金融機関の平成7年度決算
1996年 9月
日本銀行考査局
(概況)
7年度の金融機関(注1)の決算(図表1)は、以下の諸点 を中心にこれまでになく特徴のある姿となった。
第1に、業務純益(注2)は内外金利低下を主因とした多額の債券等売却益の計上等から前年度比大幅増益となり、全国銀行(以下「全銀」)全体では現行の経理基準に改訂(平成元年度中間期)されて以来の最高益(注3)を記録した。第2に、住宅金融専門会社(注4)(以下「住専」)向け債権等、償却や引当等を行う必要のある債権が多額に上ったほか、不良債権処理をできるだけ早く進めバランスシートを早期に改善することが内外市場での評価を高めるとの認識が金融機関の間に拡がったことも加わり、貸出金償却等は全銀全体で約13兆円と記録的な規模となった。また、こうした積極的な貸出金償却等の計上により、不良債権処理はこれまでと比べ確実に進捗をみた。第3に、経常・当期利益は、多額の貸出金償却等を実施したことから、既往最高益となった業務純益の計上にも拘らず大幅に減少し、赤字を計上する先が多数みられた。
もっとも、8年度入り後についてみると、不良債権処理は7年度決算で前進 こそしたものの、(1)収益面(業務純益)では、都銀・長信・信託各行の8年度見通しによると減益が見込まれること、(2)全銀全体として、処理を要する不良債権の額(以下「要処理見込額」(注5))は、大きく減少したとはいえ依然高水準であること等から、経営環境は引き続き厳しい状況にある。また、会計上の不良債権処理が進んでいるとはいえ、稼動資産への振り替えを通じた資金収支の改善等につながっている事例などはこれまでのところ少なく、収益力向上には必ずしも結びついていない。
したがって、不良債権処理により毀損した自己資本額(注6)を今後の期間収益により早期に回復することは、その金額が多額に上ることも加わって、困難を伴うものとみられる。こうした中、一部の銀行では、優先株の発行等により自己資本の回復・充実を目指す動きもみられている。
(図表1) 全国銀行の決算の推移
(単位 億円、( )内は前年度比 %、< >内は前年度実績)
| 5年度 | 6年度 | 7年度 |
うち都銀 |
長信 |
信託 |
地銀 |
地銀? |
(参考)
信金 (7年度) | ||||||||
|
業務純益
経常利益 当期利益 |
44,408
15,443 8,024 |
44,819
9,909 1,571 |
67,351
-29,454 -38,944 |
(51.0)
<9,909> <1,571> |
34,999
-14,774 -17,518 |
(70.7)
<431> <-693> |
6,180
-4,086 -4,094 |
(2.3倍)
<905> <583> |
6,530
-13,965 -14,038 |
(48.0)
<793> <-1,094> |
13,971
2,717 -2,712 |
(11.1)
(-57.1) <2,673> |
5,671
655 -581 |
(30.5)
(-57.8) <102> |
8,020
4,559 2,799 |
(9.5)
(1.2) (-0.3) |
(注)7年度の計数、前年比計数は、太平洋、兵庫、みどりを除く。
(注1)
本稿で「金融機関」と言う場合、全国銀行150行<平成 8年 3月末現在>(う
ち都市銀行11行<以下「都銀」>、長期信用銀行 3行<以下「長信」>、信託銀
行7行<平成5年10月以降に業務を開始した信託銀行および外資系信託銀行を
除く。以下「信託」>、全国地方銀行協会加盟の地方銀行64行<以下「地銀」>
、第二地方銀行協会加盟の地方銀行65行<以下「地銀?」>)、および日本銀行
取引先信用金庫358庫(以下「信金」)を対象とする。ただし、7年度には地銀
?においては、兵庫銀行( 7年 8月、現みどり銀行)及び太平洋銀行( 8年 3月
)が破綻したため、7年度計数及びその前年度比に関してはこれらを除いて算出
している。以下では、全国銀行(除く太平洋、兵庫、みどり)を中心に記述する
こととする。
(注2)
銀行の基本的業務にかかわる成果を示す銀行固有の利益概念。「資金利益」(
貸出金、預金、有価証券などの利息収支等)、「役務取引等利益」(手数料収支
等)、「その他業務利益」(債券等売却損益、外国為替関係損益等)の合計から
「貸倒引当金繰入額(一般)」と「経費・債券費」を控除したもの。
(注3)
各業態についてのこれまでの最高益は以下の通り。
| (億円) |
| 全銀 | 都銀 | 長信 | 信託 | 地銀 | 地銀? |
| 46,856 | 25,167 | 4,010 | 5,411 | 12,577 | 4,563 |
| (4年度) | (4年度) | (4年度) | (元年度) | (6年度) | (6年度) |
(注4)
日本住宅金融、住宅ローンサービス、日本ハウジングローン、第一住宅金融、
住総、地銀生保住宅ローン、総合住金の7社。
(注5)
要処理見込額とは、不良債権残高(破綻先債権、延滞債権及び金利減免等債権
の合計)から破綻・延滞化しないと見込まれる金利減免等債権額、担保カバー分
及び債権償却特別勘定残高を控除した額。
(注6)
ここではバランスシート上の資本の部(資本金、新株式払込金、法定準備金、
剰余金)を示す。
