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決済システムレポート(2019年3月)

2019年3月27日
日本銀行

要旨

わが国では、金融市場インフラ(FMI)を通じて、膨大な金額の決済が日々行われている。日本銀行が運営する日銀ネットでは、1営業日平均約150兆円の資金決済と約80兆円の国債決済が円滑に行われている。民間FMIでも、全銀システムや外国為替円決済制度の取扱金額が緩やかな増加傾向にあるほか、証券取引やデリバティブ取引における清算機関(CCP)の利用拡大も続いている。CCPによる決済金額の圧縮率をみると、国債店頭取引では20%台前半となっているなど、十分なネッティング効果が確認されている。

決済システムの安全性と効率性の向上

金融市場インフラにおいては、決済の安全性や効率性、利用者の利便性の向上に向けて、様々な取り組みが進んでいる。

資金決済の面では、全銀ネットが、全銀システムの24時間365日稼動(全銀モアタイムシステムの稼動)を2018年10月に開始したほか、同年12月には、企業間の送金電文に取引明細などの商流情報の添付を可能とした全銀EDIシステムも稼動した。これらの取り組みの背景には、消費者や企業のニーズの変化――eコマースの普及に伴う夜間・休日における送金ニーズや企業間の決済事務の効率化に対するニーズの高まり――がある。

証券決済の面では、2018年5月に、国債取引の決済期間のさらなる短縮化(T+1化)が実現し、国債決済リスクの削減が図られた。また、日本銀行は、日本国債を担保とした本邦金融機関による安定的な外貨調達を決済面から後押しするため、香港金融管理局との間で、日銀ネット国債系と香港ドル即時グロス決済システムを接続するクロスボーダーDVPリンクの構築に向けた対応を2018年度から開始した。これらの取り組みの背景には、(1)2008年の国際金融危機を経て決済リスクの削減の重要性が関係者の間でより強く認識されるようになったこと、(2)金融経済のグローバル化の進展により、金融機関間の国境を越えた取引を安全かつ効率的に支えるインフラの整備が必要になってきたこと、などの環境変化がある。

日本銀行の金融市場インフラに対するオーバーサイト

日本銀行は、決済システムの安全性と効率性の維持向上に対して、中央銀行として強くコミットしている。この観点から、FMIが満たすべき国際基準――CPMI-IOSCOの策定した「金融市場インフラのための原則(FMI原則)」――等に基づき、主要なFMIに対するオーバーサイト活動を行っている。FMI原則を巡っては、近年、CCPの重要性やサイバーセキュリティへの国際的関心が高まる中、同原則の明確化・具体化を図るべく、CPMI-IOSCOによるガイダンスの策定が行われている。

わが国の主要なFMIは、リスク管理の強化やオペレーション面での安全性・信頼性強化等に積極的に取り組んできており、全体としてFMI原則に適合的であり、安全性・効率性が確保されていると評価できる。今後も、各FMIは、リスク管理や業務継続体制、極端なショックが生じた場合に備えた再建計画などにおいて、さらなる実効性の向上等を図っていく必要がある。

フィンテックと決済の新たな展開

近年、小口決済サービスの領域では、急速に進む情報技術革新を背景に、フィンテック企業の新規参入が進むなど、市場構造が変化してきている。預金口座を起点に伝統的な決済サービスを提供する金融機関と新規のサービスを提供するフィンテック企業の関係は、協調的な側面と競合的な側面をともに有しつつ、多様化・複雑化している。新たな市場構造のもとで、効率的かつ便利な決済サービスが長い目でみて安定的に供給されるかどうかは、金融機関とフィンテック企業のそれぞれの収益性に大きく左右される。日本銀行としては、こうした視点も念頭に置きながら、小口決済サービスの市場構造の変化が、金融システムや決済システム全体に及ぼす影響について注視していく。

決済システムの今後の課題

わが国の決済システムが、今後とも安全性を維持しつつ、効率性をさらに高めていくためには、次の3つの課題に取り組んでいくことが重要である。第一に、新たに整備された決済インフラの機能や制度を有効に活用し、金融・決済サービス全般の高度化や様々な経済活動の取引コストの削減、データの利活用といったメリットを着実に具現化していくこと。第二に、小口決済サービス市場において、数多くのキャッシュレス決済手段が林立する中で、消費者や小売店が利便性・効率性の面で便益をフルに享受できるような環境を整備していくこと。第三に、決済の利便性や効率性向上に向けた取り組みが発展していくための前提として、サイバーセキュリティの確保や災害時の業務継続体制の高度化などを含め、決済の安全性をよりしっかりと確保していくことである。

日本銀行は、これらの課題に関して、FMIに対するオーバーサイト活動を通して、関係者に働きかけを行っていくとともに、関係者間の必要な協調や協力を促す、いわば「触媒」としての役割を積極的に果たし、決済システム全体の安全性・効率性の維持向上を図っていく方針である。

日本銀行から

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