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地域経済報告 —さくらレポート— (2008年10月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2008年10月20日
日本銀行

全文の目次

  • I.地域からみた景気情勢
  • II.地域の視点
    • 1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応
    • 2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─ 水産業のケース ─
  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>地域別主要指標

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局・地域経済担当

天野(Tel.03-3277-2649)

I. 地域からみた景気情勢

 各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、地域差はあるものの、エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから、全体として停滞している。

 すなわち、輸出は、増勢が鈍化している。企業収益は、交易条件の悪化等を背景に減少を続けており、企業の業況感も一段と慎重化している。そうしたもとで、設備投資は、一部の地域ではなお横ばい圏内の動きなどとなっているが、足もと、全体として減少してきている。個人消費については、雇用者所得の伸び悩みやエネルギー・食料品価格の上昇などから、弱めの動きとなっている。また、住宅投資は、横ばい圏内で推移している。こうしたもとで、生産は、弱めに推移している。

 こうした中、総括判断において、「下降局面にある」としつつも「なお高水準を保っている」とする東海から、「やや厳しい状況にある」とする北海道まで、依然、地域差がみられる。

 なお、7月の支店長会議時と比べると、総括判断は、個人消費や生産等において弱めの動きが広がっていることを反映して、全9地域で下方修正した(うち東北、北陸、東海、中国は下方修正、その他の5地域はやや下方修正)。

表 地域からみた景気情勢
  08/7月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「現状維持」1地域
     「下方修正」8地域
判断の変化 08/10月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「現状維持」0地域
     「下方修正」9地域
北海道 弱めの動きとなっている 判断の変化 やや厳しい状況にある
東北 足踏み感がみられている 判断の変化 弱めの動きが広がっている
北陸 減速感が幾分増している 判断の変化 停滞している
関東甲信越 減速している 判断の変化 停滞している
東海 引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている 判断の変化 なお高水準を保ちつつも、下降局面にある
近畿 減速している 判断の変化 停滞している
中国 全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している 判断の変化 一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している
四国 横ばい圏内の動きとなっている 判断の変化 やや弱めの動きとなっている
九州・沖縄 足踏み感が強まっている 判断の変化 停滞している

 個人消費は、北海道、中国で、「やや厳しい状況」ないしは「低調」と判断しているほか、その他の地域でも「弱めの動き」ないしは「弱含んでいる」と判断している。

 個別の動きをみると、大型小売店の売上については、食料品が底堅く推移しているものの、衣料品や雑貨、身の回り品を中心に弱めの動きとなっている。家電販売は、薄型テレビ等のデジタル家電を中心に、堅調に推移している。乗用車販売は、ガソリン価格高の影響などから、低調となっているほか、旅行取扱高も、海外旅行を中心に弱い動きとなっている。

 前回報告との比較では、北陸、東海は現状維持としたものの、東北、中国が下方修正、北海道、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」2地域 「下方修正」7地域

 設備投資は、「増勢が鈍化」ないしは「高水準横ばい」といった報告がみられる一方で、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、「減少している」ないしは「幾分弱めの動き」といった判断が目立ってきている。

 前回報告との比較では、北海道、東北、中国、四国は現状維持としたものの、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄がやや下方修正した。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」4地域 「下方修正」5地域

 生産は、北海道、中国、四国で、「横ばい」ないしは「高めの水準を維持」と判断している一方、東海で「減少している」、その他の地域では、「弱めの動き」などと判断している。

 業種別の動きをみると、地域ごとのばらつきはあるものの、加工業種では、電子部品・デバイスのほか、輸送機械や一般機械等で、素材業種では、化学や繊維等で弱めの動きとなっている。

 前回報告との比較では、北海道は現状維持としたものの、東北、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」1地域 「下方修正」8地域

 雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、全地域で弱めの動きとなっている。北海道、関東甲信越、中国、四国、九州・沖縄で、「弱めの動き」ないしは「改善が一服」などと判断しており、東北、北陸、東海、近畿でも、「有効求人倍率の低下が続いている」ないしは「雇用者数が伸び悩んでいる」などと判断している。

 雇用者所得は、関東甲信越、東海、近畿、中国で、「伸び悩んでいる」ないしは「横ばい圏内の動き」と判断している一方、北陸、四国、九州・沖縄で、「やや弱めの動き」などとしているほか、北海道、東北で、「厳しい状況が続いている」ないしは「減少している」とするなど、地域差がみられる。

 前回報告との比較では、雇用情勢については、東北は現状維持としたものの、その他の8地域がやや下方修正したほか、雇用者所得については、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。

表 前回対比
前回対比(雇用情勢) 「上方修正」0地域 「現状維持」1地域 「下方修正」8地域
「上方修正」(雇用者所得) 「上方修正」0地域  「現状維持」4地域 「下方修正」5地域

需要項目等

表 需要項目等
  個人消費 設備投資 生産 雇用・所得
北海道 やや厳しい状況にある 堅調に推移している 概ね横ばいとなっている 雇用情勢は、弱めの動きとなっている。雇用者所得は、一部に持ち直しの兆しがみられるものの、全体としては厳しい状況が続いている
東北 弱めの動きがみられている 高めの水準を維持している このところ弱含んでいる 雇用情勢をみると、有効求人倍率の低下が続いているほか、雇用者所得も減少している
北陸 弱含んでいる 減少している 弱めの動きとなっている 雇用情勢をみると、常用雇用者数は前年を若干上回っているが、有効求人倍率は低下傾向をたどっている。雇用者所得は、前年を下回っている
関東甲信越 一部に底堅さがうかがわれるものの、弱めの動きとなっている 幾分弱めの動きとなっている 弱めに推移している 雇用情勢は、改善が一服している。雇用者所得は、このところ伸び悩んでいる
東海 底堅く推移しているものの、一部で弱めの動きがみられる 高水準横ばい圏内となっている 減少している 雇用情勢をみると、人手不足感は緩和されている。有効求人倍率は高水準で推移しているものの、低下が続いている。雇用者所得は、伸び悩んでいる
近畿 弱めの動きとなっている 増勢が鈍化している 弱めの動きとなっている 雇用情勢をみると、有効求人倍率は低下が続いている。雇用者数はこのところ伸び悩んでいる。雇用者所得は、横ばい圏内の動きとなっている
中国 低調となっている ほぼ前年並みの計画となっている 一部に減産の動きがみられるものの横ばい圏内にある 雇用情勢をみると、有効求人倍率がこのところ低下傾向にあるなど、弱含みの動きとなっている。雇用者所得は、概ね横ばい圏内で推移している
四国 弱含んでいる 減少している 総じて高めの水準を維持している 雇用情勢は、弱めの動きが広がっている。雇用者所得は、やや弱含んでいる
九州・沖縄 やや弱含んでいる 高水準ながら減勢に転じつつある やや弱めの動きとなっている 雇用情勢は、やや弱めの動きとなっている。雇用者所得は、やや弱めの動きとなっている

II.地域の視点

1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応

 最近の個人消費動向をみると、総じてみれば弱めの動きとなっている。地域別では、北海道、東北、北陸、中国、四国などの地方圏で弱めの動きが続いているほか、東海、関東甲信越、近畿等、全国対比でみて順調な景気回復を続けていた地域でも、ここにきて弱めの動きが広がりつつある。

 個人消費が弱めの動きとなっている背景としては、個人消費を取り巻く外部環境の悪化──すなわち、(1)雇用者所得の伸び悩み、(2)エネルギー・食料品等の価格上昇、(3)こうした事情等を反映した消費者マインドの悪化──等から、消費者の支出行動が抑制色を強めている、と指摘する声が多く聞かれる。

 消費者の支出行動が抑制色を強めていることの顕れとして、全国的に、節約志向や低価格志向等、消費支出節減の動きが一段と強まっているとする声が多く聞かれる。こうした傾向は、家計支出に占める燃料費のウェイトの相対的に高い地区でより顕著にみられているといった指摘もある。なお、食の安全に対する意識の高まりを背景とする国産・高品質志向の強まり等、消費支出を下支えする動きも一部にみられなくはないものの、その効果は限定的との見方が多い。

 消費関連企業では、仕入価格の上昇分を消費者に転嫁すべく努めているものの、消費者の支出行動が抑制色を強めていることに加えて、業界内の競争激化もあり必ずしも思惑通りの展開となっておらず、顧客離れの懸念から、当面、慎重に対応する先が少なからずみられている。こうした状況下、業況悪化を回避すべく、需要喚起に努めるとともに、コスト削減等の収益強化策に取り組む動きが広がっている。

 個人消費の先行きについては、(1)景気減速に伴い、雇用者所得は横ばい圏内に止まる可能性が高いこと、(2)足もとエネルギー・食料品の価格上昇が一服しつつあるとはいえ、価格転嫁が遅れていた財・サービスについては直ちに原材料市況の動きが反映されない可能性が高いこと、(3)このところの資産価格の変動が消費者マインドに悪影響を及ぼす可能性があること等から、当面、弱めの動きが続くとみる先が多い。

2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─

 わが国水産業の業況をみると、90年代後半から、水産物価格の低迷を背景に、収益が底這い状態で推移するなど、総じて厳しい状況が続いていたが、最近では、原油価格の大幅上昇を受けて、遠洋・沖合漁業や沿岸漁業(集魚灯を利用するなど燃料費の高い漁業等)を中心に、「一段と厳しさが増している」とする声が増えている。また、水産加工業者でも、資材価格や原材料価格の上昇等から、業況悪化を訴える先が増加している。

 原油価格上昇等の水産業の収益に与えるインパクトをみると、上記水産業の多くでは、燃料費が支出の3〜4割程度まで上昇しているとみられる一方、燃料費上昇分の販売価格への転嫁は容易ではなく、収益悪化を余儀なくされている。既に燃料費削減等のコスト圧縮に取り組んでいる先も多いが、今のところその効果は限定的なものに止まっている。

 こうした状況下、各地域の水産業者および関連業者の間では、短期的なコスト削減への取組みに加えて、低迷を続けてきた水産物価格の梃入れを通じた収益改善が急務との認識が浸透しつつあり、流通プロセスの見直しも視野に入れた抜本的な収益改善に向けた施策に新たに取組む動きがみられている。こうした取組みは総じてみれば未だ緒についた段階であるが、一部には具体的な成果に結びつく事例もみられ始めている。

 わが国水産業における水産物価格の梃入れや収益改善に向けた取組みについては、わが国の水産物消費が減少傾向を辿っていることもあって、関係者の間でも、現時点ではどの程度実効が上がるのか見通し難いという声が多い。また、水産業を巡っては、水産資源の適切な管理等、収益改善に向けた中長期的な課題も少なくない。しかし、他方で、食の安全・安心や食料の安定供給の観点からわが国水産業の果たす役割を再評価する機運も出始めるなど、外部環境が好転する兆しもみられている。こうした状況も踏まえて、わが国水産業が、政府や地方公共団体の支援策等を有効に活用しつつ、引続きこれらの課題に取り組んでいくことが期待される。