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地域経済報告 —さくらレポート— (2008年7月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2008年7月7日
日本銀行

全文の目次

  • I.地域からみた景気情勢
  • II.地域の視点
    • 最近の企業の設備投資動向
  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>地域別主要指標

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局・地域経済担当

天野(Tel.03-3277-2649)

I.地域からみた景気情勢

 各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、地域差はあるものの、エネルギー・原材料価格高の影響などから、全体として引き続き減速している。

 すなわち、輸出は、足もと幾分鈍化しつつも増加を続けている。もっとも、企業収益は、交易条件の悪化等を背景にこのところ減少しており、企業の業況感も引き続き慎重化している。そうしたもとで、設備投資は、多くの地域で増勢が鈍化している。個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、総じて底堅く推移しているものの、弱めの動きが増えている。一方、住宅投資は、緩やかに回復している。こうしたもとで、生産は、概ね横ばい圏内で推移している。

 こうした中、総括判断において、減速しつつも「引き続き高水準にある」とする東海から、「弱めの動きとなっている」とする北海道まで、依然、地域差がみられる。

 なお、4月の支店長会議時と比べると、総括判断は、全9地域のうち、東北は現状維持としているが、その他の8地域は、個人消費に弱めの動きがみられること等から、やや下方修正した。

表 地域からみた景気情勢
  08/4月判断 判断の変化 08/7月判断
北海道 やや弱めの動きとなっている 判断の変化 弱めの動きとなっている
東北 足踏み感がみられている 判断の変化 足踏み感がみられている
北陸 減速している 判断の変化 減速感が幾分増している
関東甲信越 やや減速している 判断の変化 減速している
東海 緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している 判断の変化 引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
近畿 一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している 判断の変化 減速している
中国 一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている 判断の変化 全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
四国 持ち直しの動きがやや弱まっている 判断の変化 横ばい圏内の動きとなっている
九州・沖縄 回復に足踏みがみられる 判断の変化 足踏み感が強まっている

 個人消費は、関東甲信越、東海、九州・沖縄で、「底堅く推移」と判断しているが、その他の地域では「弱めの動き」がみられるとの報告が目立ってきている。

個別の動きをみると、大型小売店の売上については、食料品が堅調に推移しているものの、衣料品や雑貨、身の回り品を中心に弱めの動きがみられるとの報告が聞かれている。家電販売は、薄型テレビ等のデジタル家電を中心に、引き続き堅調に推移している。乗用車販売は、新車投入効果などから持ち直したあと、横ばい圏内の動きとなっている。この間、旅行取扱高は、地域ごとのばらつきはあるものの、海外旅行を中心にやや弱めの動きがみられる。

 前回報告との比較では、すべての地域がやや下方修正した。

 設備投資は、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、「増勢が鈍化している」ないしは「高水準ながら横ばいとなっている」といった報告が目立っている。

 前回報告との比較では、中国が下方修正したほか、近畿、四国がやや下方修正した。

 生産は、北海道、東北、関東甲信越、九州・沖縄で、「横ばい圏内の動き」と判断している。この間、北陸、東海、近畿が「増加テンポが緩やかになっている」ないしは「足もとはやや弱めの動き」などと判断している一方、中国、四国では「総じてみれば引き続き高水準」ないしは「緩やかに増加している」と判断している。

 業種別の特徴をみると、地域ごとのばらつきはあるものの、加工業種では、電子部品・デバイスや輸送機械で足もとやや弱含んでいるほか、一般機械や食料品でも弱めの動きがみられる。素材業種では、鉄鋼や紙・パルプが堅調に推移している一方、建設関連の窯業・土石や木材・木製品に加え、繊維でも弱めの動きがみられる。

 前回報告との比較では、北海道、北陸、東海、近畿、中国がやや下方修正した。

 雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、北海道、東北、北陸、関東甲信越、四国、九州・沖縄で、「やや弱めの動き」ないしは「改善に足踏み」、「横ばい圏内の動き」などと判断している。一方、東海、近畿では、「雇用者数は緩やかに増加しているが、有効求人倍率はこのところ幾分低下」などと判断しているほか、中国では、「有効求人倍率が引き続き高めの水準を保っている」と判断しており、地域差がみられる。

 雇用者所得は、関東甲信越、東海が、「緩やかな増加」ないしは「改善」と判断しているほか、北海道、東北が、賃金引き上げに抑制的な動きがみられるなどとしつつも、「一部に持ち直しの兆し」ないしは「緩やかな改善を続けている」と判断している。この間、北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄が、「前年並み」ないしは「横ばい圏内で推移」と判断している。

 前回報告との比較では、雇用情勢については、北海道、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正したほか、所得面については、東北、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正、北海道がやや上方修正した。

需要項目等

表 需要項目等
  個人消費 設備投資 生産 雇用・所得
北海道 弱めの動きとなっている 堅調に推移している 概ね横ばいとなっている 雇用情勢は、やや弱めの動きとなっている。雇用者所得は、全体としては厳しい状況ながらも、一部に持ち直しの兆しがみられる
東北 一部に弱めの動きがみられている 高めの水準を維持している 概ね横ばい圏内で推移している 雇用情勢をみると、やや弱めの動きとなっている。雇用者所得は、緩やかな改善を続けているものの、このところ賃金引き上げには抑制的な動きが広がりつつある
北陸 弱含んでいる 高水準の投資を継続してきたこともあって、このところ一服感がうかがわれる 増加テンポが緩やかになっている 雇用情勢をみると、改善の動きが弱まっている。雇用者所得は、ほぼ前年並みとなっている
関東甲信越 底堅く推移している 高水準ながら横ばいとなっている 横ばい圏内の動きとなっている 雇用情勢は、改善に一服感がみられる。雇用者所得は、緩やかな増加を続けている
東海 底堅く推移しているものの、一部で弱めの動きがみられる 高水準ながら増勢は鈍化している 足もとは減少している 雇用情勢をみると、常用労働者数は増加している。この間、有効求人倍率は足もとやや低下しているが、高水準で推移している。雇用者所得は、改善している
近畿 やや弱めの動きとなっている 増勢は鈍化しているが、引き続き増加している 高水準ながら、足もとはやや弱めの動きとなっている 雇用情勢をみると、雇用者数は緩やかに増加しているが、有効求人倍率はこのところ幾分低下している。雇用者所得は、横ばい圏内の動きとなっている
中国 一部に堅調な分野もみられるが、全体としては、このところ弱めの動きがやや強まっている 増勢が鈍化している 一部に弱めの動きがみられるものの、総じてみれば引き続き高水準にある 雇用情勢をみると、有効求人倍率は引き続き高めの水準を保っている。雇用者所得は、概ね横ばい圏内で推移している
四国 やや弱めの動きとなっている 減少している 緩やかに増加している 雇用情勢は、このところ改善に足踏みがみられる。雇用者所得は、概ね横ばい圏内で推移している
九州・沖縄 総じてみれば底堅く推移している 増加している 横ばい圏内の動きとなっている 雇用情勢は、横ばい圏内の動きとなっている。雇用者所得は、横ばい圏内の動きとなっている

II.地域の視点

最近の企業の設備投資動向

 最近の企業の設備投資は、交易条件の悪化による企業収益の減少や先行きの需要に対する不透明感の高まりを背景に、増勢が鈍化している。こうした中で、企業の規模や業種等の違いによる投資スタンスの「ばらつき」が一段と鮮明化している。

 すなわち、大企業・製造業では、これまでの積極的な投資の一巡、需要の鈍化等による投資抑制の動きが一部にみられるが、総じてみれば、先行きの市場成長が見込まれる分野での能力増強投資や研究開発投資といった中長期的な戦略に基づく投資は着実に実施するとのスタンスを崩していない。これには、企業が財務体質の改善・強化をたゆまず進めてきた結果、経営環境の悪化に対する耐性を強めていること等も背景にあるとみられる。また、エネルギー・原材料コスト増に対応するべく、収益体質の強化に繋がる合理化・省力化投資に対する関心も強まりつつあるほか、CSR(企業の社会的責任)等を意識した環境関連投資や被災リスクへの対応、食品の安全性向上などに向けた投資に取り組む動きが目立ちはじめているのも最近の特徴である。

 また、大企業・非製造業では、グローバル需要の取り込みが難しく、消費の先行きに対する不透明感等、国内市場の動向に左右されやすい中、足もと、大企業・製造業と比べると投資スタンスには幾分慎重さがうかがわれる。ただ、こうした中で、業界内でのシェア拡大を企図した新規出店のほか、店舗リニューアル投資、オペレーション・コスト削減に繋がる情報システム関連投資、輸送コスト削減のための物流施設の建設等、費用対効果や収益性の向上をより意識した投資が目立っているほか、電気、ガス、鉄道等のインフラ関連投資も全体を下支えしている。

 一方、中小企業では、業種に関わらず抑制的な投資スタンスが広がりつつある。すなわち、大企業に比べると、(1)財務面からみた投資余力、(2)価格交渉力、(3)技術力・販売力に乏しい先が多い中小企業では、企業収益の減少や先行きの需要に対する不透明感の高まりをより深刻に受け止めていること等を背景に、増産投資や事業規模の拡大といったリスクの大きい投資を見合わせたり、必要最低限の投資に絞り込もうとする動きが目立ち始めている。この反面、高い技術力を持つオンリーワン企業やニッチ分野における需要の取り込みに成功した先等では、積極的な投資スタンスを維持しており、中小企業間でも投資スタンスの「ばらつき」が鮮明化している。

 なお、中小企業が連携し、お互いの余剰設備を融通しあうことで、自らの投資負担を軽減し局面を打開しようとする動きもみられはじめている。

 この間、地域経済への影響をみると、中小企業の投資スタンスが総じて抑制的となる中で、大企業の地方への立地や設備増強の動きが持続している点は、地域経済の下支えとなっている。ただし、今後の企業収益や内外経済の動向次第では、中小企業の抑制スタンスが一段と強まるのみならず、大企業の中長期的な戦略に基づく投資計画にも少なからず影響が及び、こうした下支え効果が剥落するリスクには留意する必要があると考えられる。