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全国銀行の平成13年度決算について

2002年 8月14日
日本銀行考査局

 従来、個別財務諸表関連計数を付表としておりましたが、本年より項目等を拡充させて、「全国銀行の決算状況」 として公表することとしました。本ホームページに掲載しておりますので、そちらをご利用下さい。

 以下には、(概観)を掲載しています。全文は、こちら (ron0208d.pdf 206KB) から入手できます。

概観

(1)全国銀行1の平成13年度決算をみると、多額の不良債権処理や株式償却を行ったことから、当期利益は大幅な赤字となった。この結果、資本勘定が大きく減少したほか、株価下落から有価証券含み益も殆どなくなった。もっとも、国際統一基準行の自己資本比率は、10%台半ばの水準を維持している。

  1. 1 全国銀行(以下「全銀」)とは、14/3月末時点での都市銀行7行(以下「都銀」)、長期信用銀行3行(以下「長信」)、信託銀行5行(5/10月以降に業務を開始した信託銀行及び外銀信託を除く。以下「信託」)、全国地方銀行協会加盟の地方銀行64行(以下「地銀」)、第二地方銀行協会加盟の地方銀行56行(以下「地銀II」)を対象とする(14/3月末時点)。ただし、本稿の計数は、別途断りがない限り、新生銀行(旧日本長期信用銀行)、あおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)、東京スター銀行(旧東京相和銀行)、関西さわやか銀行(旧幸福銀行)、中部銀行、石川銀行を除いた129行(都長信 13、地銀 64、地銀II 52)、単体ベース。また、特に断りのない限り、旧東海銀行の4/1〜1/14日までの期間損益を含むベース。

(2)主要項目別の特徴点を概観すると以下の通りである。

  1. (a)コア業務純益2は、ウェイトの大きな国内資金利益が若干減少したものの、国際部門の資金利益が増加したほか、経費の削減が続いたことから、全体では5.5兆円と前年を上回り、既往ピークである7年度(5.6兆円)に並ぶ水準となった。
    国内資金利益は、貸出ボリュームの減少や有価証券利鞘の縮小から若干の減益となった。役務取引等利益は、貸出関連の手数料収入が好調であったが、一部業務の集約等にかかる費用が増加したため全体では横這いとなった。また、経費は、物件費がやや増加した一方、人件費の削減幅が拡大したことから、全体では減少となった。
  2. (b)この間、不良債権処理額は、大口債務者に対する引当増などから都長信を中心に前年を大幅に上回る9.7兆円となり、6年度以降8年連続でコア業務純益を上回った。また、不良債権残高は、自己査定基準の厳格化や要管理債権の認定範囲拡大などから前年を上回り、43.2兆円となった。
  3. (c)株式関係損益(株式3勘定尻)は、株価下落や有価証券の減損処理ルールの厳格化等を背景に多額の償却を実施したことから、過去最大のマイナスとなった。
  4. (d)経営体力面では、有価証券含み益が株価下落から殆どなくなったほか、当期利益の赤字計上から剰余金が減少した。ただし、国際統一基準行の連結自己資本比率は、当期利益の大幅な赤字により分子の自己資本が減少したものの、リスクアセットも減少したことから、全体では10%台半ばの水準を維持している。

(3)以上のように、13年度決算においては、多額の不良債権処理や株式償却が進められ、その結果、経営上のリスク要因は相応に減じたとみられる。

 しかし、不良債権残高や株式保有額は依然大きいほか、都長信の多くでは有価証券含み益や海外子会社の株式含み益等がゼロに近づき、これまでのように経営体力を維持する上でのバッファーとしての役割は期待できなくなっている。また、地銀・地銀IIも、配当可能利益を確保できなかった先が増加している。

 こうした中で、今後も必要な不良債権処理を進めながら、安定的な経営基盤を確保していくためには、収益力の一段の強化が喫緊の課題であり、貸出利鞘の拡大や経営統合を活かした経費の削減等への取組みが求められる。

  1. 2 金融機関の基本的な収益力をみるには、債券5勘定尻、一般貸倒引当金純繰入、信託勘定償却の各影響を除くことが適当と考えられるため、本稿では、コア業務純益(資金運用収支と手数料収支の合算値から、経費を控除したものに概ね相当)を使用している。