調査・研究

ホーム > 調査・研究 > 日本銀行レポート・調査論文 > 調査論文 2003年 > 2002年度決算からみた全国銀行の経営状況

2002年度決算からみた全国銀行の経営状況

2003年 8月18日
日本銀行

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0308c.pdf 399KB)から入手できます。また、長期時系列データについては、「全国銀行の決算状況(2002年度決算)」 をご覧ください。

要旨

(1)全国銀行1 の2002年度決算をみると、多額の不良債権処理や株式償却を主因に、当期利益は▲4.9兆円の大幅赤字となった。

主な特徴点は以下の通りである。

  1. (a)銀行の基礎的な収益力を示すコア業務純益(5.2兆円)は、貸出ボリュームの減少や有価証券利鞘の縮小から、前年度(5.6兆円)に比べ減少した。
  2. (b)不良債権処理額(▲6.6兆円)は前年度(▲9.9兆円)を下回ったが、引き続きコア業務純益を上回る規模となった。
  3. (c)株式3勘定尻は、株価下落の影響から▲3.9兆円の大幅マイナスとなった。
  4. (d)自己資本比率はリスクアセットの削減にもかかわらず、低下した。
  1. 本稿中の全国銀行とは、2003年3月末時点の日本銀行の取引先銀行156行(大手行14行<新生銀行、あおぞら銀行を含む>、地域銀行117行<地方銀行64行、第二地方銀行協会加盟行53行>、1993年以降に業務を開始した信託銀行13行、外銀信託9行、新設のネット銀行等3行)を指す。なお、計数については特に断りのない限り単体決算ベース。
  • 図

(2)全国銀行の決算は厳しい内容となったが、これには、銀行が不良債権処理や株式保有に伴うリスク削減などの経営課題に取り組んだ結果という側面もある。2002年度中の取り組みの進捗状況を示せば、以下の通りである。

  1. (a)不良債権処理の促進
    2002年度には、大手行や一部の地域銀行では、貸出債権の経済価値をより適切に反映した引当を行うために、大口の要管理先債権にDCF(ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー)法を適用する動きが広がった。

また、2002年度末の公表不良債権(金融再生法開示債権)残高については、大手行を中心に、政府がオフバランス化の目処を示している破綻懸念先債権、破綻先・実質破綻先債権が大幅に削減されたことから、全国銀行全体では前年度末に比べて7.9兆円減少し、35.3兆円となった。

こうした積極的な不良債権のオフバランス化は、実施時には銀行の不良債権処理額を引き上げる可能性があるが、先行きの不動産担保価格の下落による二次ロスなどの損失を軽減する効果が期待できる。

  1. (b)信用リスクに見合った貸出リターンの確保
    銀行は、2002年度には貸出利鞘の改善に本格的に取り組んだ。しかし、信用コスト率・経費率を控除した貸出利鞘はマイナスの状態が続いており、欧米の銀行と比較すると、利鞘面で大きく見劣りする。銀行は、様々な金融技術や債権流動化市場の価格等を活用して信用リスクを適切に把握し、ポートフォリオを能動的に管理するなどして、信用リスクに見合う貸出リターンが確保できるような体制構築を急ぐ必要がある。
  2. (c)保有株式の削減と自己資本の有効活用
    大手行では、保有株式の削減を積極的に進め、2002年度中に前年度末保有残高の40%に相当する9.7兆円を削減した。その結果、2002年度末の株式保有残高は14.8兆円となり、ほぼ中核的自己資本(Tier I)に見合う程度になった。

銀行は、信用リスク、株価リスク、金利リスクなどに対するバッファーとして、自己資本の一定額をそれぞれのリスクに配賦している。株式保有度合いについては、銀行の総合的なリスク管理の中で判断すべきであるが、株価変動リスクが非常に大きいことを勘案すると、銀行の限られた自己資本を新たな収益機会に有効に活用していく観点からは、保有株式の削減に向けてさらに努力を続ける意義は大きい。