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地域経済報告 —さくらレポート— (2009年4月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2009年4月17日
日本銀行

全文の目次

  • I.地域からみた景気情勢
  • II.地域の視点
    • 1.地場企業を取り巻く経営環境の悪化とその対応
      ──設備投資、雇用を中心に
    • 2.各地域からみたインバウンド観光の現状と課題
  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>地域別主要指標

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局・地域経済担当

天野、土屋(Tel.03-3277-2649)

I. 地域からみた景気情勢

 各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、若干の地域差はあるものの、大幅に悪化している。

 すなわち、海外経済の悪化などを背景に、輸出が大幅に減少している。また、企業収益が大幅に落ち込み、企業の業況感も著しく悪化するなか、設備投資も大幅に減少している。個人消費については、雇用・所得環境が厳しさを増すなかで、弱まっている。住宅投資も減少している。こうした環境のもとで、生産は、大幅に減少している。
 こうしたなか、総括判断は、中国、四国で「悪化」、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄で「大幅に悪化」としている。

 総括判断については、東海、中国で1月の支店長会議時の判断を据え置いたが、その他の地域では、設備投資が大幅に減少していること、雇用・所得環境が厳しさを増すなか、個人消費も弱まっていること等を反映して、下方修正した。

表 地域からみた景気情勢
  09/1月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「前回並」 0地域
     「下方修正」9地域
判断の変化 09/4月判断
前回対比:「上方修正」0地域
     「前回並」 2地域
     「下方修正」7地域
北海道 厳しさが増している 判断の変化 厳しさを増しており、低迷している
東北 悪化している 判断の変化 大幅に悪化しており、厳しさを増している
北陸 悪化している 判断の変化 大幅に悪化している
関東甲信越 悪化している 判断の変化 大幅に悪化している
東海 急速に下降している 判断の変化 急速に下降している
近畿 悪化している 判断の変化 大幅に悪化しており、厳しい状況にある
中国 悪化している 判断の変化 悪化している
四国 弱い動きが広がっている 判断の変化 悪化している
九州・沖縄 悪化している 判断の変化 大幅に悪化している

 個人消費は、北海道で「厳しい状況」と判断しているほか、その他の地域でも「弱まっている」ないしは「弱い動き」などと判断している。

 個別の動きをみると、大型小売店の売上は、これまで堅調に推移してきた食料品に増勢鈍化の兆しがうかがわれるほか、衣料品や雑貨、身の回り品についても弱めの動きが続いている。また、家電販売は、なお底堅いものの、増勢には一服感がみられる。この間、乗用車販売は、落ち込みが一段と大きくなっているほか、旅行取扱高も、総じてみれば弱めの動きとなっている。

 前回報告との比較では、北海道、近畿、中国、九州・沖縄が前回並の判断を維持、その他の5地域が下方修正した(関東甲信越、東海がやや下方修正、東北、北陸、四国が下方修正)。 

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「前回並」4地域 「下方修正」5地域

 設備投資は、企業収益が大幅に落ち込み、企業の業況感も著しく悪化していること等を背景に、ほとんどの地域で「大幅に減少」ないしは「減少」などと判断している。

 業種別にみると、非製造業で、電気・ガス等インフラ関連投資が高水準の投資を続けるとする地域がみられるが、製造業において、能力増強投資を中心に抑制する動きが一段と広がっていること等から、全体として大幅に減少している。

 前回報告との比較では、北陸が前回並の判断を維持、その他の8地域が下方修正した(東海がやや下方修正、その他の7地域が下方修正)。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「前回並」1地域 「下方修正」8地域

 生産は、ほとんどの地域で、「大幅に減少」ないしは「一段と減少」といった判断になっている。

 業種別の動きをみると、地域ごとのばらつきはあるものの、加工業種(電子部品・デバイス、輸送機械、一般機械等)、素材業種(鉄鋼、紙・パルプ等)ともに、広範な業種で大幅に減少している。なお、在庫調整の進捗等から、「一部に下げ止まりの兆しがみられる」などとする地域(北陸、関東甲信越、中国)がみられるほか、在庫の増加について、「歯止めがかかりつつある」とする地域(近畿)がみられる。

 前回報告との比較では、関東甲信越、東海、近畿が前回並の判断を維持、その他の6地域が下方修正した(北海道がやや下方修正、東北、北陸、中国、四国、九州・沖縄が下方修正)。

表 前回対比
前回対比 「上方修正」0地域 「前回並」3地域 「下方修正」6地域

 雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、製造業の生産が大幅に減少していること等を反映して、多くの地域で「悪化している」ないしは「厳しさを増している」などと判断している。雇用者所得も、所定外給与の減少などから、「減少」ないしは「弱めの動き」といった判断となっている。

 前回報告との比較では、雇用情勢については、関東甲信越、近畿、中国が前回並の判断を維持、その他の6地域が下方修正した(北海道、東海、四国がやや下方修正、東北、北陸、九州・沖縄が下方修正)。また、雇用者所得については、北海道、関東甲信越、中国が前回並の判断を維持、その他の6地域が下方修正した(近畿、四国がやや下方修正、東北、北陸、東海、九州・沖縄が下方修正)。

表 前回対比
前回対比(雇用情勢) 「上方修正」0地域 「前回並」3地域 「下方修正」6地域
「上方修正」(雇用者所得) 「上方修正」0地域  「前回並」3地域 「下方修正」6地域

需要項目等

表 需要項目等
  個人消費 設備投資 生産 雇用・所得
北海道 厳しい状況が続いている 減少している 一段と減少している 雇用情勢は、厳しい状況にある。雇用者所得は、厳しい状況が続いている
東北 一段と弱まっている 大幅に減少している 大幅に減少している 雇用情勢をみると、悪化している。雇用者所得も減少が続いている
北陸 広範に弱まっている 大幅に減少している 引き続き大幅に減少しているが、一部に減産幅を幾分縮小させる動きがみられている 雇用情勢をみると、有効求人倍率は低下傾向を辿っている。また、常用雇用者数も前年を下回っている。雇用者所得は、減少幅が拡大している
関東甲信越 弱まっている 大幅に減少している 足もとは大幅に減少しているが、先行きは在庫調整の進捗等から、一部に下げ止まりの兆しがみられる 雇用情勢は、悪化している。雇用者所得は、弱めの動きとなっている
東海 弱まっている 減少している 大きく減少している 雇用情勢をみると、労働需給は緩和している。雇用者所得は、全体として減少している
近畿 弱い動きが続いている 高水準ながら減少幅が拡大している 大幅な減少が続いている。この間、在庫は増加に歯止めがかかりつつある 雇用情勢をみると、雇用者数は伸び悩んでいる。雇用者所得は、緩やかに減少している
中国 弱めの動きが強まっている 大幅に減少している 大幅に減少している 雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者所得は、弱含んでいる
四国 減少している 大幅に減少している 大幅に減少している 雇用情勢は、悪化している。雇用者所得は、弱めの動きが広がっている
九州・沖縄 弱まっている 減少している 減少幅がさらに拡大している 雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者所得は、厳しさを増している

II.地域の視点

1.地場企業を取り巻く経営環境の悪化とその対応──設備投資、雇用を中心に──

 地場企業を取り巻く経営環境は、きわめて厳しい状態が続いている。足もとの収益環境をみると、製造業では、内外需要の更なる落ち込みから、売上・受注が一段と減少している。また、原材料価格は下落しているものの、過去に仕入れた高値の原材料在庫の処分の遅れから、採算面の改善が進んでいない、との声も多く聞かれる。また、非製造業では、企業の生産活動の落ち込みや消費者の生活防衛意識の強まりを反映して、売上の減少傾向が続いている。企業間の競争激化が採算悪化に拍車をかけているとの指摘も少なからず聞かれる。先行きについては、製造業の一部業種(輸送用機械等)で、大手メーカーの減産緩和等から、4月〜6月以降、売上・受注が若干持ち直すと期待する声が聞かれるものの、その他の多く業種では、当面、需要回復は「期待薄」との厳しい見方をする先が多い。

 この間、企業金融面の動きをみると、資金需要は、売上・受注の減少を背景に、引き続き高水準で推移しているとみられる一方、資金調達面では、企業間信用のタイト感が増していること、民間金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加していること、等から緊急保証制度や公的金融機関貸付を活用する動きが続いている。こうした状況を反映して、資金繰りについては、手許資金の取崩し、緊急保証制度等の活用やその他当局の施策にも支えられて、年度末は凌げたものの、当面、売上・受注の回復が見込めない中、新年度入り後も厳しい状況が続く、とする声が多く聞かれている。

 このように経営環境が悪化している中での地場企業の対応をみると、需要の落ち込みがある程度長期化するとの想定のもとで何とか収益を確保するべく、支出(設備投資、雇用・賃金等)を極力抑制する先が大勢である。対応を検討する際の考慮要素としては、現段階では、政府の追加経済対策の詳細な内容が必ずしも浸透していないこともあって、(1)需要の大幅な落ち込みが長期化するリスク、(2)先行きの資金繰りが逼迫するリスク、を挙げる声が圧倒的に多いほか、(3)内外の同業他社へ需要が流出するリスク(大手企業が進める発注先・下請先の絞込みや世界規模での最適地生産体制の再構築といった動きが自社に及ぼすマイナスの影響への懸念)や、(4)後継者難の深刻化に伴う企業存続に向けた意欲の低下、を挙げる先(特に中小・零細企業)も少なからずみられている。

 設備投資面についてみると、製造業を中心に、2008年度までに高水準の投資を行っていることもあり、設備過剰感が著しく高まっている先が多い。すなわち、地場企業では、需要環境が急激に悪化した2008年度下期以降、案件の絞り込みあるいは実施見送り等、設備投資の抑制に急速に舵を切ったものの、設備過剰感は依然として強い。このため、2009年度についても、設備投資を一段と絞り込むとする先が多くみられる。

 雇用・賃金面についてみると、非製造業の一部業種(小売、介護、情報サービス等)で人員不足感が依然としてみられる一方、その他の大方の業種では、製造業を中心に、人員過剰感が著しく高まっている。地場企業の多くの先では、2008年度下期以降、非正規雇用を中心とする人員削減、役員報酬カットや給与・賞与引き下げ等を実施しているが、人員過剰感は引き続き強く、2009年度もこうした対応を継続する見通し。もっとも、正社員にまで踏み込んだ雇用調整の動きについては、年明け以降、雇用調整助成金の積極的な活用が「緩衝材」となっていること等もあって、現時点では、大きな広がりはみられていない。

2.各地域からみたインバウンド観光の現状と課題

 わが国インバウンド観光の近年の動向をみると、2003年以降、経済成長を続ける東アジア各国(韓国、台湾、中国<含む香港>)からの訪日観光客の増加や為替円安等から、順調に拡大を続けてきた。もっとも、足もとでは、世界経済の急速かつ大幅な悪化や為替円高の影響から、訪日外国人数は落ち込んでおり、当面、回復は見込めないとの悲観的な見方が多い。やや長い目でみた場合には、海外経済の回復テンポや為替動向如何で低迷が長期化するとの懸念の声も聞かれているものの、中国をはじめとする国際観光需要の底堅さへの期待もあって、中長期的には拡大基調に復するとの声が相応に聞かれている。

 この間、わが国では、「2010年までに訪日外国人1,000万人を達成する」との政策目標を掲げ、2003年より、ビジット・ジャパン・キャンペーン(本格的なインバウンド観光振興キャンペーン)をはじめとして、国及び各地域において官民を挙げたインバウンド観光振興施策が進められてきた。関係者の間からは、近年のインバウンド観光拡大の要因として、良好な経済環境(世界経済の拡大、為替円安)に次いで、これらの施策の効果(特にプロモーション面)をあげる声が多く聞かれている。

 もっとも、関係者からは、近年のインバウンド観光振興施策について、その効果を評価する声がある一方で、外部環境が厳しい状況にあってもインバウンド観光を着実に拡大すべく、観光振興の原点に立ち返った取り組みの必要性を指摘する声や、プロモーション以外の論点を中心に幾つかの課題があるとの指摘が少なからず聞かれる。具体的には、(1)観光振興に対する国民(住民)の意識の向上(ホスピタリティの向上)、(2)受入体制の改善(交通アクセス、案内表示、人材育成、決済の利便性向上など)、(3)観光地間・地域間の連携、などが課題として挙げられており、今後、これらの課題に対する取り組みを強化していく必要があると考えられる。

 インバウンド観光を含む観光産業は、今後、需要拡大や地域経済活性化の観点から、わが国経済において重要性が高まっていくと考えられる。こうした考え方を踏まえて、昨夏、観光立国戦略推進会議では「2020年までに訪日外国人2,000万人を達成する」との新たな目標が提示された。また、昨年10月には観光庁が発足し、政府として観光振興の機能を総合的に発揮できる体制も整備された。世界経済の厳しい状況が続くなか、インバウンド観光が回復する兆しは未だみえていないが、現在こそ、観光振興の原点に立ち返って、近年のインバウンド観光の拡大に必ずしも追い付いていなかった受入体制整備等を進める好機ともいえる。今後、本報告で取り上げた課題への対応を含め、官民関係者、地域住民一体となった取り組みがさらに進むことが期待される。