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地域経済報告 —さくらレポート— (2011年1月) *

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2011年1月17日
日本銀行

目次

  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>2010年からの各地域の景気判断(総括)の推移
  • <参考3>地域別主要指標

I. 地域からみた景気情勢

最近の景気情勢については、基調として「緩やかな回復」、「持ち直し」と判断する地域が多いものの、7地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が、このところ「改善の動きに一服感がみられる」あるいは「足踏み状態となっている」等と報告するなど、前回(10年10月時点)との比較では、改善ペースの一服感を指摘する地域が広がった。

こうした変化の背景としては、情報関連財における在庫調整や海外経済の減速等を背景とした輸出の弱まり、一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動減、これらを主因とする生産活動の弱まりを指摘する地域が広がったことが挙げられる。

表 地域からみた景気情勢
  10/10月判断 前回との比較 11/1月判断
北海道 厳しさを残しつつも、持ち直しを続けている 下矢印 持ち直しを続けているものの、このところ足踏み感もうかがわれる
東北 持ち直している 横矢印 製造業を中心に改善の動きに一服感がみられるものの、全体としては持ち直している
北陸 依然として厳しい面もみられるが、全体として持ち直しを続けている 下矢印 持ち直しの動きが弱まりつつある
関東甲信越 緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きが弱まっている。また、地理的および業種間のばらつきも残存している 下矢印 緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。また、地理的および業種間のばらつきも残存している
東海 持ち直しを続けてきたが、ここにきて急速に減速しているようにうかがわれる 下矢印 足踏み状態となっている
近畿 雇用面などに厳しさを残しつつも、緩やかに回復している 下矢印 緩やかな回復基調にあるものの、このところ足踏み状態となっている
中国 緩やかに回復しているものの、回復のペースは鈍化している 下矢印 回復の動きに一服感がみられる
四国 厳しさが残るものの、緩やかに持ち直している 下矢印 持ち直しの動きに一服感がみられる
九州・沖縄 雇用・所得面に厳しさを残しつつも、緩やかに回復している 横矢印 一部に駆け込み需要の反動がみられるものの、全体としては緩やかな回復基調を維持している
  • 前回との比較矢印の説明

公共投資は、全地域が「減少している」等と判断した。

設備投資は、5地域(北海道、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、2地域(北陸、関東甲信越)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東海は「持ち直しつつあるが、そのペースは幾分鈍化している」と判断した一方、東北は「減少しているものの、一部に動意がみられ始めている」と判断した。

内訳をみると、製造業では、維持・更新投資や能力増強投資を計画しているほか、新商品・研究開発投資や合理化投資を拡充する動きがみられていると報告された。また、非製造業では、引き続きインフラ関連産業の大型投資がみられるほか、複数の地域が小売業における新規出店の動きを報告した。

個人消費は、雇用・所得環境の厳しさが緩和しているもとで、引き続き6地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)が、基調として「持ち直し」または「下げ止まりつつある」等と判断した。もっとも、多くの地域で冬物衣料品販売等で持ち直しの動きがみられた一方で、全地域が一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動を報告した。こうした中で、中国は「持ち直しの動きが一服している」、東海、四国は「全体としては弱めの動き」等と判断した。

品目別の動きをみると、多くの地域が、冬物衣料品販売等の持ち直しを背景にした大型小売店販売額の前年比増加ないしは減少幅の縮小等を報告した。また、コンビニエンスストア販売でも、たばこ税引き上げ前の駆け込み需要の反動がみられているものの、複数の地域が全体としての持ち直しまたは販売増加の動きを報告した。この間、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きを報告した。一方、全地域で、乗用車販売におけるエコカー補助終了に伴う駆け込み需要の大幅な反動減がみられているほか、家電販売でも家電エコポイント制度の見直しに伴う大幅な駆け込み需要増とその後の反動減がみられている。

住宅投資は、引き続き水準の低さに言及する地域がみられるものの、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が「持ち直している」または「一部に持ち直しの動きがみられる」等と報告したほか、他の地域(北陸、近畿、中国)でも「下げ止まり」と判断した。

種類別の動きをみると、多くの地域が、「持家が前年水準を上回っている」と報告したほか、複数の地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿)は、マンションを中心とする分譲について、「持ち直している」等と報告した。

生産については、ほとんどの地域で、情報関連財における在庫調整や海外経済の減速等を背景とした輸出の弱まりと、一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動減を背景に、生産活動の弱まりがみられた。こうした中で、6地域(北海道、東北、北陸、近畿、中国、四国)が、「増勢一服」、「横ばい圏内の動き」等と判断しているほか、関東甲信越は「このところやや減少」、東海は「自動車を中心に減少している」と報告した。この間、九州・沖縄は「緩やかな増加基調にある」と判断した。

業種別の主な動きをみると、自動車・同部品では、九州・沖縄で新型車の投入効果から「増加に転じている」と報告されたが、多くの地域がエコカー補助終了に伴う需要の反動減等から、「増勢鈍化」または「減少している」と報告した。また、電気機械・電子部品でも、世界的な情報関連財の在庫調整等から、多くの地域で「減少している」等と報告された。鉄鋼でも複数の地域から「増勢鈍化」や「減少」の動きが報告されたほか、紙・パルプについても、低操業が続いていると報告された。この間、一般機械などでは、多くの地域が「増加」等としている。

雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、ほとんどの地域で、その厳しさの度合いが緩和していると報告した。この間、東海は「このところ改善の動きに一服感がみられる」と報告した。

雇用情勢については、ほとんどの地域が労働需給の改善傾向を報告した。また、雇用者所得についても、全地域が下げ止まりに向けた動きを報告した。

需要項目等

表 需要項目等
  公共投資 設備投資 個人消費 住宅投資 生産 雇用・所得
北海道 大幅に減少している 低水準ながらも増加している 持ち直しの動きが続いているものの、一部に駆け込み需要の反動がみられる 持ち直している このところ横ばい圏内の動きとなっている 雇用情勢は、緩やかに持ち直している。雇用者所得は、企業の人件費抑制スタンスが根強く、厳しい状況が続いているものの、一人当たり名目賃金が前年を上回っているなど、改善の動きがみられる
東北 前年を下回った 減少しているものの、一部に動意がみられ始めている 各種政策の影響から区々の動きとなっているが、全体では緩やかな持ち直しの動きが続いている 引き続き低調に推移しているものの、持家を中心に持ち直しの動きがみられている 概ね横ばい圏内で推移している 雇用情勢をみると、改善に向けた動きがみられている。雇用者所得は、前年を上回って推移している
北陸 北陸新幹線関連の大口工事の発注が一巡したことや、国、県、市町村の発注減少から、基調としては減少している 製造業を中心に下げ止まっている 一部政策効果の減少がみられるものの、全体としては下げ止まりつつある 持家を中心に下げ止まっている 増加ペースが鈍化しつつある 雇用情勢をみると、依然として厳しい状況にあるが、労働需給は緩やかに持ち直す動きが続いている。雇用者所得は、所定内給与は前年並みにとどまっているが、製造業を中心に所定外給与の増加が続いているほか、特別給与も低水準ながら持ち直し傾向にある
関東甲信越 減少している 下げ止まっている 持ち直し基調が続いているものの、耐久消費財で駆け込み需要の反動がみられている 首都圏の分譲を中心に持ち直している このところやや減少している 雇用情勢は、引き続き厳しい状況にあるが、労働需給は緩やかな改善傾向にある。雇用者所得は、特別給与の増加等から、下げ止まりつつある
東海 減少している 持ち直しつつあるが、そのペースは幾分鈍化している 一部に強めの動きがみられるものの、乗用車販売が引き続き大幅に減少していることなどから、全体としても弱含んでいる 低水準ながら一部に持ち直しの動きがみられる 自動車を中心に減少している 雇用・所得環境は、このところ改善の動きに一服感がみられる
近畿 減少している 企業収益の改善が続く中で、緩やかに持ち直している 各種の駆け込みと反動の動きを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある 下げ止まっている 昨年央まで増加を続けてきたが、アジア向け輸出の伸び鈍化などから、このところ増勢一服となっている。この間、在庫は低水準で推移している 雇用情勢をみると、雇用面では、失業率の高止まりなどに厳しさを残しつつも、賃金は下げ止まってきている。雇用者所得は、前年比マイナス幅が縮小してきている
中国 減少している 製造業を中心に持ち直している 持ち直しの動きが一服している 下げ止まっている 横ばい圏内の動きとなっている 雇用情勢は、厳しい状況が続く中、製造業を中心に新規求人の動きがみられており、幾分改善してきている。雇用者所得は、全体として企業の人件費抑制等を背景に弱い動きが続いているものの、所定外給与については、生産の持ち直しに伴い増加している
四国 減少している 持ち直しつつある 一部政策終了や制度変更の影響の広がりもあって、全体として弱めの動きが続いている 低水準ながら、一部に持ち直しの動きがみられる 持ち直しの動きに一服感がみられる 雇用情勢は、引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。雇用者所得は、概ね下げ止まっている
九州・沖縄 減少している 持ち直している 耐久消費財の一部で駆け込み需要の反動が強く出ているものの、基調としては横ばい圏内の動きとなっている 低水準ながら、持家を中心に持ち直しつつある 駆け込み需要の反動がみられるものの、緩やかな増加基調にある 雇用・所得情勢は、全体としてはなお厳しい状態にあるが、幾分改善の動きがみられている

II.地域の視点

各地域において成長が期待されている産業の動向と今後の課題

日本経済が直面している喫緊の課題は成長力の引き上げであるが、そのためには、企業等が新たな成長分野や成長事業を大事なビジネスチャンスと捉え、持続的な業容拡大に向けて果敢に取り組んでいくことが重要である。

各地域からは、成長が期待されている産業として「環境・エネルギー関連」、「農水産業・食関連」、「観光」、「医療・介護関連」、「高齢者ビジネス」などが挙げられた。これら産業は、現段階では太陽電池のように地域内で既に確立された産業から、高齢者ビジネスのように現段階ではビジネスとして台頭しつつある産業まで、発展状況には差がある。しかしながら、多くの産業において、「中長期的に需要は着実に増加していく」という期待のもとで、業容拡大に向けた企業努力が続いている。

因みに、これら産業に関する共通点の第一は、各地域が有する「強み」や「地域資源」を活かした産業であることが挙げられる。具体的には、既に“モノづくり”の産業集積がある地域を中心に「太陽電池」や「二次電池」、「医療機器」、「医薬品」などが挙げられている一方で、自然環境や農水産物に恵まれた地域では、「観光」、「農水産業・食関連」などが挙げられている。この間、一部の地域では、産業集積が十分でないにもかかわらず製造業大企業等の誘致に傾斜した、これまでの産業振興策を修正する声も聞かれた。第二は、「農水産業」や「医療・介護」、「高齢者ビジネス」など、従来は民間ビジネスとして十分に捉えきれていなかった分野へ、収益性確保を前提として本格的な進出を目指していることである。第三には、差し当たり国内需要の増加を念頭においている「医療・介護」も含めて、多くの産業が、拡大が見込まれるアジアを含めたグローバル需要の取り込みも視野に入れていることである。

企業からは、各地域で成長が期待されている産業が業容を拡大していくためには、民間ビジネスとしての枠組みを確立することが重要であり、そのための多岐に亘る課題が挙げられている。具体的には、持続的な収益力の確保、市場ニーズを的確に把握する情報収集・分析力、商品開発力、技術力等の強化や、それを支える資本力の拡充や雇用の確保、人材育成の強化の必要性などである。その対応として、異業種間、地域間を含めた企業間連携や、産学官、金融機関との連携が重要である。さらにアジアを含めたグローバル需要の取り込みとの関係で、海外勢との競合激化も踏まえて海外の市場・制度等に関する情報収集力、情報発信を含めた海外への営業展開力の強化、それを支える語学力に優れた人材の確保も挙げられている。

こうした中、国・地方公共団体の取り組みへの期待も聞かれた。具体的には、(1)縦割り行政の弊害の解消を含めた秩序だった規制緩和の推進、(2)財政の重点配分、(3)行政のトップセールスやビジネスマッチング機会の提供といった営業支援が挙げられている。いずれについても、長期的かつ継続的な取り組みが望まれており、この点で、財政状況の悪化がこうした取り組みに与える影響について懸念する声も聞かれた。

地域内で成長が期待されている産業においては、金融機関に対して、(1)個人保証等に依存しない資金供給、(2)ビジネスマッチング等の営業支援や経営・人材情報の提供といった経営支援、(3)企業の合併、連携を仲介し、企業の経営体質を強化する機能などが期待されている。この点、企業から現時点での金融機関の取り組み状況についてうかがうと、「日本銀行の『成長基盤強化を支援するための資金供給』もあって、金融機関の成長分野への取り組み姿勢が従前以上に前向きになっている」とか、「積極的な営業支援を受けている」、「販路拡大のためのビジネスマッチングを積極的に開催している」など前向きに評価する声が多い。その一方で、個人保証等に依存しない資金供給への期待に関連して、金融機関に、「企業やプロジェクトの成長性を見極める目(目利き力)をさらに養って欲しい」との声も根強く聞かれた。

このように、各地域では、成長が期待されている様々な産業において、民間ビジネスとしての確立に向けた動きがみられている。日本経済の喫緊の課題である成長力の引き上げに向けて克服すべき課題やハードルは小さくないだけに、企業には技術革新や事業展開を積極的に推進していく強いフロンティア精神が求められ、同時に、それを後押しするための規制緩和を含めた行政の取り組みが期待される。今後、こうした取り組みを粘り強く行うことにより、各地域においてこれらの産業が地域経済の牽引役を担っていくことが期待される。

日本銀行から

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