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地域経済報告 —さくらレポート— (2007年10月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2007年10月15日
日本銀行

全文の目次

  • I.地域からみた景気情勢
  • II.地域の視点
    • 1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
    • 2.北海道農業の現状と新たな取り組み
  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>地域別主要指標

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局・地域経済担当

天野(Tel.03-3277-2649)

I.地域からみた景気情勢

 各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、ほとんどの地域において拡大または回復方向の動きが続いており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。

 すなわち、輸出は増加を続けており、設備投資もすべての地域で引き続き増加傾向にある。こうしたもとで、企業の業況感は、幾分慎重化しているものの、総じて良好な水準にあるなど、企業部門は好調さを維持している。また、家計部門については、個人消費が、雇用・所得環境の改善傾向を背景に、底堅く推移している一方、住宅投資は、足もと、改正建築基準法施行に伴う着工の遅れ等から、すべての地域で減少している。この間、内外需の増加が続くもとで、生産も増加基調にある。
 こうした中、総括判断において、「拡大」としている関東甲信越、東海、近畿と、「回復」方向ないしは「横ばい圏内」にあるその他の地域との間で、依然、地域差がみられている。

 なお、7月の支店長会議時と比べると、総括判断は、全9地域のうち、6地域で現状維持としている。こうした中で、北海道では生産の持ち直し傾向の一服から、近畿では住宅投資が減少したほか、個人消費の伸びが幾分鈍化したことから、それぞれやや下方修正している。また、九州・沖縄でも、住宅投資の減少や製造業の業況感が幾分慎重化していることから、やや下方修正した。

表 地域からみた景気情勢
  07/7月判断 判断の変化 07/10月判断
北海道 緩やかに持ち直している 判断の変化 横ばい圏内の動きとなっている
東北 緩やかながら着実な回復を続けている 判断の変化 緩やかながら着実な回復を続けている
北陸 緩やかに回復している 判断の変化 緩やかに回復している
関東甲信越 緩やかに拡大している 判断の変化 緩やかに拡大している
東海 緩やかに拡大している 判断の変化 緩やかに拡大している
近畿 拡大を続けている 判断の変化 緩やかに拡大している
中国 全体として回復を続けている 判断の変化 全体として回復を続けている
四国 緩やかながら持ち直しの動きが続いている 判断の変化 緩やかながら持ち直しの動きが続いている
九州・沖縄 回復を続けている 判断の変化 緩やかな回復を続けている

 個人消費は、関東甲信越、東海で緩やかな「増加」あるいは「回復」と判断しているほか、その他の地域で、「底堅く推移」、「持ち直し」あるいは「横ばい圏内」と判断している。

 個別の動きをみると、大型小売店の売上については、衣料品等で弱めの動きがみられる一方、夏物商品や食料品、ブランド品等が増加しているとの報告が聞かれている。家電販売は、すべての地域で、薄型テレビ等のデジタル家電や高付加価値の白物家電を中心に、引き続き好調に推移している。乗用車販売は、小型車を中心に弱めの動きが続いているが、一部の地域では新車投入効果もあってやや持ち直している。この間、旅行取扱高は、地域ごとのばらつきはあるものの、総じてみれば堅調に推移している。

 前回報告との比較では、近畿、中国がやや下方修正した。

 設備投資は、高水準の企業収益を背景に、すべての地域で、引き続き増加傾向にあり、製造業における能力増強投資を中心に増加している、との報告が目立っている。

 前回報告との比較では、関東甲信越がやや下方修正した。

 生産は、多くの地域で、「増加」基調にあると判断している。この間、四国が「緩やかに回復」、九州・沖縄が「堅調に推移」と判断しているほか、北海道は「概ね横ばい」と判断している。

 業種別の特徴をみると、加工業種のうち、金属製品の一部で弱さがみられるものの、電子部品・デバイスでは、多くの地域からデジタル家電・ゲーム機・自動車向けが好調との報告が聞かれている。また、一般機械が、半導体製造装置や工作機械等を中心に、輸送機械でも輸出向けを中心に、高水準の生産を続けている。素材業種のうち、鉄鋼については、自動車や船舶向けの需要好調等を背景に高水準の生産が続いている地域が多いほか、化学や紙・パルプも高操業を維持している。一方、窯業・土石については、公共投資の減少等から抑制的な操業となっているほか、繊維でも弱い動きがみられており、引き続き業種間のばらつきがみられる。

 前回報告との比較では、北海道がやや下方修正した一方、東北、東海が上方修正した。

 雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、ほとんどの地域で「改善を続けている」と判断している。もっとも、東海の「有効求人倍率が高水準で推移」から、北海道の「横ばい圏内で推移」まで、地域差は依然として大きい。

 所得面は、ほとんどの地域で、緩やかな「増加」あるいは「改善」と判断しているが、中国では「概ね横ばい圏内で推移」としている。また、北海道では、企業の人件費抑制姿勢が続いていることもあって、「幾分弱めの動き」と判断している。

 前回報告との比較では、所得面はすべての地域で判断を据え置いているが、雇用情勢については東北が判断をやや下方修正した。

需要項目等

表 需要項目等
  個人消費 設備投資 生産 雇用・所得
北海道 横ばい圏内の動きが続いている 増加している 概ね横ばいとなっている 雇用情勢は、横ばい圏内で推移している。雇用者所得は、振れを伴いつつも幾分弱めの動きとなっている
東北 底堅く推移している 製造業を中心に増加している 一段と増加している 雇用情勢をみると、改善が一服している。雇用者所得は、全体として緩やかな改善を続けている
北陸 持ち直しの動きが続いているが、一部に弱めの動きもみられている 製造業を中心に高水準の前年を1割方上回って増加を続けている 引き続き増加している 雇用情勢をみると、引き続き改善傾向をたどっている。雇用者所得は、緩やかながら増加している
関東甲信越 緩やかな増加基調にある 増加している 増加基調にある 雇用情勢は、改善を続けている。雇用者所得は、緩やかな増加を続けている
東海 基調として緩やかに回復している 増加を続けている 増加している 雇用情勢をみると、有効求人倍率も高水準で推移しており、常用労働者数も増加している。雇用者所得は、改善している
近畿 底堅く推移している 増加している 増加している 雇用情勢は、改善を続けている。雇用者所得は、緩やかに増加している
中国 一部に弱めの動きがみられるものの、概ね底堅さを保っている 堅調に推移している 増加基調にある 雇用情勢をみると、有効求人倍率は引き続き高めの水準を保っている。雇用者所得は、概ね横ばい圏内で推移している
四国 全体として底堅く推移している 製造業を中心に増加している 緩やかに回復している 雇用情勢は、緩やかな改善の動きを続けている。雇用者所得は、全体として緩やかに回復しつつある
九州・沖縄 底堅く推移している 増加している 堅調に推移している 雇用情勢は、緩やかに改善している。雇用者所得は、緩やかに改善している

II.地域の視点

1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点

 わが国における企業立地は総じて増加基調にあり、濃淡はあるものの、このところ地域的な広がりもみられている。

 こうした企業立地の増加や広がりは、主として、増産対応や経営効率化に向けた地場企業による同一地域内での拠点整備によりもたらされているが、大企業の地方への進出や、それに誘引された地域内外の中堅・中小企業の立地増による面も少なくない。

 業種別にみると、基本的には地域の既存の産業構造に沿った立地が進んでいるが、自治体による誘致や産学連携の奏効等から、新たな産業の立地もみられている。

 最近の企業の立地戦略の特徴は、「人材の確保」、「グローバルな観点からの最適立地」に力点が置かれている点である。また、「被災リスクへの対応」を意識して、拠点間の連携を見直すなど業務継続体制強化の動きも強まっている。

  1. 「人材の確保」:企業は、市場ニーズの把握や企業間連携の観点から、市場や関連企業との近接性を引き続き追求しているが、大都市圏を中心に雇用環境が更にタイト化するもとで、立地判断における人材確保の優先度を一段と高めてきている。このため、優秀な人材を確保することを目的に、敢えて地方への立地を選択する動きもみられている。
  2. 「グローバルな観点からの最適立地」:コア技術の開発拠点、およびそれと一体化した製品の生産拠点は引き続き国内に立地する一方、それ以外の製品は、製品特性に応じた最適立地をグローバルな観点から戦略的に推進している。この結果、海外拠点は、機能の拡充や再編の動きを伴いつつ、グローバルに広がっている。
  3. 「被災リスクへの対応」:相次ぐ震災の発生により、改めて被災リスクに対する意識が高まっている。こうした中、拠点分散によるリスク回避の動きも一部にみられるが、費用対効果を踏まえたより現実的な対応として、拠点間の連携の見直しや建物の耐震補強等により、業務継続体制を強化する動きが強まっている。

 企業立地の増加や広がりは、雇用の増加を中心に地域経済にプラス効果をもたらしているが、今後、その効果を一段と高めるためには、進出企業のニーズに応える技術力の向上等、地場企業自身における不断の経営努力が必要であると考えられる。

2.北海道農業の現状と新たな取り組み

 わが国の農業をみると、生産性の低さ、就業者の減少、耕作放棄地の増加等を背景に、農業産出額が減少傾向をたどっており、食料自給率も主要国の中で最低水準にある。こうした中、北海道については、主要農畜産物の大半において全国トップの生産量を誇っており、そのシェアも上昇基調にある等、わが国における食料の安定供給を確保するうえで重要な役割を担っている。また、道内の農業産出額は、公共工事請負額に並ぶ水準にあるなど、北海道経済においても重要な位置付けにある。

 このように、北海道農業がわが国において重要な地位を占めている主な背景としては、品種改良や農業関連技術が向上したことに加え、農業法人の設立等を通じた農地の大規模化が進展したことにより、生産性の向上を実現してきた点が挙げられる。また、生産性の向上に伴う農業経営の安定化は、道内外から農業への「新たな担い手」を誘引しており、行政を含む関係者一体となった後継者育成システムの導入とも相俟って、農業就業者の減少や耕作放棄地の増加といった難しい問題の解決に一定の成果を挙げつつある点も、北海道農業の特徴であり、強みのひとつといえよう。

 もっとも、わが国の農業を取り巻く環境は、少子高齢化の進展や輸入品との競合等による国内農産物への需要の減少や、食の安全・安心に対する消費者の関心の高まり、国際的な貿易ルールの見直し等、ダイナミックに変化しており、北海道における農業関係者においても、こうした環境変化への対応を余儀なくされている。

 そうした中、北海道農業においては、地域の強みや特性を活かしつつ以下のような取り組みの動きがみられはじめており、既に一部では成果も挙がりつつある。

  1. 地域一体となった需要拡大への取り組み(道産米等の地産地消運動等)
  2. 食の安全・安心を意識した取り組み(有機栽培農法の促進等、トレーサビリティの確保、北海道ブランドの認証制度の導入等)
  3. 海外需要の開拓(アジア・中東向けへの高級品輸出の促進等)や輸入品からのシェア奪回への取り組み
  4. 業種間連携等による新たなビジネス・モデル構築への取り組み(加工業や観光業との連携強化等)

 わが国の農業は、既述のとおり多くの課題を抱えており、これらを一挙に解決することは引き続き容易でないのが実情。ただ、今のところ成功事例は限定的であるとはいえ、生産者、行政、協同組合等が課題や環境変化を認識したうえで、一体となってその対応に取り組んでいる北海道農業の姿勢は、今後におけるわが国の農業の先行きを占ううえで示唆に富むものといえる。