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全国銀行の平成9年度決算

1998年 8月27日
日本銀行考査局


(日本銀行から)

 以下には、概況および目次を掲載しています。全文(本文、図表)は、こちらから入手できます (ron9808a.pdf 158KB)。


概況(図表1)

(1) 全国銀行 注1の9年度決算をみると、業務純益 注2は5.4兆円と、前年度に比べ△14%の減益となった。これは、8年度の信託における増益要因 注3の剥落が影響したことに加え、利鞘の縮小により国内資金利益が減少したことや、ジャパンプレミアムの拡大、海外業務の縮小等により国際業務粗利益が減少したためである(図表2)。
 こうした中、貸出金の償却・引当等 注4は、13.3兆円(信託勘定を含む)と既往ピークの7年度にほぼ匹敵する水準となった。このような多額の貸出金償却・引当等の実施により、経常利益は△5.2兆円、また当期利益も△4.8兆円といずれも既往ピークの大幅赤字となった 注5
 この間、自己資本比率をみると、リスク・アセット削減の動きに加え、昨年12月に打ち出された政府の様々な金融システム安定化策の効果もあり、多くの先で9年3月末を上回った。


(2) バブル崩壊以降数年を経た段階で、償却・引当が7年度にほぼ並ぶ高水準となったのは、大型企業倒産の発生に加え、早期是正措置制度の導入に伴う自己査定の実施およびその結果に基づく償却・引当が開始されたことも、大きく影響している。
 今後は、引き続き適切な償却・引当の実施や情報開示の徹底に加え、担保不動産の処分等により不良債権を金融機関のバランスシートから切り離すことが重要な課題と考えられる。これにより、担保不動産の価格変動リスクが金融機関収益に大きな影響を与える可能性が排除され、バランスシート情報がより信頼できるものとなることを通じ、市場や預金者からの信認にもプラスに作用すると考えられる。また、金融機関の側も、前向きの経営戦略が描きやすくなると考えられ、不良債権の売却資金を有価証券投資や新規貸出に活用するといったポートフォリオの再構築などを通じ、収益力の改善が図られることが期待されている。


注1) 全国銀行(以下「全銀」)とは、都市銀行10行(以下「都銀」)、長期信用銀行3行(以下「長信」)、信託銀行7行(5年10月以降に業務を開始した信託銀行および外銀信託を除く。以下「信託」)、全国地方銀行協会加盟の地方銀行64行(以下「地銀」)、第二地方銀行協会加盟の地方銀行64行(以下「地銀II」、10年1月に解散した阪和銀行は含まず)を対象とする。ただし、本稿の計数に関しては北海道拓殖銀行、徳陽シティ銀行、京都共栄銀行を除いて算出している。

注2) 銀行の基本的業務にかかわる成果を示す銀行固有の利益概念。「資金利益」(貸出金、預金、有価証券などの利息収支等)、「役務取引等利益」(手数料収支等)、「特定取引利益」(特定取引勘定設置行のみ。トレーディング勘定におけるデリバティブ取引等による売買損益および期末の評価損益)、「その他業務利益」(債券等関係損益、外国為替関係損益等)の合計から「貸倒引当金繰入額(一般)」と「経費・債券費」を控除したもの。

注3) 具体的には、信託の特別留保金取崩益。特別留保金は、貸付信託の元本割れに備えて積み立てるもので、8年度には政令改正による繰入限度額の引下げ(元本の1,000分の30→1,000分の5)に伴って取崩益が生じた。信託では、この取崩益を貸付信託勘定の償却等に一部充当し、残る部分を信託報酬として銀行勘定の役務取引等利益に計上した。

注4) 貸出金償却のほか、債権償却特別勘定への繰入(いわゆる引当)、共同債権買取機構への売却損・支援損、海外民間債権売却損、債権放棄等を含む。

注5) 貸出金償却・引当等と並んで臨時損益として計上される株式等関係損益は、上場株式の評価法として原価法の採用が認められ、株式等償却による損失計上が軽減されたこと等から、益超幅が2.9兆円と前年の3倍に上った。なお、株式等関係損益は株式等売却益から株式等売却損および株式等償却を減じたもの。




(図表1)9年度決算の損益の概要(業種別)


図


(図表2)業務純益等の推移 (全国銀行)

図

(注1) 7、8年度の業務純益が特に高水準なのは債券売却益の積上がり及び信託勘定における特別留保金取崩益の計上の影響。
(注2) 資金利益等は業務純益から信託勘定での特殊要因および債券等関係損益を除いたもの(業務純益−債券等関係損益−<信託勘定償却額−特別留保金取崩益>)


目 次


1.概況

2.収益の動向
(1)業務純益
 1)国内業務粗利益
 (国内資金利益)
 (国内役務取引等利益)
 (国内債券等関係損益)
 2)国際業務粗利益
 3)経費
 4)一般貸倒引当金

(2)臨時損益・特別損益
 1)貸出金償却等
 2)株式等関係損益
 3)特別損益

(3)経常利益・当期利益

(4)利益処分方針

3.自己資本比率の動向

4.不良債権の動向
(1)過去の不良債権処理

(2)現在のリスク資産額
 1)自己査定結果
 2)リスク管理債権

(3)今後の処理のあり方
 1)不良債権の処理
 2)情報の開示

(参考)都銀・長信・信託の10年度収益予想

[BOX1]一般貸倒引当金の動向
[BOX2]自己査定を踏まえた償却・引当について
[BOX3]リスク管理債権と自己査定による分類資産の概念比較
[BOX4]日米の公表不良債権の定義について
[BOX5]自己査定結果の開示状況


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