行った。

この結果を踏まえると、(1)地域や物件特性等に基づく類型化やデータ・情報の整備、(2)入口審査における収支見通しの検証(先行き入居率の妥当性検証方法や下方ストレスのかけ方等)、(3)中間管理の頻度やポートフォリオ分析等に充実の余地がみられた。金融機関は、これらの中から、自らの貸家業向け貸出の実情(残高の大きさ、営業推進方針等)を踏まえた対応を講じていく必要がある。日本銀行は、各地域金融機関の取り組みの実情を踏まえつつ、考査・モニタリングを通じて必要な改善を促していく。

日本銀行から

本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局金融第2課

E-mail:post.fsbe2@boj.or.jp