中国の金融改革の現状(資料)
2000年 4月28日
安井 章
(日本銀行から)
本稿は、現在、外務省在中華人民共和国日本国大使館出向中の執筆者が作成したリポートを、外務省、同大使館の許可を得て掲載したものである。意見に亘る部分は全て執筆者の個人的な見解によるものであり、日本銀行および外務省の公式見解ではない。
以下には、冒頭部分(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (ron0004a.pdf 58KB) から入手できます。なお、本稿は日本銀行調査月報 4月号にも掲載しています。
(要旨)
中国では、97年秋の全国金融工作会議における決定を受け、国有商業銀行、金融監督当局各方面での改革に加え、違法金融活動の取り締り強化等の一連の対策が矢継ぎ早に打ち出されてきた。
すなわち、国有商業銀行に関しては、貸出総量枠規制の撤廃、預金準備金制度改革や準備率引き下げ等、自主的な貸出運営の確立に向けての環境整備と、特別国債の発行(2,700億元)による自己資本拡充、資産管理公司設立による不良債権の分離等、財務内容の改善に向けての取り組みが実施に移されている。
金融監督当局に関しては、中国人民銀行(中央銀行)の本支店組織改革、銀行・保険・証券の各監督機関の分離、金融機関党組織の指導体制の改革、貸出債権5分類制の導入等、監督体制の強化が図られた。また、この時期、拡大する違法な外貨取引や金融活動等に対する取り締りも強化された。
金融の対外開放に関しては、当初、若干の速度調整がみられたが、98年夏以降、外資系銀行の人民元業務および支店設置に関する規制緩和措置が打ち出されている。
現時点までの金融改革の進展状況をみると、金融当局の監督権限強化の面では制度面での整備が急ピッチで進んだと評価できよう。一方、国有商業銀行の自主的な貸出運営の確立や経営効率化に向けての取り組みについては、自己資本の充実や不良債権処理の制度的枠組みの整備といった面では一定の進展がみられている。しかしながら、アジア通貨危機の波及に伴うデフレ圧力の高まり等厳しいマクロ経済情勢の下で、景気刺激的な貸出増加目標が公表されるなど、中国当局としては、銀行の自主的な業務運営を全面的には容認し難い事情があったことも窺われる。また、同様の事情から、銀行の組織効率化も当初計画に比べ遅れがちとなったことも否めない。
世界貿易機関(WTO)加盟を控え、今後、国内金融市場では、外資系金融機関との、あるいは国内金融機関同士の競争が一層激化するものとみられる。国有商業銀行においては、不良債権処理や自己資本の増強を通じた財務基盤固めとリスク管理の強化、および地方支店の合理化によるコスト削減、職員の士気向上を通じた競争力の引き上げ等に積極的に取り組んでいくことが求められている。
