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金融機関のリスク情報に関するディスクロージャーについて

(Box1)

バック・テスティング

 バック・テスティングの具体的な例示の方法としては、横軸を営業日に、これに対し縦軸を日々のVaRと日々の損益(実績)にして時系列グラフ化したもの(Box1の図表)や、横軸を日次のVaRに、縦軸を当該日の損益実績値(絶対値)にして期間中(ここでは1年分)の点をプロットし、日々のVaRと損益を対比させて図示したもの(前掲図表6)がある。

 VaRは市場が不利な方向へ変化した場合に、一定期間・確率の下でポートフォリオが被る可能性のある予想最大損失額である。この考え方の下では、例えば営業日が年間250日で、VaRを算出するに当たって前提としている信頼区間が両側95%(片側97.5%)とすると、250営業日のうち12日(250日−250日×95%=12.5日)程度は確率的に日々の損益実績がVaRを上回る可能性がある、言い換えれば、この日数が12日以内程度であればこの金融機関のリスク管理パフォーマンスは良好と判断することが可能である。図中においては、前者では損益実績値がVaR線で挟まれる領域(これを「コンフィデンス・バンド」ということもある)を突き抜けた場合に、後者では点が45度線より上側にある場合に相当する。後者の開示例においては45度線より上側にある点が5個所(=5日)にとどまっており、信頼区間95%の下ではこのVaRは精度が高い、すなわちリスク管理のパフォーマンスが良好であるといえる。反対に、仮に45度線より上に多数の点が分布している場合は、このリスク計測手法に問題がある可能性を示唆していることになる。

 なお、バック・テスティングによるリスク管理にも限界があることには留意する必要がある。すなわち、VaRと比較している損益の実績値はあくまで時価評価されたポートフォリオ価値の前日比増減額(実現損益を含む)であるが、日中のポジションが膨らむことにより一時的に損益が大きく増加し、これが必ずしもVaRの範囲内に収まらない可能性があることである。このほか、VaRを算出するに当たっての市場価格変動の仮定の置き方の影響や、バック・テスティングの統計的な検定力が必ずしも強くないことを指摘する考え方もある1

  1. 詳しくは『日本銀行月報』1995年4月号「バリュー・アット・リスクの算出とリスク/リターン・シミュレーション」を参照。
  • (BOX1の図表)バックテスティング(例示)(時系列による比較)詳細は本文のとおり。