調査・研究

ホーム > 調査・研究 > 日本銀行レポート・調査論文 > 地域経済報告(さくらレポート) > 地域経済報告 (2009年1月)

地域経済報告 —さくらレポート— (2009年1月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2009年1月16日
日本銀行

全文の目次

  • I.地域からみた景気情勢
  • II.地域の視点
    • わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し
      ── 最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に
  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>2008年からの各地域の景気判断(総括)の推移
  • <参考3>地域別主要指標

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局・地域経済担当

天野、土屋(Tel.03-3277-2649)

I. 地域からみた景気情勢

 各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、悪化している。

 すなわち、輸出は、海外経済の一段の減速や為替円高を背景に、大幅に減少している。企業収益は減少を続けており、企業の業況感も悪化している。そうしたもとで、設備投資は、一部地域では底堅く推移しているが、足もと、全体として減少している。個人消費については、雇用・所得環境が厳しさを増すなか、弱まっている。また、住宅投資は、概ね横ばい圏内で推移している。こうしたもとで、生産は、大幅に減少している。

 こうしたなか、総括判断は、東海で変化のスピードが急(「急速に下降」)としており、その他の地域(「悪化」、「厳しさが増している」、「弱い動きが広がっている」)との間で地域差がうかがわれる。

 なお、昨年10月の支店長会議時と比べると、総括判断は、雇用・所得環境が厳しさを増すなか、個人消費が弱まっているほか、生産も大幅に減少していること等を反映して、前回に引き続き全9地域で下方修正した。

表 地域からみた景気情勢
  08/10月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「現状維持」0地域
     「下方修正」9地域
判断の変化 09/1月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「現状維持」0地域
     「下方修正」9地域
北海道 やや厳しい状況にある 判断の変化 厳しさが増している
東北 弱めの動きが広がっている 判断の変化 悪化している
北陸 停滞している 判断の変化 悪化している
関東甲信越 停滞している 判断の変化 悪化している
東海 なお高水準を保ちつつも、下降局面にある 判断の変化 急速に下降している
近畿 停滞している 判断の変化 悪化している
中国 一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している 判断の変化 悪化している
四国 やや弱めの動きとなっている 判断の変化 弱い動きが広がっている
九州・沖縄 停滞している 判断の変化 悪化している

 個人消費は、北海道で「厳しい状況」と判断しているほか、その他の地域でも「弱めの動きが広がっている」ないしは「弱まってきている」などと判断している。

 個別の動きをみると、大型小売店の売上は、食料品が底堅く推移しているものの、衣料品や雑貨、身の回り品を中心に弱めの動きが続いているほか、家電販売も、ここにきて弱含みの動きがみられている。また、乗用車販売も、大幅に落ち込んでいるほか、旅行取扱高も、内外とも弱めの動きとなっている。

 前回報告との比較では、北海道、四国、九州・沖縄がやや下方修正、その他の6地域が下方修正した。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」0地域 「下方修正」9地域

 設備投資は、企業収益の減少が続いており、企業の業況感も悪化していること等を背景に、ほとんどの地域で「減少している」ないしは「減少幅が拡大」、「下方修正の動きが広がりつつある」といった判断となっている。

 業種別にみると、非製造業で、電気・ガスのインフラ関連投資等から前年度を上回る計画とする地域(中国、九州・沖縄)が一部にみられるが、製造業で、輸送機械を中心に能力増強投資を抑制する動きが広がっており、全体として減少している。

 前回報告との比較では、四国が前回並の判断を維持した以外は、北海道、九州・沖縄がやや下方修正、その他の6地域が下方修正した。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」1地域 「下方修正」8地域

 生産は、濃淡はあるものの、全地域で減少している(「大幅に減少している」等:関東甲信越・東海・近畿、「減少している」等:その他の地域)。

 業種別の動きをみると、地域ごとのばらつきはあるものの、加工業種(電子部品・デバイス、輸送機械、一般機械等)、素材業種(鉄鋼、紙・パルプ等)ともに、幅広い業種で減少している。

 前回報告との比較では、全9地域が下方修正した(前回の前々回対比:「現状維持」1地域、「下方修正」8地域)。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」0地域 「下方修正」9地域

 雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、製造業の生産が全地域で減少していること等を反映して、全地域で悪化している。

 雇用者所得も、所定外給与や冬季賞与の減少などから、全地域で弱含んできている。

 前回報告との比較では、雇用情勢、雇用者所得とも、北海道、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正、その他の5地域が下方修正した(前回の前々回対比:<雇用情勢>「現状維持」1地域、「下方修正」8地域、<雇用者所得>「現状維持」4地域、「下方修正」5地域)。

表 前回対比
前回対比(雇用情勢) 「上方修正」0地域 「現状維持」0地域 「下方修正」9地域
「上方修正」(雇用者所得) 「上方修正」0地域  「現状維持」0地域 「下方修正」9地域

需要項目等

表 需要項目等
  個人消費 設備投資 生産 雇用・所得
北海道 厳しい状況にある 底堅く推移している 減少している 雇用情勢は、やや厳しい状況にある。雇用者所得は、企業収益の一段の悪化を背景に、冬季賞与が減少するなど、全体としては厳しい状況が続いている
東北 弱めの動きが広がっている 製造業を中心に減少している 広範な業種において減産の動きがみられる 雇用情勢をみると、弱めの動きが広がりつつある。雇用者所得も減少している
北陸 さらに弱い動きとなっている 減少幅が拡大している 減少している 雇用情勢をみると、一段と厳しさを増している。雇用者所得は、所定外給与の減少などから前年を下回っている
関東甲信越 弱まってきている 減少している 大幅に減少している 雇用情勢は、悪化している。雇用者所得は、足もと横ばい圏内ながら、先行きは企業収益や生産の減少等を映じて弱含んでいくとみられる
東海 弱めの動きとなっている 高水準ながら減少している 大きく減少しているとみられる 雇用情勢をみると、所定外労働時間が減少しているほか、有効求人倍率も低下が続いている。雇用者所得は、伸び悩んでいる
近畿 弱い動きとなっている 高水準ながら減少に転じている 大幅に減少している 雇用情勢をみると、有効求人倍率が 低下する中で、雇用者数は伸び悩んでいる。雇用者所得は、弱含みとなっている
中国 全体として弱めの動きが強まっている ほぼ前年度並みの計画となっているものの、下方修正の動きが広がりつつある 減少しており、足もと減産の動きが一段と強まっている 雇用情勢は、厳しさを増しており、有効求人倍率は、このところ大幅に低下している。雇用者所得は、弱含みとなっている
四国 弱めの動きが広がっている 減少している 弱い動きが広がっている 雇用情勢は、やや悪化している。雇用者所得は、弱含んでいる
九州・沖縄 弱まっている 高水準ながら減勢に転じている 減少している 雇用情勢は、弱めの動きとなっている。雇用者所得は、弱めの動きとなっている

II.地域の視点

わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し
──最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に──

 最近の中小企業の収益環境についてみると、製造業では、08年10月頃を境に、これまで好調であった、自動車、電気機械、一般機械関連を中心に、大半の業種で売上・受注の急速かつ大幅な落ち込みに見舞われているうえ、為替円高の進行と相俟って、輸出採算も悪化している。一方、非製造業では、消費者の節約志向の強まりや自動車・電機メーカー等における生産調整の影響、企業のコスト削減圧力の強まり等から、卸・小売、サービス等を中心に、売上が減少傾向にある。加えて、非製造業の多くの業種では、既往の仕入コスト上昇分の価格転嫁が不十分な中で、需要減少を背景に顧客獲得競争が激化しており、数量面のみならず、採算面でも悪化傾向が強まっている。地域別では、東海、関東甲信越、近畿等、近年、好調な輸出に支えられて、全国対比でみて順調な景気拡大を続けてきた地域において、足もとの収益環境の悪化は急速かつ大幅である。

 中小企業の支出動向をみると、収益環境の急激な悪化を背景に、支出スタンスを急速に慎重化させている先が多い。すなわち、設備投資については、一部の収益好調先(食料品、造船関連)や高い技術力を持つ先(いわゆるオンリーワン企業)を除くほとんどの先で、収益悪化に伴う営業キャッシュフローの減少や景気悪化の長期化に対する懸念等を理由に、設備投資計画の縮小・見送りの動きがみられている。また、雇用・賃金面についても、役員報酬のカットに加えて、非正規雇用を中心とする人員削減や新卒採用計画の下方修正等の動きが広範にみられている。その他経費支出については、各社とも一層の削減に取り組んでいるものの、原材料価格高騰への対応等もあって既に削減に取り組んできており、最早、削減余地に乏しいとする先が少なくない。

 この間、中小企業の資金需要動向をみると、設備資金は投資スタンスの慎重化等を受けて減少しているが、運転資金は、在庫資金や赤字補填資金など後ろ向きの資金需要の増加や、景気悪化の長期化に対する懸念等を理由に前倒しで手元資金を確保しようとする動きがみられること等から、やや増加傾向にある。

 資金調達面をみると、企業間信用については、与信管理の厳格化、決済条件のタイト化が広がっており、一部優良先を除き、多くの先で資金繰りを圧迫する要因となっている。こうした中、民間金融機関の貸出スタンスについては、従来と変わりはないとする先もみられるが、建設・不動産等の業種に加えて、製造業(自動車、電気機械)、その他業種の業績悪化先を中心に、貸出スタンスが厳格化しているとの声も多く聞かれている。こうした状況下、政府が資金繰り対策として新たに打ち出した緊急保証制度や公的金融機関のセーフティネット貸付制度等の利用が急増している。

 以上を踏まえて、中小企業の資金繰り動向をみると、年末については、総じてみれば、手元資金取り崩しのほか、緊急保証制度や公的金融機関貸付の利用、地域金融機関の繋ぎ融資、その他当局の各種施策も奏効して、乗り切れた先が多いものの、これから年度末に向けては、通常の年度末資金手当に加えて、「08年10〜12月の売上・受注の減少に伴う後ろ向きの資金需要が本格化する」との声が少なくない。このため、年度末にかけて引き続き厳しい状況が続くものとみられ、中小企業の資金繰りの動向については、今後もきめ細かくみていく必要がある局面が続くと思われる。

 中小企業を取り巻く経営環境については、売上・受注、資金繰りを含めて、当面、厳しい状況が続くとみる向きが多く、そうした現状認識を踏まえて、支出面(設備投資、雇用・賃金等)について、今後の売上・受注動向如何で、もう一段の抑制の可能性を示唆する先が少なくない。今後、年度末にかけて、雇用、資金繰り面等について、その動向を注視していくことが必要と思われる。